系列店の工場や店舗で溶接用のアセチレンガスやLPガスボンベを増やしたとき、消防署への届出が必要だと言われて驚いたことはないでしょうか。
これらの物質は消防法上の危険物には当たりませんが、火災予防又は消火活動に重大な支障を生ずるおそれがある物質として、消防法そのものが別枠で届出を義務づけています。
届出が必要になるかどうかは物質の種類とその貯蔵・取扱いの量だけで機械的に決まり、基準に届かなければ届出は不要です。
この記事では届出が必要になる物質と数量の基準、届出が不要になる場合、届出を怠ったときの罰則を整理します。
工場でアセチレンガスのボンベを増やしたら、消防署への届出が必要だと言われました。
それは消防法第9条の3が定める届出です。
まずこの届出の位置づけを確認していきましょう。
危険物の届出とは別に、そんな決まりがあるとは知りませんでした。
はい、危険物とは別枠の制度です。
どんな物質がどれだけの量から対象になるか、順番に見ていきましょう。
- 消防法第9条の3は、圧縮アセチレンガスや液化石油ガスなど火災予防又は消火活動に重大な支障を生ずるおそれのある物質を貯蔵し、又は取り扱う者に、あらかじめの届出を義務づけています(危険物とは別枠の制度です)
- 届出の対象になる物質と数量は危険物の規制に関する政令第1条の10で定められ、圧縮アセチレンガスは40キログラム、液化石油ガスは300キログラムが基準です
- 貯蔵・取扱いを廃止するときも同じ届出が必要です(消防法第9条の3第2項)
- 船舶・自動車・航空機・鉄道又は軌道により貯蔵・取扱う場合や、他の法令で既に消防機関へ通報済みの施設で液化石油ガスを取り扱う場合は届出が不要です
- 届出を怠った者には消防法第44条第8号により30万円以下の罰金又は拘留が科されます
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目次
危険物ではない物質にも届出が必要になるのはなぜか

それでも消防法は、これらの物質を貯蔵し、又は取り扱う者に対して別の条文で届出を義務づけています。
危険物の規制は消防法第2条第7項の定義から始まりますが、この届出は危険物の枠に入らない物質を対象にした独立した制度です。
条文にある消火活動に重大な支障を生ずるおそれのある物質という表現は、火災そのものの危険性だけでなく、消火活動中の事故を防ぐ目的も含んでいます。
届出先は建物がある場所を管轄する所轄消防長又は消防署長で、危険物の許可を出す市町村長等とは窓口が異なる場合があります。
まずは自社の工場や店舗にこれらの物質が置かれていないかを確認することが出発点になります。
うちの工場、溶接用のボンベを置いてますが、あれも対象になるんでしょうか。
物質の種類と量によって決まります。
次にどれだけの量から対象になるかを確認しましょう。
どの物質がどれだけの量から届出の対象になるのか

基準となる数量は物質の危険性の高さに応じて、物質ごとに異なります。
一 圧縮アセチレンガス 四十キログラム
三 液化石油ガス 三百キログラム
(略。無水硫酸、生石灰、毒物及び劇物取締法上の毒物・劇物についても、それぞれ数量が定められている)
無水硫酸は200キログラム、生石灰(酸化カルシウム80パーセント以上のもの)は500キログラムが基準です。
毒物及び劇物取締法上の毒物・劇物も対象に含まれ、シアン化水素や水銀など一部の物質は30キログラム、アンモニアや塩化水素など多くの物質は200キログラムが基準です。
毒物や劇物は物質ごとに基準数量が細かく分かれているため、扱っている薬剤の正式名称を確認する必要があります。
自社の工場や店舗で保管している量を数え、上の基準に達していないかをまず確認することが出発点になります。
うちはLPガスを200キログラムくらい置いていますが、基準の300キログラムには届いていない気がします。
300キログラムを下回っていればこの届出は不要です。
次は届出をいつ、どこに出すのかを見ていきましょう。
届出はいつどこに出せばよいのか

届出先も許可申請とは異なるので、窓口を間違えないようにしましょう。
第2項 前項の規定は、同項の貯蔵又は取扱いを廃止する場合について準用する。
条文の「あらかじめ」という言葉どおり、扱い始めてからの届出は認められていません。
貯蔵・取扱いを廃止するときも、開始のときと同じ届出が必要になります(第9条の3第2項)。
届出の具体的な書式や添付図面は各消防本部が定めているため、事前に所轄消防署の窓口へ確認しておくと手続きがスムーズです。
新たに設備を増設して量が基準を超える見込みが立った時点で、早めに相談する動き方が安全です。
増設の計画段階でも相談してよいものでしょうか。
計画段階での相談が望ましいです。
次は届出が不要になる場合を確認しましょう。
届出が不要になるのはどんなときか

除外されるのは運搬中の一時的な状態と、他の法令で既に把握されている施設です。
条文の本文にあるとおり、これは移動・運搬に伴う一時的な貯蔵・取扱いを想定した除外です。
もう一つの除外は液化石油ガスだけの特例で、高圧ガス保安法やガス事業法など他の法律に基づいて既に消防機関へ通報済みの施設が対象です。
つまり同じ施設について二重に届出をさせない仕組みであり、届出そのものが不要になるわけではなく、既に別の届出で足りているということです。
自社の施設がどの制度で通報されているかが分からない場合は、思い込みで判断せず所轄消防署に確認しましょう。
トラックで運んでいる分は対象外ということですね。
保管場所での貯蔵・取扱いが対象になります。
最後に、届出を怠るとどうなるかを見ていきましょう。
届出を怠るとどうなるか

怠った場合には条文上の罰則が用意されています。
八 第八条第二項(略)、第九条の三第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)(略)の規定による届出を怠つた者
これは廃止の届出を怠った場合も同じ扱いで、開始時だけの義務ではありません。
立入検査で無届の貯蔵・取扱いが発覚すると、罰則の適用だけでなくその場での是正指導にもつながります。
明日からは、扱っている物質の名称と量を一覧にし、上の基準に近い物質がないかを棚卸しすることから始めましょう。
基準に近づいている、または超えそうな場合は、量が増える前に所轄消防署へ相談する動き方が安全です。
棚卸しをして、基準に近いものがないか確認してみます。
早めの確認が一番の対策です。
よくある質問もまとめておきます。
よくある質問
まとめ
危険物とは別に、届出が必要な物質と量の基準がよく分かりました。
まずは自社で扱っている量を確認してみます。
迷ったときは所轄消防署か、私たちにご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第9条の3・第44条第8号
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第1条の10
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





