BLOG

ネットカフェの個室の扉は開いたままでよいのか|火災予防条例が定める個室型店舗の避難管理を解説

ネットカフェの個室が並ぶ通路を写した記事のアイキャッチ画像

ネットカフェや漫画喫茶の個室は入口が通路に面していることがほとんどです。
その戸を開けたままにすると避難通路の幅が一気に狭くなります。
消防法の条文をいくら探しても個室型店舗という言葉は出てきませんが、市町村の火災予防条例にはこの戸の管理を求める条がきちんと置かれています。
立入検査でも見られるところなので、どの店のどの戸になにが求められるのかを条文から確かめておきます

うちのネットカフェは混む時間帯だけ個室の戸を開けて回っています。
これはまずい運用なのでしょうか。

火災予防条例に個室型店舗の避難管理という条があります。
戸の開き方によって求められることが変わるので順に見ていきましょう。

個室型店舗というのはネットカフェだけの話ですか。

いいえ、カラオケボックスや個室ビデオも同じ条で受けています。
まずはどこに書かれた決まりなのかから押さえてください。

この記事の結論
  • 個室型店舗の避難管理は消防法ではなく市町村の火災予防条例に置かれています
  • 東京都火災予防条例では第50条の2の2がその条にあたります
  • 対象はカラオケボックスや漫画喫茶のほか個室で遊興の設備や物品を客に使わせる店が広く含まれます
  • 避難通路に面した外開きの戸は開けたら自動的に閉鎖するものにしなければなりません
  • 開けても幅員を確保できる場合のただし書はありますが認められることが前提です

個室型店舗の戸が避難通路をふさがないよう外開きの戸を自動的に閉まる仕組みにすることを示した図解

個室型店舗の避難管理という決まりはどこにあるのか

左に市役所と旗ざお中央に両側を仕切った通路右に柱で囲まれた出入口が並んでいる
消防法を最後まで読んでも個室型店舗という語は出てきません。
それでも建物の側にはこの管理を求められます。
消防法第8条第1項 (略)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、(略)当該防火対象物について消防計画の作成、(略)避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
法律は枠だけを置いて中身を書いていません
避難のための構造や設備をどう維持するのかという具体は、市町村の火災予防条例が受け持っています。
東京都火災予防条例は第一条で、消防法に基づく事項を定めるとともに火災予防上必要な事項を定めることを目的とすると宣言しています。
その後半にあたる部分として第六章に避難及び防火の管理等という章が置かれ、劇場の客席から地下駅舎までが並んでいます。
個室型店舗の条はその章の中にあり、自分の建物がある市町村の条例を開くところが出発点になります。
東京都火災予防条例第一条 この条例は、(略)消防法(昭和二十三年法律第百八十六号。以下「法」という。)の規定に基づく火を使用する設備の位置、構造及び管理の基準等、(略)について定めるとともに、火災予防上必要な事項を定めることを目的とする

消防法だけ見ていても出てこないわけですね。

条例の第六章をまず開いてみてください。

どんな店がこの決まりの対象になるのか

机と画面や本棚を置いた小さな個室が横一列に四つ並んでいる
条文は業種の名前を並べたうえで受け皿の一文を置いています。
名前が載っていないから関係ないとは言えない書き方です。
東京都火災予防条例第五十条の二の二 カラオケボックス、インターネットカフェ(省令第五条第二項第一号に規定する店舗のうち、インターネットを利用させる役務を提供する業務を営むものをいう。)、漫画喫茶(略)、テレフォンクラブ(略)、個室ビデオ(略)その他遊興のための設備又は物品を個室(これに類する施設を含む。)において客に利用させる役務を提供する業務を営む店舗(以下「個室型店舗」という。)の関係者は、(略)
名指しされているのは5つの業種です
カラオケボックス、インターネットカフェ、漫画喫茶、テレフォンクラブ、個室ビデオの順に並んでいます。
このうちインターネットカフェから個室ビデオまでは消防法施行規則第5条第2項を引いて定義されており、令別表第一の(2)項ニをどう読むかと同じ土俵に乗っています。
そのうえで末尾に受け皿の一文があり、個室で遊興のための設備や物品を客に使わせる店であれば業種名が違っても含まれます。
括弧書きに「これに類する施設を含む」とあるので、天井まで届く壁で仕切っていない造りであっても条文の外だと即断はできません。
消防法施行規則第5条第2項 令別表第一(二)項ニの総務省令で定める店舗は、次に掲げるものとする。
一 個室(これに類する施設を含む。)において、インターネットを利用させ、又は漫画を閲覧させる役務を提供する業務を営む店舗
二 風営法第二条第九項に規定する店舗型電話異性紹介営業を営む店舗
三 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令(昭和五十九年政令第三百十九号)第二条第一号に規定する興行場(略)

間仕切りで区切っただけのブースも入ることがあるのですね。

判断に迷う造りなら所轄消防署に図面を見てもらうのが早いです。

個室の戸はどう管理しなければならないのか

左は戸が壁に沿って閉じた通路右は戸が通路をふさいで開いており禁止マークが付いている
義務の中身は一文にまとまっています。
そのぶん条件のかかり方を読み違えやすいところです。
東京都火災予防条例第五十条の二の二 (略)個室型店舗の関係者は、避難通路の通行を妨げないようにするため、避難通路に面して設ける遊興の用に供する個室の戸(外開きに限る。)を開放した場合において自動的に閉鎖するものとすることにより、避難上有効に管理しなければならない。ただし、当該戸を開放しても避難通路の幅員を十分に確保できるものその他の避難上支障がないと認められるものにあつては、この限りでない。
この義務は3つの条件が重なった戸にかかります
第一に避難通路に面して設ける戸であること、第二に遊興の用に供する個室の戸であること、第三に外開きであることです。
そのうえで求められているのは、開放したときに自動的に閉鎖するものとすることです。
条文は装置の名前も方式も指定していないので、開けて手を離せばひとりでに閉まる状態になっていればよいという読み方になります。
戸を開けっぱなしにできない造りにすることで避難通路の通行が妨げられないようにする、というのがこの条の狙いです。

