展示会の飾りつけや舞台の照明は、会期に合わせて短い期間だけ組まれます。
仮設だから電気の決まりまでは関係ないと思われがちです。
ところが火災予防条例には舞台装置等の電気設備という条文があり、位置と構造の基準がはっきり書かれています。
この記事では展示装飾の電灯がどこまで自由に付けてよいのかを条文から解説します。
催しの飾りつけの電気まで決まりがあるとは思いませんでした。
短い期間だからこそ条文が置かれています。
火災予防条例が位置と構造を押さえています。
届出を出していないので対象外かと考えていました。
届出の対象かどうかと基準がかかるかどうかは別の話です。
まずはどこまでがこの条文の守備範囲かを見ましょう。
この記事の結論
- 舞台装置等の電気設備は舞台と展示装飾と一時的な工事用の3つをまとめた呼び名です。(火災予防条例(例)第15条第1項)
- 展示装飾の電灯は可燃物を過熱するおそれのない位置に設けます。(同条第1項第1号イ)
- 一の電線を二以上の分岐回路に使ってはいけません。(同条第1項第1号ホ)
- 工事用の残置灯の電路には専用の開閉器と自動遮断の措置が要ります。(同条第1項第2号ロ)
- 管理の基準は変電設備の条文を借りてきています。(同条第2項)
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目次
舞台装置等の電気設備とはどこまでを指すのか

自分の現場が入るかどうかは、この柱書きだけで判断できます。
火災予防条例(例)第15条第1項(抜粋) 舞台装置若しくは展示装飾のために使用する電気設備又は工事、農事等のために一時的に使用する電気設備(以下「舞台装置等の電気設備」という。)の位置及び構造は、次に掲げる基準によらなければならない。
劇場やホールの舞台照明はもちろん、物品販売店の売場に組む展示装飾や、展示会のブースに付ける照明もここに入ります。
そしてもう一つの入口が一時的に使用する電気設備で、工事現場や農作業のために仮に引く電気がこれにあたります。
どちらも据え付けたまま何年も使う設備ではなく、期間が来れば外すものばかりですが、条文はその短さを理由に基準を外していません。
自分の建物で催しの飾りつけをする予定があるなら、この条文が自分あてのものだと考えて先を読んでください。
売場の飾りつけの照明もこの条文の話なのですね。
展示装飾と書いてあるのでそのとおりです。
次は具体的に何を守るのかを見ます。
展示装飾の電灯にはどんな決まりがあるのか

どこに置き、どう留め、どう配線したかの三点です。
火災予防条例(例)第15条第1項第1号(抜粋) 舞台装置又は展示装飾のために使用する電気設備は、次によること。 イ 電灯は、可燃物を過熱するおそれのない位置に設けること。 ロ 電灯の充電部分は、露出させないこと。 ハ 電灯又は配線は、著しく動揺し、又は脱落しないように取り付けること。 ニ アークを発生する設備は、不燃材料で造ること。 ホ 一の電線を二以上の分岐回路に使用しないこと。
イは電灯と燃えるものの距離の話で、布の垂れ幕やパネルや段ボールのすぐ横に照明を寄せる飾りつけがまさにこれに触れます。
ロの充電部分とは電気が通っている端子や電線の芯のことで、むき出しの状態で使ってはいけないという意味です。
ハは仮設ならではの項目で、来場者が触れたり風が当たったりして動揺する付け方や、外れて落ちる付け方を禁じています。
そしてホが一本の電線から二系統以上の分岐回路を取ってはいけないという定めです。
延長コードを次々につないで一本の線から会場中の照明をまかなうやり方は、この号にまっすぐ当たると考えて配線図を先に描いてください。
つまり一本の線から枝分かれさせるのが駄目なのですね。
条文がそう書いています。
回路の数だけ電線を用意するのが筋です。
工事のために一時的に使う電気設備はなにが違うのか

屋外に置かれることが前提なので、守る中身も変わります。
火災予防条例(例)第15条第1項第2号 工事、農事等のために一時的に使用する電気設備は、次によること。 イ 分電盤、電動機等は、雨雪、土砂等により障害を受けるおそれのない位置に設けること。 ロ 残置灯設備の電路には、専用の開閉器を設け、かつ、ヒューズを設ける等自動遮〔しゃ〕断の措置を講ずること。
イは分電盤や電動機を地べたに直置きしたり、屋根のない場所に裸で置いたりしないという趣旨で、仮囲いの内側でよく見かける置き方が引っかかります。
ロの残置灯とは、作業が終わったあとも夜間などに点けたまま残しておく照明のことです。
人が見ていない時間帯に電気が流れ続ける設備なので、条文は他の回路と兼ねない専用の開閉器を設けたうえで、ヒューズなどで自動的に電気を切れるようにしておくことを求めています。
自分の建物で改装工事を入れるときは、施工業者の仮設電気がこの二つを満たしているかを、着工前の打合せで一度確かめておくと後が楽になります。
夜も点けっぱなしにする照明が名指しされているのですね。
無人の時間に流れる電気だからです。
着工前の打合せで確かめておきましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

