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消防対象物とは何を指すのか|立入検査の対象が広い理由と危険物施設の別の権限を解説

倉庫で消防職員がドラム缶と保管された段ボールを確認している写真

立入検査で消防職員がチェックするのは、建物そのものだけだと思っていないでしょうか
消防法が定める検査の対象は、実は建物に置かれた家具看板まで含む、もっと広い消防対象物という概念です
危険物を貯蔵・取扱う施設には、それとは別の立入検査の根拠まで用意されています
「消防対象物」の範囲を知っておくと、立入検査で指摘される理由が見えてきます。

立入検査のとき、うちの棚に置いてある物とか看板まで見られるんですか。

見られます。消防法が対象にしているのは建物だけじゃなく、もっと広い範囲なんです。

「防火対象物」って言葉は聞きますけど、それとは違うんですか。

少し違います。今日はその範囲の違いを詳しく解説します。

この記事の結論
  • 消防法上の検査対象は消防法第2条第3項が定める「消防対象物」で、建物本体だけでなく、そこに置かれた独立した物件まで含む広い概念
  • 建物本体とそれに属する物だけを指す「防火対象物」(消防法第2条第2項)とは範囲が異なる
  • 立入検査の根拠である消防法第4条第1項は、位置・構造・設備及び管理の状況まで検査対象にしている
  • 指定数量以上の危険物を貯蔵・取扱う施設には消防法第16条の5が別に適用され、検査に加えて「収去」という権限まで認められている
  • 物件の配置状況も検査対象に含まれることを踏まえ、日頃から備品や危険物の管理状況を整理しておくことが実務の備えになる

防火対象物より消防対象物のほうが範囲が広く、危険物施設には別の条文が適用されることを示した図解

立入検査で見られるのは建物だけなのか

建物と、そのそばに置かれた自動販売機や看板などの物件を示すイラスト
立入検査は、建物の設備だけを見に来るものだと考えている方も多いはずです
消防法の条文を見ると、対象はもう少し広い範囲に及んでいます
第2条第3項 消防対象物とは、山林又は舟車、船きよ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物又は物件をいう。
立入検査の対象は建物そのものより広い範囲に及びます。
条文にある「物件」とは、建物に組み込まれていない独立した動かせる物を指すと考えられています
店舗の看板や自動販売機、倉庫に積まれた備品なども、この「物件」に当たり得ます
つまり立入検査で確認されるのは建物の設備だけでなく、そこに置かれた物の状況まで含まれるということです
次の章で、建物本体を指す「防火対象物」との違いを整理します。

うちの店にある自動販売機とか看板まで、検査の対象になるんですか。

はい。条文の「物件」にはそうした独立した物も含まれると考えられています。

防火対象物と消防対象物はどう違うのか

建物に取り付けられた設備と、独立して置かれた物件を対比したイラスト
似た言葉に「防火対象物」がありますが、消防対象物とは範囲が違います
条文を並べて比べると、その差がはっきり見えてきます
第2条第2項 防火対象物とは、山林又は舟車、船きよ若しくはふ頭に繋留された船舶、建築物その他の工作物若しくはこれらに属する物をいう。
防火対象物は建物本体とそれに属する物までを指す、やや狭い概念です。
これらに属する物」とは、建物に取り付けられ一体になった設備や部分を指すと考えられています
一方で消防対象物は、この防火対象物に加えて、建物から独立した「物件」までを含みます
つまり消防対象物のほうが範囲が広く、防火対象物はその内側にある概念だと整理できます
立入検査の根拠となる次の章の条文は、この広いほうの「消防対象物」を対象にしています。

じゃあ、防火対象物の点検と立入検査は対象が違うということですか。

そうです。次の章で立入検査の条文そのものを見てみましょう。

立入検査で消防職員は何を確認できるのか

消防職員がクリップボードを持ちながら建物の設備を確認しているイラスト
立入検査の根拠となる条文は、確認できる内容を具体的に定めています
先ほどの「消防対象物」がそのまま検査の対象になります
第4条第1項 消防長又は消防署長は、火災予防のために必要があるときは、(略)当該消防職員(略)にあらゆる仕事場、工場若しくは公衆の出入する場所その他の関係のある場所に立ち入つて、消防対象物の位置、構造、設備及び管理の状況を検査させ、若しくは関係のある者に質問させることができる
検査できるのは「位置・構造・設備」に加え「管理の状況」までです。
管理の状況には、備品や看板といった物件がどのように置かれているかも含まれると考えられます
そのため、建物の設備そのものに問題がなくても、物件の配置状況を理由に指摘を受けることがあります
消防職員には関係者への質問も認められており、管理の実態を口頭で確認することもあります
次の章では、この検査とは別の権限が働く場合を見ていきます。

