テナントビルの一室を借りて店を営み防火管理者に選ばれたとします。
消防計画の書式を開くと管理権原の範囲という欄が出てきます。
建物全体の廊下や階段まで自分が背負うのかどうかは、賃貸借契約書を読んでも書いてありません。
この記事では消防計画に権原の範囲を定める義務を条文から解説します。
借りている区画のことだけ書けばよいのか自信がありません。
その権原の範囲を書くこと自体が省令の求めです。
書き忘れやすい一項目です。
共用の廊下や階段はどちら側で扱うのでしょうか。
そこは建物全体の計画と噛み合わせて決めます。
順に見ていきましょう。
この記事の結論
- 管理について権原が分かれている建物では消防計画に権原の範囲を定めます。(消防法施行規則第3条第3項)
- 定める義務を負うのは管理権原者ではなく防火管理者です。(消防法施行規則第3条第3項)
- 東京消防庁は範囲を文章又は平面図等により図示して明確にするとしています。
- 統括防火管理者が作る全体についての消防計画にも権原の範囲が入ります。(消防法施行規則第4条第1項第1号)
- 範囲が変わったら消防計画を変更して届け出ます。(消防法施行規則第3条第1項)
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目次
消防計画に定める権原の範囲とはなにか

それらと並んで、自分の管理がどこまで及ぶのかを書く項目が省令に置かれています。
消防法施行規則第三条第三項 その管理について権原が分かれている防火対象物にあつては、当該防火対象物の防火管理者は、第一項の消防計画に、当該防火対象物の当該権原の範囲を定めなければならない。
消防法施行規則第3条第3項は、管理について権原が分かれている防火対象物では、防火管理者が消防計画に権原の範囲を定めなければならないと書いています。
消防計画そのものは消防法施行令第3条の2第1項と消防法施行規則第3条第1項が作成と届出を求めるもので、届出先は所轄消防長又は消防署長です。
その計画の中に、自分の管理が及ぶ場所はどこからどこまでなのかを一項目として置くのが第3項の求めです。
手元の消防計画を開いて範囲の記載が見当たらないなら、そこが最初に足すところになります。
訓練や点検の話だけではなかったのですね。
場所の線引きも計画の中身です。
次はどの建物が対象かを見ましょう。
権原の範囲を定めるのはどんな建物か

条文が置いている条件は建物の高さでも面積でもありません。
消防法第八条第一項 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(略)、複合用途防火対象物(略)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物について消防計画の作成(略)その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
消防法施行規則第3条第3項が掲げる条件はその管理について権原が分かれている防火対象物であることだけで、階数や収容人員の下限は書かれていません。
消防法第8条第1項は管理について権原を有する者に防火管理者を定めさせる規定なので、権原が分かれていればその部分ごとに防火管理者が置かれ、その一人ひとりが自分の計画を作ります。
統括防火管理者を定めなければならない建物は消防法第8条の2第1項と消防法施行令第3条の3が別に絞り込んでいるので、統括が要らない建物でも第3項は働きます。
なお管理権原が分かれていること自体が防火管理者の業務委託の可否にも効いてくるので、あわせて民泊やテナントビルで防火管理者の委託ができないのはどんな場合かもご覧ください。
統括防火管理者がいない小さな雑居ビルでも書くのですね。
条文が分けているのは権原だけです。
次は書き方に進みます。
権原の範囲はどうやって書けばよいのか

実際の書き方は消防機関が公表している資料が示しています。
消防法施行規則第三条第一項 防火管理者は、令第三条の二第一項の規定により、防火対象物の位置、構造及び設備の状況並びにその使用状況に応じ、次の各号に掲げる区分に従い、おおむね次の各号に掲げる事項について、当該防火対象物の管理について権原を有する者の指示を受けて防火管理に係る消防計画を作成し、別記様式第一号の二の届出書によりその旨を所轄消防長(略)又は消防署長に届け出なければならない。防火管理に係る消防計画を変更するときも、同様とする。
東京消防庁は消防計画に定める事項として管理権原の及ぶ範囲を挙げ、文章又は平面図等により図示し明確にすると説明しています。
長岡市消防本部が公表しているテナント用の消防計画作成例では、管理権原者は管理権原が及ぶ範囲の防火管理業務について全ての責任を持つ、という条を冒頭に置いています。
つまり計画の頭のほうで適用範囲を言い切り、必要なら平面図を添えて塗り分ける、という形が実務の標準です。
自分の店の区画番号と階数を文章で書き、その階の平面図に色を付けて添えるだけでも、範囲は十分に伝わります。
つまり平面図に色を塗って添えればよいのですね。
文章と図面の両方があれば確実です。
次は落とし穴を見ます。
実務で見落としやすいのはどこか

