BLOG

非火災報が止まらない建物はどこから手を付ければよいのか|感知器の特定と蓄積式への変更の順番を解説

病院の廊下の天井に感知器が並ぶ写真に非火災報が止まらない建物はどこから直すのかと記したアイキャッチ

自動火災報知設備が火事でもないのに鳴る日が続くと、どこから直せばよいのか分からなくなります。
業者から受信機ごと交換しかないと言われて、見積りの金額に驚いた方もいるはずです。
昭和61年の消防庁の通知は、手を付ける順番をはっきり示していました。
出発点は受信機ではなく非火災報を多く出している感知器のほうです。

誤報が多いので受信機を入れ替えましょうと勧められています。

その前に確かめる段階が通知には書かれています。
まずは感知器のほうを疑う順番です。

どこの感知器が鳴らしているのかまでは分かりません。

その特定こそが通知のいちばん最初の段階です。
特定できないときの進み方まで示されています。

この記事の結論
  • 非火災報対策を進めるうえでの留意事項をまとめた通知が、昭和61年11月6日の消防予第148号である
  • 特定防火対象物を他の防火対象物より優先して行うこととされ、なかでも消防法施行令別表第一(5)項イと(6)項は重点的に指導することが望ましいとされた
  • 既設の設備でまず求められるのは、非火災報を多く出している感知器の特定と、選択基準による環境に適応した感知器への変更である
  • それでも効果が認められないときは専門的な知識を有する者の診断を受けさせ、警戒区域単位か全警戒区域一括で蓄積式の機器を入れる
  • 蓄積付加装置を取り付けても現行規格に適合するものとはならないため、型式失効に伴う特例期間の延長は認められない

非火災報対策を進める順番を感知器の特定から感知器の交換と蓄積式中継器と蓄積式受信機まで4つの段階で示した図解

非火災報対策の留意事項はなぜ通知でまとめられたのか

天井のスラブに三つの感知器が並び受信機の盤の横で書類を持った人が立っている様子
この通知は、それまでに出ていた非火災報対策の指導をひとつに束ねたものです。
順番がばらばらに伝わっていたことが、まとめられた背景にあります。
自動火災報知設備の非火災報対策の推進上の留意事項について(通知)(昭和61年11月6日 消防予第148号) 自動火災報知設備に係る非火災報対策については、消防庁において、かねてより、①非火災報防止を十分に配慮した感知器の設置方法、②非火災報対策を施した火災報知設備の感知器、中継器及び受信機の導入に伴う規格の改正及びこれらの感知器等の設置基準等所要の規定の整備、③既設の自動火災報知設備に対する蓄積付加装置の設置等の措置を順次講じているところであり、その推進方について御指導願つているところである。今般、これらの非火災報対策を推進する上における留意事項を、下記のとおりまとめたので、これにより、非火災報対策の一層の促進をお願いする。
新しい規制ではなく整理の通知です。
本文が①②③として並べているとおり、消防庁は感知器の設置方法、機器の規格改正と設置基準の整備、既設設備への蓄積付加装置という三方向の措置をすでに順に打っていました。
ところが現場から見ると、どれを先にやればよいのかが分かりません。
そこで昭和61年11月6日の消防予第148号が、進め方の留意事項として一本にまとめられました。
自分の建物で誤報が続いているなら、まずこの通知が示す順番のどこに立っているかを確かめるところから始めてください。

