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二酸化炭素消火設備はなぜ死亡事故を繰り返すのか|避難と閉止弁の運用を解説

二酸化炭素消火設備はなぜ死亡事故を繰り返すのか

二酸化炭素消火設備が誤って作動し、駐車場や電気室に充満したガスを吸い込んで命を落とした人がいることをご存知でしょうか。
昭和46年、仙台市のビル地下駐車場で不燃性ガス(二酸化炭素)消火設備が誤放射され、死者1人、負傷者3人を出す事故が発生しました。
その後も同じ種類の事故は繰り返され、令和2年12月から令和3年4月にかけても全域放出方式の二酸化炭素消火設備による死亡事故が相次ぎました。
この記事では、なぜ事故が繰り返されるのか、そして令和4年のガイドラインが求める避難経路や閉止弁の運用について解説します。

うちの駐車場にも二酸化炭素消火設備があるんですが、ガスで人が死ぬなんて、そんな事故があるんですか。

実際に仙台市の駐車場で死亡事故が起き、その後も同じ種類の事故が繰り返されています。
今日はなぜ事故が起きるのか、一緒に確認していきましょう。

怖いですね……閉止弁とか遅延装置とか、聞いたことのない言葉も多くて不安です。

大丈夫です。
今日は令和4年のガイドラインが求める安全対策を一緒に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 昭和46年、仙台市の駐車場での誤放射事故を受けて不燃性ガス消火設備の安全対策通知が出されました。
  • その後も事故は続き、令和2年12月から令和3年4月にかけて死亡事故が相次ぎました。
  • 令和4年、消防庁は「二酸化炭素消火設備の設置に係るガイドライン」を策定しました。
  • 対象は駐車場や電気室など人が長時間留まらない場所に限られます。
  • 工事や点検で防護区画に立ち入るときは、閉止弁を閉止することが求められます。

二酸化炭素消火設備の事故の歴史と閉止弁の運用をまとめた図解

二酸化炭素消火設備はなぜ死亡事故を繰り返してきたのか

地下駐車場の天井に設置された二酸化炭素消火設備のノズルと警告灯付きの操作盤
この設備は、消火に使うガス自体が人の命を奪う危険を持っています。
どのような事故が起き、なぜ繰り返されてきたのかを確認しましょう。
昨年10月29日仙台市の第2オフイスビル地下1階駐車場において、不燃性ガス誤放射事故が発生し、死者1人、負傷者3人を出す惨事となった。(不燃性ガス(二酸化炭素)消火設備の安全対策について 昭和47年3月9日 消防予第63号)
令和2年12月から令和3年4月にかけて全域放出方式の二酸化炭素を消火剤とする不活性ガス消火設備に係る死亡事故が相次いで発生したことを受けた「特殊消火設備の設置基準等に係る検討部会」における検討結果(別添報告書)を踏まえ、「二酸化炭素消火設備の設置に係るガイドライン」をとりまとめた。(二酸化炭素消火設備の設置に係るガイドラインの策定について 令和4年11月24日 消防予第573号)
昭和46年、仙台市のビル地下駐車場で誤放射事故が発生し、死者1人・負傷者3人を出しました。
この事故を受けて消防庁は安全対策の通知を出しましたが、その後も自由民主党会館や住友新橋ビルの地下駐車場などで同種の事故が続き、平成7年に対策の徹底があらためて求められています。
それでも令和2年12月から令和3年4月にかけて、全域放出方式の二酸化炭素消火設備による死亡事故が相次ぎました。
こうした経緯を踏まえ、令和4年に総合的な安全対策をまとめたガイドラインが策定されました。

