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灯油の予備燃料は車に積んでよいか|違法貯蔵にならない量と容器の新基準を解説

灯油の予備燃料は車に積んでも違法貯蔵にならないかを示すアイキャッチ画像

灯油のポリタンクを物置に並べたままにしていたり、車のトランクに携行缶を積んで走ったりしていないでしょうか。
昭和54年に消防庁が出した通知は、まさにこの「灯油等の違法貯蔵」を防ぐために予防査察の強化を求めたものです。
対象は住宅や事業所での灯油等の保管だけでなく、乗用車に積む予備燃料の携行缶にも及びます。
どこまでなら合法で、どこからが違法貯蔵になるのかを、現行の法令に沿って整理します。

うちの倉庫の脇に灯油のポリタンクをいくつか置いてるんですけど、これって何か問題になるんでしょうか。

量によっては指定数量以上とみなされ、無許可の貯蔵として消防法違反になることがあります。
まずは灯油の量と、他に置いている危険物との合計を確認しましょう。

車に予備のガソリンを携行缶で積んでいる社用車もあるんですが、あれも同じ話ですか。

はい、車に積む予備燃料にも決められた容器の基準があります。
この記事で貯蔵の基準と容器の基準を一緒に整理していきます。

この記事の結論
  • 指定数量以上の危険物は、許可を受けた貯蔵所・取扱所以外の場所には置けません(消防法第10条第1項)
  • 灯油等と他の危険物をあわせて計算した商の和が1以上になると、指定数量以上とみなされます
  • 昭和54年の通知は、当時の石油事情の変化を背景に、違法貯蔵の予防査察強化を消防庁が都道府県へ求めたものです
  • 乗用車に積む予備燃料の携行缶にも容器の構造と最大容積の基準が定められています
  • 無許可で危険物を貯蔵すると、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象になり得ます

灯油等の違法貯蔵は消防法第10条の無許可貯蔵の禁止と指定数量の合算ルールに触れること、乗用車に積む予備燃料の携行缶は危険物の規制に関する規則第43条第2項の容器基準を満たす必要があることを示した図解

灯油等の違法貯蔵はなぜ通知の対象になったのか

灯油缶が積まれた倉庫の脇でチェックリストを持つ人物のイメージ
昭和54年に消防庁が出した通知は、たった1枚の短い文書です。
しかし、そこに書かれた背景を読むと、今も変わらない話だと分かります。
「灯油等の違法貯蔵に対する措置について」(昭和54年7月20日 消防危第75号 消防庁危険物規制課長) 危険物による災害防止については、日頃から御努力願っているところであるが、昨今の石油事情等経済情勢の推移に伴い、灯油等の危険物を違法に貯蔵する事例が見られるに至った。ついては、このような違法行為による災害の発生を未然に防止するため、法令の趣旨・内容の周知徹底、予防査察の強化を図り、違法貯蔵の防止及び是正措置の徹底について実効ある措置を講ずるとともに、悪質な違法行為に対する法令の規定に基づく厳正な対処について格段の配慮をされるようお願いする。
石油事情の変化で灯油等を無許可で貯蔵する事例が増えたことが、この通知のきっかけです。
当時は石油事情の変化を受けて灯油の需給が不安定になり、家庭や事業所で灯油等を必要以上に手元に置く動きが広がったとみられます。
消防庁はこの状況を受け、都道府県に対して法令の周知徹底と予防査察の強化を求めました。
通知そのものは一回限りの短い文書ですが、そこで引かれている無許可貯蔵を禁じる条文は今も変わらず生きています。
つまり石油事情が違っても、違法貯蔵という問題の骨組みは令和の今も同じということです。

