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南海トラフ地震の推進地域に指定されたら消防計画はどう変わるか|追加する3つの事項と6か月の期限を解説

南海トラフの推進地域なら消防計画は変わることを解説するアイキャッチ画像

南海トラフ地震防災対策推進地域という言葉を、消防署や自治体の掲示で見かけたことはないでしょうか。
指定された地域の中にある建物は、実は消防計画に追加で定めなければならない事項があります。
新築のときだけの話ではなく、指定された時点で既にある建物にも期限付きで対応が求められます。
この記事では、対象になる建物の条件と、消防計画に書き加える3つの事項を整理します。

うちのホテルの近くで「南海トラフ地震防災対策推進地域」という看板を見かけたんですが、消防計画に関係あるんでしょうか。

関係あります。
指定地域の中にある建物だと、消防計画に追加で定める事項が出てきます。

うちは何年も消防計画を見直していないんですが、大丈夫でしょうか。

今日はその追加事項と、既存の建物にある猶予期間を一緒に確認しましょう。

この記事の結論
  • 南海トラフ地震防災対策推進地域は内閣総理大臣が指定する地域です
  • 指定地域内の一部の防火対象物は消防計画に追加の事項を定める義務があります
  • 追加事項は津波からの避難確保・防災訓練の実施・教育及び広報の3つです
  • 指定の際に既にある建物は指定日から6か月以内に対応すればよいとされています
  • 自分の建物が対象かどうかは所轄消防署に確認できます

推進地域の建物が消防計画に追加する3つの事項の図解

南海トラフ地震防災対策推進地域とはどんな地域なのか

南海トラフ地震防災対策推進地域に指定された沿岸の建物
沿岸部の建物には「推進地域」という指定がかかっていることがあります。
この指定は、津波の被害を想定した地震防災対策を進めるための仕組みです。
(南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法第3条第1項)内閣総理大臣は、南海トラフ地震が発生した場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、地震防災対策を推進する必要がある地域を、南海トラフ地震防災対策推進地域として指定するものとする。(同条第3項・第4項 略)指定に当たっては、あらかじめ中央防災会議に諮問し、関係都府県の意見を聴くものとされている。
推進地域の指定は建物ごとではなく地域単位で行われます。
指定するのは内閣総理大臣で、都道府県ごとではなく地域全体を面で指定します。
指定された地域の中に自分の建物があるかどうかで、この記事の話が関係してくるかが決まります。
似た仕組みは東海地震を想定した大規模地震対策特別措置法の「強化地域」、三陸沖などを想定した日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震特別措置法の「推進地域」にもありますが、この記事では南海トラフ地震のものに絞って解説します。
まずは自分の建物が指定地域の中にあるかどうかを押さえておきましょう。

推進地域というのは、南海トラフ地震で津波の被害が想定される地域ということですか。

はい。
内閣総理大臣が指定する地域で、指定されると建物ごとに消防計画への追加義務が生まれます。

どの防火対象物が追加の対象になるのか

学校と老人福祉施設と多数の従業員がいる工場が並ぶ様子
推進地域の中にあれば何でも対象になるわけではありません。
政令で対象になる施設の種類が具体的に決められています。
(南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法施行令第3条 抜粋)消防法施行令別表第一に掲げる防火対象物で不特定かつ多数の者が出入りするもの(一号)/複合用途防火対象物のうちその一部が同様の用途に供され収容人員の合計が30人以上のもの(二号)/学校教育法第1条に規定する学校等(十三号)/児童福祉施設・老人福祉施設・障害者支援施設等の社会福祉施設(十四号)/前各号以外の工場等で従業員の数が1,000人以上のもの(二十四号)
対象は不特定多数が出入りする建物と学校・福祉施設・大規模な事業場に絞られています。
消防法施行規則第3条第6項が引いているのは、この施行令第3条の中の一号・二号・十三号・十四号・二十四号だけです。
旅館やホテル、百貨店のような不特定多数が出入りする用途は一号に当たります。
複合用途の建物では、該当する用途に使われている部分の収容人員を合計して30人以上かどうかで判断します。
自分の建物がどの号に当たりそうか、まずは用途と規模で当てはめてみましょう。

うちは宿泊施設なので、不特定多数の人が出入りする建物にあたりそうですね。

その通りです。
学校や老人福祉施設、従業員1,000人以上の事業場なども対象に入ります。

消防計画に何を追加で定めればよいのか

津波避難と防災訓練と教育広報の3つの項目が並んだ消防計画の書類
対象になる建物では、既存の消防計画にそのまま3項目を追記します。
新しく計画を作り直す必要はなく、書き加える形で構いません。
(消防法施行規則第3条第6項 柱書・各号)南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法施行令第3条(略)に規定する施設(略)の防火管理者は、第1項の消防計画に次に掲げる事項を定めなければならない。
一 南海トラフ地震に伴い発生する津波からの円滑な避難の確保に関すること。
二 南海トラフ地震に係る防災訓練の実施に関すること。
三 南海トラフ地震による被害の発生の防止又は軽減を図るために必要な教育及び広報に関すること。
追加するのは津波避難・防災訓練・教育広報の3項目です。
消火訓練や避難訓練は既に消防計画に書かれていますが、それとは別枠で津波を想定した訓練を定める必要があります。
教育及び広報は、従業員だけでなく利用者や近隣への周知も含めて考えるとよいでしょう。
3項目とも、既存の防火管理体制に乗せて運用できる内容です。
まずはこの3つを、今の消防計画のどこに書き加えるかを考えてみましょう。

