民泊や雑居ビルのオーナーから「防火管理者を外部の代行業者に頼みたい」という相談を受けることがあります。
ですが、防火管理者の業務委託・外部委託という制度は、実はどんな防火対象物でも使えるわけではありません。
管理権原がオーナーごとにバラバラな雑居ビルでは、委託の入り口にすら立てないケースがあります。
東京消防庁の指導指針が示す6つの要件を、順番に見ていきましょう。
うちのビル、テナントごとにオーナーがバラバラなんです。
それだと代行を頼めないことがあります。
え、それってどういう基準で決まるんですか。
管理権原と収容人員の2つで決まります。
- 防火管理者の業務委託には内部選任と外部選任の2つの形態があります
- 委託選任には防火対象物の種類を含む6つの要件全てを満たす必要があります
- 管理について権原が分かれている防火対象物は1号対象物に該当しません
- 2号対象物になるには占有部分の収容人員が用途ごとの基準未満である必要があります
- 管理権原がバラバラで収容人員も基準を超える場合は委託選任ができません
▼
目次
防火管理者の業務委託とはどのような制度か

防火管理者は本来、その建物の所有者や管理者、テナントの占有者といった関係者自身か、その従業員から選ぶのが原則です。
ですが一定の条件を満たせば、他の管理権原者や外部の専門業者に委託して選任することが認められています。
委託選任には、防火対象物の種類・業務遂行が困難な事由・権限の付与・業務内容の文書交付・状況説明・選任される防火管理者の資格という6つの要件が定められており、その全てに該当して初めて認められます。
中でもつまずきやすいのが最初の要件、防火対象物の種類です。
次の見出しから、この要件を具体的に見ていきます。
6つも要件があるんですね。
まずは対象物の種類から確認します。
委託選任を認める防火対象物の種類とは

委託選任が認められるためには、まずその防火対象物が決められた種類のどれかに当てはまる必要があります。
指導指針は、この種類をア〜オの5パターンに整理しています。
イは、複数の建物や複数のテナントを持つオーナーが、管理権原を統一している場合のルートです。ウは、管理権原がバラバラのままでも、それぞれの占有部分の収容人員が一定未満なら使えるルートです。
アの共同住宅、エの小面積事業所、オの特定資産は、それぞれ独自の要件を持つ別ルートで、テナントビルの委託選任では対象になりにくいものです。
次の見出しから、イとウそれぞれで実務上つまずきやすいポイントを見ていきます。
うちは1棟の中にいろんなオーナーがいるので、イじゃなさそうですね。
なぜそうなるのか、詳しく見てみましょう。
管理権原が分かれている防火対象物はなぜ1号対象物に該当しないのか

雑居ビルのように、フロアや区画ごとにオーナーが違う建物は多くあります。
このような建物は、委託選任の入り口である「イ」に当てはまるのでしょうか。
「イ」のルートは、複数の防火対象物や区画の管理権原者が同一人物である場合に使えるものです。同じオーナーが複数の建物やテナントを持ち、それらをまとめて委託する、というケースを想定した仕組みです。
雑居ビルのように、フロアごと・テナントごとに別々のオーナーがいる建物は、この時点で「イ」の対象から外れます。
自分のテナントの管理権原者が、同じビルの他のテナントの管理権原者と同一人物かどうかは、委託選任を検討する最初のチェックポイントです。
じゃあうちはもう委託できないってことですか。
まだ「ウ」のルートが残っています。
収容人員が基準を超えると2号対象物にもなれないのはなぜか

管理権原がバラバラでも、まだ「ウ」の2号対象物というルートが残っています。
ただしこちらにも、用途ごとに決められた収容人員の基準があります。
自力避難が難しい方が入所する施設は10人未満、飲食店やホテルなど不特定多数が出入りする特定用途は30人未満、事務所や倉庫など非特定用途は50人未満という基準です。
そして収容人員は、建物全体でまとめてではなく管理権原者ごと、つまり自分の占有部分だけで数えます。
民泊は宿泊者を泊める特定用途に当たるため、自分の占有部分の収容人員が30人未満に収まっているかどうかが分かれ目になります。
うちの民泊部分は自分の占有分だけで数えるんですね。
はい。そこで30人を超えると話が変わります。
雑居ビル内の民泊で委託を頼めないのはどんな場合か

ここまでの2つの条件を重ねると、委託選任が使えない典型的なパターンが見えてきます。
管理権原がテナントごとにバラバラで、かつ自分の占有部分の収容人員が用途ごとの基準(10人・30人・50人未満)を超えている場合、その防火対象物はア〜オのどれにも当てはまりません。
雑居ビル内の民泊で、部屋数が多く宿泊者数が特定用途の基準を超えているようなケースが、まさにこのパターンに当たります。
この場合、㈱防災屋のような外部業者への委託選任はできず、自社の占有部分の従業員や関係者の中から防火管理者を選任するほかありません。
うちの場合、両方とも当てはまりそうです。
それなら自社の中から選任してください。
よくある質問
まとめ
うちの物件がどっちに当てはまるか、自分で確認できそうです。
委託できるかどうか、まず調べてみます。
判断に迷ったら
管轄消防署への相談をおすすめします。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 東京消防庁「防火管理指導指針」第2章第2節第5 防火管理者の業務の委託
- 消防法施行令第3条第2項
- 消防法施行規則第2条の2
※本記事は東京消防庁「防火管理指導指針」(令和7年4月1日更新版)に基づく一般的な解説です。個別の建物における委託選任の可否は、防火対象物の実態や管轄消防署の判断により異なる場合があります。実際の届出にあたっては、必ず管轄消防署にご確認ください。