つまり開けて手を離したら閉まるかどうかを見ればよいのですね。

そのとおりです。
閉まる速さより最後まで閉じ切るかを見てください。

実務で見落としやすいのはどこか

左に自動で閉まる装置を付けた戸中央に幅を測る棒を立てた通路右に引き戸が並んでいる
条文のただし書と義務者の範囲が落とし穴になります。
どちらも読み飛ばすと指摘を受けやすいところです。
東京都火災予防条例第五十五条 防火対象物又はその部分を一時的に不特定の者が出入りする店舗等として使用する場合については、第四十八条から第五十条の二の二まで、第五十一条から前条まで及び次条のうち、当該不特定の者が出入りする店舗等に係る規定を準用する
ただし書は自分で判断して外れるものではありません
戸を開けても避難通路の幅員を十分に確保できるものその他の避難上支障がないと認められるもの、という書き方なので、幅が足りていると思う根拠を示して所轄消防署に確かめるのが筋になります。
義務を負うのは関係者で、消防法第2条第4項により所有者と管理者と占有者が含まれますから、テナントだけの話にはできません。
また戸が内開きや引き戸でこの条から外れる場合でも、避難施設に物件を置かないことを求める同条例第53条の2や第54条は別にかかります。
上の第55条のとおり、常設ではなく一時的にこうした店舗として使う場合にも規定が準用される点にも注意してください。

幅が足りていると自分で決めてしまうところでした。

実測した幅を図面に落として相談すると話が早く進みます。

明日からなにを確認すればよいのか

左に掲示板中央に点検表を持つ人右に受付台とロッカーが並んでいる
順番を決めておけば工具を使わずに一巡できます。
戸の開き方をそろえて見ていくのが近道です。
東京都火災予防条例第五十四条第三号 避難口又は地上に通ずる主たる通路に設ける戸は、容易に開放できる外開き戸とし、開放した場合において、廊下、階段等の幅員を有効に保有できるものとすること。ただし、劇場等以外の令別表第一に掲げる防火対象物について支障がないと認められる場合においては、内開き戸以外の戸とすることができる。
色分けした平面図が交渉の材料になります
まず個室で遊興のための設備や物品を客に使わせている部分を書き出し、その戸が避難通路に面しているかを平面図に色で塗り分けます。
色を塗った戸を一つずつ現物で見て、外開きか内開きか引き戸かに分けます。
外開きの戸は開けて手を離し、最後まで閉じ切るかをその場で確かめて、閉じ切らない戸は開けた状態で通路の幅を実測して写真とともに残します。
そのうえで消防計画の自主検査表に個室の戸の欄を足しておけば、次の立入検査までに毎月確認する形が残ります。

平面図に色を塗るところから始めてみます。

それができれば残りは戸を開けて確かめるだけです。

よくある質問

Q個室の戸が引き戸ならこの条は関係ありませんか?
A条文の括弧書きが外開きに限るとしているため、引き戸はこの条の対象外という読み方になります。ただし避難施設に物件を置かないことを求める規定は別にかかりますので、通路そのものの管理は変わりません。
Q個室が一室しかない店でも対象になりますか?
A条例の条文には個室の数による線引きが書かれていません。一方で用途を(2)項ニと判定するかどうかは別の話なので、用途区分と避難管理は分けて所轄消防署にご確認ください。
Q戸を外してしまえば決まりを守ったことになりますか?
A条文はこの条の義務を戸の管理として書いており、戸を設けること自体を求めてはいません。ただし戸の有無は用途の判定や他の規定の当たり方にも影響しますので、外す前に所轄消防署へ相談してください。
Qこの決まりは全国どこでも同じ内容ですか?
A同じとは限りません。火災予防条例は市町村ごとに定めるものなので、条番号も表現も自治体によって異なります。この記事で引いたのは東京都火災予防条例ですので、必ず自分の建物がある市町村の条例を確かめてください。

まとめ

個室型店舗の避難管理は市町村の火災予防条例に置かれています
東京都火災予防条例では第50条の2の2がその条にあたります
名指しされた5つの業種のほかに受け皿の一文が置かれています
かかるのは避難通路に面した遊興の用に供する個室の外開きの戸です
開放したときに自動的に閉鎖するものとすることが求められます
ただし書に当たるかは自分で決めず所轄消防署に確かめます
一時的にこうした店舗として使う場合も第55条により準用されます

今夜のうちに個室の戸を全部開けて確かめてみます。
これなら明日の朝礼でも共有できそうです。

その結果を自主検査表に残せば形になります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第2条第4項・第8条第1項
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第5条第2項
  • 東京都火災予防条例(昭和37年東京都条例第65号)第一条・第50条の2・第50条の2の2・第53条の2・第54条・第55条
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)
  • 東京都例規集データベース

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
ネットカフェの個室が並ぶ通路を写した記事のアイキャッチ画像
ネットカフェや漫画喫茶の個室は入口が通路に面していることがほとんどです。 その戸を開けたままにすると避難通路の幅が一気に狭くなります。 消防法の条文をいくら探しても個室型店舗という言葉は出てきませんが、市町村の火災予防条...