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火災にならなかった危険物の事故でも消防は調べに来るのか|応急措置と通報の義務から事故原因調査までを解説

火災にならない危険物の事故でも消防は調べに来るのかと題したアイキャッチ画像

危険物を扱う施設で油が漏れたとき、まず頭に浮かぶのは片づけと復旧です。
けれども消防法は、火災にならなかった事故についても応急の措置通報の義務を置いています。
そのうえで火災が発生するおそれのあった事故には事故原因調査という手続が用意されています。
この記事では危険物の事故が起きたときに建物側にかかる義務と調査の中身を順に解説します。

敷地のタンクからわずかに油がにじんでいました。
火は出ていないので社内で片づけて済ませてよいでしょうか。

そこは消防法が流出その他の事故として正面から定めている場面です。
火が出ていなくても応急の措置と通報の義務がかかります。

そのあと消防が調べに来ることもあるのですか。

火災のおそれがあった事故には事故原因調査という別の手続があります。
火災の調査とは根拠の条文が違うので順に見ていきます。

この記事の結論
  • 危険物が漏れたら直ちに応急の措置を講じなければなりません。(消防法第16条の3第1項)
  • 通報の義務は所有者だけでなく事態を発見した者にかかります。(消防法第16条の3第2項)
  • 応急の措置を講じていないと認めるときは市町村長等が措置を命じます。(消防法第16条の3第3項)
  • その命令に違反すると6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象になります。(消防法第42条第9号)
  • 火災にならなかった事故でも火災のおそれがあれば原因を調査できます。(消防法第16条の3の2第1項)

危険物の事故で応急の措置と通報から命令と事故原因調査へ進む流れを示した図解

危険物が漏れたとき最初にしなければならないことはなにか

タンクから漏れた危険物を吸着材で受け止めながら別の人が電話で通報する場面を描いた図
はじめに事故が起きた直後の義務を見ておきます。
消防法は片づけや復旧よりも先にすべきことを並べています。
消防法第十六条の三第一項
製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、当該製造所、貯蔵所又は取扱所について、危険物の流出その他の事故が発生したときは、直ちに、引き続く危険物の流出及び拡散の防止、流出した危険物の除去その他災害の発生の防止のための応急の措置を講じなければならない。
消防法第十六条の三第二項
前項の事態を発見した者は、直ちに、その旨を消防署、市町村長の指定した場所、警察署又は海上警備救難機関に通報しなければならない。
止めることと知らせることが先です。
第1項が求めているのは引き続く危険物の流出及び拡散の防止と流出した危険物の除去、そして災害の発生の防止のための応急の措置です。
片づけや原状回復そのものではなく、被害がこれ以上広がらないようにする行為が名指しされています。
第2項の通報は所有者や管理者だけの義務ではなく事態を発見した者に課されているので、気づいた従業員がその場で電話をかけて構いません。
通報先として条文が挙げているのは消防署と市町村長の指定した場所と警察署と海上警備救難機関であって、社内の報告ルートはここには出てきません。
まず流出を止めて吸着材で受け、同時に別の人が電話をかける。この役割分担を事故が起きる前に決めておいてください。

火が出ていなくても連絡が要るのですね。

条文は危険物の流出その他の事故と書いていて火災に限っていません。
にじむ程度でも止めて知らせるところから始めてください。

この義務がかかるのはどんな施設か

防油堤の中の屋外タンクと倉庫と小さなドラム缶の棚を並べて対象の線引きを表した図
次に義務がかかる範囲を確かめます。
条文が名指ししているのは製造所と貯蔵所と取扱所です。
消防法第十条第一項
指定数量以上の危険物は、貯蔵所(略)以外の場所でこれを貯蔵し、又は製造所、貯蔵所及び取扱所以外の場所でこれを取り扱つてはならない。ただし、所轄消防長又は消防署長の承認を受けて指定数量以上の危険物を、十日以内の期間、仮に貯蔵し、又は取り扱う場合は、この限りでない。
消防法第九条の四第一項
危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量(以下「指定数量」という。)未満の危険物(略)その他指定可燃物に類する物品の貯蔵及び取扱いの技術上の基準は、市町村条例でこれを定める。
線を引いているのは指定数量です。
第16条の3が名指ししている製造所と貯蔵所と取扱所は、指定数量以上の危険物を扱うために消防法第11条第1項の許可を受けた施設です。
非常用発電機の燃料タンクやボイラーの重油タンクであっても、指定数量以上であればこの中に入ります。
一方で指定数量未満のいわゆる少量危険物は第9条の4により市町村条例に委ねられているので、応急の措置や通報をどう定めているかは自分の市町村の条例を見ることになります。
自分の建物のタンクがどちらなのかは、消防法第11条第1項の許可を受けているかどうかで見分けられます。手元の書類を先に確かめてください。

