BLOG

非常コンセント設備はどんな建物に設置義務があるのか|11階建て以上と地下街の基準を解説

高層ビルの階段室で非常コンセントの保護箱を確認する担当者の写真

高層ビルの階段室や非常用エレベーターの近くに、赤い表示のある小さな保護箱を見たことはありませんか。
中に入っているのはコンセントですが、掃除機や工具を差すためのものではありません。
消防隊が消火活動のために使う専用の電源で、消防法令上「消火活動上必要な施設」に分類されています。
設置義務が生じる階数や技術基準を、条文から確認します

うちのビル、11階建てなんですけど、あの赤い保護箱は必要なんでしょうか。

消防法施行令第29条の2に基準があります。
階数と延べ面積の両方から見ていきましょう。

普通のコンセントを埋め込むだけでは駄目なんですか。

規格も配線も専用です。
条文どおりに整理しますね。

この記事の結論
  • 非常コンセント設備は住民ではなく消防隊専用の電源設備です
  • 地階を除く階数が11以上の建築物に設置義務が生じます
  • 地下街(16の2)項は延べ面積1,000平方メートル以上で対象になります
  • コンセントの規格・設置高さ・回路数まで施行規則で細かく定められています
  • 連結送水管(7階建て以上)より設置基準の階数が高いため、数え違いに注意が必要です

非常コンセント設備は地階を除く11階以上の建築物か地下街の延べ面積1,000平方メートル以上で設置義務が決まることを示す図解

非常コンセント設備とは何のための設備なのか

非常コンセント設備は住民ではなく消防隊が消火活動で使う専用電源であることを示す図
非常コンセント設備という名前を知らなくても、高層ビルの廊下や階段室で赤い表示の付いた保護箱を見た人は多いはずです。
これは住民や利用者が使う一般用のコンセントではありません。
消防法施行令第7条第6項 法第17条第1項の政令で定める消火活動上必要な施設は、排煙設備、連結散水設備、連結送水管、非常コンセント設備及び無線通信補助設備とする。
消防隊が使うための専用電源です。
条文上、非常コンセント設備は「消火活動上必要な施設」に分類され、スプリンクラーや屋内消火栓のように利用者自身が使う設備とは目的が異なります。
停電した高層階でも、消防隊がライトや排煙用の送風機、破壊器具などの電源を確保できるようにするための設備です。
保護箱の中は家庭用の延長コードを挿す場所ではなく、消防隊が到着してから使う前提の電源だと理解しておきましょう。

じゃあ、掃除のときにあれを使っては駄目ということですか。

はい、消防隊専用です。
次は設置義務が生じる建物の条件を見ていきましょう。

非常コンセント設備はどんな建物に設置義務が生じるのか

非常コンセント設備は地階を除く11階以上の建築物か地下街の延べ面積で設置対象が決まることを示す図
設置基準は消防法施行令第29条の2にあります。
建物の高さで決まる場合と、地下街の面積で決まる場合の2つの入り口があります。
消防法施行令第29条の2第1項 非常コンセント設備は、次に掲げる防火対象物に設置するものとする。一 別表第一に掲げる建築物で、地階を除く階数が11以上のもの 二 別表第一(16の2)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が1,000平方メートル以上のもの
用途を問わず階数だけで決まります。
一号は地階を除いて11階以上ある建築物であれば、事務所でも共同住宅でも別表第一に載っているかぎり対象になり、用途による絞り込みはありません。
二号は地下街そのものが対象で、延べ面積1,000平方メートル以上が線引きです。
ビルの地階だけを指す規定ではなく、独立した地下街という用途区分に対する基準である点に注意してください。

