ベランダの床にある四角いふたを開けると、折りたたまれたはしごが入っています。
細い棒が並んでいるだけに見えて、これで本当に人が降りられるのかと不安になります。
この器具は金属製避難はしごといい、棒の太さから間隔まで省令が数値で決めています。
この記事では避難はしごがどんな寸法で作られているのかを条文から解説します。
ベランダのはしごが細くて頼りなく見えます。
見た目で選べる器具ではありません。
太さも間隔も省令が数値で押さえています。
壁にぴったり付いていたら手が入らない気がします。
そこにも条文があって突子という部品が隙間を作ります。
まずは避難はしごの種類から押さえましょう。
- 金属製避難はしごは固定はしごと立てかけはしごとつり下げはしごの3種類です。(金属製避難はしごの技術上の規格を定める省令第2条第1号)
- 本体は縦棒と横桟で構成されます。(同令第3条第2項)
- 横桟は同じ間隔で並び25センチメートル以上35センチメートル以下と決められています。(同令第3条第6項)
- つり下げはしごは突子で建物から10センチメートル以上離します。(同令第6条第1号)
- 本体には型式番号や製造年月などの表示が消えないように付いています。(同令第11条)
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目次
金属製避難はしごとはどの3種類を指すのか

ところが省令はこの言葉に3つの型を割り当てています。
建物に固定されて常に使える状態にあるものが固定はしごで、横桟を縦棒の中に収めておく収納式や、下部を折りたたんだり伸縮させたりする構造のものもここに含まれます。
壁に立てかけて使うものが立てかけはしご、建物からつり下げて使うものがつり下げはしごです。
集合住宅のバルコニーの床にある四角いふたの中身は、そのつり下げはしごのうち避難器具用ハッチに格納されたもので、使うときに突子が建物に当たらない構造のものだけがこの名前で呼ばれます。
ふたの中身がどれなのかが分かれば、次に見るべき条文も決まります。
うちのベランダのふたの中はつり下げはしごだったのですね。
ハッチに入っていればそう呼びます。
次はどの型にも共通する寸法を見ましょう。
縦棒と横桟の寸法はどこまで決められているのか

握る太さも足を置く間隔も数値で示されています。
縦棒が2本以上あるものは、その間隔が内法で30センチメートル以上50センチメートル以下と決まっているので、体を通せない幅にはなりません。
横桟は直径14ミリメートル以上35ミリメートル以下の円形断面で、これは手のひらで握り込める太さの幅です。
その横桟が25センチメートル以上35センチメートル以下の同一間隔で並ぶので、暗い中でも次の足場が同じ歩幅で見つかります。
縦棒が1本しかない型については同条第3項が別に定めていて、横桟の先端に長さ5センチメートル以上の突子を設けることと、横桟の長さを内法で15センチメートル以上25センチメートル以下とすることが求められています。
間隔がそろっているのは偶然ではなかったのですね。
同一間隔と条文に書いてあります。
次は壁との隙間の話です。
つり下げはしごはなぜ壁から離れて下がるのか

そのまま壁に張り付くと、つま先を掛ける場所が無くなります。
この隙間を作る小さな出っ張りが突子で、条文は横桟の位置ごとに設けることを求めています。
1か所だけに付けても、はしごは体重でねじれるので、すべての段で同じ隙間を保たせる書き方になっています。
ただし書きがあるので、突子が無くても10センチメートル以上の距離を保てる構造なら突子は要りません。
バルコニーのハッチに入っているものがこれにあたり、第2条第5号はハッチ用つり下げはしごを突子が建物に接触しない構造のものに限ると定めています。
あの小さな出っ張りは足を入れる隙間を作る部品だったのですね。
折れていたら隙間が消えます。
次は現場で外しやすいところを見ましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

そのため型ごとの上乗せ要件が忘れられがちです。
収納式や折りたたみ式の固定はしごは、揺れで止め金が外れないよう保安装置を持ち、その保安装置に至る動作を除いて2動作以内で使える状態にできることが求められます。
立てかけはしごは同令第5条が別に押さえていて、先端から60センチメートル以内の上部支持点に滑りと転倒を防ぐ安全装置を、下部支持点に滑り止めを設けることになっています。
そして金属製避難はしごは消防法施行令第37条第11号の検定対象機械器具等なので、消防法第21条の2第4項により、型式適合検定の表示が無いものを設置の工事に使うことはできません。
ハッチのふたの上に植木鉢や物置を置いてしまう扱いも多いので、同令第25条第2項第3号がいう速やかに使える状態が保てているかを見てください。
ハッチの上がプランターの置き場になっています。
今日のうちにどけてしまいましょう。
最後に確認の手順をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

本体に刻まれた表示を読むだけで、確かめるべきことの大半は分かります。
まず長さを読み、取り付けてある高さから地面までの距離と比べてください。
次に製造年月と型式番号を控えておけば、点検業者に相談するときも部品を取り寄せるときもそのまま使えます。
そのうえで突子の折れやさびを見ます。同令第9条は100回の展開と収納を繰り返す試験を、第10条は塩水を噴霧して放置する腐食試験を求めているので、変形やさびが出ている個体はその前提から外れていると考えてください。
避難はしごは消防法施行令第7条第4項第1号の避難器具として消防用設備等にあたるので、日付とともに記録に残せば消防法第17条の3の3の点検と報告にもそのままつながります。
表示を写真に撮って消防計画に貼っておきます。
それが訓練のときの説明資料になります。
まずはハッチの上を空けてください。
よくある質問
まとめ
まずはハッチを開けて表示を読みに行ってきます。
それだけで訓練の中身が変わります。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第17条の3の3・第21条の2第4項
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第7条第4項第1号・第25条第2項第3号・第37条第11号
- 金属製避難はしごの技術上の規格を定める省令(昭和40年自治省令第3号)第2条・第3条・第4条・第5条・第6条・第8条・第9条・第10条・第11条・第12条
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





