BLOG

アドバルーンを上げるとき消防への届出はいるのか|水素ガスを充てんする気球の位置と構造の基準を解説

ビルの屋上に係留された広告用の気球と市街地の遠景

開店の記念や催しのたびに屋上へ丸い気球を上げてきた建物があります。
広告の会社が持ってきて上げてくれるので、こちらは場所を貸すだけだと思われがちです。
ところが火災予防条例には水素ガスを充てんする気球という条文があり、位置と構造と管理の基準がはっきり書かれています。
この記事では気球を上げるのにどこから届出が要るのかを条文から解説します。

気球を上げるだけで消防に届けるとは知りませんでした。

気球は火を使う設備と同じ節に置かれています。
炉やボイラーと並ぶ場所に条文があります。

小さな気球なら届出は要らないだろうと思っていました。

この条文には大きさの下限が書かれていません。
そこが今日いちばんお伝えしたいところです。

この記事の結論
  • 水素ガスを充てんする気球は火を使う設備と同じ節で位置と構造の基準が置かれています。(火災予防条例(例)第17条)
  • 設置しようとする者は大きさを問わずあらかじめ届出をしなければなりません。(同条例第44条第15号)
  • 掲揚綱と周囲の建築物との間に水平距離10メートル以上の空間を保有します。(第17条第3号)
  • 気球の容積は15立方メートル以下とします。(第17条第4号)
  • 国の省令が挙げる対象火気設備等の21種類に気球は入っていません。(平成14年総務省令第24号第3条)

水素ガスを充てんする気球の掲揚に必要な空間と容積と電飾の基準と設置の届出をまとめた図解

水素ガスを充てんする気球はどんな設備として扱われるのか

商業ビルの上に係留された球形の気球と地上の固定用の台と見上げる人
気球は火を使う設備ではないのに、なぜ火災予防条例に条文があるのかというところです。
入口は消防法第9条で、条文の言い回しをよく読むと理由が見えてきます。
消防法(昭和23年法律第186号)第9条 かまど、風呂場その他火を使用する設備又はその使用に際し、火災の発生のおそれのある設備の位置、構造及び管理、こんろ、こたつその他火を使用する器具又はその使用に際し、火災の発生のおそれのある器具の取扱いその他火の使用に関し火災の予防のために必要な事項は、政令で定める基準に従い市町村条例でこれを定める。
火を使う設備だけが対象ではありません。
条文は「その使用に際し、火災の発生のおそれのある設備」という枠をもうひとつ持っており、火災予防条例(例)はこの枠のなかに第17条として水素ガスを充てんする気球を置いています。
置かれている場所は炉やふろがまやネオン管灯設備と同じ節で、位置と構造と管理の基準を並べるという条文の作りも同じです。
水素は空気と混ざると燃える範囲がきわめて広いガスで、電飾や周囲の火気と組み合わさったときの危険を条例が正面から見ているということになります。
自分の建物で気球を上げる予定があるなら、広告の会社に任せきりにせず条例の条文そのものを一度開いてみてください。

火を使わないのに火を使う設備の節にあるのですね。

火災のおそれがある設備という枠に入っています。
次は届出が要る場面を見ます。

気球を上げるとき消防への届出はどこから必要になるのか

消防署の窓口で届出の書類を手渡す人と受け取る職員
届出が要る設備は火災予防条例(例)の第44条にまとめて並んでいます。
気球はその最後の号に出てきますが、書き方がほかの号とはっきり違います。
火災予防条例(例)第44条(抜粋) 火を使用する設備又はその使用に際し、火災の発生のおそれのある設備のうち、次の各号に掲げるものを設置しようとする者は、あらかじめ、その旨を消防長(消防署長)に届け出なければならない。(略) 十四 設備容量2キロボルトアンペア以上のネオン管灯設備 十五 水素ガスを充填する気球
大きさの線が引かれていません。
すぐ上の第14号がネオン管灯設備を設備容量2キロボルトアンペア以上で切り、第9号の変電設備や第13号の蓄電池設備にも同じように容量の線があるのに、第15号の気球にだけ数値の条件が付いていません。
第43条の防火対象物の使用開始の届出が使用開始の日の7日前までと期限を書いているのとも違い、第44条は「あらかじめ」とだけ書いています。
何日前までに出すかは市町村の規則や運用で決まっているので、予定が決まった時点で所轄消防署に期限を聞くのがいちばん確実です。
届出をするのは設置しようとする者なので、広告の会社が代行する場合でも建物側が届出の有無を確かめておいてください。