何十年も前から同じような事故が起きているのに、まだ繰り返されているんですね。

だからこそ令和4年にあらためて対策が整理されました。
次は、どんな建物のどの部分が対象になるのかを見ていきましょう。

どの建物のどの部分が対象になるのか

地下駐車場と電気設備室が積み重なった建物断面と通信機器室
二酸化炭素消火設備は、どこにでも設置できるわけではありません。
対象になる場所と、設置してはいけない場所を確認しましょう。
別表第一に掲げる防火対象物の駐車の用に供される部分で、次に掲げるもの 一 当該部分の存する階(屋上部分を含み、駐車するすべての車両が同時に屋外に出ることができる構造の階を除く。)における当該部分の床面積が、地階又は二階以上の階にあつては二百平方メートル以上、一階にあつては五百平方メートル以上、屋上部分にあつては三百平方メートル以上のもの 二 昇降機等の機械装置により車両を駐車させる構造のもので、車両の収容台数が10以上のもの(消防法施行令第13条第1項)
次に掲げる場所には、二酸化炭素消火設備を設置しないこと。一 当該部分の用途、利用状況等から判断して、部外者、不特定の者等が出入りするおそれのある部分(略)三 防災センター、中央管理室など、総合操作盤、中央監視盤等を設置し、常時人による監視、制御等を行う必要がある部分(二酸化炭素消火設備の設置に係るガイドラインの策定について 令和4年11月24日 消防予第573号)
対象になるのは、駐車場や電気室、通信機器室など人が長時間留まらない場所です。
消防法施行令は、床面積が一定以上の駐車場(機械式は収容10台以上)や、発電機・変圧器等の電気設備がある部分、多量の火気を使う部分、通信機器室などに不活性ガス消火設備の設置を求めています。
一方で令和4年のガイドラインは、部外者が出入りするおそれのある部分や、防災センター等の常時人が監視・制御を行う部分には二酸化炭素消火設備を設置しないことを明確にしました。
つまり対象は「人が立ち入る前提の場所」ではなく、「通常は人がいない、かつ管理が行き届く場所」に限られるということです。

駐車場だから設置されているだけで、そこにずっと人がいる前提ではないんですね。

そのとおりです。
次は、ガイドラインが設備に何を求めているのかを見ていきましょう。

ガイドラインは設備に何を求めているのか

自動閉鎖装置付きの避難口と遅延タイマー付きの操作箱
対象になる場所が決まったら、次は設備そのものの安全対策です。
ガイドラインが示す代表的な対策を確認しましょう。
防護区画には、有効に二方向避難ができるように2以上の出入口が設けられていること。(略)防護区画に設ける出入口の扉は、当該防護区画の内側から外側に開放される構造のものとするとともに、ガス放出による室内圧の上昇により容易に開放しない自動閉鎖装置付きのものとすること。(二酸化炭素消火設備の設置に係るガイドラインの策定について 令和4年11月24日 消防予第573号)
手動式の起動装置又はその直近の箇所に表示する保安上の注意事項には、二酸化炭素消火設備を起動した後、速やかに安全な場所へ退避することが必要である旨を盛り込むこと。(略)起動用ガス容器と貯蔵容器を接続する操作管には、起動用ガス容器内のガスの漏洩により貯蔵容器が開放しないよう誤作動防止のための逃がし弁を設けること。(二酸化炭素消火設備の設置に係るガイドラインの策定について 令和4年11月24日 消防予第573号)
設備そのものに、逃げる時間と逃げる経路を確保する仕組みが求められています。
防護区画には2方向以上の避難ができる出入口を設け、扉はガスで室内の圧力が上がっても開けやすい自動閉鎖式にします。
起動してからガスが実際に放出されるまでの間には遅延時間を設け、その間に人が安全な場所へ退避できるようにします。
さらに起動用ガスの漏れで誤作動しないよう逃がし弁を設けることも求められています。
標識や音響警報装置も含め、ハードとルールの両方で退避の時間を確保する仕組みです。

扉が自動で閉まる仕組みまであるんですね。逃げる時間まで計算されているとは思いませんでした。

はい。
次は、実務で見落としやすい落とし穴を確認しましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

閉じた状態の閉止弁バルブと開いたままのバルブに立つ作業員
設備が整っていても、工事や点検の場面で事故につながることがあります。
ガイドラインが示す落とし穴を確認しましょう。
閉止弁は、次のイ及びロに定めるところにより維持すること。イ 工事、整備、点検その他の特別の事情により防護区画内に人が立ち入る場合は、閉止された状態であること。ロ イに掲げる場合以外の場合は、開放された状態であること。(消防法施行規則第19条の2)
建物関係者が不在となる夜間等の時間帯において、機械式駐車場等のメンテナンス等のため緊急的に作業員等が防護区画に立ち入ることが想定される建物にあっては、閉止弁が設けられた部分に当該作業員等が立ち入って閉止弁を確実に閉止することができるよう、所要の計画等を定めておくこと。(二酸化炭素消火設備の設置に係るガイドラインの策定について 令和4年11月24日 消防予第573号)
閉止弁を閉め忘れたまま作業に入ることが、最も見落としやすい落とし穴です。
消防法施行規則は、工事や点検で防護区画に人が立ち入るときは閉止弁を閉止し、自動起動を手動に切り替えたうえで作業するよう定めています。
夜間の機械式駐車場のメンテナンスなど、建物関係者が不在の時間帯に作業員だけで閉止弁を操作する場面は特に注意が必要です。
また、このガイドラインは危険物施設以外の設備が対象で、危険物施設に設置された二酸化炭素消火設備には従来の平成7年の通知に続く別の通知が引き続き適用される点も見落とされがちです。
つまり「設備さえあれば安全」ではなく、閉止弁の運用ルールを関係者全員が知っているかが問われます。

