消防計画を作って消防署へ届け出れば、建物の備えはひととおり整ったように見えます。
ところが建物の所在地が地震防災対策強化地域に入っていると、消防署とは別の相手へ出す計画がもう一つ立ち上がります。
相手は都道府県知事で、根拠は消防法ではなく大規模地震対策特別措置法です。
この記事では地震防災応急計画と消防計画の関係を条文から解説します。
うちの旅館は強化地域に入っていると言われました。
消防計画のほかにも出す書類があるのでしょうか。
地震防災応急計画という別の計画があります。
出す先も消防署ではありません。
計画を二冊も作るということですか。
消防計画に書いてあれば一冊で足ります。
ただし写しの送付だけは残ります。
- 強化地域内の病院や百貨店や旅館などは地震防災応急計画を作らなければなりません。(大規模地震対策特別措置法第7条第1項)
- 対象になる施設と事業は政令で号を分けて列挙されています。(同法施行令第4条)
- 作ったら都道府県知事へ届け出て市町村長へ写しを送ります。(同法第7条第6項)
- 消防計画に同じ事項を定めれば地震防災規程として計画とみなされます。(同法第8条第1項)
- みなされた場合でも市町村長への写しの送付は残ります。(同法第8条第2項)
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目次
地震防災応急計画とはどんな計画なのか

これから見る計画は根拠となる法律そのものが違います。
一 病院、劇場、百貨店、旅館その他不特定かつ多数の者が出入する施設
二 石油類、火薬類、高圧ガスその他政令で定めるものの製造、貯蔵、処理又は取扱いを行う施設(略)
この法律でいう地震防災応急対策は、警戒宣言が発せられた時から地震が発生するまで、又は発生するおそれがなくなるまでの間に実施すべき応急の対策と定義されています(同法第2条第14号)。
つまり地震が起きたあとではなく、警戒宣言が出てから揺れるまでの時間に何をするかを決めておく計画です。
強化地域そのものは、大規模な地震が発生するおそれが特に大きいと認められる地域として内閣総理大臣が指定します(同法第3条第1項)。
消防計画が火災を軸に日々の管理まで含むのに対し、こちらは指定された地域と限られた時間帯に的を絞っています。
まずは自分の建物の所在地が強化地域に入っているかどうかを、都道府県の防災担当が公表している区域の資料で確かめてください。
揺れる前の時間だけを切り出した計画なのですね。
そのぶん求められる中身も絞られています。
次は誰が作るのかを見ましょう。
どの施設や事業が作らなければならないのか

実際の線引きは政令の列挙が受け持っています。
一 消防法施行令第1条の2第3項第一号に掲げる防火対象物(略)及び同表(16の3)項に掲げる防火対象物で不特定かつ多数の者が出入りするもの
二 消防法第8条第1項に規定する複合用途防火対象物のうち、その一部が(略)不特定かつ多数の者が出入りするものに限る。)の用途に供されているもので、当該用途に供されている部分の収容人員(略)の合計が30人以上のもの(略)
第一号が指している消防法施行令第1条の2第3項第一号は甲種防火管理者を置かなければならない防火対象物なので、多くの建物では防火管理の区分がそのまま手がかりになります。
第二号は複合用途防火対象物についての規定で、不特定多数が出入りする用途に使われている部分の収容人員の合計が30人以上かどうかで分かれます。
政令第4条はこのほかにも危険物の製造所と貯蔵所と取扱所、学校、社会福祉施設、鉄道事業やガス事業などを号を分けて並べています。
先に建物があって後から地域が指定された場合は、指定があった日から6月以内に作ることとされています(同法第7条第2項)。
自分の建物がどの号に当たるのかを、防火管理の書類と一緒に一度整理しておいてください。
甲種かどうかがそのまま目印になるのですね。
ただし除かれる用途もあるので条文で確かめてください。
次は中身と出し先です。
計画にはなにを定めてどこへ出すのか

