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防火シャッターの閉鎖事故はなぜ起きるのか|危害防止ガイドラインと点検の要点

学校の廊下に設置された防火シャッターと点検の様子を示すイメージ

学校の廊下や体育館の入口には、天井から下りてくる防火シャッターが付いています。
火災の信号を受けて自動で閉まる設備ですが、閉まる途中で人が挟まれる事故も起きてきました。
事故を受けて消防庁が示したのが、シャッターの閉鎖時の安全対策をまとめた通知です。
通知が求めた対策の一部は、その後の建築基準法の改正で法令上の要件になっています

防火シャッターに閉じ込められるなんてこと、本当にあるんですか。

あります。火災の時だけでなく非火災報でも同じ速さで降りてきます

うちの建物のシャッター、対策が済んでいるのか気になってきました。

置き場所と同じで、対策にも順番があります。
まずガイドラインの中身から見ていきましょう。

この記事の結論
  • 平成10年に埼玉県の小学校で発生した死亡事故を受けて、消防庁は防火シャッターの閉鎖作動時における危害防止対策のガイドラインを示しました
  • 対象は感知器と連動して自動で閉まる防火(煙)シャッター全般で、火災以外の原因(非火災報)でも閉鎖することがある点が事故につながります
  • ガイドラインは注意喚起装置の設置危害防止機構を備えたシャッターへの更新の両輪を求めています
  • 通知は当時は行政指導でしたが、現在は建築基準法施行令第112条第19項第1号で法令上の要件になっています
  • 建物側がすべきことは自主点検専門業者による定期点検の両方を欠かさないことです

防火シャッターの死亡事故はなぜ起きたのか

学校の廊下で天井の防火シャッターが降下し感知器と連動している様子を示すイメージ
事故が起きたのは、火災そのものが原因ではありませんでした。
シャッターが自動で閉まる仕組みそのものが、思わぬ形で牙をむいたのです。
「防火シャッター閉鎖作動時の危害防止に関するガイドライン」の送付について(平成10年10月13日 消防予第183号 消防庁予防課長通知)=平成10年4月に埼玉県浦和市内の小学校において防火シャッターの閉鎖により死亡事故が発生するなど、防火シャッターの閉鎖時における事故が散見される。このような状況を踏まえ、防火シャッターの閉鎖作動時の危害防止対策について検討するため、(略)「防火シャッター閉鎖作動時の危害防止対策検討委員会」が設置された。消防庁においても、当該検討会に参画し検討に協力を行ってきたところであり、今般、当該検討結果が別添のとおり「防火シャッター閉鎖作動時の危害防止に関するガイドライン」としてとりまとめられ(略)送付する。
事故のきっかけは火災ではありませんでした
防火シャッターは、火災の熱や煙を感知した感知器の信号を受けて自動的に降りてくる設備です。
ところが実際には、火災以外の塵埃や湿度といった原因で感知器が誤って作動する「非火災報」でもシャッターは同じように降りてきます。
平成10年4月、埼玉県内の小学校でこの非火災報による降下が原因とみられる死亡事故が起き、業界団体と消防庁が協力してガイドラインをまとめることになりました。
自分の建物のシャッターも、火災の時だけでなく日常のちょっとした異常で降りてくることがあるという前提を、まず押さえておいてください。

火事でもないのにシャッターが降りてくることがあるんですか。

あります。非火災報でも同じ速さで降り切ります
だからこそ、事故を防ぐ仕組みが必要になったんです。

どんな防火シャッターが対象になるのか

学校とオフィスビルそれぞれの防火シャッターの設置箇所を示すイメージ
シャッターならなんでも対象というわけではありません。
ガイドラインが指しているのは、感知器と連動して自動で閉まるタイプです。
「防火シャッター閉鎖作動時の危害防止に関するガイドライン」(平成10年10月13日 消防予第183号)別添=建築基準法令に規定する煙(熱)感知器連動機構により閉鎖する防火(煙)シャッター(以下、「防火シャッター」という。)は、火災時に感知器からの信号を受けて自動的に閉鎖し、火災の拡大を防止するとともに、火災によって発生する煙を遮断して避難路を確保し、建築物内にいる人々の安全を図るものである。(略)主な原因としては、感知器が火災による熱又は煙以外の原因、例えば塵埃の集積、高湿度等の自然現象等により作動すること(いわゆる「非火災報」という。)であり(略)特に、防火シャッターが火災時以外に閉鎖することにより、人が挟まれるなどの死傷事故が発生している
対象は感知器連動で自動的に閉まるシャッターです
手で操作するだけの間仕切りシャッターや、常に閉まったままの防火戸は今回の話とは別です。
学校や病院、雑居ビルの廊下・階段室まわりなど、不特定多数や子どもが通る場所に設置されたものほどリスクが高いとされています。
特に小学校では低学年の児童による事故が多いとされ、ガイドラインも学校での教育や訓練を重視しています。
自分の建物のどこに感知器連動のシャッターがあるか、消防計画や設備図面で一度洗い出しておいてください。