夜間にメンテナンスの人が来て、閉止弁を閉め忘れたまま作業を始めたら怖いですね。

はい。
次は、明日からなにを確認すればよいかをまとめます。

明日からなにを確認すればよいのか

制御盤脇の手順書ファイルと警報スピーカーの前に立つ作業員
最後に、防火管理者として日頃から確認しておきたい点を整理します。
ガイドラインが示す手順を見ていきましょう。
制御盤の付近に設備の構造並びに工事、整備及び点検時においてとるべき措置の具体的内容及び手順を定めた図書を備えておくこと。(略)避難訓練等で音響警報装置の警報音を聞く機会を設けること。(二酸化炭素消火設備の設置に係るガイドラインの策定について 令和4年11月24日 消防予第573号)
二酸化炭素消火設備が作動し、二酸化炭素が放出された場合には、直ちに消防機関への通報、当該設備の設置・保守点検等に係る専門業者等への連絡を行うとともに、二酸化炭素が放出された防護区画及び当該防護区画に隣接する部分への立入りを禁止すること。(二酸化炭素消火設備の設置に係るガイドラインの策定について 令和4年11月24日 消防予第573号)
まずは、制御盤の近くに手順書があるかを確認しましょう。
工事・整備・点検時に取るべき措置の具体的な内容と手順を定めた図書を、制御盤の付近に備え付けます。
避難訓練の機会に音響警報装置の警報音を実際に聞いてもらい、いざというときに気づける状態にしておきます。
設備が作動してガスが放出された場合は、まず消防機関へ通報し、放出された防護区画とその隣接部分への立入りを禁止してください。
専門業者等への連絡と、消火の完了確認・十分な排出を終えるまでは誰も立ち入らせないことが、二次被害を防ぐ最後の一手です。

つまり、設備任せにせず手順書と訓練で人の動きも決めておくということですね。

はい。
次はよくある質問を確認していきましょう。

よくある質問

Q二酸化炭素消火設備はどんな場所に設置されていますか?
A駐車場や電気室、通信機器室、多量の火気を使う部分など、床面積が一定以上になる部分に設置されます。部外者が出入りする場所や、常時人が監視を行う防災センター等には設置しないことになっています。
Q危険物施設にある設備にも令和4年のガイドラインが適用されますか?
A危険物施設に設置する二酸化炭素消火設備には従来の通知が引き続き適用され、危険物施設以外の設備には令和4年のガイドラインが適用されます。
Q工事や点検で防護区画に入るとき何に気をつければよいですか?
A立ち入る前に必ず閉止弁を閉止し、自動起動になっている場合は手動に切り替えてください。作業終了後は閉止弁を確実に開放することも忘れないようにしましょう。
Qガスが放出されてしまったときはどう対応すればよいですか?
Aまず消防機関へ通報し、放出された防護区画とその隣接部分への立入りを禁止してください。十分にガスが排出されたことを確認してから、専門業者等の指示に従って立ち入るようにしましょう。

まとめ

昭和46年、仙台市の駐車場での誤放射事故を受けて安全対策の通知が出されました
その後も事故は続き、令和2年12月から令和3年4月にかけて死亡事故が相次ぎました。
令和4年、消防庁は「二酸化炭素消火設備の設置に係るガイドライン」を策定しました
対象は駐車場や電気室など人が長時間留まらない場所に限られます。
防護区画には二方向避難の出入口と、ガス放出までの遅延装置が求められます
工事や点検で立ち入るときは閉止弁を閉止し、終了後は確実に開放します。
危険物施設には従来の通知が、それ以外には令和4年のガイドラインが適用されます

閉止弁の運用まで含めて理解できて、駐車場を見る目が変わりました。

はい。㈱防災屋でもご相談を承っています。閉止弁の運用手順や避難経路が気になる方は、お気軽にお声がけください。

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参考・出典

  • 不燃性ガス(二酸化炭素)消火設備の安全対策について(通知)(昭和47年3月9日 消防予第63号)
  • 二酸化炭素消火設備等の安全対策の徹底について(通知)(平成7年 消防予第261号)
  • 二酸化炭素消火設備の設置に係るガイドラインの策定について(通知)(令和4年11月24日 消防予第573号)
  • 消防法施行令第13条・第16条(不活性ガス消火設備を設置すべき防火対象物・技術上の基準)
  • 消防法施行規則第19条・第19条の2(不活性ガス消火設備の設置及び維持に関する基準)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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