旅館やホテルは、泊まる人の数が日によって入れ替わります。
それでも防火管理者を置くかどうかは、収容人員という一つの数で決まります。
しかも(5)項イの宿泊室は、洋式と和式で数え方そのものが違うので、客室数だけを見ていると答えがずれます。
この記事では、旅館やホテルが消防法令でどう扱われ、宿泊室の収容人員をどう数えるのかを解説します。
小さな旅館の防火管理を任されたのですが、収容人員を客室数で数えていました。
そこが落とし穴です。
消防法施行規則は宿泊室を洋式と和式で書き分けています。
宴会場や食堂の広さも足すのでしょうか。
足します。
従業者と宿泊室と集会飲食休憩の三つを合算する組み立てなので、順に見ていきましょう。
- 旅館とホテルと宿泊所その他これらに類するものは令別表第一(5)項イに掲げられています。(消防法施行令別表第一)
- 寄宿舎や下宿や共同住宅は(5)項ロで、同じ泊まる建物でも扱いが分かれます。(消防法施行令別表第一)
- 収容人員は従業者の数と宿泊室の数と集会飲食休憩の部分の数を合算します。(消防法施行規則第1条の3)
- 宿泊室は洋式ならベッドの数で和式なら床面積を6平方メートルで除します。(消防法施行規則第1条の3)
- 防火管理者が必要になるのは収容人員が30人以上になったときです。(消防法施行令第1条の2第3項第1号ロ)
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目次
旅館やホテルは消防法上どの区分に入るのか

まずどちらの行に載るのかを確かめます。
令別表第一(五)項イは旅館とホテルと宿泊所を並べ、さらにその他これらに類するものまで広げているので、名乗りが旅館でなくても同じ行に入ります。
一方でロは寄宿舎と下宿と共同住宅で、こちらは決まった人が住み続ける建物です。
そしてイは特定防火対象物にあたり、消防法第17条の2の5第2項第4号は旅館という言葉を条文の中に名指ししています。
そのため基準が改正されると、既存の建物でも改正後の規定に合わせることになります。
自分の建物がイとロのどちらなのかは、消防用設備等の点検結果報告書の表紙にある用途の欄で確認できます。
社員寮も泊まる建物なので同じ扱いだと思っていました。
寮は寄宿舎としてロの側に並びます。
まずは点検結果報告書の用途欄を開いてみてください。
宿泊室の収容人員はどう数えるのか

条文は宿泊室と集会飲食休憩の部分を分けて組み立てています。
まず従業者の数を人数として数え、そのうえで宿泊室と集会飲食休憩の部分を足していきます。
宿泊室のうち洋式のものはベッドの数をそのまま使い、和式のものは床面積を6平方メートルで除します。
ただし和式でも簡易宿所と主として団体客を宿泊させるものは3平方メートルで除すので、同じ畳の部屋でも倍の数になります。
宴会場やロビーのような集会飲食休憩の部分は、固定式のいす席があればその数を、それ以外は床面積を3平方メートルで除した数を足します。
明日やることは一つで、客室表を洋式と和式に分け、和式の部屋は面積を書き出しておくことです。
和室の広さで人数が変わるとは考えていませんでした。
定員ではなく床面積で決まるところが要点です。
客室表に面積の列を足しておくと数え直しが楽になります。
収容人員が30人以上になるとなにが始まるのか

(5)項イは早い段階で義務がかかる側です。
同じ条文の第1号ハは(5)項ロを50人以上としているので、イはロより早い段階で防火管理者の選任が必要になります。
選任したときは消防法第8条第2項により遅滞なく所轄の消防長又は消防署長へ届け出なければならず、解任したときも同じです。
同じ30人という数は避難器具にも出てきて、(5)項の二階以上の階か地階でその階の収容人員が30人以上なら設置の対象になります。
さらに収容人員が300人以上になると、消防法施行令第4条の2の2第1号により防火対象物点検の対象にもなります。
届出が済んでいるかどうかは、控えに押された受付印で確かめるのが早道です。
つまり同じ人数でも寮なら義務がかからない場合があるということですね。
不特定の人が泊まるほど線は低く引かれます。
客室を増やしたときは必ず数え直してください。
実務で見落としやすいのはどこか

とくに二つの警報系の設備は面積の感覚が通じません。
消防法施行令第21条第1項第1号イは(5)項イをそのまま並べているので、延べ面積がどれだけ小さくても自動火災報知設備が必要になります。
同じ条文の第4号は(5)項ロを延べ面積500平方メートル以上としているので、ここでもイとロで線の引き方が違います。
もう一つが消防機関へ通報する火災報知設備で、同令第23条第1項第2号により延べ面積500平方メートル以上の(5)項イが対象です。
この設備は電話を置けば省略できる場合がありますが、同条第3項の括弧書きが(5)項イを除いているため、旅館やホテルでは電話があっても省略できません。
加えて消防法第8条の3第1項は旅館を名指ししており、カーテンやじゆうたん等は防炎物品でなければなりません。
フロントに電話があるので通報装置は要らないと聞いていました。
条文が除外している用途にあたるかどうかで結論が変わります。
設備の一覧に通報装置があるか点検票で確かめてください。
明日からなにを確かめればよいのか

順番に当てはめれば自分の宿の位置がわかります。
消火器具は消防法施行令第10条第1項第2号イにより延べ面積150平方メートル以上で、これは(5)項のイとロに共通です。
スプリンクラー設備は同令第12条第1項第3号で地階を除く階数が11以上のもの、同項第4号で平屋建以外かつ床面積の合計が6,000平方メートル以上のものが対象になります。
誘導灯は同令第26条第1項第1号と第2号により、(5)項イは建物全体が対象で、(5)項ロは地階と無窓階と11階以上の部分だけが対象です。
点検結果の報告は消防法施行規則第31条の6第3項第1号により1年に1回で、同項第2号の(5)項ロは3年に1回です。
まずは点検結果報告書の控えを開いて用途の欄と延べ面積と報告の年月日を突き合わせ、あわせて客室のカーテンに防炎の表示が付いているかを見てください。
報告を三年おきだと思い込んでいたので、すぐ確かめます。
そこが特定用途と非特定用途で最も分かれるところです。
前回の報告日から一年を超えていないか見てください。
よくある質問
まとめ
客室を洋式と和式に分けて数え直せばよいとわかりました。
さっそく客室表から拾い直してみます。
収容人員の数え直しが出発点になります。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第8条第1項及び第2項/第8条の3第1項
- 消防法第17条の2の5第2項第4号/第17条の3の3
- 消防法施行令第1条の2第3項第1号/第4条の2の2第1号
- 消防法施行令第4条の3第1項及び第3項/第34条の4第2項
- 消防法施行令第10条第1項第2号/第12条第1項/第21条第1項
- 消防法施行令第23条第1項及び第3項/第25条第1項第2号/第26条第1項
- 消防法施行令別表第一
- 消防法施行規則第1条の3/第31条の6第3項
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





