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危険物を運ぶタンクローリーは走行中に止められることがあるのか|消防法第16条の5第2項が定める停止と免状の提示を解説

危険物を運ぶタンクローリーは走行中に止められることがあるのかという記事のアイキャッチ画像

ガソリンや灯油を運ぶタンクローリーは道路を走っている間も消防法の規制を受けています。
その延長で走行中の車両が路上で止められ書類の確認を受けることがあります。
建物の立入検査とは根拠になる条文も止める人も違うので、社内で説明できないまま現場任せになりがちです。
止めることができるのは消防吏員警察官求められるのは乗車している危険物取扱者の免状の提示です

うちのタンクローリーが配送の途中で止められて免状を見せたと運転手から聞きました。
あれは断ることができるものだったのでしょうか。

消防法には走行中の移動タンク貯蔵所を止めるための条文が置かれています。
拒んだ場合の罰則まで一緒に定められています。

建物の立入検査とは別の話になるのですか。

条も違えば止める人も違います。
どこがどう違うのかを条文で順に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 消防法第16条の5第2項により走行中の移動タンク貯蔵所を止めて免状の提示を求めることができます
  • 止めることができるのは消防吏員と警察官の2とおりで互いに密接な連絡をとることとされています
  • 提示を求められる相手は乗車している危険物取扱者なので誰が乗っているかが前提になります
  • 停止に従わず提示を拒むと第44条第7号により30万円以下の罰金又は拘留となります
  • 取扱者を乗せずに移送した場合は条も刑も重くなり法人にも罰金刑が科されます

走行中の移動タンク貯蔵所を止めるのは消防吏員と警察官で乗車している危険物取扱者に免状の提示を求めることを示した図解

走行中のタンクローリーを消防や警察が止めることはあるのか

タンクローリーの前で制帽をかぶった人が片手を横に伸ばして止めていて間にオレンジ色の柱が立っている
危険物の規制というと施設に対するものだと思われがちです。
ところが消防法には走行中の車両そのものを止めるための条文があります。
消防法第16条の5第2項 消防吏員又は警察官は、危険物の移送に伴う火災の防止のため特に必要があると認める場合には、走行中の移動タンク貯蔵所を停止させ、当該移動タンク貯蔵所に乗車している危険物取扱者に対し、危険物取扱者免状の提示を求めることができる。この場合において、消防吏員及び警察官がその職務を行なうに際しては、互いに密接な連絡をとるものとする。
消防法で走行中の車両を止められるのはこの一項だけです
条文が止める人として挙げているのは消防吏員警察官の2とおりで、建物の立入検査に立つ消防職員とは書き分けられています。
できることも停止させることと免状の提示を求めることに限られていて、積んでいる危険物を降ろさせるとは書かれていません。
要件は危険物の移送に伴う火災の防止のため特に必要があると認める場合という書き方で、通常の立入検査より重い言い回しになっています。
末尾の互いに密接な連絡をとるという一文は、消防と警察が別々に動くことを前提にしたうえで置かれた定めです。

警察官も止めることができると条文に書いてあるのですね。

同じ項に並べて書かれています。
どちらに止められても求められる中身は同じです。

止められたときに応じることになるのは誰なのか

止まっているタンクローリーの左右に制帽をかぶった人がそれぞれ立って向き合っている
提示を求められる相手は条文で決まっています。
そこから逆に、移送に誰を乗せなければならないかが見えてきます。
消防法第16条の2第1項 移動タンク貯蔵所による危険物の移送は、当該危険物を取り扱うことができる危険物取扱者を乗車させてこれをしなければならない。
応じるのは乗車している危険物取扱者です
第16条の5第2項が提示を求める相手として名指ししているのは乗車している危険物取扱者で、運転者一般ではありません。
そしてその前提として、第16条の2第1項が当該危険物を取り扱うことができる危険物取扱者を乗車させて移送しなければならないと定めています。
免状の種類がその危険物に対応していなければ乗車させたことにならないので、配車の段階で品目と免状の類を突き合わせておく必要があります。
同条第2項は、乗車した危険物取扱者が政令で定める移送の基準を守り保安の確保に細心の注意を払わなければならないと続けています。

免状を持っていても類が違えば意味がないということですか。

条文が当該危険物を取り扱うことができると書いているとおりです。
配車表に品目と免状の類を並べて書いておいてください。

その場で示すことになるのはなにか

タンクローリーの運転席から差し出された小さなカードに制帽をかぶった人が手を伸ばしている
求められるのは免状の提示です。
提示できる状態にしておく義務も別の項に置かれています。
消防法第16条の2第3項 危険物取扱者は、第一項の規定により危険物の移送をする移動タンク貯蔵所に乗車しているときは、危険物取扱者免状を携帯していなければならない
免状は乗車中ずっと携帯しておく義務があります
条文は携帯していなければならないと書いており、事務所に保管したままでは求めに応じられません。
提示を求める側にも縛りがあり、第16条の5第3項は第4条第2項から第4項までの規定を準用しています。
その中身は市町村長の定める証票を携帯し請求があるときは示すこと、業務をみだりに妨害しないこと、知り得た秘密をみだりに他に漏らさないことです。
つまり止められた側も相手の証票を見せてもらうよう求めることができます。

