立入検査の指摘が命令に変わったあとの話はあまり知られていません。
消防法は命令を履行しない相手に対して行政代執行という手を用意しています。
工事は消防の側で進められ その費用はあとから建物の側に請求されます。
この記事では消防の命令を放置したときに何が起きるのかを条文の順に解説します。
階段の物を片づけるよう書面が来ましたが予算が付かず止まっています。
指導のようなものだから急がなくてよいと言われました。
その書面が命令なのか指導なのかで先の展開がまったく変わります。
命令であれば消防が代わりに工事をする道が開いています。
消防が代わりにやってくれるなら助かるということですか。
費用は義務者から徴収すると法律に書かれています。
しかも命令に違反したこと自体に罰則が置かれています。
- 消防長又は消防署長は権原を有する関係者に建物の改修や移転や除去を命ずることができます。(消防法第5条第1項)
- 命令が履行されないときは行政代執行法により消防職員又は第三者が措置をとります。(消防法第5条第2項)
- 代執行は戒告と代執行令書という二段の書面を経てから行われます。(行政代執行法第3条)
- 要した費用は国税滞納処分の例により徴収され先取特権も付きます。(行政代執行法第6条)
- 命令に違反した者は2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金に処せられます。(消防法第39条の3の2第1項)
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目次
消防が建物の改修や除去を命じるのはどんなときか

根拠は立入検査の条文の次に置かれている消防法第5条です。
消防長又は消防署長は、防火対象物の位置、構造、設備又は管理の状況について、火災の予防に危険であると認める場合、消火、避難その他の消防の活動に支障になると認める場合、火災が発生したならば人命に危険であると認める場合その他火災の予防上必要があると認める場合には、権原を有する関係者(特に緊急の必要があると認める場合においては、関係者及び工事の請負人又は現場管理者)に対し、当該防火対象物の改修、移転、除去、工事の停止又は中止その他の必要な措置をなすべきことを命ずることができる。(略)
火災の予防に危険な場合 消火や避難など消防の活動に支障になる場合 火災が起きたならば人命に危険な場合 その他火災の予防上必要な場合が並んでいます。
命令の相手は建物の使用者一般ではなく権原を有する関係者で 特に緊急の必要があるときだけ工事の請負人や現場管理者にも向けられます。
命じられる中身も改修だけではなく移転や除去や工事の停止や中止まで含まれています。
同じ条のただし書は 他の法令で建築や増築の許可又は認可を受けその後事情の変更していないものを除いていますので まず自分の建物がこの除外に当たるかを確認してください。
受け取った書面が命令かどうかはどこを見ればわかりますか。
書面に根拠の条文と履行の期限が書かれているかを見てください。
判断が付かないときは所轄消防署に確かめるのが確実です。
命令を放置すると消防はなにができるのか

消防法第5条第2項が第3条第4項を準用する形で置かれています。
第三条第四項の規定は、前項の規定により必要な措置を命じた場合について準用する。
消防法第三条第四項
消防長又は消防署長は、第一項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき、又はその措置の履行について期限が付されている場合にあつては履行しても当該期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、当該消防職員又は第三者にその措置をとらせることができる。
履行しないときだけでなく履行しても十分でないときと 期限までに完了する見込みがないときも同じ扱いになります。
つまり着手さえすれば止められるというものではなく 期限に間に合わない見通しが立った時点で条文の要件を満たします。
実際に代執行を行うかどうかは行政代執行法第2条の要件にもかかっており 同条は他人が代わってなすことのできる行為であること 他の手段では履行の確保が困難であること 不履行を放置することが著しく公益に反すると認められることを挙げています。
期限に間に合わないと分かった時点で 見通しと理由を所轄消防署へ先に伝えてください。
途中まで直していれば履行したことになると思っていました。
条文は履行しても十分でないときまで書き込んでいます。
どこまで直せば足りるのかを先に握っておくのが安全です。
行政代執行はどんな順番で進むのか

