地震のあとに持ち出したい書類や記録は、どの会社にもあります。
自衛消防組織の中に運び出す係を作りたい、という相談も増えてきました。
ところが消防法令が要員を求めているのは、人の命に関わる業務のほうです。
この記事では重要な物を運び出す係をどう位置づけて消防計画に書くのかを整理します。
地震のときに大事な書類を運び出す係を作れと言われました。
消防計画に書いてよいものでしょうか。
書くこと自体はできます。
ただ法令が要員を求めている業務とは切り分けて考えてください。
法令が要員を求めている業務というのは決まっているのですか。
四つに絞られています。
どれも人に関する業務で物の搬出は入っていません。
- 法令が要員を求めている自衛消防組織の業務は四つだけです
- 四つはいずれも消火と情報と誘導と救出救護で物の搬出は含まれません
- 搬出の係を消防計画に書くこと自体は妨げられていません
- 書く場所は自衛消防組織の業務のうちその他必要な事項になります
- 四つの業務の要員を抜いて搬出へ回すことはできません
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目次
自衛消防組織はどんな業務のために置かれているのか

防災管理の側は、消防法第36条の中で一行だけ触れられています。
つまり法律そのものは、何をどこまでやるのかを具体的に書いていません。
中身を決めているのは消防法施行令と消防法施行規則のほうで、令第49条は防災管理に係る消防計画において火災以外の災害に対応するための業務を定めさせる形に読み替えています。
だから「搬出は法律に書いていないから駄目」とも「被害の軽減だから何でも入る」とも決めつけず、政省令まで下りて確かめる必要があります。
まずは自分の建物の消防計画を開いて、自衛消防組織の編成表がどんな班で組まれているかを見てみてください。
被害の軽減と書いてあるなら、書類を守るのも被害の軽減ではないでしょうか。
言葉の上ではそう読めます。
ただ人を何人置けと求められている業務は別に定められているので、そちらを先に見てください。
重要な物を運び出す係は法令が求める要員に数えられるのか

消防法施行令第4条の2の8第1項が業務ごとの員数を省令に預けており、その受け皿がこの条文です。
一 火災の初期の段階における消火活動に関する業務
二 情報の収集及び伝達並びに消防用設備等その他の設備の監視に関する業務
三 在館者が避難する際の誘導に関する業務
四 在館者の救出及び救護に関する業務
消火と情報と誘導と救出救護の四つで、物を運び出す業務はどこにも出てきません。
ここで大事なのは、おおむね二人以上という員数がこの四つにだけかかっているという点です。
搬出の係に何人集めても、その人数は四つの業務の要員として数えられませんし、逆に四つの要員をそのまま搬出の係として並べ替えることもできません。
自分の建物の編成表を、この四つの区分に当てはめて数え直してみてください。
うちの編成表には搬出班という欄がすでにありました。
これは書いてはいけない欄だったのでしょうか。
欄があること自体は問題ありません。
その欄の人が四つの業務と重なっていないかだけ確かめてください。
搬出の役割を消防計画に書くならどこに書くのか

消防計画に定める事項の並びを見ると、置き場所がはっきりします。
一 関係機関への通報、在館者が避難する際の誘導その他の火災以外の災害の被害の軽減のために必要な業務として自衛消防組織が行う業務に係る活動要領に関すること。
二 自衛消防組織の要員に対する教育及び訓練に関すること。
三 その他自衛消防組織の業務に関し必要な事項
第一号の活動要領は通報と避難誘導を例に挙げた人命側の業務なので、そこへ搬出を紛れ込ませると区別がつかなくなります。
総務省消防庁の「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」も、地区隊の基本編成のうち搬出班だけを任意設置の班として括弧書きで示し、その任務を重要書類及び物件の搬出としています。
書くときは、持ち出す物の種類と保管場所、誰が指示を出すのか、どの段階から動いてよいのかの三つをそろえてください。
班の名前を作るだけで活動を始める時期を書いていない計画が実際によくあります。
持ち出す物の一覧まで消防計画に載せるのですか。
全部を本文に書く必要はありません。
別紙の一覧を計画から呼び出す形にしておけば、中身が変わっても差し替えで済みます。
搬出を決めるときに見落としやすいのはどこか

班を分けるときの決まりが、防火管理の側の規定にそろえて置かれています。
搬出の係を新しく作るときは、この条文が求める区分と要員と統括する者の三つをそろえたうえで、四つの業務の人数が減っていないかを必ず確かめてください。
似ていて紛らわしいのが安全防護班の任務で、ガイドラインはその中に活動上支障となる物件の除去を挙げています。
こちらは活動の邪魔になる物をどかす行為で、守りたい物を持ち出す搬出とは目的がまったく違います。
ガイドラインは各班の兼任について、基本的にはできないと考えられるとしたうえで、負担が非常に少ない場合に活動場所が同一のときだけ妨げないという書き方をしているので、兼任を前提に人数を組まないでください。
誘導班の人が手が空いたら搬出を手伝う、という書き方も駄目でしょうか。
順序が書いてあれば読めます。
避難誘導が終わったあとと明記して、途中で抜けない形にしておいてください。
明日からなにを確かめればよいのか

その前に、決める人が誰なのかをはっきりさせておきます。
まず消防計画の編成表を開き、四つの業務のそれぞれに何人を置いているかを数えてください。
つぎに、搬出の係に名前が載っている人がその四つのどれかと重なっていないかを見ます。
そのうえで、持ち出す物の一覧と保管場所を作り、管理権原者の指示を受けて確定させます。
最後に、動いてよい時期を活動の順序として書き加え、その書き加えが変更の届出にあたるかどうかを所轄消防署へ確かめてください。
つまり数えるところから始めればよいのですね。
そこが出発点です。
数え終われば搬出の係に何人回せるかも自然に決まります。
よくある質問
まとめ
人が先で物はそのあとという順序がはっきりしました。
まずは編成表を数え直します。
その順序が書けていれば活動要領は整います。
消防計画の書き方でお困りでしたら㈱防災屋でもご相談を承っております。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条の2の5第1項・第36条第7項
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第4条の2の8第1項・第48条第3項・第49条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第4条の2の10第3項・第4条の2の11
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第51条の8第1項・第51条の10第1項
- 総務省消防庁「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年)別冊3
- e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





