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壁や天井の内装材はなぜ自由に選べないのか|建築基準法が定める内装制限と防炎物品との違いを解説

壁と天井の仕上げを縛る建築基準法の内装制限とカーテンの防炎の違いを解説する記事のアイキャッチ

店舗の壁紙を貼り替えたい、天井の板を張り直したいという相談は防火管理者のもとによく来ます。
このとき自由に材料を選べない建物があり、その線を引いているのは消防法ではなく建築基準法です。
壁と天井の仕上げを縛るこの決まりを、実務では内装制限と呼んでいます。
カーテンやじゅうたんの防炎とは根拠も対象も別の話です。

テナントさんが厨房の壁と天井を明るい板に張り替えたいと言ってきました。
防炎のラベルが付いた材料なら大丈夫だと聞いています。

その防炎はカーテンやじゅうたんに付くものです。
壁と天井の仕上げは別の法律で決まっています。

消防署の立入検査では内装のことを言われた覚えがありません。
どこを見れば決まりが書いてあるのでしょうか。

書いてあるのは建築基準法の側です。
まずどの条文が壁と天井を縛っているのかから見ていきましょう。

この記事の結論
  • 壁と天井の室内に面する部分の仕上げを縛っているのは建築基準法第35条の2であって消防法ではない
  • 消防法にも消防法施行令にも内装という語は一度も出てこず条文は仕上げと書き下している
  • 対象になるのは劇場や病院や百貨店などの特殊建築物と一定規模以上の建築物のほか火を使う調理室等である
  • 求められる仕上げは居室が難燃材料以上で廊下や階段は準不燃材料以上と分かれている
  • カーテンやじゅうたんの防炎は消防法第8条の3で防炎ラベルは内装制限を満たした証明にはならない

壁と天井の仕上げは建築基準法の内装制限でカーテンとじゅうたんは消防法の防炎であることを示した図

壁や天井の内装材はどの法律で制限されるのか

壁と天井が塗り分けられた部屋とカーテンと敷物が置かれた部屋を並べて防火管理者が見ている様子
内装制限という言葉は現場でよく使われますが、これは通称です。
条文の側では特殊建築物等の内装という見出しで、次のように書かれています。
建築基準法第三十五条の二(特殊建築物等の内装) 別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物、延べ面積が千平方メートルをこえる建築物又は建築物の調理室、浴室その他の室でかまど、こんろその他火を使用する設備若しくは器具を設けたものは、政令で定めるものを除き、政令で定める技術的基準に従つて、その壁及び天井(天井のない場合においては、屋根)の室内に面する部分の仕上げを防火上支障がないようにしなければならない
縛っているのは建築基準法です。
消防法と消防法施行令の全文を機械で数えると、内装という語は一度も出てきません。
消防法の側にあるのは、壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを難燃材料でしたときに屋内消火栓設備の基準面積を読み替えるという規定で、これは義務ではなく緩和の条件として材料を使っています。
つまり同じ材料の話でも、建築基準法は使ってよい材料を絞る方向に、消防法は設備の基準をゆるめる方向に働きます。
条文の名宛人も違い、内装制限を確認するのは建築確認と完了検査の手続の中なので、まずは建物の確認申請の図書がどこにあるかを押さえてください。