対策そのものより順番を示した通知だったのですね。

そのとおりです。
では優先される建物から見ていきましょう。

どの防火対象物から優先して手を付けるのか

ホテルの建物と担架の置かれた診療所の建物と小さな事務所ビルが並んでいる様子
通知は建物の種類によって力の入れ方を変えるよう求めています。
線引きの基準になっているのは、そこで人が寝るかどうかです。
自動火災報知設備の非火災報対策の推進上の留意事項について(通知)(昭和61年11月6日 消防予第148号) 記 1 既設の自動火災報知設備に係る非火災報対策上の留意事項 (1) 既設の自動火災報知設備に係る非火災報対策は、防火対象物の実情に応じて指導することが必要とされるが、特定防火対象物については、その重要性にかんがみ、他の防火対象物より優先的に行うことが必要であり、特に、消防法施行令別表第一(5)項イ及び(6)項の防火対象物については、その必要性が高いことから、重点的に指導していくことが望ましいこと。
寝ている人がいる建物が最優先です。
名指しされた(5)項イは旅館・ホテル・宿泊所その他これらに類するもので、(6)項は病院・診療所・助産所や老人福祉施設などです。
どちらも就寝中だったり自力での避難が難しかったりする人がいるため、報知が止まっていたときの被害が大きくなります。
なお(6)項は昭和61年当時は枝分かれのない一つの項でしたが、現在はイからニまでに細分されており、施設の種類ごとに設置基準が分かれています。
自分の建物がこの二つに入るなら、非火災報を放置している期間そのものが危険だと考えて優先順位を上げてください。

宿泊施設と福祉施設が名指しされているのですね。

就寝施設は火災の発見が遅れやすいからです。
次はいよいよ手順そのものを見ます。

非火災報が続くときはどんな順番で対策するのか

試験棒を持った人と天井の感知器と中継器と受信機の盤が左から右へ並んでいる様子
ここがこの通知のいちばんの中身です。
安い順ではなく、原因に近い順に並べられています。
自動火災報知設備の非火災報対策の推進上の留意事項について(通知)(昭和61年11月6日 消防予第148号) (2) 既設の自動火災報知設備が非火災報を多く発生している場合には、設置場所に適応した感知器を使用していないことが多いことから、まず、防火対象物の関係者等に対し、非火災報を多く発生している感知器を特定するとともに、選択基準により適切な感知器に変更する措置を講じるよう指導すること。 (3) 前記(2)による措置を講じてもその効果が十分に認められない場合又は非火災報を発生している感知器を特定できない場合にあつては、非火災報対策に係る専門的な知識を有する者の診断等を受けさせるとともに、その結果を踏まえて、次に掲げるア(適切な感知器の設置による方法)、イ(特定警戒区域について対策を講じる方法)又はウ(全警戒区域について一括して対策を講じる方法)のいずれかの方法あるいは、その組合せによる方法により非火災報対策を講じるよう指導すること。
原因の特定が先で機器の交換は後です。
最初にやることは、非火災報を多く出している感知器を特定し、昭和60年6月18日の消防予第77号(選択基準)に照らして設置場所の環境に適応する感知器へ替えることです。
それでも直らない場合や、どの感知器が鳴らしているのか特定できない場合に、はじめて専門的な知識を有する者の診断を受けたうえで次の段階へ進みます。
アは適切な感知器の設置、イは特定の警戒区域に蓄積式中継器を入れる方法、ウは全警戒区域について蓄積式中継器の設置・蓄積式受信機への交換・蓄積付加装置の設置のいずれかで一括して対応する方法です。
イとウのどちらでも、蓄積時間には消防法施行規則第24条第7号の上限がかかります。
消防法施行規則第二十四条 (略)七 蓄積型の感知器又は蓄積式の中継器若しくは受信機を設ける場合は、一の警戒区域ごとに、次に定めるところによること。 イ 感知器の公称蓄積時間並びに中継器及び受信機に設定された蓄積時間の最大時間の合計時間が六十秒を超えないこと。 ロ 蓄積式の中継器又は受信機を設ける場合で煙感知器以外の感知器を設けるときは、中継器及び受信機に設定された蓄積時間の最大時間の合計時間が二十秒を超えないこと
見積りを取るときは、どの段階の話をしているのかを業者に確かめてください。