少量危険物なら消防法の条文は出てこないのですね。

第16条の3の話としてはそのとおりです。
ただ市町村条例に別の定めがあるので所轄消防署でご確認ください。

応急の措置をとらないでいると消防はなにを命じるのか

制服の職員が書面を差し出し標識板が立てられたタンクのある施設を描いた図
ここからは義務を果たさなかったときの話です。
消防法は命令と代執行と罰則を順に用意しています。
消防法第十六条の三第三項
市町村長等は、製造所、貯蔵所(移動タンク貯蔵所を除く。)又は取扱所の所有者、管理者又は占有者が第一項の応急の措置を講じていないと認めるときは、これらの者に対し、同項の応急の措置を講ずべきことを命ずることができる。
消防法第十六条の三第五項
市町村長等又は市町村長は、(略)その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき(略)は、行政代執行法の定めるところに従い、当該消防事務に従事する職員又は第三者にその措置をとらせることができる。
命令のあとに代執行が控えています。
命令を出すのは市町村長等で、これは消防法第11条第2項が定めている言い方であり、同条第1項の許可をした市町村長や都道府県知事や総務大臣を指します。
移動タンク貯蔵所については第4項が別に定めていて、その区域を管轄する市町村長が同じ内容を命じます。
命令に違反した者は消防法第42条第9号により6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処するとされ、法人の業務に関して行われたときは第45条第3号により法人にも各本条の罰金刑が科されます。
さらに第6項が第11条の5第4項と第5項を準用しているので、命令が出たことは標識の設置その他の方法で公示され、施設の側は標識の設置を拒み又は妨げてはならないとされています。
命令が出てから動くと標識が立ちます。自主的に措置をとるほうが結果として早く収まります。

標識が立つのはできれば避けたいところです。

だからこそ最初の応急の措置が効いてきます。
吸着材の在庫と防油堤を今のうちに見ておいてください。

火災にならなかった事故でも原因を調べられるのか

事故のあったタンクから配管をたどって別の建物へ職員が入っていく場面を描いた図
ここがこの記事の本題です。
消防法には火災の調査とは別に、火災にならなかった事故のための調査が置かれています。
消防法第十六条の三の二第一項
市町村長等は、製造所、貯蔵所又は取扱所において発生した危険物の流出その他の事故(火災を除く。以下この条において同じ。)であつて火災が発生するおそれのあつたものについて、当該事故の原因を調査することができる。
消防法第十六条の三の二第二項
市町村長等は、前項の調査のため必要があるときは、当該事故が発生した製造所、貯蔵所若しくは取扱所その他当該事故の発生と密接な関係を有すると認められる場所の所有者、管理者若しくは占有者に対して必要な資料の提出を命じ、若しくは報告を求め、又は当該消防事務に従事する職員に、これらの場所に立ち入り(略)検査させ、若しくは関係のある者に質問させることができる。
調べられるのは事故が起きた施設だけではありません。
第2項はその他当該事故の発生と密接な関係を有すると認められる場所を並べているので、配管でつながった別棟や原料を納めた場所にも調査が及びえます。
求められるのは資料の提出と報告と立入りと検査と質問で、同条第4項により市町村長等から求めがあれば消防庁長官も同じ調査を行うことができます。
同条第3項が第4条第1項ただし書と第2項から第4項までを準用しているため、来る職員は証票を携帯し、業務をみだりに妨害せず、知り得た関係者の秘密をみだりに他に漏らしてはならないという枠がそのままかかります。
資料の提出を求められて出さなかったり虚偽の資料を提出したり、立入りや検査を拒んだりすると、消防法第44条第2号により30万円以下の罰金又は拘留の対象になります。
事故のあとに慌てて資料を探すことになりがちです。日ごろの点検記録をひとまとめにしておいてください。

