印刷や繊維の工場では機械の運転そのものが火災の原因になることがあります。
火の気がない機械でも消防の基準がかかると言われて戸惑う担当者は少なくありません。
消防法は火花を生ずる設備という種類を立てて基準をかけているからです。
この記事では火花を生ずる設備の定義と守るべき基準と設置の届出を条文から解説します。
工場の印刷機に消防の基準がかかると言われました。
それは火花を生ずる設備にあたるかもしれません。
条例で位置と構造と管理が決まります。
火花が出る機械はぜんぶ対象になるのですか。
条文が置いた条件は二つあります。
まず定義の条文から見ていきましょう。
この記事の結論
- 火花を生ずる設備は消防法第9条を受けた火災予防条例の対象火気設備等です。
- 対象になるのは操作に際し火花を生じ、かつ、可燃性の蒸気又は微粉を放出する設備という二つの要件を満たすものです。(省令第3条第14号)
- グラビア印刷機とゴムスプレッダーと起毛機と反毛機が条文に挙がった例です。
- 守るべき基準の中心は静電気を有効に除去する措置です。(同省令第16条第6号)
- 位置と構造の規定は基準の特例でまとめて外れます。(同省令第17条)
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目次
火花を生ずる設備とはどんな設備を指すのか

消防法の側は対象火気設備等の種類の一つとして名前を付けています。
対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成14年総務省令第24号)第3条 令第5条第1項各号列記以外の部分の総務省令で定めるものは、第一号から第十三号までに掲げる設備から配管設備等を除いたもの及び第十四号から第二十一号までに掲げる設備とする。 (略) 十四 火花を生ずる設備(グラビア印刷機、ゴムスプレッダー、起毛機、反毛機その他その操作に際し火花を生じ、かつ、可燃性の蒸気又は微粉を放出する設備をいう。以下同じ。) (略)
第3条は対象火気設備等を21種類挙げていて、火花を生ずる設備はその第14号にあります。
グラビア印刷機とゴムスプレッダーと起毛機と反毛機が例として示され、そのあとに「その他」として包括的な要件が続く書き方です。
そのため名前が一致しなくても要件に当たれば対象になり、逆に似た機械でも要件を欠けば対象から外れます。
自分の工場にある機械がどちらなのかは、呼び名ではなく運転したときに何が出るかで決まります。
機械の名前で決まるわけではないのですね。
大事なのはその他のあとに続く要件です。
運転したときに何が出るかを見てください。
設置するとき消防への届出はいるのか

届出のほうは条例の届出の条に一覧で並んでいます。
火災予防条例(例)(昭和36年11月22日自消甲予発第73号消防庁長官)第44条 火を使用する設備又はその使用に際し、火災の発生のおそれのある設備のうち、次の各号に掲げるものを設置しようとする者は、あらかじめ、その旨を消防長(消防署長)に届け出なければならない。 (略) 八 火花を生ずる設備 (略)
第44条の号を並べると、厨房設備は入力の合計、変電設備や急速充電設備は全出力、蓄電池設備は蓄電池容量というかたちで数量の下限が付いています。
これに対して第8号は火花を生ずる設備とだけ書かれていて、大きさや出力での切り分けがありません。
届け出るのは設置しようとする者で、時期は設置の前です。
条例(例)は国が示したひな形なので、号の番号も書きぶりも自分の市町村の条例で確かめてください。
小さな機械でも届出がいるということですか。
ひな形の号には下限が書かれていません。
迷うときは図面を持って所轄に相談してください。
どんな基準を守らなければならないのか

中心にあるのは静電気の扱いです。
同省令第16条 令第5条第2項の規定により、第4条から前条までに規定するもののほか、対象火気設備等の位置、構造及び管理に関し火災の予防のために必要な事項に係る条例は、次の各号に定めるところにより制定されなければならない。 (略) 六 火花を生ずる設備にあっては、静電気による火花を生ずるおそれのある部分に、静電気を有効に除去する措置を講ずること。
可燃性の蒸気や微粉が漂うところで静電気の火花が飛べば着火につながるので、そこを断つのが第6号の趣旨です。
あわせて消防法施行令第5条第1項第11号が、必要な点検及び整備を行い、その周囲の整理及び清掃に努める等の適切な管理を求めています。
火災予防条例(例)第10条はこれをさらに具体化して、準不燃材料で仕上げた室内に設けること、可燃性の蒸気又は微粉を有効に除去する換気装置を設けること、室内でみだりに火気を使用しないことを並べています。
接地の線が外れていないか換気装置が動いているかは、その日のうちに目で見て確かめられるところです。
アースそのものが基準だったのですね。
静電気を有効に除去する措置が条文の言葉です。
接地線と端子の状態を点検表に入れてください。
離隔距離の基準がかからないのはなぜか

