防火管理者を定めたら遅滞なく届け出ることになっています。
ところが条文で届出の相手として名指しされているのは所轄消防長又は消防署長です。
消防本部を置いていない市町村では市町村長がその役を担います。
この記事では消防長を市町村長と読み替える仕組みとその及ぶ範囲を順に解説します。
うちの町には消防署がありません。
選任届はどこへ持っていけばよいのでしょうか。
その場合の相手は市町村長になります。
消防法が第3条第1項の括弧書きでそう定めています。
ひとつの条文の括弧書きだけで足りるのですか。
その括弧書きに以下同じと書いてあるので後ろの条文にも効きます。
ただし効かない場面もあるので順に見ていきます。
- 消防本部を置かない市町村では消防法の消防長を市町村長と読み替えます。(消防法第3条第1項)
- 読み替えが及ばないと書かれているのは第六章及び第35条の3の2だけです。(消防法第3条第1項)
- 消防組織法は消防本部と消防署と消防団の全部又は一部を設けるよう求めています。(消防組織法第9条)
- 立入検査に当たるのは当該市町村の消防事務に従事する職員又は常勤の消防団員です。(消防法第4条第1項)
- 消火の活動の場面では消防団の長が権限を持つと個別に書き分けられています。(消防法第29条第2項及び第30条第1項)
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目次
消防本部を置かない市町村では届出の相手は誰になるのか

消防法は火災の予防を定めた章の先頭に置いた第3条第1項の括弧書きで、この読み替えをまとめて片づけています。
消防長(消防本部を置かない市町村においては、市町村長。第六章及び第三十五条の三の二を除き、以下同じ。)、消防署長その他の消防吏員は、屋外において火災の予防に危険であると認める行為者又は火災の予防に危険であると認める物件(略)の所有者、管理者若しくは占有者で権原を有する者に対して、次に掲げる必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
この括弧書きは以下同じで結ばれているので、第3条より後ろに出てくる消防法の消防長は、消防本部を置かない市町村では市町村長と読むことになります。
防火管理者を定めたときの届出先を書いた第8条第2項は所轄消防長又は消防署長としか書いていませんが、この読み替えが効くので市町村長が相手になります。
防火管理者が定められていないときの命令を書いた第8条第3項も、消防計画に従って業務が行われていないときの措置命令を書いた第4項も同じです。
つまり届出も命令も、条文の字面ではなく自分の市町村に消防本部があるかどうかで相手が決まります。
条文には市町村長とは書いていないのに読み替わるのですね。
先頭の条文にさかのぼって読むのがこつです。
迷ったら第3条第1項の括弧書きに戻ってください。
どうして消防本部を置かない市町村があるのか

根拠は消防法ではなく消防組織法にあります。
市町村は、その消防事務を処理するため、次に掲げる機関の全部又は一部を設けなければならない。
一 消防本部
二 消防署
三 消防団
消防組織法が挙げている機関は消防本部と消防署と消防団の3つで、市町村はこのうち全部又は一部を設ければ足ります。
消防団だけを置いて消防本部を置かないという選び方も、この条文の中に収まっているわけです。
そして同法第12条第1項は消防本部の長を消防長と定めているので、消防本部が無ければ消防長という職そのものが置かれません。
市町村の消防は同法第7条により条例に従って市町村長が管理することとされているので、消防長がいない場面で市町村長が前に出てくるのは筋の通った作りだといえます。
消防長がいないから市町村長が受け持つということですね。
そのとおりです。
消防の責任そのものは消防組織法第6条で市町村にあると定められています。
立入検査にはどんな立場の人が来るのか