石油事情の変化があった頃の古い話だと思ってました。

考え方の骨組みは今も同じです
まずは自分の施設の灯油等がどれだけあるか、確認してみましょう。

灯油等をどこまで置けば違法貯蔵になるのか

複数の小さな燃料タンクとフェンスで囲まれた許可施設のタンクを並べたイメージ
「指定数量」という言葉を聞いたことがあっても、正確な線引きは意外と知られていません。
灯油だけでなく、他の危険物と合わせて数える点が特に見落としやすいところです。
消防法(昭和23年法律第186号)第10条第1項 指定数量以上の危険物は、貯蔵所(略)以外の場所でこれを貯蔵し、又は製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所でこれを取り扱つてはならない。ただし、所轄消防長又は消防署長の承認を受けて指定数量以上の危険物を、十日以内の期間、仮に貯蔵し、又は取り扱う場合は、この限りでない
第10条第2項 別表第一に掲げる品名(略)又は指定数量を異にする二以上の危険物を同一の場所で貯蔵し、又は取り扱う場合において、当該貯蔵又は取扱いに係るそれぞれの危険物の数量を当該危険物の指定数量で除し、その商の和が一以上となるときは、当該場所は、指定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱つているものとみなす
灯油だけの量が少なくても、他の危険物と合わせると指定数量以上になることがあります。
たとえば灯油とガソリンを同じ場所に置いている場合、それぞれの数量を指定数量で割った値を足し合わせます。
その合計が1以上になった時点で、指定数量以上を貯蔵しているものとみなされます。
許可を受けた貯蔵所・取扱所以外でこの状態になれば、消防法第10条第1項に違反する無許可貯蔵です。
自分の施設で灯油以外にどんな危険物を置いているか、まず洗い出すことが第一歩になります。

灯油だけなら少ないから大丈夫だと思っていました。

他の危険物と合わせて計算するのがポイントです
灯油・軽油・ガソリンなど、置いているものを一度リストにしてみてください。

車に積む予備燃料の容器基準はどう変わったか

赤い携行缶とトランクを開けた車を並べたイメージ
給油取扱所が日曜に休業することを見越して、車に予備燃料を積むこと自体は禁じられていません。
ただし、積んでよい容器には昔から決まった基準があり、近年新しい容器も加わりました。
「灯油等の違法貯蔵に対する措置について」(昭和54年7月20日 消防危第75号) また、給油取扱所の日曜休業が徹底されるに伴い、乗用車両等においても予備燃料を積載して走行することが多くなると予想されることから、危険物による車両火災を未然に防止するため、予備燃料を収納する運搬容器については、危険物の規制に関する規則第43条第2項及び危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示第68条の4の規定を遵守するよう、広報等を通して周知徹底されるようお願いする。
危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第43条第2項 前項の規定にかかわらず、専ら乗用の用に供する車両(乗用の用に供する車室内に貨物の用に供する部分を有する構造のものを含む。)により引火点が四十度未満の危険物のうち告示で定めるものを運搬する場合の運搬容器の構造及び最大容積の基準は、告示で定める
令和6年3月から、この告示が定める容器にプラスチック製の携行缶が新たに加わりました。
以前は主に金属製の携行缶が想定されていましたが、国際基準の表示(UN表示)と告示で定める容器記号が付いたプラスチック製の携行缶も認められるようになりました。
認められる容器は最大容積10リットル以下のものに限られ、ガソリンを想定した基準です。
灯油を積む場合も、同じ規則第43条第2項が根拠になるため、告示の基準を満たした容器を使う考え方は変わりません。
容器を新調するときは、表示や記号があるかどうかを必ず確認しましょう。

携行缶ならプラスチック製でも何でもいいと思っていました。

表示のないプラスチック容器は基準を満たしません
買うときはUN表示と容器記号がついているか見てください。

少量のつもりが違法貯蔵になる落とし穴はどこにあるか

表示付きのプラスチック携行缶と表示のない古い金属缶を並べたイメージ
「うちは少しだけだから関係ない」という思い込みが、実は一番危ないところです。
数量の合算と容器の基準、どちらも見落としやすい落とし穴があります。
消防法(昭和23年法律第186号)第41条第1項第3号 次のいずれかに該当する者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。三 第十条第一項の規定に違反した者
合算を忘れて指定数量以上になった時点で、無許可貯蔵として罰則の対象になり得ます。
灯油と軽油、灯油とガソリンのように品名が違う危険物でも合算の対象になる点が、まず一つ目の落とし穴です。
もう一つは容器側で、令和6年の改正で追加されたプラスチック製の携行缶であっても、表示や記号のないものは基準を満たした容器とは認められません。
「少量だから」「携行缶ならどれでも同じ」という思い込みのまま置き続けると、消防法第41条第1項第3号の罰則に触れる可能性があります。
定期的に貯蔵量と容器を見直す習慣が、この落とし穴を避ける一番の方法です。

