図書館や博物館や美術館は、火を使う場面がほとんど無いので、消防の話とは縁が薄いように見えます。
ところが条文を開くと、防火管理者の要否も消防用設備等の基準も、独立した一つの区分としてきちんと書き分けられています。
とくに収容人員の数え方は、床面積を拾う部屋が条文で限られているので、建物の広さの印象とずれることがあります。
この記事では、図書館や博物館が消防法令でどう扱われ、収容人員をどの部屋で数えるのかを解説します。
市立の図書館を任されたのですが、建物は広いのに防火管理者は要らないと言われました。
延べ面積ではなく収容人員で決まるので、広さと結論が一致しないことがあります。
まず用途の区分から順に見ていきましょう。
書庫がかなりの面積を占めているのですが、そこも人数に換算されるのでしょうか。
そこが分かれ目です。
床面積を拾う部屋は消防法施行規則が名前で挙げているので、そこを確認しましょう。
- 図書館と博物館と美術館は令別表第一(8)項という独立した用途に掲げられています。(消防法施行令別表第一)
- (8)項は特定防火対象物ではないので既存の消防用設備等に新しい基準は原則として及びません。(消防法第17条の2の5第1項・消防法施行令第34条の4第2項)
- 防火管理者が必要になるのは収容人員が50人以上になったときです。(消防法施行令第1条の2第3項第1号ハ)
- 収容人員は従業者の数と閲覧室などの床面積を3平方メートルで除した数の合算で数えます。(消防法施行規則第1条の3)
- 防炎規制は原則としてかからず高層建築物や地下街に入っている場合だけ話が変わります。(消防法第8条の3第1項・消防法施行令第4条の3第1項)
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目次
図書館や博物館は消防法令でどの用途に区分されるのか

まず令別表第一のどこに載っているかを確かめます。
特定防火対象物を定める消防法施行令第34条の4第2項の並びに(8)項は入っていないので、図書館も博物館も美術館も特定防火対象物ではありません。
この違いは既存の建物に効いてきます。
消防法第17条の2の5第1項は、基準が改正されたときでも現に存する建物の消防用設備等には新しい規定を適用しないと定めており、その例外として第2項第4号が特定防火対象物を挙げているからです。
つまり基準が変わっても、(8)項の建物では消火器や避難器具など一部のものを除き、原則として従前の規定のままで足ります。
自分の建物がどの項かは、消防用設備等の点検結果報告書の表紙にある用途の欄で確認できます。
学校と同じ扱いだと思い込んでいました。
学校は(7)項で、図書館は別の(8)項として立てられています。
並びが違うと設備の基準もずれてきます。
防火管理者は収容人員何人から必要になるのか

その人数のしきいは用途の区分ごとに三段階に分かれています。
同じ条文の一つ前のロが、劇場や飲食店や物品販売店舗といった特定用途を30人以上としているのに対し、(8)項はハの側に並んでいます。
不特定多数が長時間とどまる用途に比べて、しきいが一段高く設定されているということです。
さらに一つ前のイでは、自力避難が困難な方が入所する(6)項ロなどが10人以上とされており、三段階の真ん中でも下でもなく、図書館は最も緩いハに位置づけられています。
なお選任したときは消防法第8条第2項により遅滞なく所轄消防長または消防署長へ届け出る必要があるので、人数がしきいを越えた時点で手続きが動き出します。
三段階のいちばん緩いところに入るのですね。
そのとおりです。
ただし人数の数え方しだいで50人はすぐ越えるので、次に算定方法を見ましょう。
収容人員はどの部屋の床面積で数えるのか

(8)項の行は、床面積を拾う部屋を名前で限定しているところが特徴です。
条文が名前で挙げているのは閲覧室・展示室・展覧室・会議室・休憩室で、書庫や収蔵庫や事務室は挙げられていません。
つまり書庫がどれだけ広くても、その床面積は3平方メートルで除する対象には入らないということです。
一方で書庫や事務室で働いている職員は、前段の従業者の数としてそのまま算入されます。
面積の按分から外れるのは部屋であって人ではない、という読み分けが必要です。
図面を開いて、この5つの部屋の床面積だけを合計してから電卓を叩くと、実際の人数が出せます。
広い書庫の面積を足していたので、ずいぶん多く見積もっていました。
逆に会議室や休憩室を忘れていると足りなくなります。
5つとも拾えているか図面で見直してみてください。
防炎規制やカーテンの扱いで見落としやすいのはどこか

(8)項は用途の側の並びに入っていないので、判断が二段構えになります。
消防法施行令第4条の3第1項の防炎防火対象物の並びに(8)項は無いので、用途を理由とする防炎義務は生じません。
ところが消防法第8条の3第1項は用途とは別に高層建築物と地下街を正面から挙げています。
高層建築物とは消防法第8条の2第1項の括弧書きにより高さ31メートルを超える建築物のことなので、複合ビルの一角に入っている図書館でも、建物がこの高さを超えていればカーテンやじゅうたん等に防炎性能が求められます。
なお美術館や博物館でよく使われる展示用の合板は、消防法施行令第4条の3第3項が防炎対象物品として名前を挙げていますが、義務が発動するのはあくまで同法第8条の3第1項に当たる建物の場合だけです。
自分の建物の高さと、地下街に面していないかを先に確かめると、判断が早く済みます。
用途で見て終わりにしていたら見落とすところでした。
建物の高さは登記や確認申請の図書ですぐ分かります。
まずそこを一度だけ確認しておけば以後は迷いません。
明日からなにを確かめればよいのか

数え直しと報告の周期を先に押さえると迷いが減ります。
第一に、閲覧室・展示室・展覧室・会議室・休憩室の床面積を図面から拾って3平方メートルで除し、従業者の数を足して収容人員を出します。
第二に、それが50人以上なら防火管理者を選任し、消防法第8条第2項により遅滞なく届け出ます。
第三に、消防用設備等の点検結果の報告は3年に1回なので、前回の報告日を維持台帳で確認して次回の年を控えておきます。
第四に、避難口誘導灯と通路誘導灯が要るのは地階と無窓階と11階以上の部分だけですが、誘導標識は消防法施行令第26条第1項第4号により(1)項から(16)項までが対象なので、剥がれや隠れが無いかを見ておきます。
最後に、消防法第8条の2の4と消防法施行令第4条の2の3により、廊下や階段や避難口に物が置かれていない状態を保ちます。
つまり図面で5つの部屋を拾うところから始めればよいのですね。
そこが起点です。
展示替えで部屋の使い方を変えたときは、そのつど数え直してください。
よくある質問
まとめ
どこを数えてどこを数えないかがはっきりしました。
さっそく図面から拾い直してみます。
収容人員の数え直しが出発点になります。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第8条第1項及び第2項/第8条の2第1項/第8条の2の4/第8条の3第1項及び第3項
- 消防法第17条の2の5第1項及び第2項第4号/第17条の3の3
- 消防法施行令第1条の2第3項第1号/第4条の2の2/第4条の2の3
- 消防法施行令第4条の3第1項から第3項まで/第34条の4第2項
- 消防法施行令第10条第1項/第11条第1項/第21条第1項/第26条第1項
- 消防法施行令別表第一
- 消防法施行規則第1条の3第1項/第31条の6第3項
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





