金属の型を削る工場には放電加工機が並んでいることがあります。
火を使う機械ではないのに消防の基準がかかると言われて驚く担当者は少なくありません。
分かれ目になるのは機械そのものではなく加工液のほうです。
この記事では放電加工機が対象になる条件と備えるべき装置と加工液の量による手続を条文から解説します。
工場の放電加工機も消防に届けるのですかと聞かれました。
まず加工液がなにかを確かめてください。
そこで対象になるかどうかが分かれます。
うちの機械は油につけて削るタイプです。
その油が危険物にあたるなら条例の基準がかかります。
順番に条文を見ていきましょう。
この記事の結論
- 放電加工機は消防法第9条を受けた火災予防条例の対象火気設備等の一つです。
- 対象になるのは加工液として危険物を用いるものだけです。(省令第3条第15号)
- 加工液の温度と液面と異常と着火に応じて自動で加工を止める装置が求められます。
- 基準の特例で一般の規定は外れますが放電加工機のための号は残ります。(同省令第17条)
- 加工液の量が増えると危険物としての規制が別にかかります。(法第9条の4・法第10条)
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目次
放電加工機は消防法でどんな設備として扱われるのか

それでも消防法は火災の発生のおそれのある設備という受け皿を持っています。
消防法(昭和23年法律第186号)第9条 かまど、風呂場その他火を使用する設備又はその使用に際し、火災の発生のおそれのある設備の位置、構造及び管理、(略)その他火の使用に関し火災の予防のために必要な事項は、政令で定める基準に従い市町村条例でこれを定める。
第9条は火を使用する設備と、火災の発生のおそれのある設備の二つを並べて条例に委ねています。
これを受けた消防法施行令第5条第1項が、その総称として対象火気設備等という言葉を置きました。
どの機械が対象火気設備等になるかは総務省令に委ねられていて、そこに放電加工機の名前が出てきます。
つまり規制の出どころは市町村の火災予防条例で、その中身の枠を国の政令と省令が決めているという構造です。
火を使わない機械でも入る枠があるのですね。
それが対象火気設備等という受け皿です。
放電加工機もその一覧に名前があります。
どの放電加工機が規制の対象になるのか

定義の条文が最初にはっきりと線を引いています。
対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成14年総務省令第24号)第3条 令第5条第1項各号列記以外の部分の総務省令で定めるものは、第一号から第十三号までに掲げる設備から配管設備等を除いたもの及び第十四号から第二十一号までに掲げる設備とする。 (略) 十五 放電加工機(加工液として法第二条第七項に規定する危険物を用いるものに限る。以下同じ。) (略)
第3条は対象火気設備等を21種類挙げていて、放電加工機はその第15号にあります。
かっこ書きが「加工液として法第二条第七項に規定する危険物を用いるものに限る」と絞り込んでいるので、加工液に危険物を使わない機械はこの号に入りません。
消防法第2条第7項の危険物は別表第一の品名欄に掲げる物品で、油系の加工液はそのうちの第四類の引火性液体にあたるものが多くあります。
自分の工場の機械がどちらかは、機種名ではなく加工液の安全データシートで品名と引火点を確かめるのが確実です。
加工液が水なら対象から外れるということですか。
条文が限ると書いているのでそう読めます。
まずは加工液の安全データシートを取り寄せてください。
どんな安全装置を備えなければならないのか

省令は放電加工機のためだけの号を立てて並べています。
同省令第15条 令第5条第1項第十号の規定により、対象火気設備等には、必要に応じ、次の各号に定めるところにより、その使用に際し異常が生じた場合において安全を確保するために必要な装置を設けなければならない。 (略) 八 放電加工機にあつては、次に掲げる装置を設けること。 イ 加工槽内の放電加工部分以外における加工液の温度が、設定された温度を超えた場合において、自動的に加工を停止できる装置 ロ 加工液の液面の高さが、放電加工部分から液面までの間に必要最小限の間隔を保つために設定された液面の高さより低下した場合において、自動的に加工を停止できる装置 ハ 工具電極と加工対象物との間の炭化生成物の発生成長等による異常を検出した場合において、自動的に加工を停止できる装置 ニ 加工液に着火した場合において、自動的に消火できる装置
イとロとハはいずれも自動的に加工を停止できる装置で、ニだけが自動的に消火できる装置です。
止める合図になるのは加工液の温度の上がりすぎと、液面が下がって電極が液から出そうになったことと、電極と工作物のあいだの炭化生成物による異常の三つです。
これに加えて同省令第12条第6号が、工具電極を確実に取り付けて異常な放電を防ぐことを求めています。
新しく入れる機械なら仕様書のどこにこの機能が書かれているかを、既にある機械なら動作の確認方法を、それぞれ販売した業者に聞いておくと確認が早くなります。
液面が下がることまで見ているのは知りませんでした。
電極が液から出ると危ないからです。
仕様書のどこに書いてあるかを控えておきましょう。
加工液の量によって別の規制がかかるのはどこからか

