消防水利の基準は消防法第20条に基づいて示されたもので、市町村が確保すべき水利の考え方を定めています。
防火水槽をいくつ置けば足りるのか、小さい水槽を並べれば代わりになるのかといった疑問は昔から寄せられてきました。
また身近なところでは、消火栓の上に停まっている車をどう扱うのかという問題もあります。
この記事では消防水利の基準と消火栓をめぐる扱いを消防庁の質疑応答に沿って整理します。
防火水槽は、小さいものを2つ置く形では認められないのでしょうか。
なりません。
単に合計した容量で足りるという話ではなく1口の放水を継続できるかで見られています。
消火栓の上に停まっている車は、違反にならないのでしょうか。
そこは段階があります。
停めただけでは消防法第18条には抵触しませんが、現実に妨害して具体的な危険を発生させた場合は別です。
この記事でまとめて解説します!
- 消防水利の基準が対象としている水利は主として動力ポンプを使用する場合のものである
- 消防法第20条第2項の水利施設とは人工水利を意味し特に水道消火栓貯水池又は貯水槽等を指称する
- 20立方メートルの防火水槽が2つあってもこれを一の消防水利にすることはできない
- 消火栓上に駐車することのみをもって消防法第18条に抵触するものとすることはできない
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目次
消防水利の基準は動力ポンプを使う場合を前提に定められている

消防水利の基準について、その位置づけを問う照会があります。
回答では消防法第20条に基づく勧告は昭和24年8月25日付消研発第54号と国消管発第357号をもって消防水利の基準として示されたものであると説明されています。
また市町村における必要数量のものであるとも示されています。
考え方の根拠についても燃えやすい建造物等の多い所ほど多くの水量を供給せねばならないという原則に準拠していると説明されています。
建物の密集の度合いに応じて必要な水量が変わるという発想です。
なお本条の対象とならない消防法第21条の指定消防水利や私設の水利については、他の自然水利および人工水利等とともに考慮され、第20条に基づく水利の基準設置数を緩和する措置が講ぜられているとされています。
動力ポンプを使うことが前提の基準なのですね。
その考え方で定められています。
自分の建物の周りに、どの水利があるか確認しておいてください。
水利施設とは人工水利を意味し水道や消火栓や貯水槽等を指す

消防法第20条第2項には水利施設という語が出てきます。
この水利施設はどんなものを意味しているかが問われました。
自然の川や池とは区別されます。
河川や池などの自然水利も消防活動には使われますが、水利施設という語が指しているのは人の手で設けたものだという整理です。
設置義務の対象を考えるうえでの前提になります。
水利施設とは、人の手で設けたものを指すのですね。
人工の水利が対象です。
敷地内に設ける計画があるなら、種別から相談してください。
20立方メートルの防火水槽は2つあっても一の消防水利にならない

容量の数え方についての照会は具体的です。
ごく近くで補水装置のない20立方メートルの防火水そう2が設けられた場合、これをあわせて基準上の一の消防水利とはできないかという問いでした。
理由は1口の放水を継続するのに2台のポンプを必要とし不経済だからであると示されています。
ここで見られているのは合計の水量ではなく1口の放水を続けられるかどうかです。
合算では基準を満たしません。
ごく近くに置いても評価は変わりません。
消防活動の実際として、1つの水利から1台のポンプで継続して放水できることが求められているということです。
合計の容量では足りないのですね。
1口の放水を続けられるかで見ます。
設置を検討するなら、容量と口数をあわせて確認してください。
補水装置がなく能力の足りないものは消防水利にならない

20立方メートル級の防火水槽そのものの扱いについても照会があります。
従来は国庫補助も認められてきたので基準でも消防水利として認められないのかという問いでした。
そのうえで本基準は主として動力ポンプを使用するいわば大規模な消防活動をなす場合の水利を予定したものであるとされています。
補水装置があれば話は変わります。
容量そのものが40立方メートルに届かなくても、補水装置を付けることで能力を満たせば消防水利になりうるという読み方ができます。
逆にいえば、貯めた水の量だけで判断されるわけではないということです。
補水装置を付ければ、能力を満たせる場合があるのですね。
設備の組み合わせで判断されます。
既設の水槽も、能力を一度確かめておきましょう。
消火栓上の駐車は停めただけでは消防法第18条に抵触しない

平成5年6月10日付け消防予第179号は、火点直近の消火栓上に乗用車が駐車していたため車の窓ガラスを破り移動させ消火活動を行ったという事案についての照会です。
その後に所有者から窓ガラスを補償するよう要求があり、違法駐車であっても損失補償をすべきかとこの場合の違法駐車は消防法第18条に抵触するのかが問われました。
三つの条件が並んでいる点が重要です。
必要不可欠であること、侵害が必要最小限であること、損害を受けた者に重大な帰責事由があることがそろって初めて補償義務が生じないという整理になっています。
ただし実際の火災の際にまさに消防隊が使用しようとしている消火栓の上に駐車する場合等、正当な使用を現実に妨害し具体的な危険を発生させた場合には消防法第18条に抵触するとされています。
つまり駐車という状態そのものではなく、現実の妨害と具体的な危険の発生が分かれ目になっています。
停めただけでは、その条文には当たらないのですね。
妨害して危険を生じさせた場合は別です。
消火栓の前の駐車は、掲示と声かけで防いでください。
よくある質問
まとめ
- 消防水利の基準が対象としている水利は主として動力ポンプを使用する場合のものである
- 燃えやすい建造物等の多い所ほど多くの水量を供給せねばならないという原則に準拠している
- 消防法第21条の指定消防水利や私設の水利は基準設置数を緩和する措置が講ぜられている
- 消防法第20条第2項の水利施設とは人工水利を意味し水道消火栓貯水池又は貯水槽等を指称する
- 20立方メートルの防火水槽を2つ合計しても一の消防水利にすることはできない
- 補水装置の附設などにより40立方メートル以上の能力がないものは消防水利とはならない
- 消火栓上に駐車することのみをもって消防法第18条に抵触するものとすることはできない
- 正当な使用を現実に妨害し具体的な危険を発生させた場合には消防法第18条に抵触する
水の量ではなく、途切れずに出せるかで見ているのですね。
すっきりしました。
そのとおりです。
防火水槽の設置を検討される場合は、容量だけでなく補水装置まで含めて所轄消防署にご相談ください。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第18条・第20条・第21条・第29条 e-Gov法令検索
- 消防水利の基準(昭和39年12月10日消防庁告示第7号)
- 消防水利の基準について(昭和24年8月25日付消研発第54号・国消管発第357号)
- 指定消防水利の標識について(昭和40年12月11日付 教養課長から山形県民生部長あて回答)
- 消火栓上に駐車している車両の除去について(平成5年6月10日付け消防予第179号 消防庁予防課長から山口県総務部長あて回答)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の消防水利に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




