立入検査で屋内消火栓設備や自動火災報知設備の未設置を指摘されても、その場で建物名が公表されるわけではないと考えている防火管理者は少なくありません。
しかし平成26年度から、命令に至るまでの間に違反の内容をホームページで公表する制度が、全国の消防本部で運用され始めています。
対象になるのは、劇場や百貨店や旅館など不特定多数の人が出入りする建物のうち、屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・自動火災報知設備のいずれかが一切設置されていないものです。
制度の仕組みと、公表される前に押さえておくべき対応を整理します。
うちのビルは去年の立入検査で自動火災報知設備の指摘を受けたままです。
これは公表されてしまうのでしょうか。
その可能性があります。
屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・自動火災報知設備のいずれかが未設置のまま一定期間が過ぎると、建物名がホームページで公表される制度が動きます。
命令が出る前の段階で、名前が出るということですか。
そうです。
命令の手前に置かれた情報公開の制度だと理解してください。
仕組みから順に見ていきましょう。
- 違反対象物の公表制度は、消防法第17条の技術上の基準に違反する建物を利用者へ公表する仕組みです
- 対象になるのは劇場・百貨店・旅館・病院・地下街など不特定多数の人が出入りする防火対象物です
- 公表の対象となる違反は、屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・自動火災報知設備が一切設置されていないことです
- 公表は立入検査結果を通知した日から一定期間を経ても同じ違反が続く場合に行われ、是正すれば公表前に取りやめられます
- この公表は関係者への不利益処分ではなく、行政が持つ情報を利用者へ開示するものです
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目次
違反対象物の公表制度とはどんな制度か

命令が出るまでの間、その空白を埋めるために設けられた制度です。
2 市町村は、その地方の気候又は風土の特殊性により、前項の消防用設備等の技術上の基準に関する政令又はこれに基づく命令の規定のみによつては防火の目的を充分に達し難いと認めるときは、条例で、同項の消防用設備等の技術上の基準に関して、当該政令又はこれに基づく命令の規定と異なる規定を設けることができる。
第1項が定める技術上の基準に違反していても、消防機関が命令を出すまでには詳細な調査や手続きが必要で、相当の時間がかかります。
その間、建物の危険性に関する情報は利用者に伝わりません。総務省消防庁は平成25年12月に、この空白を埋めるための公表制度を各消防本部へ通知しました。
第2項が示すとおり、技術上の基準は条例で補うことができるため、公表の仕組み自体も各市町村の火災予防条例で定められています。
だからこそ、実際の運用は所轄の消防本部ごとに確認する必要があります。
命令が出るまでの間に、先に情報が出るということですね。
そのとおりです。
条例に基づく仕組みなので、所轄の消防本部が実施しているかをまず確認してください。
どの建物のどんな違反が公表の対象になるのか

建物の用途と設備の種類の両方で絞り込まれています。
劇場や百貨店や旅館や病院、地下街や複合用途の建物など、令別表第一の(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イ、(16)項イ、(16の2)項及び(16の3)項に掲げる用途が対象です。事務所や工場や倉庫は原則含まれません。
そのうえで違反の内容も絞られています。対象になるのは屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・自動火災報知設備のいずれかについて、設置義務があるにもかかわらず機器が一切設置されていない状態です。
一部の機器が古くなっている、点検表示が切れているといった違反は、この制度の対象には含まれません。
自分の建物がどの項に該当するかは、防火対象物確認済証や消防計画に記載されているはずなので、まず確認してください。
うちは複合ビルですが、テナントの一部が飲食店です。対象になりますか。
用途で判定します。
飲食店の部分に自動火災報知設備等の未設置があれば対象です。まず消防計画で用途区分を確認してください。
公表されるまでどんな手続きを踏むのか

通知と一定の期間を経てから実施されます。
検査で屋内消火栓設備等の未設置が確認されると、立入検査結果通知書が交付されます。総務省消防庁の通知では、既に制度を運用している消防本部の例として、通知した日から14日を公表の目安とすることが示されています。
その期間を過ぎても同じ違反が認められる場合、消防本部は公表の予告を行い、多くの運用では公表予定日の7日前までに通知します。
公表方法は市町村又は消防本部のホームページへの掲載で、建物の名称・所在地・違反の内容が示されます。
この期間のあいだに是正が確認できれば、公表そのものが行われません。
14日というのは、あくまで目安なんですね。
そうです。
実際の期間や手続きは火災予防条例で決まるので、所轄消防署に確認してください。
実務で見落としやすいのはどこか

公表の重さと公表の範囲です。
総務省消防庁の通知は、本制度が情報公開の一環であり、命令のような行政処分に当たらないことを明記しています。命令や警告とは別の枠組みだという点を取り違えないようにしてください。
もう一つは公表の範囲です。第9条が定めるとおり、複合用途の建物では同一の用途に供される部分が一の防火対象物とみなされます。テナントビルの一部フロアだけに違反があっても、公表は建物全体の名称で行われ、そのうえで違反のある部分(用途や階)が示されます。
「自分のフロアだけの話」と考えていると、建物全体の評判に関わることに気づきにくくなります。
1フロアの話だと思っていたら、ビル名ごと公表されるんですか。
はい。
建物全体の名称で公表され、違反のある部分だけが注記される形です。テナント同士でも情報を共有しておくべきところです。
明日からなにをすればよいのか

指摘された設備を、期限までに設置することです。
屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・自動火災報知設備の設置義務は、建物の用途と規模で決まる技術上の基準です。設置台帳や竣工図があれば、まずそこで機器の有無を照合します。
既に立入検査結果通知書を受け取っている場合は、期限までに改修計画書を提出し、早期に設置工事の日程を組んでください。
未点検のまま長期間放置している設備がある建物は、次の立入検査で同じ指摘を受ける可能性があります。点検報告の機会を使って設備の有無を先に洗い出しておくと後手に回りません。
所轄消防署への相談は、指摘の有無にかかわらず早いほど選択肢が広がります。
まずは自分の建物の設備を確認するところからですね。
そのとおりです。
点検報告のタイミングに合わせて確認すると、余分な調査をせずに済みます。
よくある質問
まとめ
公表される前にできることがあると分かって安心しました。
まず自分の建物の設備を確認します。
それが一番の近道です。
屋内消火栓設備・スプリンクラー設備・自動火災報知設備の設置状況を確認し、気になる点があれば早めにご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第4条
- 消防法第17条
- 消防法施行令第8条
- 消防法施行令第9条
- 消防法施行令第21条
- 消防法施行令別表第一
- 「違反対象物に係る公表制度の実施について」(平成25年12月19日消防予第484号)
- 「違反対象物に係る公表制度における運用について」(平成25年12月19日消防予第487号)
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