加工液そのものが危険物なので量の規制が重なります。
消防法(昭和23年法律第186号)第9条の4 危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量(以下「指定数量」という。)未満の危険物及び(略)の貯蔵及び取扱いの技術上の基準は、市町村条例でこれを定める。(略) 第10条 指定数量以上の危険物は、貯蔵所(略)以外の場所でこれを貯蔵し、又は製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所でこれを取り扱つてはならない。(略)
加工液の量が指定数量以上になると、その場所は法第10条の許可を受けた危険物の取扱所などでなければ扱えません。
指定数量に届かない場合は第9条の4によって市町村条例の受け持ちになり、火災予防条例(例)は指定数量の五分の一以上指定数量未満の量に技術上の基準を置いています。
数える対象は加工槽に入っている量だけでなく、同じ場所に置いた予備の缶やタンクの中身も合わせた量です。
機械が一台でも加工液を多めに常備していれば量の側で線を越えることがあるので、購入の単位と保管の場所を先に確かめてください。
機械の中の量だけを見ればよいわけではないのですね。
予備の缶も同じ場所なら数に入ります。
棚の在庫まで含めて数えてみてください。
明日からなにを確認すればよいのか

最後に残るのは日々の管理の基準です。
消防法施行令(昭和36年政令第37号)第5条 (略) 十一 対象火気設備等については、必要な点検及び整備を行い、その周囲の整理及び清掃に努める等適切な管理を行うこと。
安全データシートで消防法の品名を確かめ、危険物にあたるなら省令第15号の機械として扱うと決めてしまいます。
次に加工槽まわりを見て、温度と液面と異常の検出で加工が止まるか、着火したときに消火する仕組みがあるかを一台ずつ確かめます。
そのうえで在庫を含めた加工液の量を集計し、指定数量との関係を出してから自分の市町村の火災予防条例で届出の条を開いてください。
特例で位置や構造の規定が外れても点検と整理清掃の管理は残るので消防計画の日常点検の欄に書き加えておきます。
加工液の名前から始めれば迷わずに済みそうです。
そこが決まれば見る条文が一本に絞れます。
安全データシートを机に置いてから始めてください。
よくある質問
Q水溶性の加工液を使うワイヤ放電加工機も対象になりますか?
A省令第3条第15号は加工液として消防法第2条第7項の危険物を用いるものに限ると書いています。危険物にあたらない加工液だけを使う機械はこの号には入りませんが、実際にどの品名にあたるかは安全データシートと所轄の消防署でご確認ください。
Q基準の特例で外れたあとに残る規定はどれですか?
A同省令第17条の表は、放電加工機について令第5条第1項第一号から第四号までと第10条・第11条・第13条・第14条、第12条の第一号から第五号まで及び第七号から第十号まで、第15条の第一号から第七号までを適用しないとしています。裏返すと残るのは第12条第6号と第15条第8号という放電加工機のための規定です。
Q設置するときの届出はどの号で出すのですか?
A火災予防条例(例)第44条は火を使用する設備等の設置の届出を並べていて、放電加工機は第8号の2に置かれています。条例(例)は国が示したひな形なので、号の番号と書きぶりは自分の市町村の条例で確かめてください。
Q火花を生ずる設備とはどこが違うのですか?
A火花を生ずる設備は同省令第3条第14号の別の種類で、火花と可燃性の蒸気又は微粉の両方を出すことが要件です。特例の表でも外れ方が違い、火花を生ずる設備は同省令第10条から第15条までがまとめて外れるのに対し、放電加工機は号を細かく残しています。
まとめ
✔放電加工機は火災の発生のおそれのある設備として条例の基準がかかります。
✔対象になるのは加工液として危険物を用いるものに限られます。
✔温度と液面と異常を検出したら自動的に加工を止める装置が要ります。
✔加工液に着火したときは自動的に消火できる装置が別に求められます。
✔基準の特例で一般の規定が外れても放電加工機のための号は残ります。
✔加工液の量が指定数量を超えると危険物の許可の話になります。
✔点検と整備と周囲の整理清掃という管理の基準は最後まで残ります。
まずは加工液の安全データシートを集めてみます!
そこが分かれば残りの条文は一本道です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第2条第7項・第9条・第9条の4・第10条・別表第一
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第5条
- 対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成14年総務省令第24号)第3条・第12条・第15条・第17条
- 火災予防条例(例)(昭和36年11月22日自消甲予発第73号消防庁長官)第31条の3の2・第44条
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





