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地震で建物の構造体はどこまで壊れると想定するのか|新耐震基準と耐震診断の結果で書き分ける考え方を解説

地震で建物の構造体はどこまで壊れると想定するのかを示すアイキャッチ画像

地震のあと、建物の骨組みそのものはどうなると見込めばよいのでしょうか。
防災管理に係る消防計画には、建築物の被害を想定して書く欄があります。
ここは条件を満たせば大きな被害を考慮しなくてよいとされている珍しい項目です。
この記事では建築構造等の基本被害をどう書き分けるのかを条文と消防庁のガイドラインから整理します

うちのビルは平成に建ったものです。
骨組みの被害まで消防計画に書くのでしょうか。

書く欄はあります。
ただし新耐震基準に適合していれば大きな被害は考慮しなくてよいとされています。

では想定の欄は空けておいてよいのですか。
ほかにも書くことがあるように思えます。

空けてはいけません。
省けるのは骨組みの話だけで、設備や棚は別の項目です。

この記事の結論
  • 建築物の被害を想定する受け皿は消防法施行規則第51条の8第1項第二号イです
  • 新耐震基準に適合していれば建築構造等の大きな被害は考慮しなくてよいとされています
  • 考慮しなくてよいのは骨組みの話で設備や収容物やライフラインは別の項目です
  • 耐震改修促進法の適用があるときは耐震診断の結果に基づいて想定します
  • 昭和56年5月31日以前に新築の工事に着手した建物は安全性が明らかでない建築物として扱われます

建築の年を調べ新耐震か確かめ耐震診断の結果を探して想定欄に根拠を書く流れを並べた図解

消防計画でいう建築構造等の基本被害とはなにを指すのか

事務所ビルの断面と柱を担当者が確かめて消防計画のとじ込みに写しているイラスト
まず、建物そのものの被害がどの欄に入るのかを確かめます。
消防計画の想定欄は、建物と人と物をまとめて一つの文にしてしまいがちなところです。
消防法施行規則第51条の8第1項第二号イ 地震発生時における建築物その他の工作物及び建築物その他の工作物に存する者等の被害の想定並びに当該想定される被害に対する対策に関すること。
「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年 総務省消防庁)別冊1 2(1)建築構造等の基本被害 当該防火対象物の建築構造について、耐震診断の結果や過去の実例等に基づき、被害を想定する。
はじめに見るのは骨組みです
省令が想定させているのは建築物その他の工作物の被害と、そこに存する者等の被害の両方です。
その中身を項目に分けているのが消防庁のガイドラインで、いちばん先に置かれているのが建築構造等の基本被害です。
判断の材料として挙がっているのは耐震診断の結果と過去の実例で、二つは並べて書かれています。
自分の建物にそのどちらがあるのかを先に確かめると、この欄は書けるようになります。

建物と人と物をまとめて一文で書いていました。
分けたほうがよいということですね。

そのほうが確かめやすくなります。
並んでいる順に、建築構造等から見ていってください。

新耐震基準に適合していれば想定を省いてよいのか

建物の柱と梁を紺色で示しその横に棚と機器と装置を別の色で並べたイラスト
つぎに、どこまで省いてよいのかを見ます。
ガイドラインが考慮しなくてよいという書き方をしている箇所は限られています。
「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年 総務省消防庁)別冊1 2(1)建築構造等の基本被害 ア 建築基準法上の新耐震基準に適合している場合には、建築構造等の大きな被害は考慮しなくてよいこととする。 イ 耐震改修促進法の適用がある場合には、想定した地震規模に応じた耐震診断の結果に基づき、建築物の構造体に係る被害を想定する。
省けるのは骨組みの大きな被害だけです
アが外しているのは大きな被害であって、被害そのものが起きないと言い切っているわけではありません。
同じ免除は避難施設等被害にも置かれていますが、そちらには経路の一つ以上に障害が出るという別の一文が続きます。
建築設備等被害と消防用設備等被害と収容物等被害には、新耐震を理由にした免除は書かれていません。
ライフラインに至っては基本的に利用できないものとして想定するとされているので、想定欄が一行で済むことはありません。

考慮しなくてよいと書いてあるのは限られた場所なのですね。
ほかの項目は免除されないと。

避難施設等被害にも同じ免除があります。
ただしそちらには経路の障害を想定する一文が続きます。

自分の建物が耐震診断の対象かはどこで見分けるのか

書類と印を確かめる担当者とプレートの立つ建物を並べたイラスト
つづいて、イのほうの入口を確かめます。
耐震改修促進法の適用があるかどうかで、想定の書き方が変わります。
建築物の耐震改修の促進に関する法律第2条第1項 この法律において「耐震診断」とは、地震に対する安全性を評価することをいう。 同法施行令第3条 法第五条第三項第一号の政令で定めるその地震に対する安全性が明らかでない建築物は、昭和五十六年五月三十一日以前に新築の工事に着手したものとする。(略)
分かれ目は昭和56年5月31日です
耐震診断は地震に対する安全性を評価することと定義されており、消防法ではなく耐震改修促進法の用語です。
同法の施行令は、その日以前に新築の工事に着手した建物を安全性が明らかでない建築物として扱っています。
そのうえで附則第3条第1項は、多数の者が利用する大規模なものについて耐震診断を行い結果を所管行政庁へ報告するよう定めています。
第14条の特定既存耐震不適格建築物であれば診断は努力義務なので、まず自分の建物がどちらなのかを確かめてください。

