改修や設備更新の日に、塗料や燃料をまとめて現場へ運び込むことがあります。
置き場所は倉庫でもタンクでもなく、建物の脇の空きスペースということも珍しくありません。
ところが量が増えると、その置き方は消防法第10条に正面からぶつかります。
この記事では10日以内だけ認められる仮貯蔵と仮取扱いの承認を条文から解説します。
工事の間だけドラム缶を建物の裏に置きたいと言われました。
量が指定数量以上なら、置くだけで消防法に触れます。
ただし逃げ道が一つあります。
倉庫を借りるしかないということでしょうか。
所轄の消防署に承認を受ければ短い期間は置けます。
順に見ていきましょう。
- 指定数量以上の危険物は貯蔵所以外の場所に置けません。(消防法第10条第1項本文)
- 例外は所轄消防長又は消防署長の承認を受けた場合だけです。(同項ただし書)
- 承認を受けても置けるのは10日以内の期間に限られます。(同項ただし書)
- 申請は別記様式第一の二の申請書で行います。(危険物の規制に関する規則第1条の6)
- 承認を受けずに置くと措置命令と罰則の対象になります。(消防法第16条の6・第41条第1項第3号)
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目次
仮貯蔵と仮取扱いとはどういう扱いなのか

その線を超えた瞬間に、置き場所そのものが規制の対象になります。
本文が禁じているのは、貯蔵所以外の場所での貯蔵と、製造所と貯蔵所と取扱所以外の場所での取扱いです。
ここでいう指定数量は、危険物の規制に関する政令別表第三で品名ごとに定められた量を指します。
そのうえで、ただし書だけが例外を開いています。
所轄消防長又は消防署長の承認を受けたときに限り、10日以内の期間だけ仮に貯蔵し、又は取り扱うことができるという書き方です。
この二つを条文の用語で仮貯蔵と仮取扱いと呼んでいるので、まずは運び込む量が指定数量以上かどうかを数えてください。
置き場所ではなく量が入口なのですね。
量が指定数量に届かなければ、この条文は働きません。
次はその数え方を見ましょう。
どんなときに承認が必要になるのか

同じ場所に置く危険物は、まとめて数えることになっています。
品名や指定数量の違う危険物を同じ場所に置くときは、それぞれの数量をその危険物の指定数量で割り、商を足します。
その和が一以上になれば、その場所は指定数量以上を貯蔵し、又は取り扱っているものとみなされます。
塗料と燃料と洗浄剤を別々の業者が持ち込むような現場では、それぞれが単独では届かなくても合計で超えることがあります。
また、ただし書が認めているのは10日以内の期間なので、それより長く置くのであればこの承認は使えません。
搬入予定の品名と数量を一覧にして、倍数を先に出しておくのが確実です。
業者ごとに分かれていても同じ場所なら合算なのですか。
条文は同一の場所という書き方をしています。
次は承認をどう受けるかです。
承認の申請ではなにを伝えるのか

中身は消防庁が示している申請書の様式が教えてくれます。
規則が定めているのは、様式の申請書を所轄消防長又は消防署長へ出すことだけです。
総務省消防庁が公表している申請書の例には、危険物の所有者と管理者又は占有者、仮貯蔵と仮取扱いの場所の所在地及び名称、危険物の類と品名及び最大数量、指定数量の倍数を書く欄が並んでいます。
さらに仮貯蔵と仮取扱いの方法、期間、管理の状況、現場管理責任者とその緊急連絡先、理由及び期間経過後の処理を書く欄が続きます。
備考には、案内図と配置図と平面図と構造図その他関係書類を添付することと書かれています。
書く欄から逆算すると、置く場所を決める前に責任者と片づけ方まで決めておく必要があるということです。
期間が終わった後の処理まで先に書くのですね。
欄が用意されている以上、当日決めでは通りません。
次は取りこぼしやすい点を見ましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

承認が無い状態には、命令と罰則の両方が用意されています。
第16条の6は、承認も許可も受けずに指定数量以上を置いている者に対する措置命令を定めた規定です。
危険物の除去まで命じられるので、工期の途中で搬出をやり直すことになります。
さらに消防法第41条第1項第3号は、第10条第1項の規定に違反した者を1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処すると定めています。
もう一つ間違えやすいのが窓口で、承認を出すのは所轄消防長又は消防署長であり、施設の設置許可を出す市町村長等ではありません。
期間の延長を当て込んだ計画も立てられないので、10日で終わらない工事なら別の置き方を先に考えてください。
許可の窓口と同じだと思い込んでいました。
条文はただし書で消防長と消防署長を名指ししています。
最後に手元で確かめる順番をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

量を数えるところから始めれば手戻りが減ります。
- 現場へ運び込む危険物の品名と数量を業者ごとに書き出す(消防法第10条第2項)
- それぞれを指定数量で割った商を足し、和が一以上になるかを確かめる(同項)
- 置く期間が10日以内に収まるかを工程表で確かめる(同条第1項ただし書)
- 現場を管轄する消防署へ、置き場所の配置図を持って相談する(危険物の規制に関する規則第1条の6)
- 現場管理責任者と緊急連絡先を決めてから申請書を書く(同条)
- 期間が終わった後にどこへ戻すかを決め、承認を受けてから搬入する(消防法第16条の6)
条文は承認を受けて仮に貯蔵し、又は取り扱う場合と書いているので、置いてから申請するのでは順番が逆になります。
和が一に届かない場合でも、指定数量未満の危険物の技術上の基準は消防法第9条の4により市町村条例で定められています。
数量が少ないから何も要らないということにはならないので、条例の側も併せて確かめてください。
迷ったら、品名と数量と期間と配置図を持って所轄消防署に相談するのがいちばん早いです。
搬入日の前に一度相談しておけばよいのですね。
配置図があると話が早く進みます。
置いてからでは直せる幅が狭くなります。
よくある質問
まとめ
搬入予定表を作って消防署に相談してきます。
その一手間で工期の組み直しを防げます。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第9条の4・第10条・第16条の6・第41条第1項第3号
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)別表第三
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第1条の6
- 総務省消防庁「危険物仮貯蔵仮取扱い承認申請書(例)」
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