設備がちゃんとしていても、物の置き方だけで指摘されることがあるんですね。

あります。管理の状況全体が検査の対象になっていることは覚えておいてください。

危険物を扱っていると何が変わるのか

ドラム缶が並ぶ倉庫で消防職員がサンプルを収去しているイラスト
指定数量以上の危険物を貯蔵・取扱う施設には、もう一段別の権限が働きます
ここまでの消防対象物への立入検査とは、根拠となる条文自体が異なります
第16条の5第1項 市町村長等は、(略)指定数量以上の危険物を貯蔵し、若しくは取り扱つていると認められるすべての場所(略)の所有者、管理者若しくは占有者に対して資料の提出を命じ、若しくは報告を求め、又は当該消防事務に従事する職員に、貯蔵所等に立ち入り、これらの場所の位置、構造若しくは設備及び危険物の貯蔵若しくは取扱いについて検査させ、関係のある者に質問させ、若しくは試験のため必要な最少限度の数量に限り危険物若しくは危険物であることの疑いのある物を収去させることができる。
危険物施設には「収去」という、消防対象物の検査には無い権限まで認められています。
収去とは、試験に必要な最小限の量に限って、危険物やその疑いがある物を消防機関が持ち去ることです
これは消防法第4条の立入検査には無い権限で、危険物を扱う施設だけに認められた別枠の仕組みです
対象になるのは、指定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱っていると認められるすべての場所です
自社の施設が指定数量に達しているかどうかは、日頃から危険物の届出内容と実態を照らして確認しておく必要があります。

危険物を置いている倉庫だと、普通の検査より厳しくなるということですか。

権限の範囲が違うという意味では、その通りです。届出の内容と実態が合っているか確認しておきましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

管理者が備品の並んだ棚のそばで確認リストを持っているイラスト
消防対象物という言葉の範囲が分かると、次にやることが見えてきます
明日から確認できることを整理しておきましょう
第16条の5第3項 第四条第二項から第四項までの規定は、前二項の場合にこれを準用する
まずは自分の建物にある物件が「消防対象物」に含まれることを意識しましょう。
共用部や通路に置いている看板・備品の配置を、日頃から点検の一部として見直しておくと安心です
危険物を扱っている場合は、届出済みの数量や品名と実際の貯蔵状況が一致しているか確認しておきましょう
証票の確認や業務への配慮といった手続きは、消防対象物への検査でも危険物施設への検査でも共通です
判断に迷う点があれば、その場で抱え込まず管轄の消防署に確認する習慣を持っておきましょう。

物の置き方まで気にしないといけないとは、思っていませんでした。

難しく考えなくても、日頃の整理整頓の延長で十分です。次の検査までに見直しておきましょう。

よくある質問

Q消防対象物と防火対象物は、日常の会話でも区別して使ったほうがよいのか?
A用途によります。立入検査の根拠を説明する場面では「消防対象物」という言葉のほうが条文と一致しますが、防火対象物点検など別の制度を指すときは区別して使うと誤解が減ります。
Q個人の住居にある家具のような物件も、消防対象物に含まれるのか?
A条文上の「物件」自体は広く読めますが、個人の住居への立入りは原則として関係者の承諾が必要という別の制限があります。物件の範囲と住居への立入りの条件は別の論点です。
Q収去された危険物のサンプルは返してもらえるのか?
A条文は「試験のため必要な最少限度の数量」に限ると定めていますが、返却の手続きまでは条文に明記されていません。気になる場合は、収去した消防機関にその場で確認しておくとよいでしょう。
Q消防対象物という言葉は、点検報告書などの書類にも出てくるのか?
A防火対象物点検報告制度など多くの制度は「防火対象物」を基準に組まれています。消防対象物という言葉は、立入検査の対象範囲を説明する場面で主に登場します。

まとめ

立入検査の対象は消防法第2条第3項が定める「消防対象物」で、建物だけでなく独立した物件まで含む広い概念
防火対象物(消防法第2条第2項)は建物本体とそれに属する物までを指し、消防対象物より範囲が狭い
立入検査の根拠である消防法第4条第1項位置・構造・設備及び管理の状況まで検査対象にしている
物件の配置状況も「管理の状況」の一部として指摘の対象になり得る
指定数量以上の危険物を貯蔵・取扱う施設には消防法第16条の5が別に適用される
危険物施設への立入検査には「収去」という消防対象物への検査には無い権限まで認められている
証票の確認や業務への配慮といった手続きは、消防対象物・危険物施設どちらの検査にも共通している

消防対象物という言葉の意味が、やっと分かりました。物の置き方も気をつけます。

それだけで立入検査への備えになります。㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • 消防法第2条第2項・第3項
  • 消防法第4条第1項
  • 消防法第16条の5第1項・第3項

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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