落とし穴は全体の計画との突き合わせに出ます。
消防法施行規則第四条第一項 統括防火管理者は、令第四条の二第一項の規定により(略)次の各号に掲げる事項について、当該防火対象物の全体についての防火管理に係る消防計画を作成し(略)届け出なければならない。 一 防火対象物の管理について権原を有する者の当該権原の範囲に関すること。
消防法施行規則第4条第1項第1号は統括防火管理者が作る全体についての消防計画に権原の範囲を定めさせ、消防法施行規則第3条第3項は部分ごとの消防計画に権原の範囲を定めさせています。
別々の条文が別々の計画に求めているので、どちらも書くのが条文どおりの姿です。
さらに消防法第8条の2第3項は部分の消防計画が全体についての消防計画に適合しなければならないと定めているため、両方の範囲が食い違っていると適合しない状態になります。
もう一つ紛らわしいのが消防法施行規則第3条第2項で、こちらは業務を外部に委託したときの受託者の氏名及び住所と業務の範囲及び方法を定める規定なので、権原の範囲とは別の項目として並べてください。
委託の範囲を書いて済ませていました。
項も条も違うので両方いります。
最後に確認の順番をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

そのうえで足りない記載を足し、変更なら届け直します。
消防法施行令第三条の二第一項 防火管理者は、総務省令で定めるところにより、当該防火対象物についての防火管理に係る消防計画を作成し、所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。
まず手元の消防計画に権原の範囲の記載があるかを見て、無ければ階と区画を文章で書き足します。
次に統括防火管理者がいる建物なら、全体についての消防計画の写しをもらい、そこに書かれた自分の権原の範囲と食い違いがないかを確かめます。
共用の廊下や階段や機械室が誰の範囲にも入っていない空白になっていないかは、平面図を広げて指でなぞるのがいちばん早い方法です。
記載を直したら消防法施行規則第3条第1項の別記様式第一号の二で変更を届け出て、控えを維持台帳に綴じてください。
全体の計画の写しをもらうところから始めます。
そこが突き合わせの出発点です。
写しが無ければ管理権原者に頼んでください。
よくある質問
Q権原の範囲を書かないままにしているとどうなりますか?
A記載が抜けていること自体を直接罰する規定は消防法に置かれていません。消防法第8条第4項は、防火管理上必要な業務が法令の規定又は消防計画に従って行われていないと消防長又は消防署長が認める場合に、管理権原者へ必要な措置を講ずべきことを命ずることができるとしています。この命令に違反した者は消防法第41条第1項第2号により1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処せられます。
Q建物を借りているだけのテナントでも管理権原者になりますか?
A消防法第8条第1項は管理について権原を有する者と書いており、所有者に限るとは定めていません。消防法施行令第3条の2第3項も、防火管理者が必要に応じて管理について権原を有する者の指示を求めることとしており、部分ごとに指示を出す立場の者が置かれることを前提にしています。誰が管理権原者に当たるかは契約の内容と実際の管理の状況で変わるので、所轄消防署にご確認ください。
Q統括防火管理者がいる建物なら全体の消防計画に書けば足りますか?
A足りません。消防法施行規則第4条第1項第1号は全体についての消防計画に権原の範囲を定めることを求め、消防法施行規則第3条第3項は部分ごとの消防計画に権原の範囲を定めることを求めています。別々の計画に対する別々の義務です。消防法第8条の2第3項により部分の計画は全体についての計画に適合しなければならないので、両者の範囲が食い違えば適合しない状態になります。
Qテナントの入れ替わりで範囲が変わったらどうしますか?
A消防法施行規則第3条第1項は末尾で、防火管理に係る消防計画を変更するときも同様とすると定めています。作成のときと同じ別記様式第一号の二の届出書で所轄消防長又は消防署長へ届け出てください。区画が増減したときや共用部の取り決めが変わったときは、添えている平面図も差し替えます。
まとめ
✔権原が分かれた建物では消防計画に権原の範囲を定めます。
✔根拠は消防法施行規則第3条第3項にあります。
✔階数や収容人員の下限は条文に置かれていません。
✔書き方は文章又は平面図等と示されています。
✔全体についての消防計画にも同じ項目が入ります。
✔委託の業務の範囲とは別の項目です。
✔範囲が変わったら変更の届出を出します。
あわせて読みたい
今日のうちに平面図を用意しておきます。
それだけで範囲の記載は形になります。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条第1項・第4項・第8条の2第1項・第3項・第41条第1項第2号
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第3条の2第1項・第3項・第3条の3
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第1項・第2項・第3項・第4条第1項第1号
- 東京消防庁「消防計画に定める事項」
- 長岡市消防本部「消防計画(テナント用)作成例」
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





