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立入検査で知られたことを消防は外に漏らさないのか|消防法第4条第4項の秘密保持と業務妨害の禁止を解説

立入検査で知られたことは外に漏れないのかを示したアイキャッチ画像

立入検査では消防計画や点検の記録だけでなく建物の中の様子まで見られます。
見られた内容が外に漏れないかと気になる方は少なくありません。
消防法は職員の側にも秘密を守る義務を置いています。
この記事では立入検査に来た消防職員が負う義務とその根拠条文を順に解説します。

立入検査で書庫の中まで見せることになりました。
見られた内容が外に漏れることはないのでしょうか。

消防法は職員の側に秘密を守る義務を置いています。
根拠は第4条第4項です。

条文があるだけで罰則はないということですか。

消防法の罰則には置かれていませんが地方公務員法の側に定めがあります。
その職を退いた後も義務は続きます。

この記事の結論
  • 立入検査に来た消防職員には証票の提示と業務の妨害の禁止と秘密の保持が課されています。(消防法第4条第2項から第4項まで)
  • 第4条第4項の対象は立ち入つて検査又は質問を行つた場合に知り得た関係者の秘密です。(消防法第4条第4項)
  • 消防法の罰則には第4条第4項に違反した者を直接罰する規定が置かれていません。(消防法第39条の2から第46条まで)
  • 秘密を漏らした職員は地方公務員法第60条第2号により1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金とされています。(地方公務員法第34条第1項及び第60条第2号)
  • 同じ規定は火災調査や危険物の立入検査にも準用されています。(消防法第34条第2項及び第16条の5第3項)

立入検査に来た消防職員が負う証票の提示と業務の妨害の禁止と秘密の保持と罰則の所在を示した図解

立入検査に来た消防職員はどんな縛りを受けているのか

立入検査に来た制服の消防職員が受付のカウンター越しに証票を示す図
はじめに条文そのものを見ておきます。
消防職員の側の縛りは消防法第4条の第2項から第4項までに置かれています。
消防法第四条第二項
消防職員は、前項の規定により関係のある場所に立ち入る場合においては、市町村長の定める証票を携帯し、関係のある者の請求があるときは、これを示さなければならない
同条第三項
消防職員は、第一項の規定により関係のある場所に立ち入る場合においては、関係者の業務をみだりに妨害してはならない
同条第四項
消防職員は、第一項の規定により関係のある場所に立ち入つて検査又は質問を行つた場合に知り得た関係者の秘密をみだりに他に漏らしてはならない
縛りは3つに分かれています。
第2項は証票の携帯と提示で 求められたときに身分を示すことを義務づけています。
第3項は業務の妨害の禁止で 立入検査を理由に日々の商売を妨げることを禁じています。
第4項は秘密の保持で 検査や質問で知り得た関係者の秘密を対象にしています。
いずれも第1項の立入検査を行う場合の定めですから 検査に来た職員に対してはその場で持ち出せます。

職員の側にも決まりがあるとは知りませんでした。

条文に書かれた義務ですから遠慮なく確かめて構いません。
まずは証票の提示を求めてください。

漏らしてはならない秘密とはどこまでを指すのか

事務室の書類棚と開いたバインダーが立入検査で確認される様子を示した図
条文は対象になる秘密の範囲を言葉で区切っています。
どの場面で知ったことが対象になるのかを見ます。
消防法第三十四条第二項
第四条第一項ただし書及び第二項から第四項までの規定は、前項の場合にこれを準用する
消防法第十六条の五第三項
第四条第二項から第四項までの規定は、前二項の場合にこれを準用する
対象は立入検査で知ったことに限られています。
第4条第4項は第一項の規定により関係のある場所に立ち入つて検査又は質問を行つた場合に知り得たと場面を区切っています。
そして守る相手は関係者で 対象は関係者の秘密と書かれています。
同じ規定は火災のあとの調査にも及んでいて 消防法第34条第2項が第4条第1項ただし書及び第2項から第4項までを引いています。
危険物を扱う場所への立入検査も同じで 第16条の5第3項が第4条第2項から第4項までを準用しています。
どの条文に基づく検査で来たのかを控えておけば あとで根拠を確かめるときに迷いません。

火災のあとの調査でも同じ義務が続くのですね。

そのとおりで条文が準用の形で引かれています。
危険物を扱う場所への立入検査も同じ扱いです。

秘密を漏らした消防職員はどう扱われるのか

開いたフォルダから書類が外へ持ち出される様子に赤い禁止の標識を添えた図
義務があっても罰則がなければ実効性が気になります。
罰則がどこに置かれているのかを確かめます。
地方公務員法第三十四条第一項
職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならないその職を退いた後も、また、同様とする
地方公務員法第六十条
次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する
二 第三十四条第一項又は第二項(略)に違反して秘密を漏らした者
罰則は消防法ではなく地方公務員法の側にあります。
消防法の罰則には第4条第4項に違反した者を直接罰する規定が置かれていません。
一方で消防本部と消防署は市町村が設ける機関で そこに置かれる消防職員は市町村長の承認を得て消防長が任命します。
その常勤の職員には地方公務員法が適用され 同法第34条第1項の秘密を守る義務を負います。
これに違反した者は同法第60条第2号により1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金とされています。
同項はその職を退いた後も同様と定めているので 担当者が異動しても義務は残ります。