つまり、津波からの避難と、防災訓練と、教育・広報の3つを新しく書き加えるということですね。

そうです。
既存の消火訓練や避難訓練とは別に、津波を想定した内容にする必要があります。

既にある建物はいつまでに対応すればよいのか

6か月のカウントダウンを示すカレンダーと消防計画を更新する防火管理者
指定は建物が新しくできたときだけ起こるわけではありません。
ある日、地域全体が指定されて、既存の建物が一気に対象になることもあります。
(消防法施行規則第3条第7項)推進地域の指定の際現に当該地域に所在する前項の施設の防火管理者は、当該指定があつた日から六月以内に、第1項の消防計画に前項各号に掲げる事項を定めるものとする。
既存の建物には指定日から6か月の猶予期間があります。
新築の建物は届出の時点から対応しますが、既存の建物は指定された日が起点になる点が見落としやすいポイントです。
「うちは前からある建物だから関係ない」と考えてしまうと、この6か月をそのまま過ごしてしまいます。
指定のニュースを見た時点で、まず自分の建物が対象かどうかを確認する習慣をつけておくと安心です。
6か月はそれほど長くないので、早めに動き出すほうがよいでしょう。

うちの建物は指定される前からあるんですが、今すぐ書き直さないといけないんでしょうか。

指定の際に既にある建物は、指定日から6か月以内に定めればよいとされています。

明日から何を確認すればよいのか

電話で消防署に確認する防火管理者と地図を見る様子
ここまでの内容を、実際の行動に落とし込んでおきましょう。
難しい手続きではなく、確認と追記が中心です。
所轄消防署に自分の建物が南海トラフ地震防災対策推進地域の中にあるかを確認する 対象地域内であれば、施行令第3条の一号・二号・十三号・十四号・二十四号のどれに当たるかを確認する 当てはまる場合は消防計画に津波避難・防災訓練・教育広報の3項目を追記する 既存の建物は指定日から6か月以内に消防計画への追記を終える 変更後の消防計画は所轄消防長又は消防署長への届出が必要になる場合があるので併せて確認する
変更した消防計画は、書き直して終わりではなく届出までが一連の作業です。 所轄消防署への確認から始めれば、対象かどうかも追記の書き方も含めて具体的に教えてもらえます。
自分だけで判断がつかない場合は、遠慮せず相談することをお勧めします。

まずは自分の建物が推進地域に入っているかどうかを確認するところからですね。

はい。
所轄消防署に聞けばすぐわかります。
わかったら消防計画の追記を一緒に進めましょう。

よくある質問

Q南海トラフ地震防災対策推進地域は誰が指定するのか?
Aあらかじめ中央防災会議に諮問し、関係都府県の意見を聴いたうえで、内閣総理大臣が指定します(南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法第3条)。
Q自分の建物が推進地域に入っているかはどこで確認できるのか?
A所轄消防署に確認するのが確実です。都道府県や市町村の公表資料でも指定地域が示されています。
Q東海地震の強化地域とはどう違うのか?
A強化地域は大規模地震対策特別措置法に基づく別の制度で、警戒宣言の伝達など項目数も異なります(消防法施行規則第3条第4項)。この記事で扱ったのは南海トラフ地震の推進地域(同条第6項)です。
Q追加事項を定めなかった場合はどうなるのか?
A消防計画に従った業務が行われていないとして、消防法第8条第4項の命令の対象になり得ます。早めに所轄消防署へ相談することをお勧めします。

まとめ

南海トラフ地震防災対策推進地域は、南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法第3条に基づき内閣総理大臣が指定する
対象は不特定多数が出入りする防火対象物や複合用途防火対象物の一部(収容人員30人以上)など
学校や老人福祉施設等の社会福祉施設、従業員1,000人以上の事業場も対象になり得る
消防計画に追加するのは津波からの避難確保・防災訓練の実施・教育及び広報の3項目
指定の際に既にある建物は、指定日から6か月以内に消防計画へ反映すればよい
追加事項を怠ると、消防法第8条第4項の命令の対象になり得る
対象かどうかや記載方法に迷ったら、所轄消防署に確認するのが確実である

モヤモヤしていた推進地域の話がやっとつながりました。
うちの消防計画も見直してみます。

それが一番大事です。
消防計画の見直しは、㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • 消防法施行規則第3条第6項・第7項
  • 消防法第8条第4項
  • 南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法第3条
  • 南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法施行令第3条

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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