火災の調査とはまったく別のものなのですね。

火災の調査は消防法第七章に置かれていて、こちらは第16条の3の2が根拠です。
条文が違うので求められることも違います。

明日からなにを確認すればよいのか

机の上の点検の記録と書類を収めた引き出しと連絡先を貼る掲示板を並べた図
最後に手元で確かめられることを整理します。
条文から読み取れるのは連絡先と記録の備えです。
消防法第四十四条
次のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金又は拘留に処する。
十 正当な理由がなく消防署、第十六条の三第二項の規定により市町村長の指定した場所、警察署又は海上警備救難機関に同条第一項の事態の発生について虚偽の通報をした者
先に備えるのは連絡先の掲示です。
条文が挙げる通報先は消防署と市町村長の指定した場所と警察署と海上警備救難機関で、市町村長の指定した場所がどこなのかは市町村ごとに違います。
これを事務所の電話のそばに掲示しておくだけで、事故のときの迷いがひとつ減ります。
罰則の側から見ても、第44条第10号が罰しているのは正当な理由なく虚偽の通報をした場合であって、正しく知らせることそのものが咎められる作りにはなっていません。
そのうえで日常の点検記録と吸着材や防油堤の確認の記録を一か所にまとめておけば、事故原因調査で資料の提出を求められたときにそのまま出せます。
まず通報先の掲示、次に記録の保管場所の一本化。この順で今週のうちに片づけてください。

つまり掲示と記録から始めればよいのですね。

そのとおりです。
あわせて指定数量の判定も許可書で確かめておいてください。

よくある質問

Q事故を通報しなかっただけで罰則を受けることはありますか?
A消防法の罰則の章には、第16条の3第2項の通報をしなかったこと自体を罰する号は置かれていません。第44条第10号が罰しているのは正当な理由なく虚偽の通報をした場合です。ただし応急の措置を命じられてこれに違反すれば第42条第9号の対象になりますので、個別の判断は所轄消防署にご確認ください。
Q少量危険物しか置いていない建物でも同じ手順になりますか?
A消防法第16条の3が名指ししているのは製造所と貯蔵所と取扱所です。指定数量未満の危険物の貯蔵及び取扱いの技術上の基準は第9条の4により市町村条例に委ねられていますので、条例にどう定められているかを所轄消防署にご確認ください。
Q事故原因調査で立ち入られるのは事故が起きた施設だけですか?
A消防法第16条の3の2第2項は、事故が発生した施設に加えてその他当該事故の発生と密接な関係を有すると認められる場所を挙げています。どこまでが密接な関係にあたるのかは条文に定義が置かれていませんので、個別の判断は所轄消防署にご確認ください。
Q調査で見られたことが外に出てしまうことはありませんか?
A消防法第16条の3の2第3項が第4条第2項から第4項までを準用しているため、証票の携帯と業務の妨害の禁止に加えて、知り得た関係者の秘密をみだりに他に漏らしてはならないという定めがそのまま及びます。

まとめ

危険物が漏れたら直ちに応急の措置を講じなければなりません
通報の義務は所有者だけでなく事態を発見した者にかかります
義務がかかるのは指定数量以上を扱う製造所と貯蔵所と取扱所です
指定数量未満の少量危険物は市町村条例に委ねられています
応急の措置を講じないと市町村長等が命令を出し代執行まで進みます
命令に違反すると6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象です
火災にならなかった事故でも火災のおそれがあれば原因が調査されます

まず通報先の掲示から取りかかります。
点検の記録もまとめて置き直します。

止めて知らせて記録を残すの順にそろえておけば足ります
㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • 消防法第4条第1項から第4項まで
  • 消防法第9条の4第1項
  • 消防法第10条第1項
  • 消防法第11条第1項及び第2項
  • 消防法第11条の5第4項及び第5項
  • 消防法第16条の3
  • 消防法第16条の3の2
  • 消防法第42条第9号
  • 消防法第44条第2号及び第10号
  • 消防法第45条第3号
  • 行政代執行法

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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