飲食店の火災で最も多いのはこんろを出火源とする火災で、その多くは調理中にその場を離れている間に発生しています。
これまでの自動消火装置は、高価で専門業者による工事が必要な大規模厨房用か、業務用ガスこんろの火に対応できない住宅用しかなく、小規模な飲食店に合う選択肢がありませんでした。
この隙間を埋めるため、消防庁は令和2年に小規模飲食店向けの厨房用簡易型自動消火装置の技術ガイドラインを通知で定めました。
この記事では、対象になる飲食店の範囲、技術ガイドラインが求める中身、そして導入時の注意点を解説します。
うちは小さい定食屋なんですが、厨房に自動消火装置を付けたほうがいいんでしょうか。
小規模な飲食店向けに、消防庁が令和2年に技術ガイドラインを示しています。
まずはどんな装置か確認してみましょう。
大きい店のダクトに付いているような装置とは違うんですか。
はい。
大規模厨房用と住宅用の中間に位置する、小規模飲食店向けの装置です。
順番に見ていきましょう。
- 厨房用簡易型自動消火装置は、令和2年5月29日消防予第138号で消防庁が定めた、小規模飲食店向けの技術ガイドラインに基づく装置です。
- 対象になるのはこんろ・レンジ・フライヤーで、大規模厨房の義務設置対象や住宅の台所は対象から除かれます。
- ガイドラインは感知部の方式や貯蔵容器の耐圧、消火性能など、装置の構造と性能を具体的に定めています。
- 設置は専門業者による施工が望ましいとされているだけで、設置そのものを義務付けるものではありません。
- 装置を設置しても、こんろ等を壁体から離す、可燃物を放置しないといった日常の出火防止対策は欠かせません。
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目次
厨房用簡易型自動消火装置の技術ガイドラインはなぜ作られたのか

自動消火装置を付けたくても、これまでは選べる機器に大きな隙間がありました。
飲食店の火災はこんろが最多の出火源で、約6割は調理中にその場を離れている間に発生しています。
これまでの自動消火装置は、高価で専門業者による工事が必要な大規模厨房用か、業務用ガスこんろの火に対応できない住宅用しかありませんでした。
そこで消防庁は「小規模飲食店に設ける厨房用自動消火装置等のあり方に関する検討部会」での検討を経て、令和2年5月29日に消防予第138号として技術ガイドラインを通知しました。
うちは小さい店なので、これまでは装置を導入するのを諦めていました。
その隙間を埋めるためにできたのが、この技術ガイドラインです。
次に、どんな飲食店が対象になるかを見てみましょう。
厨房用簡易型自動消火装置はどんな厨房が対象になるのか

どんな厨房が対象になり、何が除かれるのかを確認しましょう。
地階の大規模な厨房など、条例の基準を定める省令第11条で自動消火装置の設置が義務付けられている場所は、このガイドラインの対象から除かれます。
住宅等の台所も対象外で、あくまで飲食店等の業務用の厨房設備が対象です。
つまりこのガイドラインは、義務設置の対象ではないが住宅用の装置では力不足という、中間に位置する飲食店向けの基準です。
うちの店は地下じゃないので、義務で付けなきゃいけない装置とは違うんですね。
はい、あくまで任意で導入する装置です。
次は、基準が装置に何を求めているかを見てみましょう。
厨房用簡易型自動消火装置の技術ガイドラインは何を求めているのか

主な項目を確認しましょう。
感知部は感知器型・易融性金属型・温度センサー型・炎検知型の4方式のいずれかで火災を感知します。
消火薬剤の貯蔵容器には周囲温度40℃以下で温度変化の少ない場所への設置が求められ、蓄圧式には指示圧力計の取り付けも必要です。
性能試験では菜種油に着火してから2分以内に作動し、消火薬剤の放出終了後2分以内に再燃しないことが求められます。
感知してから消えるまで、そんなに厳しい基準があるんですね。
はい、飲食店の油火災を想定した試験です。
次は、設置で見落としやすいポイントを見てみましょう。
厨房用簡易型自動消火装置の設置で見落としやすいのはどこか

見落としやすい点を確認しましょう。
通知は設置について「専門業者により行われることが望ましい」としていますが、これは推奨であって法令上の義務ではありません。
そのため装置の性能だけに頼り、こんろ等を壁体に近づけたまま使用したり、周りに可燃物を置いたままにしているケースが見落とされがちです。
ダクトやグリスフィルターの定期的な清掃を怠ると、装置が正常でも火が予想外の経路で広がるおそれがあります。
装置さえ付ければ、清掃とかは多少手を抜いても平気かと思っていました。
装置と日常の対策は両方必要です。
最後に、明日から確認すべき手順をまとめます。
厨房用簡易型自動消火装置を導入する際になにを確認すればよいのか

順番に見ていきましょう。
まず、本体容器の表示で使用温度範囲・放射時間・公称防護面積など14項目が自店のこんろやフライヤーの規模に合っているかを確認します。
次に、自店の厨房が大規模厨房の義務設置対象や住宅の台所に該当しておらず、このガイドラインの対象であることを確認します。
最後に、設置後もこんろ等を壁体から離す、可燃物を放置しない、ダクトやグリスフィルターを定期的に清掃するといった日常の対策を徹底し、判断に迷う場合は所轄消防署や専門業者に相談しましょう。
表示を見て自分の店に合うか確認すればいいんですね。
はい、その通りです。
次によくある質問を確認しましょう。
よくある質問
まとめ
小さな装置ひとつにも、これだけ詳しい基準があるんですね。
はい。
設置や運用に迷ったときは、まずご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 厨房用簡易型自動消火装置に係る技術ガイドラインについて(通知)(令和2年5月29日 消防予第138号 消防庁予防課長)
- 対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令 第11条第7号(平成14年総務省令第24号)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





