旅館やホテルのロビーに掛かっているカーテンや、劇場のどん帳には、燃えにくい性能が最初から求められています。
これは消防法が防炎対象物品という物品そのものにかけている規制で、建物の設備とは別枠の話です。
どの建物のどの物品が対象になるかは政令が具体的に列挙していて、線引きを外れると販売や陳列そのものができません。
条文をたどると防炎物品には基準・表示・処理の記録という3段構えの仕組みがあることが見えてきます。
うちのホテルは開業のときにカーテン屋さんから、防炎ラベル付きの製品だと説明を受けました。
あのラベルはそもそも何の基準なんでしょうか。
消防法第8条の3が定める防炎性能の基準を満たした物品に付けられる表示です。
ラベルの意味から順に見ていきましょう。
うちのような小さな店でも関係があるんでしょうか。
建物の用途と物品の種類で対象かどうかが決まります。
順番に確認していきましょう。
- 防炎物品とは、消防法第8条の3が政令で定める基準以上の防炎性能を義務付けた物品です
- 対象になる建物は、劇場やホテルなど令第4条の3第1項が列挙する防火対象物と、工事中の建築物その他の工作物です
- 対象物品はカーテン・じゅうたん等・どん帳・工事用シートなど、令が具体的に列挙したものに限られます
- 表示のない物品は、防炎物品として販売や陳列をすることができません
- カーテン等を防炎処理させたときは、処理した者の氏名と処理した年月を明らかにする義務があります
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目次
防炎物品とはどのような物品を指すのか

条文をたどると、対象になる物品の範囲は政令が具体的に列挙しています。
建物に取り付ける設備ではなく、カーテンやどん帳、じゅうたん等という物としての性能を問われます。
政令が挙げる物品の範囲は、カーテン、布製のブラインド、暗幕、じゅうたん等、展示用の合板、どん帳その他舞台において使用する幕、舞台の大道具用の合板、そして工事用シートです。
布そのものを買ってきて自分で縫うか、既製品を仕入れるかは問いません。
最終的にその形になった物品が、政令の基準を満たしているかどうかで判断されます。
うちで使っているロールカーテンも対象になるということですね。
カーテンである以上、材料そのものが対象です。
次の章で、どの建物のどの物品が対象になるかを見ていきましょう。
防炎性能が必要になるのはどの建物のどの物品か

複合用途のビルにも、みなし規定で範囲が及びます。
別表第一の(1)項から(4)項までの劇場や飲食店、物品販売店、(5)項イの旅館・ホテル、(6)項の病院や福祉施設、(9)項イの蒸気浴場などの特殊浴場、(12)項ロの映画・テレビスタジオ、(16の3)項の地下街に連続する地下道部分が、防炎防火対象物として列挙されています。
建てている途中の工事中の建築物その他の工作物も対象に含まれる点は見落とされがちです。
さらに複合用途の(16)項ビルは、その一部がこれらの用途に当たれば、その部分だけがみなし規定で対象になります。
自分の建物がどの項に当たるかは、防火対象物点検や消防計画で使っている用途区分と同じものを確認すれば足ります。
工事中の建物まで対象になるとは思っていませんでした。
骨組みだけの段階ではなく、内部に可燃物が持ち込まれる工事用シート等が対象になります。
足場のシートも防炎品かどうか、施工会社に確認してください。
防炎の性能基準と防炎表示はどう決まっているのか

基準を満たした物品には、決められた方法で表示を付けます。
一 防炎表示を付する者は、消防庁長官の登録を受けた者であること。
二 防炎表示は、別表第一の二の二に定める様式により行うこと。
三 防炎表示は、縫付、ちよう付、下げ札等の方法により、防炎物品ごとに、見やすい箇所に行なうこと。
表示を付けられるのは消防庁長官の登録を受けた者に限られ、様式も縫付・ちょう付・下げ札等の方法により防炎物品ごとに見やすい箇所に付けると決められています。
その手前にある性能の基準は、令第4条の3第4項が数値で置いています。物品の残炎時間が20秒を超えない範囲、残じん時間が30秒を超えない範囲、炭化面積が50平方センチメートルを超えない範囲、炭化長が20センチメートルを超えない範囲のうち、それぞれ総務省令で定める時間・面積・長さ以下であることが求められます。
じゅうたん等はこのうち残炎時間と炭化長の基準だけで判断され、それ以外の物品は残炎時間・残じん時間・炭化面積の3つの基準で判断されます。
下げ札や縫い付けラベルがある製品を選べば、この基準を満たしていることを確認できます。
残炎時間20秒というのは、火を離してから20秒以内に消えるという意味ですか。
そのとおりです。
着炎後バーナーを取り去ってから炎を上げて燃える状態がやむまでの時間を指します。
防炎物品の実務で見落としやすいのはどこか

販売や陳列の場面で、条文はもう一段の制限を置いています。
基準を満たす生地であっても、防炎表示または指定表示が付いていなければ、法律上は防炎物品として扱えません。
また同条第3項は、この紛らわしい表示を付けることも禁じています。似せたラベルを独自に作ることは認められません。
複合用途の(16)項ビルでは、対象部分とそれ以外の部分が同じ建物に混在します。テナントが入れ替わるたびに、そのテナントの用途が対象部分に当たるかを確認し直す必要があります。
仕入れの段階で下げ札の有無を確認する癖をつけておくと、あとから買い直す手間が防げます。
テナントが入れ替わったときも確認が必要なんですね。
はい。
用途が変われば対象かどうかも変わります。入居時のチェックに加えてください。
カーテンを防炎処理させたら何を明らかにすればよいのか

その場合は建物側にも明らかにする義務があります。
一 「防炎処理品」又は「防炎作製品」の文字
二 処理をし、又は作製した者の氏名又は名称
三 処理をし、又は作製した年月
消防法第8条の3第5項は、防炎対象物品の関係者に対して、処理や作製をさせたときにその旨を明らかにしておくことを求めています。
規則が定める具体的な中身は、「防炎処理品」または「防炎作製品」の文字、処理または作製をした者の氏名又は名称、そして処理または作製をした年月の3つです。
これらを見やすい箇所に掲示するか、処理・作製をした業者に防炎表示そのものを付けさせる方法でも構いません。
既製品を仕入れるときは下げ札の有無を確認し、生地から作らせるときは業者に表示か記録のどちらを付けるかを先に決めておくと、あとの点検で迷いません。
下げ札がない自前のカーテンでも、記録があれば大丈夫なんですね。
そうです。
文字・氏名・年月の3つを見やすい場所に明らかにしておいてください。
よくある質問
まとめ
防炎物品は建物の設備ではなく物品そのものの規制だと分かりました。
まずは下げ札の有無を確認してみます。
対象建物、対象物品、表示の有無、そして自前処理の記録。
この4つを押さえれば防炎物品の管理は形になります。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第8条の3
- 消防法施行令第4条の3
- 消防法施行規則第4条の4
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