ここが短い一文なので読み飛ばされがちです。
火災予防条例(例)第11条第1項(抜粋・第15条第2項により舞台装置等の電気設備に準用) 七 変電設備のある室内は、常に、整理及び清掃に努めるとともに、油ぼろその他の可燃物をみだりに放置しないこと。 八 定格電流の範囲内で使用すること。 九 必要な知識及び技能を有する者として消防長が指定するものに必要に応じ設備の各部分の点検及び絶縁抵抗等の測定試験を行わせ、不良箇所を発見したときは、直ちに補修させるとともに、その結果を記録し、かつ、保存すること。 十 変圧器、コンデンサーその他の機器及び配線は、堅固に床、壁、支柱等に固定すること。
第15条第2項は自前の管理基準を書かず、変電設備の第11条第1項第7号から第10号までを準用すると定めるだけなので、条文を追わないとここに気づけません。
借りてきた四つのうち実務で効くのが定格電流の範囲内で使用することで、飾りつけの照明を足していくうちに配線の許容量を超えるという事故がここに当たります。
もう一つが点検結果を記録して保存することで、仮設だから記録は要らないという整理はできません。
そしてもう一点、舞台装置等の電気設備は設置の届出の対象に挙げられていません。
第44条は届け出るべき設備を号で列挙していますが、そこに並ぶのは炉や厨房設備や変電設備やネオン管灯設備で、舞台装置等の電気設備は入っていないため、届出が無いこと自体は基準がかからない理由にならないと考えてください。
届出がないぶん自分で気づくしかないということですか。
そのとおりです。
だから消防計画の自主検査に入れておくと落ちません。
明日からなにを確認すればよいのか

催しを開くときは、電気とは別にもう一つ手続きが待っています。
火災予防条例(例)第45条(抜粋) 次の各号に掲げる行為をしようとする者は、あらかじめ、その旨を消防長(消防署長)に届け出なければならない。 三 劇場等以外の建築物その他の工作物における演劇、映画その他の催物の開催
まず舞台や売場に組む照明について、可燃物との距離と、揺れたり落ちたりしない留め方と、回路ごとに電線を分けているかの三点を、設営が終わった時点で自分の目で見てください。
次に工事を入れるなら、仮設の分電盤が雨や土砂を受けない位置にあるか、残置灯の電路に専用の開閉器と自動遮断の措置があるかを施工業者に確認します。
そのうえで、劇場やホールとして作られていない建物で演劇や映画などの催しを開くなら、あらかじめ消防長または消防署長へ届け出る必要があります。
条例は市町村ごとに条文の番号も内容も違うので、実際に開く前に所轄消防署へ一度相談しておくと当日に慌てずに済みます。
設営が終わった時点で見に行けばよいのですね。
開場前がいちばん直しやすい時間です。
届出の要否は所轄消防署へ先に聞いておきましょう。
よくある質問
Q舞台装置等の電気設備は消防署へ設置の届出をするのですか?
A火災予防条例(例)第44条は設置の届出が要る設備を号で列挙していますが、そこに舞台装置等の電気設備は挙げられていません。ただし届出が無いことと基準がかからないことは別で、第15条の位置と構造の基準はそのまま適用されます。なお条文の番号も対象も市町村の条例ごとに異なるので、実際の要否は所轄消防署にご確認ください。
Q数日で撤去する飾りつけにも基準は適用されるのですか?
A適用されます。火災予防条例(例)第15条第1項は展示装飾のために使用する電気設備を対象に掲げ、さらに工事や農事等のために一時的に使用する電気設備まで正面から書き込んでいます。設置期間の長短で対象を分ける書き方にはなっていません。
Qこの基準を守らなかったときの罰則はありますか?
A火災予防条例(例)第49条は罰金の対象となる違反を号で限定しており、そこに第15条は含まれていません。もっとも消防法第4条第1項に基づく立入検査では基準に適合しているかを見られるため、指摘を受ければ直すことになります。罰則の有無で判断せず、条文どおりに設営してください。
Q点検の記録はどのくらいの期間保存すればよいのですか?
A第15条第2項が準用する火災予防条例(例)第11条第1項第9号は、点検と測定試験の結果を記録し、かつ、保存することとだけ定めており、条文そのものには保存期間が書かれていません。期間の運用は市町村の条例や指導によるため、所轄消防署にご確認ください。
まとめ
✔舞台装置等の電気設備は舞台と展示装飾と一時的な工事用をまとめた呼び名です。
✔電灯は可燃物を過熱するおそれのない位置に設けます。
✔電灯や配線は著しく動揺したり脱落したりしないように取り付けます。
✔一の電線を二以上の分岐回路に使ってはいけません。
✔工事用の分電盤や電動機は雨雪や土砂の障害を受けない位置に置きます。
✔残置灯設備の電路には専用の開閉器と自動遮断の措置が要ります。
✔管理の基準は変電設備の条文を準用して定格電流と記録を求めます。
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参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第4条第1項・第9条
- 火災予防条例(例)(昭和36年11月22日自消甲予発第73号消防庁長官)第15条(舞台装置等の電気設備)
- 火災予防条例(例)第11条第1項第7号から第10号まで(変電設備の管理の基準)
- 火災予防条例(例)第44条(火を使用する設備等の設置の届出)・第45条第3号(催物の開催の届出)・第49条(罰則)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