実際に建物へ入ってくる人の側にも別の括弧書きが置かれています。
消防長又は消防署長は、火災予防のために必要があるときは、関係者に対して資料の提出を命じ、若しくは報告を求め、又は当該消防職員(消防本部を置かない市町村においては、当該市町村の消防事務に従事する職員又は常勤の消防団員。第五条の三第二項を除き、以下同じ。)にあらゆる仕事場、工場若しくは公衆の出入する場所その他の関係のある場所に立ち入つて、消防対象物の位置、構造、設備及び管理の状況を検査させ、若しくは関係のある者に質問させることができる。(略)
消防本部が無ければ消防職員も置かれないので、代わりに立つのが当該市町村の消防事務に従事する職員又は常勤の消防団員です。
役場で消防の事務を担当している職員が来ることもあれば、常勤の消防団員が来ることもあるという書き方になっています。
これとは別に第4条の2第1項は、消防長又は消防署長が管轄区域内の消防団員に立入検査をさせることができると定めており、消防本部を置かない市町村ではその相手が非常勤の消防団員に限るとされています。
同条第2項が第4条第1項ただし書及び第2項から第4項までを準用しているので、証票を携帯して求めがあれば示すという扱いは変わりません。
役場の職員が来ても立入検査として扱ってよいのですか。
条文がそう定めているので同じ立入検査です。
証票を見せてもらえば立場を確かめられます。
市町村長と読み替えない場面はあるのか

第3条第1項の括弧書きは、読み替えの及ばない範囲を自分で名指ししています。
消防長若しくは消防署長又は消防本部を置かない市町村においては消防団の長は、火勢、気象の状況その他周囲の事情から合理的に判断して延焼防止のためやむを得ないと認めるときは、延焼の虞がある消防対象物及びこれらのものの在る土地を使用し、処分し又はその使用を制限することができる。
第3条第1項の括弧書きは第六章及び第三十五条の三の二を除きと断っており、第六章は消火の活動を定めた第24条から第30条の2までです。
そのため延焼のおそれがある建物や土地を処分できる相手は市町村長ではなく消防団の長と、第29条第2項が正面から書き分けています。
火災の現場への給水を維持するために水利を使う場面を定めた第30条第1項も、同じ書き分けになっています。
また火災の原因の調査については第35条の3第1項が、消防本部を置かない市町村の区域では市町村長から求めがあった場合等に限って都道府県知事が行えると定めており、こちらも別建ての作りです。
平時と火災のときで相手が変わるということですか。
条文の区切りでいえば第六章の中かどうかで変わります。
届出や検査の話であればこの区切りには入りません。
明日からなにを確認すればよいのか

確認の入口は自分の市町村の条例です。
特定行政庁、建築主事等又は指定確認検査機関は、この法律の規定による許可又は確認をする場合においては、当該許可又は確認に係る建築物の工事施工地又は所在地を管轄する消防長(消防本部を置かない市町村にあつては、市町村長。以下同じ。)又は消防署長の同意を得なければ、当該許可又は確認をすることができない。(略)
建築の確認に必要な消防同意の相手も、消防本部を置かない市町村では市町村長だと建築基準法の側が自分で書いています。
自分の市町村がどちらなのかは、消防組織法第10条第1項が消防本部及び消防署の設置と位置と名称を条例で定めるとしているので、市町村の例規集を見れば確かめられます。
消防団についても同法第18条第1項が設置と名称と区域を条例で定めるとしているため、同じ場所で確認できます。
明日やることは1つで、選任届や消防計画の届出書の宛名が自分の市町村の消防機関に合っているかを、提出前に例規集と突き合わせておくことです。
例規集で消防本部の有無を先に見ておきます。
宛名が違うだけで受付が止まることもあります。
提出前のひと手間で防げます。
よくある質問
まとめ
まず例規集で消防本部の有無を確かめてきます。
そのうえで届出書の宛名を直します。
宛名を確かめておけば差し戻しを避けられます。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第3条第1項
- 消防法第4条第1項及び第2項
- 消防法第4条の2
- 消防法第8条第2項から第4項まで
- 消防法第29条第2項
- 消防法第30条第1項
- 消防法第35条の3第1項
- 消防組織法第6条及び第7条
- 消防組織法第9条及び第10条
- 消防組織法第12条及び第18条
- 建築基準法第93条第1項
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