つまり昭和56年より前か後かで分かれるのですね。
建築確認の日付を調べてみます。

完成の日ではなく着手の日で分かれます。
確認済証の年月日から当たってみてください。

実務で見落としやすいのはどこか

柱と梁が無事な建物の隣で扉が引っかかり棚が倒れた廊下を示したイラスト
ここからは、外しやすいところを三つ見ます。
どれも骨組みが無事だという前提から出てくるものです。
「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年 総務省消防庁)別冊1 2(3)避難施設等被害 ウ 避難経路のうち1以上は使用に障害が発生することを想定する。
骨組みと避難経路は別の話です
一つ目は経路で、避難経路のうち一つ以上は使用に障害が発生するものとして想定するよう求められています。
二つ目は増改築で、昭和56年6月1日以後に増築や大規模の修繕の工事に着手して検査済証の交付を受けたものは施行令第3条ただし書の対象から外れる扱いです。
三つ目は結果の使い方で、イは耐震診断の結果に基づいて構造体の被害を想定するとしています。
診断書が手元にあっても想定欄に写していなければ、この一文を満たしたことにはなりません。

診断書は持っているのですが想定欄には写していません。
それでもよいのでしょうか。

よくありません。
ガイドラインは診断の結果に基づいて想定するよう求めています。

明日からなにを確認すればよいのか

担当者が消防計画のとじ込みと書類を机に広げて相談しているイラスト
最後に、手順に落とします。
確かめるのは三つだけです。
消防法施行規則第51条の8第1項 防災管理者は、令第四十八条第一項の規定により、建築物その他の工作物の位置、構造及び設備の状況並びにその使用状況等に応じ、おおむね次に掲げる事項について、当該建築物その他の工作物の管理について権原を有する者の指示を受けて防災管理に係る消防計画を作成し、別記様式第一号の二の届出書によりその旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。(略)
三つを順に確かめます
一つ目は建築の年で、新築の工事に着手した日が昭和56年5月31日より前か後かを建築確認の書類で見ます。
二つ目は診断の結果で、耐震改修促進法の対象であれば所管行政庁へ報告した書類が残っているはずなので、その有無を尋ねます。
三つ目は想定欄で、骨組みを考慮しないと決めたならその根拠を一行添え、設備と収容物と避難経路は別に書き起こします。
省令は管理権原者の指示を受けて消防計画を作ると定めているので、建物の書類はそちら側から取り寄せてください。

建築の年と診断の結果と想定欄の三つですね。
管理会社に聞いてみます。

その順で足ります。
書類は管理権原者の側から取り寄せると早いです。

よくある質問

Q新築の工事に着手した日はどこで確かめられますか?
A建築確認の申請書や確認済証に記された年月日が手がかりになります。建築物の耐震改修の促進に関する法律施行令第3条は昭和56年5月31日以前に新築の工事に着手したものを安全性が明らかでない建築物としており、建物が完成した日ではなく着手の日で分けています。書類が見当たらないときは所有者や管理会社に照会してください。
Q耐震診断の結果は消防署に報告するのですか?
A報告先は消防ではなく所管行政庁です。同法附則第3条第1項が報告を求めており、所管行政庁は同法第2条第3項により、建築基準法の規定で建築主事または建築副主事を置く市町村や特別区の区域についてはその長、それ以外の区域については都道府県知事とされています。消防法令に基づく届出とは別の手続です。
Q耐震診断を受けていない建物はどう想定すればよいですか?
Aガイドラインの別冊1は建築構造について耐震診断の結果や過去の実例等に基づき被害を想定するとしており、二つを並べて挙げています。診断の結果が無い場合は過去の実例のほうを手がかりにすることになります。どの資料を実例として用いるかは所轄消防署にご確認ください。
Qテナントとして入居している場合も骨組みまで想定するのですか?
A防災管理に係る消防計画は建築物その他の工作物を単位に作るもので、消防法施行規則第51条の8第1項は管理について権原を有する者の指示を受けて作成すると定めています。建築確認や耐震診断の書類は建物全体に関わるものなので、統括防災管理者や管理権原者を通じて確かめてください。共同で作る部分の分担は所轄消防署にご確認ください。

まとめ

建築物の被害を想定する受け皿は第51条の8第1項第二号イです
新耐震基準に適合していれば建築構造等の大きな被害は考慮しなくてよいとされています
同じ免除は避難施設等被害にも置かれています
それでも避難経路の一つ以上は使用に障害が出るものとして想定します
耐震改修促進法の適用があるときは耐震診断の結果に基づいて想定します
昭和56年5月31日以前に新築の工事に着手した建物は安全性が明らかでない建築物です
診断の結果を報告する先は消防ではなく所管行政庁です

骨組みが無事でも書くことは残るとわかりました。
まず建築確認の年月日から確かめます。

そこが決まれば残りは順番に埋まります。
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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第36条第1項
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第45条・第48条
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第51条の8第1項第二号イ
  • 建築物の耐震改修の促進に関する法律(平成7年法律第123号)第2条・第5条第3項・第14条・附則第3条
  • 建築物の耐震改修の促進に関する法律施行令(平成7年政令第429号)第2条・第3条
  • 建築基準法(昭和25年法律第201号)第3条第2項
  • 総務省消防庁「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年)別冊1
  • e-Gov法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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