立入検査で「ここを直してください」と言われるのと、消防法第5条に基づく正式な「改修命令」を受けるのとでは、法的な重みがまったく違います。
命令は誰にでも出せるわけではなく、消防法は名宛人を権原を有する関係者に限定しています。
自社ビルならともかく、テナントが複数入る建物や所有者と管理者が分かれている物件では、この「権原」の所在がしばしば曖昧になります。
この記事では、改修命令の名宛人がどう決まるのか、条文に沿って整理します。
うちのテナントの1つに消防署から改修命令が来たと相談されました。
これって貸主のうちにも関係あるんでしょうか。
命令の名宛人になるのは、消防法上「権原を有する関係者」に限られます。
まずはその改修内容を誰が実行できる立場か、確認するところから始めましょう。
権原を有する関係者、というのが正直よく分かっていません。
所有者や管理者、占有者といろいろ出てきて混乱します。
そこが今日のテーマです。
条文の言葉を一つずつ整理していきましょう。
- 消防法第5条の改修命令は、「権原を有する関係者」だけを名宛人にできます
- 関係者とは消防法第2条第4項が定める所有者・管理者・占有者のことです
- 権原とは、その措置を実行できる法律上正当な原因(所有権・賃借権・管理委託契約など)を指すとされています
- 特に緊急の必要があるときは、関係者に加えて工事の請負人や現場管理者も命令の対象になります
- テナントが複数いる建物では、改修内容を実行できる立場が誰かを契約関係から確認する必要があります
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目次
改修命令とは何を指すのか

これに対して改修命令は、消防法に根拠を持つ法的な措置です。
立入検査での指摘(行政指導)は相手の任意の協力を前提にしますが、この条文に基づく命令は法的拘束力のある措置で、拒否や放置は違反として扱われます。
命令の内容も「改修」「移転」「除去」「工事の停止又は中止」など具体的で、期限を区切って実行を求められる点が指導との違いです。
条文をよく読むと、この命令には誰に対しても出せるわけではないという限定がかかっています。
次の見出しで、その名宛人の範囲を確認します。
うちに来るのはいつも「お願いします」ばかりで、命令という言葉は聞いたことがありません。
両方とも同じようなものだと思っていました。
指導と命令は法律上の重みが違います。
命令が出るのは、条文が定める要件に当てはまったときだけです。
改修命令の名宛人になれるのはどんな人か

命令の相手を絞り込む鍵になるのが「権原」という条件です。
消防法第5条第1項(抜粋) (略)権原を有する関係者(特に緊急の必要があると認める場合においては、関係者及び工事の請負人又は現場管理者)に対し、(略)必要な措置をなすべきことを命ずることができる。
これに対して命令の相手は「権原を有する」者に限定されており、単に建物に関係しているというだけでは足りません。
権原とは一般に、その措置を実行できる法律上正当な原因(所有権・賃借権・管理委託契約など)を指すとされています。
名義があるだけの立場や、その場に居合わせただけの立場は、権原を有するとはいえません。
自分がその改修を実行できる契約上の立場にあるかどうかが、最初に確認すべき点です。
所有者・管理者・占有者のうち、うちは占有者(テナント)に当たります。
命令はうちに来るということでしょうか。
それは改修の中身次第です。
その工事を実行できる立場にあるかどうかで決まります。
テナントが複数いる建物では誰が対象になるのか

命令はその中で、実際に改修を実行できる者に対して行われます。
テナント専有部分の設備なら占有者、建物本体や共用部分に関わる改修なら所有者や管理者が権原を持つ、という整理は一般的な考え方ですが、最終的には契約内容次第です。
賃貸借契約や管理委託契約の中で、修繕義務や改修の実行権限がどちらにあるかを確認しておく必要があります。
自分に権原がない改修を求められた場合は、黙って抱え込まず、真の権原者である貸主や管理会社と早めに連携することが実務上の対応になります。
権原の所在に迷うときは、所轄消防署に確認するのも有効な手段です。
うちのテナントは内装だけ自分たちで直していますが、外壁や共用部分の改修は大家さん任せです。
命令もそのとおりに分かれるんでしょうか。
改修の中身が専有部分か共用部分かで、権原を持つ人が変わることが多いです。
契約書で修繕の分担を確認しておくと安心です。
緊急時は誰が追加で対象になるのか

条文のかっこ書きに、見落としやすい追加のルールがあります。
通常は所有者・管理者・占有者といった関係者だけが対象と考えがちですが、火災の危険が差し迫っているなど特に緊急の必要があると認められる場合は、工事の請負人や現場管理者も名宛人になり得ます。
工事中の建物で足場や仮設材が火災の危険を高めているようなケースが典型です。
建物の関係者ではないからといって、工事関係者が命令と無縁とは限りません。
現場を預かる立場にある以上、緊急時にはこの規定が及ぶ可能性を理解しておく必要があります。
うちは今、外壁の工事を業者に頼んでいます。
命令が来るとしたら、うちではなく工事業者に直接来ることもあるんでしょうか。
特に緊急性が高い場合は、工事の請負人や現場管理者にも命令が及びます。
工事中は元請けとも情報を共有しておくと安心です。
命令を受けたら何から確認すればよいのか

順番に見ていけば迷いません。
消防法第5条第4項 前項の標識は、第一項の規定による命令に係る防火対象物又は当該防火対象物のある場所に設置することができる。(略)当該防火対象物又は当該防火対象物のある場所の所有者、管理者又は占有者は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。
まず命令書に書かれた改修等の内容を正確に読み、次に自分がそれを実行できる権原を持つかどうかを確認します。
権原がなければ、真の権原者(貸主や管理会社など)に速やかに連絡し、期限内に対応できる体制を作ることが必要です。
命令が出ると標識の設置による公示が行われますが、所有者・管理者・占有者はこの標識の設置を拒んだり妨げたりできません。
標識の設置基準や公示のタイミングについては、別記事で詳しく解説しています。
命令の内容と、自分に権原があるかどうかを最初に確認すればいいんですね。
そのとおりです。
真の権原者への連絡を後回しにしないことが大切です。
よくある質問
まとめ
命令が誰に届くのか、権原という言葉の意味がよく分かりました。
まずはテナントとの契約書を確認してみます。
権原の所在さえ押さえておけば、命令が来たときに慌てず対応できます。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第2条第4項(関係者の定義)
- 消防法第5条(改修命令等)
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





