避難器具は取り付けたところで仕事が終わる設備ではありません。
条文は設置と維持を並べて書いていて、置いてあることと使えることを別々に求めています。
バルコニーの器具の前に段ボールが積まれていた、標識がいつのまにか外れていた、という指摘は立入検査で今も出続けています。
使えない状態で置かれた避難器具は基準に適合していない設備として扱われます。
避難器具は業者さんが点検してくれているので、こちらは何もしなくてよいと思っていました。
点検は年に数回ですが維持は毎日の話です。
今日は条文が何を求めているのかをほどいていきます。
標識が要るという話は聞いたことがあります。
あれは全部の避難器具に必要なものなのでしょうか。
そこがまさに分かれ目です。
3種類あって、必要になる建物がそれぞれ違います。
- 消防法第17条第1項は消防用設備等について技術上の基準に従って設置し及び維持しなければならないと定めており、避難器具もこの設備に含まれる
- 細目は消防法施行規則第27条第1項にあり、階段が一つしかない特定一階段等防火対象物の避難器具にはさらに厳しい要件が上乗せされている
- その上乗せはバルコニー等に設けるか常時使用できる状態か一動作で使えるかのいずれかに適合することという形で書かれている
- 標識は3種類あり、避難器具である旨と使用方法を表示するものだけは建物を限定せずすべての設置等場所に求められる
- 寸法などの細かい基準は同条第11号と第2項により消防庁長官が定めるところに委ねられており、条文だけを読んでも数値は出てこない
▼

目次
避難器具の設置及び維持の基準とはなにを指すのか

その枠組みの入口にあるのが消防法第17条第1項です。
取り付けた時点で基準に適合していても、その後に使えない状態になれば維持の義務のほうに引っかかります。
維持されていないと認められたときは、消防法第17条の4により関係者で権原を有するものに対して必要な措置を命ずることができるとされています。
避難器具の細かい基準は消防法施行令第25条と消防法施行規則第27条に置かれていて、規則のほうは条文の見出しからして細目です。
まずは自分の建物のどの階に避難器具があるのかを図面で押さえるところから始めてみてください。
設置は工事の話で、維持がこちらの話ということですね。
そのとおりです。
次はどの建物に上乗せの要件がかかるのかを見ていきましょう。
どの建物の避難器具に厳しい要件が上乗せされるのか

逃げ道が一本しかないので、避難器具に頼る場面が現実に起こりやすいからです。
イ 安全かつ容易に避難することができる構造のバルコニー等に設けるもの。
ロ 常時、容易かつ確実に使用できる状態で設置されているもの。
ハ 一動作(開口部を開口する動作及び保安装置を解除する動作を除く。)で、容易かつ確実に使用できるもの。
三つ全部をそろえる必要はなく、バルコニーに置くという解き方でも、一動作で使えるという解き方でも構いません。
ここでいう特定一階段等防火対象物は、飲食店や物販店などの用途が避難階以外の階にあって、その階から避難階または地上へ直通する階段が二以上設けられていない建物を指します。
消防法施行令第4条の2の2第2号がその形を定めていて、規則のほうでこの呼び名が付けられています。
自分の建物が該当するかどうかは、まず直通階段の数を数えるところで判断がつきます。
うちは二階が飲食店で階段は一本だけです。
まさに当てはまりそうです。
その場合は器具がイロハのどれで通っているかを設置業者に確かめておくと安心です。
次は標識の中身に進みます。
標識にはなにをどこに掲げなければならないのか

同じ第27条第1項の中に、掲げる場所も目的も違うものが三つ並んでいます。
イ 特定一階段等防火対象物における避難器具を設置し、又は格納する場所(以下この号において「避難器具設置等場所」という。)の出入口には、当該出入口の上部又はその直近に、避難器具設置等場所であることが容易に識別できるような措置を講じること。
ロ 避難器具設置等場所には、見やすい箇所に避難器具である旨及びその使用方法を表示する標識を設けること。
ハ 特定一階段等防火対象物における避難器具設置等場所がある階のエレベーターホール又は階段室(附室が設けられている場合にあつては、当該附室)の出入口付近の見やすい箇所に避難器具設置等場所を明示した標識を設けること。
イとハには特定一階段等防火対象物という言葉が入っていますが、ロにはそれが無く、避難器具設置等場所であれば掲げることになります。
つまり避難器具である旨と使用方法を書いた標識は、階段が二つある建物でも必要だという読み方になります。
イは扉の上や直近で場所そのものを分かるようにする措置、ハは階に着いた人がどこへ向かえばよいかを示す案内の標識です。
自分の建物で剥がれたり隠れたりしているものが無いか、格納箱と扉と階段室の三か所を順番に見てみてください。
つまり使用方法の標識はどの建物でも要るということですね。
条文の書き分けを見るとそう読めます。
次は見落としやすいところを並べます。
実務で見落としやすいのはどこか

まず開口部の位置に関する定めがあることは、あまり知られていません。
同項第十一号 避難器具(金属製避難はしご及び緩降機を除く。)は、消防庁長官が定める基準に適合するものであること。
同条第二項 前項に規定するもののほか、避難器具の設置及び維持に関し必要な事項は、消防庁長官が定める。
器具の前にどれだけの広さが要るか、下にどれだけの空間が要るかといった寸法は、第11号と第2項によって消防庁長官が定めるものへ送られています。
第2号の開口部の話は、上下の階で同じ位置に開口部を重ねないという趣旨で、ただし書で避難上支障のないものは除かれています。
そして日々の管理でいちばん多いのは、格納箱やハッチの上に物を置いてしまう形です。
特定一階段等防火対象物であればロの常時使用できる状態に反しますし、それ以外の建物でも法第17条第1項の維持の義務に触れます。
正直に言うと、うちのハッチの上に脚立が置いてあります。
すぐにどかします。
どかしたあとに置き場所を決めてしまうのが確実です。
最後に明日からの確認の順番をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

どの階に義務があるのかを条文で押さえておくと、見に行く場所が絞れます。
避難階と11階以上の階は除かれているので、対象になるのは中間の階と地階です。
そのうえで、格納箱とハッチの上と前に物が無いか、標識が読める状態で付いているかを順番に見ていきます。
階段が一つしかない建物であれば、扉の上の識別と階段室付近の案内が加わるので、確認の箇所が3か所になります。
気づいた不備は消防計画の自主検査の記録に残しておくと、次の点検や立入検査のときに説明ができます。
見る場所が決まっていれば毎月でも回れそうです。
回れる範囲で構いません。
記録に残っていることが後から効いてきます。
よくある質問
まとめ
今日のうちにハッチの上を片付けて標識も見てきます。
片付けたところを写真に残しておくとさらに確実です。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第17条第1項
- 消防法第17条の4第1項
- 消防法施行令第4条の2の2第2号
- 消防法施行令第25条第1項
- 消防法施行規則第27条第1項第1号・第2号・第3号・第11号
- 消防法施行規則第27条第2項
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





