厨房の排気フードやダクトの中に、火元を感知して自動で消火剤を放出する小さな装置が組み込まれていることがあります。
この装置はフード等用簡易自動消火装置と呼ばれ、平成5年に消防庁が性能と設置の基準を通知で定めています。
基準に適合する装置を設置すると消火器具の負担を減らせますが、緩和できる範囲には上限があります。
この記事では、この装置の対象設備の種類、基準が求める中身、そして消火器具をどこまで減らせるのかを解説します。
うちの厨房のフードにも小さい装置が付いているんですが、これも消火器の代わりになるんでしょうか。
フード等用簡易自動消火装置のことですね。
平成5年の消防庁通知で、性能と設置の基準が定められています。
うちのはフードだけの普通のやつなんですが、レンジ用とかダクト用とか種類があるんですか。
はい。
対象になる厨房設備の種類ごとに区分があります。
順番に確認していきましょう。
- フード等用簡易自動消火装置は、平成5年消防予第331号で厨房設備の種類ごとに整理された、自動で作動する消火装置です。
- 対象になるのは業務用のレンジ・フライヤー・排気ダクト・フードのほか、無煙ロースター等の下引ダクト用にも及びます。
- 基準はフード部分と排気ダクト部分を同時に消火する構造や、風速が速い場合のダンパー連動など、具体的な性能を求めています。
- この基準に適合する装置を設置すると消火器具の能力単位を減らせますが、5分の1以上の緩和は認められません。
- 旧基準(昭和56年消防予第176号)はこの通知で廃止されているため、既存の装置がどちらの基準によるか確認が必要です。
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目次
フード等用簡易自動消火装置はなぜ基準が整理されたのか

平成5年の通知は、この装置をどう整理し直したのでしょうか。
以前は昭和56年の176号通知により、フード・ダクト用・レンジ用・フライヤー用の3種類だけが運用の対象でした。
平成5年の331号通知では、これにダクト用単体・フード・レンジ用・フード・フライヤー用、そして無煙ロースター等に対応する下引ダクト用が加えられました。
これにより厨房設備の組み合わせごとに、より細かく対応した装置を選べるようになりました。
なお176号通知(旧基準)はこの通知によって廃止されているため、現在新たに設置する装置は平成5年基準に適合させる必要があります。
うちのフードの装置は結構古くからあるみたいなんですが、大丈夫でしょうか。
型式によっては旧基準のままの可能性があります。
次に、どんな設備が対象になるかを見てみましょう。
どんな厨房設備がフード等用簡易自動消火装置の対象になるのか

どんな設備がどの区分に当たるのかを確認しましょう。
基準は用途に応じて7区分(フード・ダクト用、ダクト用、レンジ用、フライヤー用、フード・レンジ用、フード・フライヤー用、下引ダクト用)に整理しています。
飲食店の厨房で最も多いのは、フードと排気ダクトの両方を防護するフード・ダクト用です。
無煙ロースターのように排気を床下等へ強制的に引き込む機器には、専用の下引ダクト用が定められています。
自分の厨房設備がどの区分に当てはまるかは、設置した業者や機器の銘板で確認できます。
うちは中華レンジとフライヤーが並んでいるんですが、その場合はどうなるんですか。
レンジとフライヤーの両方を防護するなら、それぞれの区分か組み合わせた装置を検討します。
次は基準が求める中身を見てみましょう。
基準はフード等用簡易自動消火装置に何を求めているのか

基準が求める主な項目を確認しましょう。
フード部分と排気ダクト内部は、同時に消火薬剤を放出できる構造でなければなりません。
排気用ダクト内部の風速が5m/secを超える場合は、消火薬剤の放出と連動して閉じるダンパーの設置も必要です。
消火薬剤の貯蔵容器や加圧用ガス容器は、周囲温度40℃以下で温度変化の少ない場所に設置します。
これらは厨房の熱や油煙という過酷な環境でも確実に作動させるための条件です。
うちの排気は結構強いんですが、ダンパーまで付いているか確認したことがなかったです。
風速が速い排気ダクトほど、ダンパーの有無は重要な確認ポイントです。
次は、消火器具の緩和がどこまで認められるかを見ていきましょう。
消火器具の緩和はどこまで認められるのか

ただし、どこまでも減らせるわけではありません。
フード等用簡易自動消火装置を設置した厨房等の部分では、消火器具の能力単位を減らすことができます。
装置が設置された厨房機器の部分に限り、消防法施行規則第6条第6項の歩行距離二十メートルの配置規定も適用しないことができます。
ただし基準は5分の1以上の緩和を適当でないと明記しており、この装置だけで消火器具を大きく減らすことはできません。
フード・ダクト用とレンジ用又はフライヤー用を併設する場合も、消火薬剤貯蔵容器等を共用できるのは各装置の機能に支障が生じない範囲に限られます。
全部の消火器を無くせるわけじゃないんですね。
はい、あくまで5分の1までです。
最後に、明日から確認すべき手順をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

基準に沿って、順番に見ていきましょう。
まず、自分の厨房設備がフード・ダクト用、レンジ用、フライヤー用、下引ダクト用など、どの区分に当てはまるかを確認します。
次に、その装置が平成5年基準(平成13年改正含む)に適合しているか、旧基準(昭和56年176号)のままになっていないかを確認します。
既存の下方排気方式ガス機器向けの消火装置は、施行時点で同等の性能があれば従前の例によることも認められています。
消火器具を減らす場合は5分の1以内に収まっているかを計算し、判断に迷う場合は所轄消防署や専門業者に相談しましょう。
区分と基準の年代、緩和の範囲を順番に確認すればいいんですね。
はい、その通りです。
次によくある質問を確認しましょう。
よくある質問
まとめ
フードの中の小さな装置にも、これだけ細かい基準があるんですね。
はい。
設置や緩和の判断に迷ったときは、まずご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- フード等用簡易自動消火装置の性能及び設置の基準について(通知)(平成5年12月10日 消防予第331号、平成13年3月改正 消防予第103号・消防危第53号)
- フード・ダクト用、レンジ用又はフライヤー用簡易自動消火装置の性能及び設置の基準について(通知)(昭和56年8月3日 消防予第176号、平成5年12月10日消防予第331号により廃止)
- 消防法施行規則第6条第6項(消火器具の歩行距離による配置基準)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