うちの建物、どのシャッターが感知器連動なのか正直わかりません。

設備図面か消防計画に書いてあるはずです。
まずは連動元の感知器と一緒に確認しましょう

ガイドラインは何を求めているのか

音声と注意灯の警報装置と座板感知装置を備えた防火シャッターを比較するイメージ
対策は大きく分けて2つの柱で組み立てられています。
気づかせる仕組みと、挟まれても止まる仕組みです。
「防火シャッター閉鎖作動時の危害防止に関するガイドライン」(平成10年10月13日 消防予第183号)別添=管理者等は、次の事項について原則として実施できるものから実施するものとする。防火シャッターの危害防止対策の立案、防火シャッターの役割、機能の周知、防火シャッター等の維持管理の励行(略)また、管理者等は、建築物の用途、利用者の実態を総合的に判断して、当面(略)防火シャッター閉鎖作動時の注意喚起装置の設置等を原則として実施することが望ましく、危害防止機構を備えた防火シャッターの据付けを、必要に応じて実施するものとする。
気づかせる対策と止める対策の2段構えです
音声発声装置や注意灯、シャッター本体への危険表示は、閉まっている最中だと気づかせるための対策です。翌年の技術基準(平成11年1月27日 消防予第20号)では、音声を1m先で85dB以上にすることや、危険表示の文字を10cm四方以上にすることなど、具体的な数値まで示されました。
一方、シャッター最下部の座板に感知板を仕込み、人に触れると止まる方式や、煙感知器の段階でいったん床から30cmから50cmの高さで停止する2段降下型は、挟まれそうになっても止まる仕組みそのものです。
ただし2段降下型は、たて穴区画や異種用途区画をつくるシャッターには使えないとされています。これらの区画は煙感知器の信号だけで確実に閉鎖しなければならないためです。
既存のシャッターに後付けできる対策と、更新時にしか選べない対策があるので、どちらの段階の話かを分けて考えてください。

音声とランプだけでもやる意味はあるんですね。

あります。気づいて避ければ、それだけで事故は防げます
座板式への更新は、次の入れ替えのタイミングで検討しましょう。

古いガイドラインだからと見過ごしてよいのか

危害防止機構の無い古い防火シャッターと座板感知を備えた新しい防火シャッターを比較するイメージ
このガイドラインは、出た当時はあくまで行政指導でした。
しかし今の防火設備には、もう1つ別の網がかかっています。
建築基準法施行令第112条第19項第1号=(略)次に掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの イ 常時閉鎖若しくは作動をした状態にあるか、又は随時閉鎖若しくは作動をできるものであること。 ロ 閉鎖又は作動をするに際して、当該特定防火設備又は防火設備の周囲の人の安全を確保することができるものであること。 ハ 居室から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路の通行の用に供する部分に設けるものにあつては、閉鎖又は作動をした状態において避難上支障がないものであること。 ニ (略)自動的に閉鎖又は作動をするものであること。
今は法令そのものが安全確保を求めています
ガイドラインが出た平成10年当時、注意喚起装置や危害防止機構の設置はあくまで任意の推奨でした。
しかしその後の建築基準法施行令の整備で、新たに設置する特定防火設備・防火設備は閉鎖・作動時に周囲の人の安全を確保できる構造であることが要件として明文化されています。
ここが見落とされやすいところです。既存のシャッターにさかのぼって取り替えを強制するものではありませんが、新設や更新のタイミングではこの要件を満たす製品を選ばなければなりません。
「昔からある推奨事項」という認識のまま更新工事の仕様書を確認すると、安全機構が入っていないことに気づかないまま発注してしまうおそれがあります。