行政代執行法が書面の順番まで定めています。
前条の規定による処分(代執行)をなすには、相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨を、予め文書で戒告しなければならない。
2 義務者が、前項の戒告を受けて、指定の期限までにその義務を履行しないときは、当該行政庁は、代執行令書をもつて、代執行をなすべき時期、代執行のために派遣する執行責任者の氏名及び代執行に要する費用の概算による見積額を義務者に通知する。
3 非常の場合又は危険切迫の場合において、当該行為の急速な実施について緊急の必要があり、前二項に規定する手続をとる暇がないときは、その手続を経ないで代執行をすることができる。
まず戒告で相当の履行期限が示され それでも履行しないときに代執行令書が届きます。
代執行令書には実施の時期と執行責任者の氏名と費用の概算による見積額まで書かれますので この時点で負担の規模がわかります。
現場に来る執行責任者は同法第4条により証票を携帯し 要求があればいつでも呈示しなければなりません。
ただし第3項のとおり非常の場合や危険切迫の場合で緊急の必要があるときは この二段の手続を経ないで実施されることがあります。
戒告が来た時点ならまだ間に合うということですね。
戒告には相当の履行期限が定められています。
その期限までに終わる工程表を作って動くのが最後の分かれ目です。
費用と罰則はどこまで及ぶのか

費用の回収と罰則が別々に用意されています。
代執行に要した費用は、国税滞納処分の例により、これを徴収することができる。
2 代執行に要した費用については、行政庁は、国税及び地方税に次ぐ順位の先取特権を有する。(略)
消防法第三十九条の三の二第一項
第五条第一項の規定による命令に違反した者は、二年以下の拘禁刑又は二百万円以下の罰金に処する。
同法第5条により実際に要した費用の額と納期日を定めた納付命令が文書で出され 支払われなければ国税滞納処分の例により徴収されます。
さらに行政庁は国税及び地方税に次ぐ順位の先取特権を持ちますので 建物を売っても優先して回収される立場に置かれます。
罰則の側は代執行とは別で 消防法第39条の3の2第1項が命令違反そのものに2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金を定め 同条第2項で情状により併科することもできるとしています。
同法第45条第1号は この違反を法人の業務に関して行ったときに法人へ1億円以下の罰金を科すと定めていますので 会社としての備えが要ります。
法人にも別の罰金がかかるとは知りませんでした。
行為者を罰するほかに法人へも罰金を科す両罰規定です。
命令を受けた時点で経営の側へ上げてください。
明日からなにを確認すればよいのか

出された事実が外から見える形で公にされます。
3 消防長又は消防署長は、第一項の規定による命令をした場合においては、標識の設置その他総務省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。
4 前項の標識は、第一項の規定による命令に係る防火対象物又は当該防火対象物のある場所に設置することができる。この場合においては、(略)所有者、管理者又は占有者は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。
公示の方法は消防法施行規則第1条により公報への掲載その他市町村長が定める方法とされ 標識は建物やその場所に設置することができます。
標識の設置は所有者も管理者も占有者も拒めませんので テナントや取引先の目に触れる状態が続きます。
その先には消防法第5条の2第1項があり 命令が履行されず引き続き危険があると認められる場合には使用の禁止や停止や制限を命ずることができるとされています。
まずは手元の書面が指導なのか命令なのかを確かめ 命令であれば期限と権原の範囲を整理して所轄消防署に工程を示すところから始めてください。
建物の前に標識が立つのは営業にも響きそうです。
だからこそ命令に至る前の改修の段取りがいちばん安く済みます。
期限つきの書面が来たらその日のうちに動いてください。
よくある質問
まとめ
指導のようなものだと思って寝かせていた書面を見直します。
期限を確かめて工程表を作ります。
命令の前に動けば費用も罰則も公示も避けられます。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第3条第4項
- 消防法第5条第1項から第4項まで
- 消防法第5条の2第1項
- 消防法第39条の3の2第1項及び第2項
- 消防法第45条第1号
- 消防法施行規則第1条(措置命令等を発した場合における公示の方法)
- 行政代執行法第2条
- 行政代執行法第3条
- 行政代執行法第4条
- 行政代執行法第5条
- 行政代執行法第6条
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