消防法には内装という言葉が無いというのは意外でした。

消防法は材料を緩和の条件としてだけ使っています。
次はどの建物が対象になるのかを見ます。

どの建物のどの部屋が内装制限を受けるのか

客席のあるホールと窓の多い建物と間口の広い店舗とこんろのある調理室が並んでいる様子
法の条文は用途と規模と窓のない居室と火を使う室を並べています。
そのうちどこから対象になるかは、政令が裏返しの書き方で定めています。
建築基準法施行令第百二十八条の四(制限を受けない特殊建築物等) 法第三十五条の二の規定により政令で定める特殊建築物は、次に掲げるもの以外のものとする。(略)
2 法第三十五条の二の規定により政令で定める階数が三以上である建築物は、延べ面積が五百平方メートルを超えるもの(学校等の用途に供するものを除く。)以外のものとする。
3 法第三十五条の二の規定により政令で定める延べ面積が千平方メートルを超える建築物は、階数が二で延べ面積が千平方メートルを超えるもの又は階数が一で延べ面積が三千平方メートルを超えるもの(学校等の用途に供するものを除く。)以外のものとする。
4 法第三十五条の二の規定により政令で定める建築物の調理室(略)は、階数が二以上の住宅(略)の用途に供する建築物(特定主要構造部を耐火構造としたものを除く。)の最上階以外の階又は住宅の用途に供する建築物以外の建築物(特定主要構造部を耐火構造としたものを除く。)に存する調理室、浴室、乾燥室、ボイラー室、作業室その他の室でかまど、こんろ、ストーブ、炉、ボイラー、内燃機関その他火を使用する設備又は器具を設けたもの(次条第六項において「内装の制限を受ける調理室等」という。)以外のものとする。
入口は一つではありません。
用途の側は建築基準法の別表第一(い)欄で、(一)項の劇場や集会場、(二)項の病院や旅館や共同住宅、(四)項の百貨店やナイトクラブなどが並び、それぞれ構造と階と床面積の組み合わせで対象になります。
規模の側は、階数が三以上で延べ面積が500平方メートルを超えるもの、階数が二で1,000平方メートルを超えるもの、階数が一で3,000平方メートルを超えるものが挙がっています。
そしてもう一つの入口が火気で、こんろやストーブやボイラーを置いた室は用途や規模と関係なく対象になります。
ただし第4項は特定主要構造部を耐火構造としたものを除いているので、耐火構造の建物の厨房はこの入口では外れます。

こんろを置いただけで対象になる室があるのですね。

条文はこれを内装の制限を受ける調理室等と呼んでいます。
次は求められる中身です。

内装制限は壁と天井になにを求めているのか

天井と壁の上側だけが塗り分けられた部屋とその隣で壁も天井も塗られた階段のある通路の様子
求められるのは仕上げの材料の等級です。
しかも同じ建物の中で、居室と通路とで求められる等級が分かれています。
建築基準法施行令第百二十八条の五(特殊建築物等の内装) 前条第一項第一号に掲げる特殊建築物は、当該各用途に供する居室(略)の壁(床面からの高さが一・二メートル以下の部分を除く。)及び天井(略)の室内に面する部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。)の仕上げを第一号に掲げる仕上げと、当該各用途に供する居室から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路の壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを第二号に掲げる仕上げとしなければならない。
一 イ 難燃材料(三階以上の階に居室を有する建築物の当該各用途に供する居室の天井の室内に面する部分にあつては、準不燃材料)でしたもの(略)
二 イ 準不燃材料でしたもの(略)
6 内装の制限を受ける調理室等は、その壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを第一項第二号に掲げる仕上げとしなければならない
居室と通路で等級が違います。
居室は難燃材料でよいのに対し、そこから地上に通じる主たる廊下や階段は一段上の準不燃材料が求められます。
さらに三階以上の階に居室を有する建築物では、居室の天井だけが準不燃材料に引き上げられます。
壁のほうは床からの高さが1.2メートル以下の部分が除かれているので、腰の高さまでの腰壁は制限の外に置かれています。
そして第6項により、こんろを置いた調理室等は居室であっても壁と天井の両方が準不燃材料になります。

つまり逃げる道のほうが厳しく決められているということですね。

廊下と階段は準不燃材料と書き分けられています。
次は見落としやすい点です。

実務で見落としやすいのはどこか

壁と天井が手つかずの調理室と壁と天井が仕上げ直された調理室を並べた様子
いちばん多い取り違えが、防炎ラベルとの混同です。
防炎のほうは消防法が別に定めていて、縛っている物が違います。
消防法第八条の三第一項 高層建築物若しくは地下街又は劇場、キャバレー、旅館、病院その他の政令で定める防火対象物において使用する防炎対象物品(どん帳、カーテン、展示用合板その他これらに類する物品で政令で定めるものをいう。以下この条において同じ。)は、政令で定める基準以上の防炎性能を有するものでなければならない
防炎は持ち込む物の話です。
条文が挙げているのはどん帳とカーテンと展示用合板で、建物に固定された壁や天井の仕上げは入っていません。
そのため防炎ラベルが付いた材料を壁に貼っても、それだけでは内装制限を満たしたことにはなりません。
もう一つの落とし穴が緩和の見落としで、令第128条の5第7項は、床面積と天井の高さと消火設備および排煙設備の設置の状況と構造を考慮して国土交通大臣が定める部分には前各項を適用しないと定めています。
自分の建物が対象なのか緩和されているのかは確認申請の図書に残っているので、思い込みで判断しないことがこの論点では特に効きます。