いきなり全部を蓄積式にする話ではなかったのですね。

段階を飛ばすと費用だけが増えます。
ここから先に大きな落とし穴があります。

蓄積付加装置を付ければ古い受信機を使い続けられるのか

後付けの箱を付けた古い受信機に赤い禁止の印が付き新しい受信機に青いチェックが付いている様子
対策を打ったのだから機器の更新は先送りできる、と考えたくなります。
通知はそこを名指しで否定しています。
自動火災報知設備の非火災報対策の推進上の留意事項について(通知)(昭和61年11月6日 消防予第148号) (4) その他 既設の自動火災報知設備について前記(3)に掲げた非火災報対策を講じる場合にあつては、次に掲げる事項に留意すること。 ア 既設の自動火災報知設備の感知器、中継器又は受信機については、型式失効等に伴う特例期間が定められているものがあり、機種によつては、特例期間の終期が直前となつているものもあることから、それらを考慮の上計画を立て、非火災報対策を講じるよう指導すること。(略) イ 前記(3)イにより蓄積付加装置を取り付けた受信機については、当該装置を取り付けても、現行規格に適合するものとはならないので、特例期間の延長は認められないものであること。
後付けの装置は規格適合の証明にはなりません。
蓄積付加装置は非火災報を減らすための措置であって、その受信機が現行の規格に適合したことを意味しません。
だから型式失効に伴う特例期間が延びることはなく、期限が来れば機器そのものの更新が必要になります。
通知はさらに、現行規格に適合するものへ取り替えるときは、すでに講じている非火災報対策との適合性が確認された機種に取り替えるよう強く指導することとも書いています。
型式承認の効力が一定の期間の経過後に失われる仕組みそのものは、今も消防法に置かれたままです。
消防法第二十一条の五 総務大臣は、第二十一条の二第二項に規定する技術上の規格が変更され、既に型式承認を受けた検定対象機械器具等の型式に係る形状等が当該変更後の同項に規定する技術上の規格に適合しないと認めるときは、当該型式承認の効力を失わせ、又は一定の期間が経過した後に当該型式承認の効力が失われることとするものとする。
対策と更新は別の話として、それぞれ計画に載せておいてください。

装置を付けたから当分このままでよい、とはならないのですね。

そこを分けて考えるのが大切です。
最後に明日からの確認事項をまとめます。

明日からなにを確認すればよいのか

点検表を持った人と受信機の盤と天井の感知器が並び確認している様子
通知は既設の設備だけでなく、新しく付けるときの留意点も置いています。
どちらにも共通するのは、感知器を置く場所の環境を見るという一点です。
自動火災報知設備の非火災報対策の推進上の留意事項について(通知)(昭和61年11月6日 消防予第148号) 2 新規の自動火災報知設備に係る非火災報対策上の留意点について (1) 自動火災報知設備の設置に当たつては、感知器の種類及び設置位置に対する配慮並びに非火災報対策を講じた中継器又は受信機の設置等により、非火災報の発生防止に十分配慮するよう強力に指導すること。 (2) 自動火災報知設備の感知器の設置は、規則第23条第4項、第5項及び第6項の規定によるほか、その設置上における運用に当たつては、選択基準により行うものであること。
誤報の記録が最初の資料になります。
いつ、どの警戒区域で、どの感知器が鳴ったのかを書き留めておくだけで、感知器の特定という第一段階が一気に進みます。
そのうえで、通知が引く消防法施行規則第23条第4項から第6項までを開き、その感知器を置いてよい場所なのかを突き合わせてください。
消防法施行規則第二十三条 (略)4 自動火災報知設備の感知器の設置は、次に定めるところによらなければならない。 一 感知器は、次に掲げる部分以外の部分で、点検その他の維持管理ができる場所に設けること。(略)ニ 煙感知器及び熱煙複合式スポット型感知器にあつては、イからハまでに掲げる場所のほか、次に掲げる場所 (イ)じんあい、微粉又は水蒸気が多量に滞留する場所 (ロ)腐食性ガスが発生するおそれのある場所 (ハ)厨房その他正常時において煙が滞留する場所 (ニ)著しく高温となる場所 (ホ)排気ガスが多量に滞留する場所 (ヘ)煙が多量に流入するおそれのある場所 (ト)結露が発生する場所(略)
厨房のそば、浴室の前、外気が吹き込む出入口まわりに煙感知器が付いていれば、それが原因である可能性が高い場所です。
なお感知器や受信機に手を入れる工事は消防法施行令第36条の2第1項第9号で消防設備士の業務とされ、その区分は消防法施行規則第33条の3により甲種第4類です。
明日はまず受信機の履歴と誤報のメモを並べ、疑わしい場所の写真を撮ってから相談に持ち込んでください。

