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民泊やテナントビルで防火管理者の委託ができないのはどんな場合か|管理権原の分かれと収容人員の基準も解説

民泊やテナントビルで防火管理者の委託ができないのはどんな場合か

民泊や雑居ビルのオーナーから「防火管理者を外部の代行業者に頼みたい」という相談を受けることがあります。
ですが、防火管理者の業務委託・外部委託という制度は、実はどんな防火対象物でも使えるわけではありません。
管理権原がオーナーごとにバラバラな雑居ビルでは、委託の入り口にすら立てないケースがあります。
東京消防庁の指導指針が示す6つの要件を、順番に見ていきましょう

 

うちのビル、テナントごとにオーナーがバラバラなんです。

 
 

それだと代行を頼めないことがあります

 
 

え、それってどういう基準で決まるんですか。

 
 

管理権原収容人員の2つで決まります。

 
この記事の結論
  • 防火管理者の業務委託には内部選任と外部選任の2つの形態があります
  • 委託選任には防火対象物の種類を含む6つの要件全てを満たす必要があります
  • 管理について権原が分かれている防火対象物は1号対象物に該当しません
  • 2号対象物になるには占有部分の収容人員が用途ごとの基準未満である必要があります
  • 管理権原がバラバラで収容人員も基準を超える場合は委託選任ができません

防火管理者の業務委託とはどのような制度か

防火管理者の業務委託は管理権原者が他の管理権原者または管理権原を有しない第三者に防火管理者の業務を委託し選任する制度であり内部選任と外部選任の2つの形態があることを示したイメージ

防火管理者は本来、その建物の所有者や管理者、テナントの占有者といった関係者自身か、その従業員から選ぶのが原則です。
ですが一定の条件を満たせば、他の管理権原者や外部の専門業者に委託して選任することが認められています。

東京消防庁「防火管理指導指針」は、共同住宅その他省令で定める防火対象物のうち「防火管理上必要な業務を遂行することができない」と認められるものについて、防火管理者の業務を他の管理権原者または管理権原を有しない第三者に委託して選任することができるとしている(政令第3条第2項、省令第2条第1項・第2項)。
委託選任には2つの形態がある。内部選任は、管理権原が分かれている防火対象物で、その建物の他の管理権原者に委託し選任する形態。外部選任は、その建物で管理権原を持たない第三者(警備会社等)に委託し、その第三者が指定する者を選任する形態である。
誰でも自由に委託できる制度ではありません
委託選任には、防火対象物の種類・業務遂行が困難な事由・権限の付与・業務内容の文書交付・状況説明・選任される防火管理者の資格という6つの要件が定められており、その全てに該当して初めて認められます。
中でもつまずきやすいのが最初の要件、防火対象物の種類です。
次の見出しから、この要件を具体的に見ていきます。

 

6つも要件があるんですね。

 
 

まずは対象物の種類から確認します

 

委託選任を認める防火対象物の種類とは

委託選任を認める防火対象物の種類は共同住宅である共住対象物管理権原者が同一の1号対象物小収容人員事業所を有する2号対象物小面積事業所特定資産に該当する3号対象物の5種類のいずれかに該当することが要件であることを示したイメージ

委託選任が認められるためには、まずその防火対象物が決められた種類のどれかに当てはまる必要があります。
指導指針は、この種類をア〜オの5パターンに整理しています。

防火対象物が次のアからオまでのいずれかに該当すること。 政令別表第一(5)項ロに掲げる共同住宅(共住対象物)。 複数の防火対象物の管理権原者が同一の者である場合における当該防火対象物(1号対象物)。 複数管理権原の防火対象物であって、一定の収容人員未満の部分を有するもの(2号対象物)。 2号対象物のうち、所有者自らが施設全体を管理する小面積事業所。 特定資産または不動産特定共同事業契約に係る不動産(3号対象物)。
民泊やテナントビルで関わるのは主にイとウです
は、複数の建物や複数のテナントを持つオーナーが、管理権原を統一している場合のルートです。は、管理権原がバラバラのままでも、それぞれの占有部分の収容人員が一定未満なら使えるルートです。
アの共同住宅、エの小面積事業所、オの特定資産は、それぞれ独自の要件を持つ別ルートで、テナントビルの委託選任では対象になりにくいものです。
次の見出しから、イとウそれぞれで実務上つまずきやすいポイントを見ていきます。

 

うちは1棟の中にいろんなオーナーがいるので、じゃなさそうですね。

 
 

なぜそうなるのか、詳しく見てみましょう。

 

管理権原が分かれている防火対象物はなぜ1号対象物に該当しないのか

複数の防火対象物の管理権原者が同一の者である場合における当該防火対象物が1号対象物であり管理について権原が分かれている防火対象物は1号対象物に該当しないことを示したイメージ

雑居ビルのように、フロアや区画ごとにオーナーが違う建物は多くあります。
このような建物は、委託選任の入り口である「イ」に当てはまるのでしょうか。

イ 複数の防火対象物の管理権原者が同一の者である場合における当該防火対象物(省令第2条の2第1項第1号で規定するもの(以下「1号対象物」という。))。※管理について権原が分かれている防火対象物は、1号対象物に該当しない。
権原が統一されていない建物は1号対象物になりません