そこだけを見て安心すると足元をすくわれます。
同省令第17条 令第5条第3項の規定により、次の表の上欄に掲げる対象火気設備等については、それぞれ同表の下欄に掲げる規定は適用しない。 (略) 火花を生ずる設備 令第5条第1項第1号から第4号まで及び第10条から第15条まで (略)
第17条の表で火花を生ずる設備の欄に挙がっているのは、令第5条第1項第1号から第4号までと、同省令の第10条から第15条までです。
第1号は建築物や可燃物までの火災予防上安全な距離、第2号は可燃性の蒸気などが滞留しない位置、第3号は不燃性の床等の上、第4号は延焼を防止する措置が講じられた室のことをいいます。
表のほかの欄は外す号を細かく拾っていますが、同省令の第10条から第15条までを丸ごと挙げているのは火花を生ずる設備の欄だけです。
外れる理由は令第5条第3項が火を使用する設備以外の対象火気設備等に特例を認めているからで、外れるのは位置と構造の規定であって管理の基準は残ります。
距離を取らなくてよいと聞いて安心していました。
残るのは管理の基準です。
室内の整理と清掃を消防計画に書いてください。
明日からなにを確認すればよいのか

そこが決まれば見る条文が自然に絞れます。
消防法(昭和23年法律第186号)第9条 かまど、風呂場その他火を使用する設備又はその使用に際し、火災の発生のおそれのある設備の位置、構造及び管理、(略)その他火の使用に関し火災の予防のために必要な事項は、政令で定める基準に従い市町村条例でこれを定める。
操作に際し火花を生じるか、そのときに可燃性の蒸気又は微粉を放出するかを、一台ずつ紙に書き出してください。
当たるものが見つかったら、接地の線と端子、蒸気や微粉を除去する換気装置、室内の仕上げを順に見ます。
そのうえで自分の市町村の火災予防条例を開き、届出の条に火花を生ずる設備の号があるかを確かめて、まだ出していなければ設置の前に届け出ます。
最後に機械のある室の整理と清掃と火気の取扱いを消防計画の日常の点検の項目に書き加えておきます。
一台ずつ当てはめるところから始めます。
それが一番早い確認です。
書き出した表があれば所轄への相談も一度で済みます。
よくある質問
Qグラインダーのように火花だけが出る機械も対象になりますか?
A省令第3条第14号は操作に際し火花を生じ、かつ、可燃性の蒸気又は微粉を放出する設備と書いています。両方の要件を満たさなければこの号には入りませんが、ほかの法令の規制は別にかかります。個別の判断は所轄の消防署にご確認ください。
Q火花を生ずる設備には距離の定めが本当にないのですか?
A同省令第17条が令第5条第1項第1号から第4号までを適用しない規定として挙げているため、国が示す条例制定基準としての距離の定めは置かれていません。市町村の条例が独自に定めを置くことはあるので、手元の条例で確かめてください。
Q設置の届出は誰がいつ出すのですか?
A火災予防条例(例)第44条は設置しようとする者があらかじめ届け出ると定めています。書類の作成を工事業者に頼むことはできますが、届出の義務を負うのは設置する側です。
Q放電加工機とは扱いが違うのですか?
A放電加工機は同省令第3条第15号に置かれた別の設備で、加工液として危険物を用いるものに限られます。第17条の表でも外れる規定の範囲が違い、届出も条例(例)第44条の第8号の2という別の号です。
まとめ
✔火花を生ずる設備は消防法第9条を受けた火災予防条例の対象火気設備等です。
✔火花を生じ、かつ、可燃性の蒸気又は微粉を放出することが二つの要件です。
✔グラビア印刷機とゴムスプレッダーと起毛機と反毛機が条文の例示です。
✔守るべき基準の中心は静電気を有効に除去する措置です。
✔位置と構造の規定は基準の特例でまとめて外れます。
✔外れても点検と整理清掃の管理の基準は残ります。
✔設置の届出は条例の第8号にあたるかどうかで決まります。
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参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第9条
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第5条
- 対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成14年総務省令第24号)第3条・第16条・第17条
- 火災予防条例(例)(昭和36年11月22日自消甲予発第73号消防庁長官)第10条・第44条
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