防炎のラベルが付いていれば安心だと思い込んでいました。

防炎は持ち込む物に付くラベルです。
次は明日からの確認手順です。

明日からなにを確認すればよいのか

図面を持つ防火管理者と建物の平面図の板と見本板を虫眼鏡で確かめる机の様子
はじめの一手は材料の等級がどう決まるかを知ることです。
準不燃材料と難燃材料は、政令に定義が置かれています。
建築基準法施行令第一条(用語の定義) 五 準不燃材料 建築材料のうち、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後十分間第百八条の二各号(略)に掲げる要件を満たしているものとして、国土交通大臣が定めたもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。
六 難燃材料 建築材料のうち、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後五分間第百八条の二各号(略)に掲げる要件を満たしているものとして、国土交通大臣が定めたもの又は国土交通大臣の認定を受けたものをいう。
耐える時間で分かれています。
不燃材料が20分、準不燃材料が10分、難燃材料が5分という順で、耐える時間が長いほど上の等級になります。
そこで明日は、まず建物の確認申請の図書から内装仕上表と仕上げの記載を探し、どの室にどの等級が求められているかを控えてください。
次に貼り替えを予定している材料の大臣認定番号を見本や納品書で確かめ、図書の等級と突き合わせます。
判断に迷うところが残ったら、着手する前に設計者と特定行政庁または指定確認検査機関へ確認しておくと、後から張り直す事態を避けられます。

確認申請の図書を開けば書いてあるのですね。

材料は大臣認定番号で等級をたどれます。
貼る前に突き合わせておけば安心です。

よくある質問

Q内装制限は消防の立入検査で見られますか?
A内装制限の根拠は建築基準法第35条の2で、確認と検査の手続の中で扱われるものです。消防法および消防法施行令の条文に内装という語はありません。実際にどの部署がどこまで確認するかは建物や地域によって異なるため、所轄消防署と特定行政庁の双方にご確認ください。
Q住宅の台所にも内装制限がかかりますか?
A建築基準法施行令第128条の4第4項は、階数が二以上の住宅の最上階以外の階にある調理室等を対象に挙げています。ただし特定主要構造部を耐火構造としたものは除かれます。個別の建物がどちらにあたるかは確認申請の図書と設計者にご確認ください。
Q腰壁は本当に制限の外なのですか?
A令第128条の5第1項は壁について床面からの高さが1.2メートル以下の部分を除くと書いています。ただしこの除外は同項が対象とする特殊建築物の居室についての規定で、同条の他の項では書き方が異なります。自分の建物にどの項が適用されるかを先に確かめてください。
Q内装を難燃材料にすると消防の基準もゆるみますか?
A消防法施行令第11条第2項は、特定主要構造部を耐火構造とし壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを難燃材料でした防火対象物について、屋内消火栓設備の基準面積を読み替えると定めています。ゆるむのはこの規定が挙げる設備の基準であって、内装制限そのものではありません。

まとめ

壁と天井の仕上げを縛るのは建築基準法第35条の2であって消防法ではない
対象は用途と規模と窓のない居室と火を使う室から決まる
こんろやボイラーを置いた室は内装の制限を受ける調理室等として条文に名前が付いている
居室は難燃材料で主たる廊下や階段は準不燃材料と書き分けられている
壁は床から1.2メートル以下の部分が除かれ回り縁や窓台も除かれる
カーテンやじゅうたんの防炎は消防法第8条の3で内装制限とは別の制度である
貼り替える前に確認申請の図書と大臣認定番号を突き合わせる

明日は確認申請の図書を出して厨房と廊下の仕上げの記載を探してみます。

図書の記載と材料の認定番号が揃えば貼り替えの相談も早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • 建築基準法(昭和25年法律第201号)第35条の2
  • 建築基準法別表第一
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第1条第5号・第6号
  • 建築基準法施行令第108条の2
  • 建築基準法施行令第128条の4
  • 建築基準法施行令第128条の5
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第8条の3第1項
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第11条第2項

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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