テナントの内装工事や設備の更新で建物の中に火花が飛ぶ作業が入ることがあります。
消防用設備等の基準や火気使用設備の基準は調べれば出てきますが、作業そのものの決まりは意外と見つかりません。
ところが火災予防条例には溶接作業等という条がきちんと置かれていて、そこに現場でやるべきことが並んでいます。
建物の関係者が知らないまま業者任せにしやすい部分なので、どの作業になにが求められるのかを条文から確かめておきます。
来月の改装で店内の鉄骨を溶接すると聞きました。
建物側でなにか決まりを確認しておくことはありますか。
火災予防条例に溶接作業等の条があって講じる措置まで書いてあります。
業者任せにせず建物側でも中身を押さえておきたいところです。
溶接だけを気にしていればよいのでしょうか。
いいえ、条文は火花を発し又は発炎を伴う作業を広く受けています。
どこまでが対象になるのかから順に見ていきましょう。
- 火の使用に関して必要な事項は消防法第9条が市町村条例に委ねているため作業の決まりは火災予防条例にあります
- 東京都火災予防条例は第28条を溶接作業等の条として置いています
- 対象は溶接や溶断だけでなく研摩や加熱など火花を発し又は発炎を伴う作業が広く含まれます
- 求められるのは消火の準備と遮熱や遮へいと可燃性物品の除去と監視と点検です
- とくに抜けやすいのが作業後の点検で条文にはっきり書かれています
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目次
溶接や溶断の作業に消防の決まりはあるのか

作業の決まりを置いているのは市町村の条例のほうです。
消防法施行令は第5条で対象火気設備等の位置と構造と管理を、第5条の2で対象火気器具等の取扱いを、それぞれ条例の制定基準として定めています。
ところが溶接や溶断は据え付けた設備でも持ち運ぶ器具でもなく、人が行う作業です。
そこを受けているのが同令第5条の3で、この2条に従って定めるもののほかは、火災の予防に貢献する合理的なものであることが明らかなものでなければならないとしています。
つまり作業の基準は条例に直接書かれているので、自分の建物がある市町村の条例を開くのが出発点になります。
設備と器具と作業で置き場所が分かれているのですね。
そのとおりです。
作業のほうは条例を見ないと出てこないので手元に置いておいてください。
どの作業がこの決まりの対象になるのか

そのため名指しされた作業だけを見ていると範囲を読み違えます。
条文は6つの作業を挙げたうえでその他の火花を発し、又は発炎を伴う作業と続けているので、名前が挙がっていない作業でも火花や炎が伴えば同じ基準がかかります。
もうひとつ見落としやすいのが、この項に場所や規模の限定が書かれていないことです。
劇場や百貨店のような特定の用途に限る書き方でも、一定の面積を超える建物に限る書き方でもありません。
小さな店舗の一角で行う短時間の作業でも条文の適用から外れないので、規模が小さいから関係ないという整理はしないでおきます。
看板を外すのにサンダーを当てるのも入りますか。
グラインダーによる研摩作業は条文に名指しで挙がっています。
火花が出る作業はまとめて対象と考えておくのが安全です。
作業のときに講じる措置はなにか

どれも道具さえあれば当日の段取りに組み込めるものです。
第1号は火花が当たる先を守る措置で、湿砂をまく、水をまく、不燃材料で遮熱する、難燃性を有するシートで遮へいするという手段が挙がっています。
第2号は可燃性物品の除去で、守るのではなく燃えるものを先にどけてしまうやり方です。
第3号が作業中の監視及び作業後の点検で、作業をする人とは別に見張りを置き、終わったあとにもう一度見て回ることを求めています。
第4号は受け皿なので、現場の条件に応じて所轄の消防署から追加の措置を求められることもあります。
養生シートを買うだけでは第2号と第3号が抜けるので、当日の手順書に可燃物をどける担当と見張りの担当を書き分けておくと漏れません。
見張りは作業をしている人が兼ねてはいけないのですね。
条文は兼務の可否までは書いていませんが、監視という言葉が別に立っています。
手が離せない作業なら人を分けておくほうが確実です。
実務で見落としやすいのはどこか

条番号が続いているので合わせて確認しておきます。
塗料や接着剤のように可燃性の蒸気を著しく発生する物品を使う作業や、木材や金属を削って粉じんが出る作業がここに当たり、換気と除じんと火気の制限が加わります。
第1項と同じく作業後の点検が両方に置かれている点も見逃せません。
もうひとつ気をつけたいのが、劇場等の舞台や客席や百貨店等の売場のように消防総監が指定した場所では、裸火の使用そのものが同条例第23条第1項で禁じられていることです。
その場所で火花を伴う作業をするなら、第28条の措置を講じるだけでは足りず、同項ただし書に基づく承認の要否を別に確かめる必要があります。
条例は市町村ごとに定めるものなので、条番号も中身も所轄の条例で読み直すことを前提にしてください。
売場の一角で作業するときは別の条も見ないといけないのですね。
指定場所かどうかで手続が変わります。
売場や舞台で火を使う予定があるなら早めに所轄へ相談してください。
明日からなにを確認すればよいのか

条文を読んだだけでは現場は変わりません。
まず工事や修繕の予定表を開いて、火花を発する作業が含まれる日に印を付けるところから始めます。
印が付いた日については、遮へいの方法と可燃物をどける範囲と見張りの担当と作業後の点検の時刻を、業者から出させる作業手順書に書かせておきます。
そのうえで所轄の消防署に、その市町村の条例で求められる措置と、届出や事前の相談が要る運用になっていないかを確認します。
最後に、消防計画に定めた火気の使用又は取扱いの監督の欄と実際の立会いの記録が結び付いているかを見直しておけば、立入検査で聞かれたときにそのまま示せます。
作業手順書に書かせるところまでが建物側の仕事なのですね。
書かせて受け取って残すまでが一組です。
立会いの記録は日付と担当の名前だけでも残しておいてください。
よくある質問
まとめ
工事の予定表に火花の出る作業の欄を足しておきます。
これで業者との打合せでも聞き漏らさずに済みそうです。
あとは作業後の点検まで書かせれば形になります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第9条
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第5条・第5条の2・第5条の3
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第1項第1号ル
- 東京都火災予防条例(昭和37年東京都条例第65号)第23条・第28条
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 東京都例規集データベース
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