誤報の日付を控えるだけでも意味があるのですね。

その記録が診断の出発点になります。
順番を守れば費用の掛け方も変わります。

よくある質問

Q誤報が多いと言われたら受信機を交換するしかないのですか?
A通知は逆の順番を示しています。まず非火災報を多く発生している感知器を特定し、選択基準により設置場所の環境に適応する感知器へ変更する措置から始めるよう求めており、受信機の交換は後の段階に置かれています。
Q感知器を替えても止まらないときはどうすればよいのですか?
A通知は非火災報対策に係る専門的な知識を有する者の診断等を受けさせたうえで、適切な感知器の設置による方法・特定の警戒区域について対策を講じる方法・全警戒区域について一括して対策を講じる方法のいずれか又はその組合せによることとしています。
Q蓄積式にすると火災の発見が遅れませんか?
A消防法施行規則第24条第7号が上限を置いています。感知器の公称蓄積時間と中継器及び受信機に設定された蓄積時間の最大時間の合計が60秒を超えないこと、煙感知器以外の感知器を設けるときは中継器と受信機の合計が20秒を超えないこととされています。
Q蓄積付加装置を付ければ古い受信機を使い続けられるのですか?
A通知は、装置を取り付けても現行規格に適合するものとはならないので特例期間の延長は認められないとしています。非火災報対策と機器そのものの更新計画は別に立ててください。

まとめ

昭和61年11月6日の消防予第148号は、非火災報対策を進めるうえでの留意事項をまとめた通知である
特定防火対象物は他の防火対象物より優先的に行うことが必要とされ、令別表第一(5)項イと(6)項は重点的に指導することが望ましいとされた
既設の設備でまず求められるのは非火災報を多く出している感知器の特定と、選択基準による適応する感知器への変更である
効果が認められないときや感知器を特定できないときは専門的な知識を有する者の診断等を受け、ア・イ・ウの方法かその組合せで対策する
警戒区域単位なら蓄積式中継器、全警戒区域一括なら蓄積式受信機への交換や蓄積付加装置の設置となり、蓄積時間は消防法施行規則第24条第7号による
蓄積付加装置を取り付けても現行規格に適合するものとはならず特例期間の延長は認められないと通知は明言している
新規に設置するときは消防法施行規則第23条第4項から第6項までによるほか、運用に当たっては選択基準によるものとされている

どこから手を付けるかで悩まなくてよくなりました。

まずは誤報の記録から始めてください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

参考・出典

  • 自動火災報知設備の非火災報対策の推進上の留意事項について(通知)(昭和61年11月6日 消防予第148号)
  • 自動火災報知設備の感知器の設置に関する選択基準について(昭和60年6月18日 消防予第77号)
  • 自動火災報知設備の非火災報対策の推進について(通知)(昭和60年12月4日 消防予第134号)
  • 蓄積型感知器と蓄積式中継器又は蓄積式受信機を接続する場合の留意事項について(通知)(昭和63年9月20日 消防予第134号)
  • 消防法第17条第1項・第17条の5・第17条の6・第21条の5
  • 消防法施行令別表第一(5)項イ・(6)項
  • 消防法施行令第36条の2第1項第9号
  • 消防法施行規則第23条第4項・第5項・第6項
  • 消防法施行規則第24条第6号・第7号・第8号
  • 消防法施行規則第33条の3

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
病院の廊下の天井に感知器が並ぶ写真に非火災報が止まらない建物はどこから直すのかと記したアイキャッチ
自動火災報知設備が火事でもないのに鳴る日が続くと、どこから直せばよいのか分からなくなります。 業者から受信機ごと交換しかないと言われて、見積りの金額に驚いた方もいるはずです。 昭和61年の消防庁の通知は、手を付ける順番を...