小さい気球でも届出が要るということですね。

条文に容積の下限が書かれていないためです。
次は掲揚のときの基準を見ます。

掲揚するときになにを守らなければならないのか

広場で掲揚された気球と固定箇所を囲むさくと立入禁止の標示と周囲の建築物までの水平距離
第17条は掲揚の場所と空間と大きさを最初の四つの号で決めています。
どれも数えられる基準なので、当日その場で確かめられます。
火災予防条例(例)第17条(抜粋) 水素ガスを充てんする気球の位置、構造及び管理は、次に掲げる基準によらなければならない。 一 煙突その他火気を使用する施設の付近において掲揚し、又はけい留しないこと。 二 建築物の屋上で掲揚しないこと。ただし、屋根が不燃材料で造つた陸〔ろく〕屋根で、その最少幅員が気球の直径の2倍以上である場合においては、この限りでない。 三 掲揚に際しては、掲揚綱と周囲の建築物又は工作物との間に水平距離10メートル以上の空間を保有するとともに、掲揚綱の固定箇所にさく等を設け、かつ、立入を禁止する旨を標示すること。(略) 四 気球の容積は、15立方メートル以下とすること。ただし、観測又は実験のために使用する気球については、この限りでない。
屋上での掲揚は原則として禁じられています。
第2号のただし書で例外が開いていますが、条件は不燃材料で造つた陸屋根であることと、その最少幅員が気球の直径の2倍以上であることの二つです。
屋上で上げられるかどうかは屋根の材質と幅で決まるので、気球の直径を先に確かめてから屋上を選ぶという順番になります。
第3号の水平距離10メートル以上は掲揚綱と周囲の建築物や工作物との間の話で、あわせて固定箇所にはさく等を設け立入を禁止する旨の標示が要ります。
第4号の容積15立方メートル以下は観測や実験のための気球だけが外れるので、広告のための気球はこの上限のなかに収まっていなければなりません。

屋上に上げるなら屋根の幅まで見るのですね。

気球の直径の2倍以上という物差しがあります。
次は見落としやすいところを見ます。

実務で見落としやすいのはどこか

煙突のある建物のそばで掲揚された気球と気球の下に垂らした電飾
見落としが起きやすいのは、上げてしまったあとに続く部分です。
電飾と風と人の三つが第17条の後半にまとめて書かれています。
火災予防条例(例)第17条(抜粋) 六 気球に付設する電飾は、気球から3メートル以上離れた位置に取り付け、かつ、充電部分が露出しない構造とすること。ただし、過熱又は火花が生じないように必要な措置を講じたときは、気球から1メートル以上離れた位置に取り付けることができる。(略) 八 気球の地表面に対する傾斜角度が45度以下となるような強風時においては、掲揚しないこと。(略) 十一 掲揚中又はけい留中においては、看視人を置くこと。ただし、建築物の屋上その他公衆の立ち入るおそれのない場所で掲揚し、又はけい留する場合にあつては、この限りでない。
強風の判断に条文が数値を持っています。
第8号は風速ではなく気球の傾斜角度が45度以下という見た目で決まる基準なので、風の強い日は上げる前に空を見て判断できます。
第6号の電飾は気球から3メートル以上離すのが原則で、過熱や火花が生じないよう必要な措置を講じたときだけ1メートル以上まで縮められます。
第11号の看視人は掲揚中もけい留中も置くのが原則で、外れるのは屋上その他公衆の立ち入るおそれのない場所に限られます。
なお第17条や第44条に違反しても条例(例)第49条の罰金の対象には入っていませんが、消防法第4条の立入検査で指摘を受ける場面であることに変わりはありません。

