立入検査で指摘を受けたときに建築の許可は取っていますと答えたくなることがあります。
消防法第5条第1項にはたしかに他の法令の許可や認可を受けた建物を除くただし書が置かれています。
けれども外れるのはこの条文の命令だけで別の条文の命令はそのまま届きます。
この記事では消防法第5条第1項のただし書がどこまで効くのかを条文の順に解説します。
建築の手続をきちんと踏んだ建物でも消防から改修を命じられるのでしょうか。
条文に除外があると聞いたことがあります。
消防法第5条第1項にはたしかにただし書が置かれています。
ただし外れるのはこの条文の命令だけです。
外れると書いてあるのならもう気にしなくてよいのではないですか。
そこが分かれ目で ただし書は建築と増築と改築と移築の許可又は認可に限っています。
消防用設備等を命じる条文はそもそも別に置かれています。
- 消防長又は消防署長は権原を有する関係者に建物の改修や移転や除去などを命ずることができます。(消防法第5条第1項)
- 同項のただし書は他の法令により建築と増築と改築と移築の許可又は認可を受けた工作物を除いています。(同項ただし書)
- 除かれるのはその後事情の変更していないものに限られます。(同項ただし書)
- 建築基準法第6条第1項が定めているのは確認で条文の文言は許可でも認可でもありません。(建築基準法第6条第1項)
- ただし書は第5条第1項だけのもので消防用設備等の設置維持命令には付いていません。(消防法第17条の4第1項)
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目次
消防法第5条第1項のただし書はなにを定めているのか

改修などを命じる根拠は消防法第5条第1項で ただし書はその同じ項の末尾に置かれています。
消防長又は消防署長は、防火対象物の位置、構造、設備又は管理の状況について、火災の予防に危険であると認める場合、消火、避難その他の消防の活動に支障になると認める場合、火災が発生したならば人命に危険であると認める場合その他火災の予防上必要があると認める場合には、権原を有する関係者(特に緊急の必要があると認める場合においては、関係者及び工事の請負人又は現場管理者)に対し、当該防火対象物の改修、移転、除去、工事の停止又は中止その他の必要な措置をなすべきことを命ずることができる。(ただし書略)
本文は危険であると認める場合などを並べたうえで 権原を有する関係者に対して改修や移転や除去や工事の停止や中止を命じられるとしています。
その末尾に置かれたただし書が 一定の工作物についてこの限りでないと述べ 本文の外に置いています。
つまり除外に当たるかどうかは この項の命令を出せるかどうかの話であって 消防が指摘そのものをできなくなるという意味ではありません。
まずは受け取った書面がどの条文に基づく命令なのかを 冒頭の根拠条文の記載から確かめてください。
書面のどこを見れば根拠の条文が分かるのでしょうか。
命令書には根拠となる条項が記載されるのが通例です。
記載が読み取れないときは所轄消防署にご確認ください。
どんな許可や認可を受けた建物が当てはまるのか

条文はどんな処分を受けた工作物を除くのかを言葉で限っています。
ただし、建築物その他の工作物で、それが他の法令により建築、増築、改築又は移築の許可又は認可を受け、その後事情の変更していないものについては、この限りでない。
建築と増築と改築と移築が並んでおり 修繕と模様替はここに挙げられていません。
受けた処分の種類も限られていて 条文の文言は許可又は認可です。
さらに他の法令によりと書かれていますので 消防法以外の法令に基づく処分であることが前提になります。
そして末尾には その後事情の変更していないものという条件が重ねて付けられています。
自分の建物がいつどの法令に基づいてどんな処分を受けたのかを 書類の名称のとおりに書き出して確かめてください。
内装をやり直しただけの工事はどちらに入るのでしょうか。
ただし書に並んでいるのは建築と増築と改築と移築だけです。
個別の工事がどれに当たるかは所轄消防署にご確認ください。
建築確認を受けた建物はどう扱われるのか

建築の手続で交付される書類の名前を建築基準法の側から見ておきます。
建築主は、第一号若しくは第二号に掲げる建築物を建築しようとする場合(略)においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(略)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事又は建築副主事(略)の確認(略)を受け、確認済証の交付を受けなければならない。
建築基準法第6条第1項が求めているのは確認で 交付されるのは確認済証です。
工事が終わったあとの完了検査で交付されるのも 同法第7条第5項により検査済証とされています。
これに対して消防法第5条第1項ただし書が挙げているのは許可又は認可という言葉です。
条文の文言が違う以上 確認済証を持っていることをもって当然にただし書に当たると読むことはできません。
手もとの書類の名称が確認済証なのか許可書なのかを見たうえで 判断は所轄消防署に確かめるのが確実です。
確認済証があれば大丈夫だと社内では思われていました。
条文の言葉は確認であって許可でも認可でもありません。
思い込みで返事をせずまず書類の名称を確かめてください。
ただし書が付いていない命令にはどんなものがあるのか

消防法の命令は第5条第1項だけではありません。
消防長又は消防署長は、第十七条第一項の防火対象物における消防用設備等が設備等技術基準に従つて設置され、又は維持されていないと認めるときは、当該防火対象物の関係者で権原を有するものに対し、当該設備等技術基準に従つてこれを設置すべきこと、又はその維持のため必要な措置をなすべきことを命ずることができる。
消防用設備等が基準に従って設置されず又は維持されていないときの命令は消防法第17条の4に置かれており 他の法令の許可を理由とする除外の定めは条文にありません。
防火管理者を定めるべきことを命ずる第8条第3項と 防火管理業務を法令や消防計画に従って行わせる同条第4項も同じで ただし書は置かれていません。
建物の使用の禁止や停止や制限を命じる第5条の2第1項も 屋外の物件などについて命じる第5条の3第1項も同様です。
ですから設備や防火管理についての指摘は 建築の許可を受けているという事情とは切り離して考える必要があります。
指摘を受けたら まずどの条文の話なのかを仕分けてから対応を決めてください。
設備の話と建物の構造の話は別に考えるということですね。
根拠の条文ごとに要件も罰則も別に定められています。
指摘の一覧を条文ごとに並べ替えるところから始めてください。
明日からなにを確認すればよいのか

放置したときの重さを先に見ておくと優先順位を付けやすくなります。
第五条第一項の規定による命令に違反した者は、二年以下の拘禁刑又は二百万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪を犯した者に対しては、情状により拘禁刑及び罰金を併科することができる。
はじめに受け取った書面の根拠条項を読み 次にその条文にただし書があるかどうかを見て 最後に自分の建物が受けた処分の名称を書類で確かめます。
第5条第1項の命令に違反した者には2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金が定められ 情状により併科することもできるとされています。
法人の業務に関して違反行為が行われたときは 消防法第45条第1号により法人に1億円以下の罰金が科されます。
ただし書に当たるかどうかを社内で決めてしまわず 確認済証や許可書の写しを持って所轄消防署に相談するのが確実です。
つまり書類の名称を確かめるところが出発点なのですね。
そのとおりで 名称と日付と根拠法令の3点を押さえてください。
そのうえで指摘を条文ごとに仕分けると話が早く進みます。
よくある質問
まとめ
確認済証と許可書を出してきて名称から確かめてみます。
指摘の一覧も根拠の条文ごとに並べ直します。
条文ごとに仕分ければ次にやることがはっきりします。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第5条第1項
- 消防法第5条の2第1項
- 消防法第5条の3第1項
- 消防法第8条第3項及び第4項
- 消防法第17条の4第1項
- 消防法第39条の3の2
- 消防法第45条第1号
- 建築基準法第6条第1項
- 建築基準法第7条第5項
- 建築基準法第9条第1項
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