「イ」のルートは、複数の防火対象物や区画の管理権原者が同一人物である場合に使えるものです。同じオーナーが複数の建物やテナントを持ち、それらをまとめて委託する、というケースを想定した仕組みです。
雑居ビルのように、フロアごと・テナントごとに別々のオーナーがいる建物は、この時点で「イ」の対象から外れます。
自分のテナントの管理権原者が、同じビルの他のテナントの管理権原者と同一人物かどうかは、委託選任を検討する最初のチェックポイントです。

 

じゃあうちはもう委託できないってことですか。

 
 

まだ「ウ」のルートが残っています

 

収容人員が基準を超えると2号対象物にもなれないのはなぜか

2号対象物の小収容人員事業所は用途に応じて収容人員が10人未満30人未満50人未満のいずれかの基準を下回る部分であり収容人員は当該防火対象物内の管理権原者ごとに算定することを示したイメージ

管理権原がバラバラでも、まだ「ウ」の2号対象物というルートが残っています。
ただしこちらにも、用途ごとに決められた収容人員の基準があります。

ウ 複数管理権原の防火対象物であって、次に掲げる部分を有するもの(2号対象物)の当該部分(小収容人員事業所)。政令別表第一(6)項ロ等の用途に供される部分は収容人員が10人未満の部分。(1)項から(4)項、(5)項イ、(6)項、(9)項イ等の事業所は収容人員が30人未満の部分。(5)項ロ、(7)項、(8)項、(9)項ロ、(10)項から(15)項まで等の事業所は収容人員が50人未満の部分
問 2号対象物の「小収容人員事業所」について、収容人員は、当該防火対象物内の管理権原者ごとに算定することとなるか。 答 お見込みのとおり。
基準は用途ごとに三段階に分かれています
自力避難が難しい方が入所する施設は10人未満、飲食店やホテルなど不特定多数が出入りする特定用途は30人未満、事務所や倉庫など非特定用途は50人未満という基準です。
そして収容人員は、建物全体でまとめてではなく管理権原者ごと、つまり自分の占有部分だけで数えます。
民泊は宿泊者を泊める特定用途に当たるため、自分の占有部分の収容人員が30人未満に収まっているかどうかが分かれ目になります。

 

うちの民泊部分は自分の占有分だけで数えるんですね。

 
 

はい。そこで30人を超えると話が変わります

 

雑居ビル内の民泊で委託を頼めないのはどんな場合か

管理権原が分かれていて1号対象物に該当せずかつ占有部分の収容人員が基準以上で2号対象物の小収容人員事業所にも該当しない場合はア〜オのいずれにも当てはまらず委託選任ができないため占有者自身の中から防火管理者を選任する必要があることを示したイメージ

ここまでの2つの条件を重ねると、委託選任が使えない典型的なパターンが見えてきます。

管理について権原が分かれている防火対象物は1号対象物に該当せず、小収容人員事業所の収容人員の基準を超える部分は2号対象物にも該当しない。この場合、アからオまでのいずれにも該当しないため、委託選任を認める要件を満たさない。
2つの条件が重なると委託の選択肢が消えます
管理権原がテナントごとにバラバラで、かつ自分の占有部分の収容人員が用途ごとの基準(10人・30人・50人未満)を超えている場合、その防火対象物はア〜オのどれにも当てはまりません
雑居ビル内の民泊で、部屋数が多く宿泊者数が特定用途の基準を超えているようなケースが、まさにこのパターンに当たります。
この場合、㈱防災屋のような外部業者への委託選任はできず、自社の占有部分の従業員や関係者の中から防火管理者を選任するほかありません。

 

うちの場合、両方とも当てはまりそうです

 
 

それなら自社の中から選任してください

 

よくある質問

Q内部選任と外部選任はどちらが使いやすいですか
Aどちらも同じ6つの要件を満たす必要があります。使い分けは建物の管理権原の状況によって決まります。
Q収容人員の基準は防火対象物全体で数えますか
Aいいえ。管理権原者ごと、つまり自分の占有部分だけで算定します。
Q委託選任ができない場合は防火管理者を置かなくてよいですか
Aいいえ。選任義務自体はなくなりません。占有者自身の中から選任する必要があります。
Q同じオーナーが複数棟を所有していれば必ず委託できますか
A対象物の種類の要件を満たしても、権限付与や文書交付など残り5つの要件も満たす必要があります。

まとめ

防火管理者の業務委託には内部選任と外部選任の2形態があります
委託選任にはまず防火対象物の種類(ア〜オ)の要件があります
管理権原が分かれている建物は1号対象物に該当しません
2号対象物になるには占有部分の収容人員が基準未満である必要があります
両方に該当しないと委託選任ができません
その場合は占有者自身の中から選任する必要があります
 

うちの物件がどっちに当てはまるか、自分で確認できそうです。
委託できるかどうか、まず調べてみます。

 
 

判断に迷ったら
管轄消防署への相談をおすすめします
㈱防災屋でもご相談を承っています。

 

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参考・出典

  • 東京消防庁「防火管理指導指針」第2章第2節第5 防火管理者の業務の委託
  • 消防法施行令第3条第2項
  • 消防法施行規則第2条の2

※本記事は東京消防庁「防火管理指導指針」(令和7年4月1日更新版)に基づく一般的な解説です。個別の建物における委託選任の可否は、防火対象物の実態や管轄消防署の判断により異なる場合があります。実際の届出にあたっては、必ず管轄消防署にご確認ください。

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