地震で建物が無事でも、棚や什器が倒れれば人は動けなくなります。
防災管理に係る消防計画には、その収容物等の被害を見込んでおく項目があります。
問われるのは倒れることそのものより、倒れたあとに何が起きるかのほうです。
この記事では収容物等の被害をどこまで想定して書くのかを条文と消防庁のガイドラインから整理します。
うちの事務所は背の高い書庫がずらっと並んでいます。
消防計画に何か書くことがあるのでしょうか。
あります。
地震による被害の想定の一つとして、収容物等が挙げられています。
倒れないように金具で留めた書庫もあります。
それなら想定しなくてよいということでしょうか。
留めてあるものは想定から外せます。
ただし外せるのは維持点検のやり方まで書いてあるときです。
- 収容物等の被害を想定する受け皿は消防法施行規則第51条の8第1項第二号イです
- 適切に固定されていないものは転倒し落下し移動するものとして想定します
- 倒れたあとの要救助や救護者の発生と通行障害まで想定の中に入ります
- 被害を想定する項目と転倒防止の措置を定める項目は別の号です
- 措置は責任主体と実施方策と維持点検方策の三つをそろえて書きます
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目次
消防計画でいう収容物等の被害とはなにを指すのか

地震の被害というと建物と設備に目が行きますが、置いてある物も対象です。
省令が想定させているのは、建築物その他の工作物の被害と、そこに存する者等の被害の両方です。
その中身を分解して示しているのが消防庁のガイドラインで、被害の全体像を項目ごとに評価する形になっています。
収容物等被害はその一つで、判断の材料として挙がっているのは固定措置の状況と過去の実例です。
自分の建物のどこに何が置いてあるかを先に一覧にしておくと、この項目は書けるようになります。
備品まで消防計画の話になるとは思っていませんでした。
建物の耐震とは別ということですね。
別です。
建物が無事でも中の物が倒れれば被害になる、という並びで書かれています。
どの物が倒れると想定すればよいのか

条文は物の名前を並べ、ガイドラインは選び方の基準を示しています。
ガイドラインの書き方は、固定してあるものを倒れないと見るのではなく、適切に固定されていないものを倒れると見るという向きです。
つまり「大丈夫だと言える根拠が無い物」は、そのまま想定の対象に入ります。
条文の側が挙げているのは家具とじゅう器のほか、備え付けられた物品という広い言い方で、事務機器や陳列棚も外れません。
まずは固定してある物と、置いてあるだけの物とを線で分けて数えるところから始めてください。
留めていないものを数えれば、それがそのまま想定になるわけですね。
複合機やロッカーも入りそうです。
入ります。
備え付けられた物品という言い方なので、什器かどうかで線を引いていません。
倒れたあとになにが起きると想定するのか

ガイドラインは倒れたことで終わらせず、その先まで想定させています。
物が倒れると、その下敷きになった人を出す要救助と、けがをした人を手当てする救護者の発生が続きます。
省令の応急措置に救出と救護が並んでいるのは、この二つが実際に起こる前提だからです。
もう一つが通行障害で、倒れた物が廊下や階段の前に横たわれば、避難誘導も救出も同じ場所で止まります。
ガイドラインの別冊4も、固定の措置が実施されていない場合には災害応急活動に多くの障害が発生し、安全防護班等の業務が非常に大きくなると書いています。
倒れた物をどけるところから始まるということですか。
避難させる前の話になりますね。
そうなります。
だから避難通路の上に何を置いているかが、そのまま想定の材料になります。
実務で見落としやすいのはどこか

想定と措置は同じ話に見えて、条文の上では別の号に分かれています。
金具で留めたことを書いたのは第二号ニの措置であって、被害を想定する第二号イを書いたことにはなりません。
もう一つの落とし穴が階の違いで、消防庁の資料は家具類の転倒や落下が低層階から高層階に行くに従って多くなる傾向にあるとしています。
同じ資料は、近年の地震で負傷者の負傷原因のうち家具類の転倒や落下によるものが3〜5割を占めたとも示しています。
上の階ほど重く見ておくこと、そして留めたあとに緩んでいないかを見る自主検査に棚を入れておくことが、この項目の抜けを防ぎます。
つまり、留めた記録だけでは足りないということですね。
上の階から見ていくことにします。
その順番で結構です。
留めた日ではなく、次にいつ見るかを書くのが自主検査の欄です。
明日からなにを確認すればよいのか

書く欄が分かれているので、確かめる順番も分けておくと迷いません。
一つ目は物の一覧で、固定してある物と置いてあるだけの物を分けて数え、置いてあるだけの物を想定の欄に写します。
二つ目は通路で、廊下や階段の前に倒れて横たわりそうな物が無いかを歩いて見ます。
三つ目は措置の欄で、ガイドラインの別冊4が挙げているとおり責任主体と実施方策と維持点検方策の三つを書ききります。
そのうえで、救出や救護に使う資機材が第二号ハの点検の対象として消防計画に載っているかを確かめてください。
物の一覧と通路と措置の欄の三つですね。
今週のうちに歩いて見てみます。
歩いて見るのがいちばん早いです。
写真を撮っておくと、次の見直しのときに比べられます。
よくある質問
まとめ
倒れた先まで書く欄があるとは思っていませんでした。
まず置いてあるだけの物を数えてみます。
数えるところまで進めば、あとは欄に写すだけです。
消防計画の見直しでお困りでしたら㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第36条第1項
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第45条・第46条・第48条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第51条の8第1項第一号ロ・第二号イ・ロ・ハ・ニ・ホ
- 総務省消防庁「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年)本編・別冊1・別冊4・付属資料
- 東京消防庁「オフィス家具類・一般家電製品の転倒・落下防止対策に関する指針」(同ガイドライン別冊1が挙げる資料)
- e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