こちらから証票を見せてくださいと言ってもよいのですね。
運転手には伝えていませんでした。

準用されているので同じように求めてかまいません。
乗務前の点呼で伝えておくと確実です。

従わなかったときの罰則はどこで分かれるのか

倉庫の建物の横にタンクをつないでいない運転台だけの車両があり赤い禁止のマークと空白の掲示板が並んでいる
同じ移送の場面でも、なにを外したかによって条も刑も変わります。
罰則の条文を並べると違いがはっきりします。
消防法第43条第1項 次のいずれかに該当する者は、3月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。(略)三 第十六条の二第一項の規定に違反した者
消防法第44条 次のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金又は拘留に処する。(略)六 第十六条の二第三項の規定に違反した者 (略)七 第十六条の五第二項の規定による消防吏員又は警察官の停止に従わず、又は提示の要求を拒んだ者
重いのは取扱者を乗せずに移送した場合です
停止に従わなかったり提示の要求を拒んだ場合は第44条第7号にあたり、30万円以下の罰金又は拘留になります。
免状を携帯していなかった場合は同じ第44条の第6号で、こちらも30万円以下の罰金又は拘留です。
これに対して取扱者を乗車させずに移送した場合は第43条第1項第3号にあたり、3月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金と拘禁刑まで用意されています。
さらに第45条第3号が第43条第1項を挙げているので、法人にも各本条の罰金刑が科されます。

乗せていなかったときだけ会社にも罰金が来るのですか。

第45条第3号が挙げているのは第43条第1項までです。
配車の管理そのものが問われる形になっています。

出発前になにを確かめておけばよいのか

車庫に半分入ったタンクローリーと書類ばさみを持つ作業服の人と小さなカードが載った低い戸棚
止められてから慌てないためにできることは決まっています。
移送の基準は政令にまとめて書かれています。
危険物の規制に関する政令第30条の2(移送の基準・抜粋) 一 危険物の移送をする者は、移送の開始前に、移動貯蔵タンクの底弁その他の弁、マンホール及び注入口のふた、消火器等の点検を十分に行なうこと。二 (略)総務省令で定める長時間にわたるおそれがある移送であるときは、二人以上の運転要員を確保すること。(略)三 (略)一時停止させるときは、安全な場所を選ぶこと。四 (略)災害が発生するおそれのある場合には、災害を防止するため応急措置を講ずるとともに、もよりの消防機関その他の関係機関に通報すること。
確かめる順番は免状から始めます
まず運ぶ品目に対応した免状の類を持つ人が乗るかを配車表で確認し、免状そのものを携帯させます。
次に政令第30条の2が並べる5つの基準のうち、出発前の点検を実際に済ませてから出します。
長時間になる移送では2人以上の運転要員が要るので、危険物の規制に関する規則第47条の2が定める連続運転時間4時間超または1日9時間超に当たらないかを行程で見ておきます。
アルキルアルミニウムなど総務省令で定める危険物を運ぶ場合は、移送の経路等を記載した書面を関係消防機関に送付し写しを携帯することが同条第5号で求められています。

免状と出発前の点検と行程の確認を先に済ませればよいのですね。

その順番で点呼の様式に入れておくと抜けません。
運転要員の判断だけは行程表がないとできないので先に作ってください。

よくある質問

Q走行中に止められたら断ることはできますか?
A第44条第7号が停止に従わず、又は提示の要求を拒んだ者を30万円以下の罰金又は拘留と定めているため、断ってよいものとしては書かれていません。
Q積んでいる危険物を降ろすよう求められることはありますか?
A第16条の5第2項が定めているのは停止させることと免状の提示を求めることだけです。同条第1項の資料の提出や収去は主語が市町村長等で、走行中の車両を止める場面の定めとは別に置かれています。
Q免状の写しをコピーして車に置いておけば足りますか?
A第16条の2第3項は危険物取扱者が危険物取扱者免状を携帯していなければならないと書いています。写しでよいとは書かれていないので、免状そのものを持たせるのが条文に沿った運用です。
Q止めた相手の身分はこちらから確かめてよいのですか?
A第16条の5第3項が第4条第2項から第4項までを準用しており、その第2項は請求があるときは証票を示すことを定めています。求めること自体は条文に沿った行いです。

まとめ

消防法第16条の5第2項は走行中の移動タンク貯蔵所を停止させることを認めています
止めることができるのは消防吏員警察官で互いに密接な連絡をとることとされています
求められるのは危険物取扱者免状の提示で相手は乗車している危険物取扱者です
第16条の2第1項は当該危険物を取り扱うことができる危険物取扱者を乗車させることを求めています
停止に従わない場合と免状の不携帯は第44条で30万円以下の罰金又は拘留です
取扱者を乗せずに移送した場合は第43条第1項第3号により拘禁刑まで用意され法人にも罰金刑が科されます
出発前の点検と運転要員の確保は危険物の規制に関する政令第30条の2が定めています

止められること自体は条文どおりだと分かって安心しました。
点呼の様式に免状の確認を足しておきます。

移送の基準まで社内の手順に落とし込んでおくと安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第16条の2
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第16条の5
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第43条・第44条・第45条
  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第30条の2
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第47条の2
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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