罰則まであるとは知りませんでした。

知らなかったで済まないのがこの分野の怖さです
今の貯蔵量と容器を、この機会に一度見直しておきましょう。

明日から灯油等をどう確認すればよいのか

点検担当者が車のトランクの携行缶を確認しているイメージ
難しい計算に見えても、確認する手順そのものはシンプルです。
今日からできる3つの確認を、順番に見ていきましょう。 灯油等の合計量と、車に積む携行缶の表示を、今日のうちに確認しましょう。
まず、施設や自宅で灯油・軽油・ガソリンなど危険物をすべて書き出し、指定数量で割った値の合計が1未満かどうかを計算します。
次に、社用車や自家用車に積んでいる携行缶を確認し、UN表示と容器記号があるかを見ます。表示のない古い金属缶は買い替えを検討してください。
指定数量以上になりそうな場合や、判断に迷う場合は、貯蔵を始める前に所轄の消防署へ相談するのが確実です。
予防査察で指摘される前に、自分の目で一度確認しておくことが一番の備えになります。

うちの分もリストにして数えてみます。

それが一番確実な方法です
よくある質問もまとめておきます。

よくある質問

Q家庭で灯油を保管するのはどこまで違法貯蔵にならないか?
A家庭用のポリタンクで灯油を保管すること自体は禁止されていません。ただし灯油だけでなく他の危険物と合わせた量が指定数量以上になり、かつ許可のない場所で貯蔵している状態になると消防法第10条第1項に違反します。心当たりがある場合は、まず数量を確認してください。
Q予備燃料をガソリンで積む場合も同じ基準か?
Aはい。専ら乗用の用に供する車両で危険物を運搬する場合の容器基準は、灯油かガソリンかを問わず危険物の規制に関する規則第43条第2項とその告示が根拠になります。ガソリンには令和6年の改正で加わったプラスチック製の携行缶も使えます。
Q指定数量の「商の和」とはどういう計算か?
A置いている危険物それぞれの数量を、その危険物の指定数量で割り、出てきた値をすべて足し合わせる計算です。合計が1以上になった時点で、指定数量以上の危険物を貯蔵しているものとみなされます。
Q違法貯蔵が見つかった場合はどうなるか?
A是正を求められるだけでなく、消防法第41条第1項第3号により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象になり得ます。指摘される前に、貯蔵量と容器の両方を自主的に見直しておくことが大切です。

まとめ

指定数量以上の危険物を無許可の場所で貯蔵することは、消防法第10条第1項が禁じる違法貯蔵になります
灯油だけでなく他の危険物と合わせた商の和が1以上になれば、指定数量以上とみなされます
昭和54年の通知は、石油事情の変化に伴う違法貯蔵の増加を受けて予防査察の強化を求めたものです
乗用車に積む予備燃料の容器は危険物の規制に関する規則第43条第2項の基準に従う必要があります
令和6年の改正で、UN表示と容器記号が付いたプラスチック製の携行缶(最大容積10リットル以下)も認められるようになりました
表示や記号のない古い携行缶は、基準を満たした運搬容器とは認められません
無許可貯蔵は消防法第41条第1項第3号により罰則の対象になり得るため、定期的な見直しが欠かせません

灯油の置き方も車の携行缶も、確認するポイントがはっきり分かりました。
まずは自分の分の数量と容器を数えてみます。

数量の合算と容器の表示、この2点を確認すれば実務は回ります
㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • 「灯油等の違法貯蔵に対する措置について」(昭和54年7月20日 消防危第75号 消防庁危険物規制課長)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第10条・第41条第1項第3号
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第43条第2項
  • 危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示(昭和49年5月1日自治省告示第99号)第68条の4第2項
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※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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