上げっぱなしにして人を置いていませんでした。

誰が見ているかを決めておくところからです。
次は明日からの確認の順番をまとめます。

明日からなにを確認すればよいのか

点検表を持つ人と強風で傾いた気球と水素ガスの容器と減圧器
最後はガスそのものの扱いです。
充てんと詰替えの手順が条文に書かれており、ここは現場で目で確かめられます。
火災予防条例(例)第17条(抜粋) 九 水素ガスの充てん又は放出については、次によること。 イ 屋外の通風のよい場所で行なうこと。 ロ 操作者以外の者が近接しないように適当な措置を講ずること。 ハ 電飾を付設するものにあつては、電源を遮断して行なうこと。 ニ 摩擦又は衝撃を加える等粗暴な行為をしないこと。 ホ 水素ガスの充てんに際しては、気球内に水素ガス又は空気が残存していないことを確かめた後減圧器を使用して行なうこと。 十 水素ガスが90容量パーセント以下となつた場合においては、詰替えを行なうこと
充てんは屋外で電源を切って行います。
第9号のハは電飾を付けている気球について電源を遮断して充てんや放出をすると定めており、屋内での作業やコードをつないだままの作業は条文の外です。
第10号の90容量パーセントは純度が下がると空気と混ざって燃えやすい状態に近づくためで、上げっぱなしの気球には詰替えの判断が必要になります。
明日からの順番としては、自分の市町村の火災予防条例を開いて気球の条文の番号を確かめ、次に予定している気球の直径と容積を広告の会社に聞き、最後に届出の期限を所轄消防署に確認するという三つになります。
条例(例)は消防庁が示した準則で実際に効力を持つのは自分の市町村の条例です。

まず自分の市の条例で条文の番号を見てみます。

そこが出発点になります。
迷ったら所轄の予防課に条文の番号を伝えて聞くのが早いです。

よくある質問

Qヘリウムガスを入れた気球にもこの条文はかかるのですか?
A火災予防条例(例)第17条も第44条第15号も水素ガスを充てんする気球と書いており、ほかのガスについての定めは置かれていません。ただし市町村の条例が独自に対象を広げている場合があるため、自分の市町村の条文を確かめてください。
Q屋上で上げれば水平距離10メートル以上の空間は要らないのですか?
A第17条第3号のただし書は、前号のただし書により建築物の屋上で掲揚する場合はこの限りでないとしています。つまり第2号のただし書の条件を満たした屋上に限った話で、屋上でありさえすればよいという意味ではありません。
Q気球は国の省令が定める対象火気設備等に入っているのですか?
A平成14年総務省令第24号第3条が挙げる対象火気設備等は炉からはじまり急速充電設備で終わる21種類で、そこに気球は入っていません。第17条の数値は国の基準の写しではなく条例そのものが持つ数値なので、自分の市町村の条文で確かめる必要があります。
Q届出をしないまま上げてしまった場合に罰則はありますか?
A火災予防条例(例)第49条が罰金の対象として挙げるのは第30条や第31条など別の条文で、第17条も第44条も含まれていません。ただし消防法第4条の立入検査で指摘の対象になり、危険が認められれば法第5条の3などの措置に進む場合があります。

まとめ

水素ガスを充てんする気球は火災のおそれがある設備として条例に条文があります。
設置しようとする者は大きさを問わずあらかじめ届出をします。
煙突その他火気を使用する施設の付近では掲揚もけい留もできません。
掲揚綱と周囲の建築物との間に水平距離10メートル以上の空間を保有します。
気球の容積は15立方メートル以下で電飾は気球から離して取り付けます。
傾斜角度が45度以下となる強風時には掲揚せず看視人を置きます。
充てんは屋外の通風のよい場所で電源を遮断して行います。

次の催しの前に条例と届出を確かめておきます。

その二つが決まれば当日あわてずに済みます。
㈱防災屋でもご相談を承っています。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第4条第1項・第5条の3・第9条
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第5条(対象火気設備等の位置、構造及び管理に関する条例の基準)
  • 対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成14年総務省令第24号)第3条
  • 火災予防条例(例)(昭和36年11月22日自消甲予発第73号消防庁長官)第17条(水素ガスを充てんする気球)・第43条・第44条第15号・第49条

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
ビルの屋上に係留された広告用の気球と市街地の遠景
開店の記念や催しのたびに屋上へ丸い気球を上げてきた建物があります。 広告の会社が持ってきて上げてくれるので、こちらは場所を貸すだけだと思われがちです。 ところが火災予防条例には水素ガスを充てんする気球という条文があり、位...