隣の建物と災害のときに助け合う話が、管理組合の会合で出ることがあります。
けれども消防計画にどう書けばよいのかまでは、条文を追っても出てきません。
自衛消防組織を置けという定めが、そもそも建物ごとに書かれているからです。
この記事では隣の建物との連携がどこまで法令の話でどこからが計画の話なのかを整理します。
敷地の並びにある別棟から、災害のときは応援に来てほしいと言われました。
受けてよいものでしょうか。
禁じる定めはありません。
ただし法令が求めているのは自分の建物までなので、越える部分は計画で決めることになります。
計画で決めると言われても、なにを書けばよいのか見当がつきません。
手がかりは消防庁のガイドラインにあります。
実際に連携している建物の例と、揃えている業務の範囲まで示されています。
- 自衛消防組織は当該防火対象物に置くものとして条文に書かれています
- 隣の建物との連携は法令が義務づけているものではありません
- ガイドラインは義務対象と義務対象外の建物が連携している事例を挙げています
- 揃えやすい業務として避難誘導と応急救護が示されています
- 統括防災管理者の指示は同じ建物の中の防災管理者にしか届きません
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目次
自衛消防組織が動くのは自分の建物までなのか

条文はひとことで場所を限っています。
同法第36条第7項 第1項の建築物その他の工作物に第8条の2の5第1項の自衛消防組織が置かれている場合には、当該自衛消防組織は、火災その他の災害の被害の軽減のために必要な業務を行うものとする。
複数の建物をまとめて一つの組織にせよとも、隣へ応援に行けとも書かれていません。
防災管理の側も同じで、防災管理者の責務を定める令第48条第2項は当該防災管理対象物についてと範囲を切っています。
つまり消防法令が求めている線は自分の建物の外周までで、そこから先は義務の話ではありません。
だからこそ、隣と組むなら誰かが決めて書かないと形になりません。
義務でないなら、やらなくてもよいということでしょうか。
やらなくても違反にはなりません。
ただ在館者は建物の境目を知らないので、そこに穴が残ります。
どの建物どうしで連携体制を組めるのか

自衛消防組織と防災管理の義務は、規模でくっきり分かれています。
一 (略)イ 地階を除く階数が十一以上の防火対象物で、延べ面積が一万平方メートル以上のもの ロ 地階を除く階数が五以上十以下の防火対象物で、延べ面積が二万平方メートル以上のもの ハ 地階を除く階数が四以下の防火対象物で、延べ面積が五万平方メートル以上のもの
同令第46条 法第36条第1項の政令で定める建築物その他の工作物は、第4条の2の4の防火対象物とする。
11階以上なら延べ面積が1万平方メートル以上、5階以上10階以下なら2万平方メートル以上、4階以下なら5万平方メートル以上という規模要件です。
この線を下回る建物には自衛消防組織も防災管理者も要りません。
ガイドラインが実態調査で見つけたのは、まさにこの義務対象外の建物と義務対象の建物とが手を組んでいる例でした。
管理権原者が同じ複数棟が協議会を作り、一体の体制にしている例も紹介されています。
相手の建物には防災管理者も自衛消防組織もありません。
それでも組めるのですか。
むしろその形が挙げられています。
足りない側を、置いている側が支えるという組み方です。
連携の対象にする業務はどこまでか

全部を揃えようとすると重くなるので、ガイドラインは範囲を絞っています。
イ 自衛消防の組織に関すること。
ガイドラインは応急対応を、災害の発生から被害がそれ以上広がらなくなる時点までと区切ったうえで、火災の発見と通報、初期消火、避難誘導、応急救護を並べています。
そのうえで、時間を要する場合に自衛消防要員の応援が有効になるものとして避難誘導と応急救護を挙げています。
逆に言えば、発見と通報や初期消火は自分の建物で完結させる前提のままです。
連携の欄をいきなり広く書かず、この二つから始めるのが実際的です。
初期消火まで応援に行くつもりで話が進んでいました。
自分の建物が手薄になるので勧めにくいです。
まず避難誘導と応急救護に絞って書いてみてください。
隣の建物の要員に指揮命令はできるのか

統括防災管理者を立てれば全部まとめられる、と考えると外れます。
条文が言っているのは当該防火対象物の部分ごとに定めた防災管理者であって、別の防火対象物の人ではありません。
ですから隣の建物の要員に指揮命令をする関係は、統括防災管理者を置いても作れません。
ガイドラインも、指揮命令によるのではなく支援という形で活動している例を紹介しています。
消防計画には命じるとは書かず、どんな支援をどの範囲で行うかを書くほうが実態に合います。
現場で指示が通らないと、かえって混乱しませんか。
だから支援の中身を先に決めておきます。
その場の指示に頼らずに済むよう、行き先と合図を紙に落としてください。
連携体制を組むなら明日からなにをすればよいのか

連携を書き足すと消防計画が変わるので、届出の扱いが付いてきます。
まず自分の建物の消防計画を開き、自衛消防の組織の欄がどこで終わっているかを確かめてください。
次に相手の建物と、避難誘導と応急救護のどちらを揃えるか、誰が何人どこへ向かうかを決めます。
決まった内容を支援の形で計画に書き、あわせて相手側の計画にも同じ内容が載るように突き合わせます。
ガイドラインは管轄の消防本部が計画の内容や組織の体制を確認し助言している例を挙げているので、書く前に所轄消防署へ相談しておくと手戻りが減ります。
相手の建物には消防計画そのものがありません。
片側だけ書く形でよいのでしょうか。
義務がない側には計画がなくて当然です。
覚書のような別の紙に残しておけば、担当が代わっても消えません。
よくある質問
まとめ
義務の線と計画の線が分かれて見えてきました。
まずは避難誘導だけ相手と話してみます。
そこが決まれば支援の形は書けます。
消防計画の書き方でお困りでしたら㈱防災屋でもご相談を承っております。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条の2第2項・第8条の2の5第1項・第36条第1項・第7項
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第4条の2の4・第46条・第48条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第51条の8第1項
- 総務省消防庁「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年)別冊5
- e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