古い通知の話だと思っていたので、今の法令にもつながっているとは知りませんでした。

そこが一番見落とされがちです。
更新工事の見積りには危害防止機構の有無を明記してもらいましょう

明日からなにを確認すればよいのか

防火シャッターの点検を行う専門業者と点検表示板を示すイメージ
仕組みが分かったところで、次にやることは点検です。
自分でできることと、業者に頼むことを分けて考えます。
「防火シャッター閉鎖作動時の危害防止に関するガイドライン」(平成10年10月13日 消防予第183号)別添=自主点検は、建築物の管理者が自ら行う日常の点検である。目視による点検のほか、必要に応じて防火シャッターを作動させ、平常と異なる状況の有無を点検する。異常がある場合は、専門業者に連絡して補修を行う。(略)このような維持管理の上で重要な専門的かつ技術的な定期点検業務は、当該設備を設置した専門業者に委託するなど、専門業者と協力して行うことが望ましい。(略)(社)日本シャッター工業会が定める「定期点検の要領と判定基準」及び同工業会が認定する「防火シャッター保守点検専門技術者」による点検の普及に努める。
自主点検と業者点検の両方が要ります
建物の管理者は、目視に加えて実際にシャッターを作動させ、平常と違う動きがないかを日常的に確認することが求められています。
機構部分の専門的な点検は、設置した専門業者や防火シャッター保守点検専門技術者に委託することが望ましいとされています。
シャッターと連動する感知器についても、老朽化や規格の変更がないか、専門業者にあわせて点検してもらいましょう。
学校などでは、避難訓練の際に実際にシャッターを作動させ、児童や利用者にくぐり抜けの危険性を教える機会にすることも忘れないでください。

業者に頼む点検と自分でやる点検、何が違うのか整理できました。

それぞれ役割が違います。
次の点検のときに危害防止機構の有無も一緒に聞いてみてください

よくある質問

Q防火シャッターはどれも危険なのですか?
A回答は、感知器と連動して自動的に閉鎖するタイプが対象で、火災時以外の非火災報でも作動することが事故の背景にあるとしています。手動式や常時閉鎖式の防火戸は今回のガイドラインの主な対象ではありません。
Q古いシャッターは今すぐ交換しないといけませんか?
A回答は、建築基準法施行令の要件は新設・更新時に適用されるもので、既存のシャッターに遡って交換を義務付けるものではないとしています。ただし更新のタイミングでは危害防止機構を備えた製品を選ぶ必要があります。
Q2段降下型のシャッターはどこにでも使えますか?
A回答は、たて穴区画又は異種用途区画を構成する防火シャッターには使用できないとしています。これらの区画は煙感知器の信号で確実に閉鎖しなければならないためです。
Q点検は誰に頼めばよいですか?
A回答は、機構部分の専門的な点検は設置した専門業者や、業界団体が認定する防火シャッター保守点検専門技術者への委託が望ましいとしています。日常の自主点検は建物の管理者自身が行います。

まとめ

平成10年に埼玉県の小学校で発生した死亡事故を受け、消防庁は防火シャッターの危害防止ガイドラインを通知しました
対象は感知器と連動して自動で閉まる防火(煙)シャッターで、非火災報でも閉鎖する点が事故の背景です
対策は気づかせる注意喚起装置と、挟まれても止まる危害防止機構の2本柱です
2段降下型はたて穴区画・異種用途区画には使えません
通知は当時は任意でしたが、現在は建築基準法施行令第112条第19項第1号で法令上の要件になっています
新設・更新時にはこの要件を満たす製品を選ぶ必要があり、既存への遡及適用ではありません
自主点検と専門業者による定期点検を両方欠かさないことが実務の基本です

シャッターの下をくぐらない、というだけの話じゃなかったんですね。

そうなんです。気づく仕組みと止まる仕組み、両方があってはじめて安全です。
㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • 「防火シャッター閉鎖作動時の危害防止に関するガイドライン」の送付について(平成10年10月13日 消防予第183号 消防庁予防課長通知)
  • 「閉鎖作動時の危害防止に関する防火シャッター等の技術基準」等の送付について(平成11年1月27日 消防予第20号 消防庁予防課長通知)
  • 建築基準法施行令第112条第19項第1号

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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学校の廊下に設置された防火シャッターと点検の様子を示すイメージ
学校の廊下や体育館の入口には、天井から下りてくる防火シャッターが付いています。 火災の信号を受けて自動で閉まる設備ですが、閉まる途中で人が挟まれる事故も起きてきました。 事故を受けて消防庁が示したのが、シャッターの閉鎖時...