出し先は消防署ではないので、届出の道筋も別に押さえておく必要があります。
同条第6項 第1項又は第2項に規定する者は、地震防災応急計画を作成したときは、政令で定めるところにより、遅滞なく当該地震防災応急計画を都道府県知事に届け出るとともに、その写しを市町村長に送付しなければならない。これを変更したときも、同様とする。
第4項がいう政令で定める事項は、その施設や事業についての大規模な地震に係る防災訓練並びに地震防災上必要な教育及び広報に関する事項です(同法施行令第6条)。
つまり応急対策そのものに加えて、訓練と教育と広報が計画に載ることになります。
届出は都道府県知事に対して行い、同じものの写しを市町村長へ送るという二段構えです。
届出と写しの送付には図面その他の必要な書類を添えることとされており、写しを受けた市町村長はあらかじめ必要な限度で知事や警察や海上保安の機関へさらに送ることになっています(同法施行令第7条)。
施設の拡大や事業の内容の変更で計画を直す必要が生じたときは遅滞なく変更し(同法第7条第3項)、そのつど同じ届出をしてください。
つまり知事に届け出て市町村にも写しを回すのですね。
そのとおりです。
次はいちばん間違えやすいところを見ます。
消防計画に書いていれば別に作らなくてよいのか

法律はその重複を正面から解いています。
一 消防法第8条第1項若しくは第8条の2第1項(略)に規定する消防計画又は同法第14条の2第1項に規定する予防規程(略)
同条第2項 地震防災規程を作成した者は、前条第6項の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、その地震防災規程の写しを市町村長に送付しなければならない。
消防計画に第7条第4項の事項まで書き込めば、その部分が地震防災規程となり、地震防災応急計画とみなされます。
見落としやすいのは第2項で、みなされた場合は知事への届出こそ要らなくなる一方、市町村長への写しの送付は残るという書き分けになっています。
消防計画を消防署へ届け出たから手続は終わったと考えると、この送付だけが抜け落ちます。
第8条第1項が列挙しているのは消防計画と予防規程だけではなく、火薬類取締法の危害予防規程やガス事業法と電気事業法の保安規程なども並んでおり、施設の性格によってどれで受けるかが変わります。
なお強化地域内の防火対象物では消防法施行規則第3条第4項により消防計画へ追加すべき事項も定められているので、そちらと合わせて一度に整えるのが実務的です。
消防署に出しただけで終わったつもりでいました。
そこが最も多い抜けです。
市役所か町村役場の防災担当に写しを届けてください。
明日からなにを確認すればよいのか

その代わりに別の重さが用意されています。
同条第8項 都道府県知事は、前項の勧告を受けた者が同項の期間内に届出をしないときは、その旨を公表することができる。
届出をしないままだと知事から期間を定めた勧告を受け、それでも出さなければその旨を公表されることがあります。
不特定かつ多数の者が出入りする施設にとって、名前が出ることの影響は小さくありません。
明日からの確認は三つです。
一つめは所在地が強化地域かどうかを都道府県の公表資料で確かめること、二つめは自分の施設が同法施行令第4条のどの号に当たるかを整理すること、三つめは消防計画に応急対策と訓練と教育と広報の事項が書かれているかを開いて見ることです。
書かれていれば計画は一冊で足りますが、市町村長への写しの送付が済んでいるかどうかを必ず控えで確かめてください。
まず消防計画を開いて訓練と教育の記載を探してみます。
そこが出発点です。
足りない事項は計画の改定のときにまとめて足しましょう。
よくある質問
まとめ
消防計画と写しの控えを並べて点検してみます。
その二つが揃っていれば手続は通っています。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 大規模地震対策特別措置法(昭和53年法律第73号)第2条・第3条・第7条・第8条
- 大規模地震対策特別措置法施行令(昭和53年政令第385号)第4条・第6条・第7条
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条第1項・第14条の2第1項
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第1条の2第3項
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第4項
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