つまり退職したあとも義務は続くということですね。

条文にそのまま書かれている点です。
過度に身構えず必要な資料を出してください。

業務をみだりに妨害してはならないとはどこまでを指すのか

営業中の店舗の売り場から離れた位置に消防職員が立つ様子を示した図
第3項は建物の側の日々の商売を守る規定です。
ただし検査を断る権利を与えたものではありません。
消防法第四条第三項
消防職員は、第一項の規定により関係のある場所に立ち入る場合においては、関係者の業務をみだりに妨害してはならない
消防法第四十四条第二号(抄)
第四条第一項(略)の規定による資料の提出若しくは報告を求められて、資料の提出をせず、虚偽の資料を提出し、報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又はこれらの規定による立入り、検査若しくは収去を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
条文は妨害の中身までは書いていません。
第3項が禁じているのはみだりに業務を妨げることで どの行為が当たるかまでは条文に書かれていません。
ですから営業中に来たこと自体を理由に検査を断れると読むことはできません。
むしろ逆向きの定めが置かれていて 立入りや検査を拒み 妨げ 又は忌避した者は第44条第2号の対象になります。
その罰は30万円以下の罰金又は拘留です。
売り場が混み合う時間帯を避けたいときは 断るのではなく日時の相談として伝えてください。

混み合う時間に来られると正直こたえます。

断る根拠にはなりませんが相談はできます。
落ち着いた時間帯をあらかじめ伝えておいてください。

立入検査の当日はなにを確かめておけばよいのか

低いテーブルを挟んで防火管理者と消防職員が書類を確認する様子を示した図
最後に当日の段取りに落とします。
確かめる順番は決まっています。
消防法第四条の二第一項
消防長又は消防署長は、火災予防のため特に必要があるときは、消防対象物及び期日又は期間を指定して、当該管轄区域内の消防団員(略)に前条第一項の立入及び検査又は質問をさせることができる。
同条第二項
前条第一項ただし書及び第二項から第四項までの規定は、前項の場合にこれを準用する
まず誰が来たのかを確かめます。
立入検査を行うのは消防職員だけとは限らず 消防法第4条の2により消防団員が指定を受けて行うことがあります。
その場合も同条第2項が第4条第1項ただし書及び第2項から第4項までを準用するので 証票の提示と妨害の禁止と秘密の保持は同じように及びます。
ただし地方公務員法は非常勤の消防団員の職を特別職とし 同法第4条第2項は法律に特別の定めがある場合を除き特別職には適用しないと定めています。
次に当日の立会者と質問に答える人を決め 消防計画や点検の結果報告書など見せる書類をまとめておいてください。
検査の日と根拠条項を控えておけば あとで秘密の保持を求める場面でも話が早くなります。

来たのが職員か団員かも見ておきます。

証票を見ればどちらかが分かります。
控えておけば後の問い合わせでも役に立ちます。

よくある質問

Q消防職員が秘密を漏らしても消防法では罰せられないのですか?
A消防法の罰則には第4条第4項に違反した者を直接罰する規定が置かれていません。もっとも常勤の消防職員には地方公務員法が適用され、同法第34条第1項に違反して秘密を漏らした者は第60条第2号により1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金とされています。
Q担当の職員が退職したら秘密を守る義務はなくなりますか?
A地方公務員法第34条第1項は職務上知り得た秘密を漏らしてはならないと定めたうえで、その職を退いた後も、また、同様とすると続けています。退職や異動によって義務が消える書き方にはなっていません。
Q火災のあとの調査や危険物の検査でも同じ義務が課されますか?
A火災の損害の調査については消防法第34条第2項が第4条第1項ただし書及び第2項から第4項までを準用しています。危険物については第16条の5第3項が、事故の原因調査については第16条の3の2第3項が、それぞれ同じ規定を準用しています。
Q忙しい時間帯に来られたことを妨害だと言えますか?
A消防法第4条第3項は関係者の業務をみだりに妨害してはならないと定めるだけで、どの行為が妨害に当たるかまでは書かれていません。逆に立入りや検査を拒み妨げ忌避した者は第44条第2号により30万円以下の罰金又は拘留とされていますので、個別の当てはめは所轄消防署にご確認ください。

まとめ

立入検査に来た消防職員には証票の提示と業務の妨害の禁止と秘密の保持が課されています
根拠は消防法第4条第2項から第4項までです
第4条第4項の対象は検査や質問を行つた場合に知り得た関係者の秘密です
消防法の罰則には第4条第4項違反を直接罰する規定が置かれていません
秘密を漏らした職員は地方公務員法第60条第2号により1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です
秘密を守る義務はその職を退いた後も続くと定められています
立入りや検査を拒み妨げ忌避した側は30万円以下の罰金又は拘留です

検査の日と根拠条項を控えて書類をまとめておきます。
証票の提示も忘れずに求めます。

控えを残しておけば後から根拠を確かめられます
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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第4条第1項から第4項まで
  • 消防法第4条の2
  • 消防法第16条の3の2第3項
  • 消防法第16条の5第3項
  • 消防法第34条第2項
  • 消防法第44条第2号
  • 消防組織法第9条及び第15条
  • 地方公務員法第3条第3項第5号及び第4条
  • 地方公務員法第34条
  • 地方公務員法第60条第2号

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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