うちは10階建てなんですけど、ぎりぎり対象外ということですよね。

はい、地階を除いた階数で数えます。
次はどう設置するかという中身を見ていきましょう。

非常コンセントはどこにどのように設置しなければならないのか

非常コンセントは水平距離50メートル以内に消防隊が使いやすい専用電源として設置することを示す図
設置場所と電気の規格は施行令と施行規則の両方に定めがあります。
数値がいくつも出てくるので、条文どおりに整理します。
消防法施行令第29条の2第2項 非常コンセントは、防火対象物の階ごとに、その階の各部分から一の非常コンセントまでの水平距離が50メートル以下となるように、かつ、階段室、非常用エレベーターの乗降ロビーその他消防隊が有効に消火活動を行うことができる位置に設けること。非常コンセント設備は、単相交流100ボルトで15アンペア以上の電気を供給できるものとし、非常電源を附置すること。
電源にも置き場所にも細かい決まりがあります。
消防法施行規則第31条の2では、設置高さを床面又は階段の踏面から1メートル以上1.5メートル以下とし、埋込式の保護箱に納めることが定められています。
コンセントの規格も日本産業規格C8303の接地形二極コンセント(定格15アンペア125ボルト)に限られ、家庭用のプラグを挿せばよいわけではありません。
回路は各階で2以上とするのが原則で、非常コンセントが1個しかない階だけ1回路にできるという例外も条文に書かれています。

うちにある普通のコンセントとは規格から違うのですね。

そうです、専用規格です。
次は見落としやすい落とし穴を見ていきましょう。

非常コンセント設備で実務が見落としやすいのはどこか

連結送水管は7階建て以上、非常コンセント設備は11階以上と設置基準の階数が異なることを示す図
似た設備の連結送水管と、設置義務が生じる階数の基準がずれています。
この段差に気づかず対応が漏れる例があります。
消防法施行令第29条第1項 連結送水管は、次の各号に掲げる防火対象物に設置するものとする。一 別表第一に掲げる建築物で、地階を除く階数が7以上のもの(略)
連結送水管は7階建てから必要になります。
連結送水管は地階を除く階数が7以上で設置義務が生じるのに対し、非常コンセント設備は11以上まで基準が上がるため、7階建てから10階建てのビルは連結送水管があっても非常コンセント設備は義務ではありません。
消火活動用の設備が2つあるからといって、片方の基準だけで両方そろっていると思い込むと、点検や増築時の確認で漏れが出ます。
増築や用途変更で階数が11階に達したときは、既存不遡及の対象になるかどうかも含めて所轄消防署に確認してください。

うちは9階建てで連結送水管は付いていますが、非常コンセントが無いままでも大丈夫でしょうか。

はい、11階に満たない間は設置義務はありません。
最後に日頃の確認手順をお伝えします。

非常コンセント設備は日頃どう確認すればよいのか

非常コンセント保護箱の表示と赤色灯を日常点検で確認することを示す図
設置してあれば終わりではありません。
点検と表示の維持が条文で求められています。
消防法第17条の3の3 (略)消防用設備等について、総務省令で定めるところにより、定期に、点検させ、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。消防法施行規則第31条の2第9号 非常コンセントの保護箱には、その表面に「非常コンセント」と表示し、保護箱の上部に赤色の灯火を設けること。
まず自分の建物の階数を数え直しましょう。
地階を除く階数が11以上か、地下街として1,000平方メートル以上に該当するかを最初に確認してください。
設置済みなら、保護箱の「非常コンセント」の表示と上部の赤色灯が生きているかを日常点検で見ます。
機能そのものは消防設備士等による定期点検・報告の対象なので、他の消防用設備等とあわせて点検周期に組み込んでおきましょう。

まずは階数を数え直すところからですね。

はい、そこが出発点です。
気になる点は所轄消防署にも確認してみてください。

よくある質問

Q非常コンセント設備は住民が使ってもよいのですか?
Aいいえ。消防隊が消火活動で使うための専用設備であり、清掃や工事で一般利用者が使う想定にはなっていません。
Qマンションの共用部にあるコンセントはすべて非常コンセント設備ですか?
A違います。非常コンセント設備は保護箱に収められ「非常コンセント」の表示と赤色灯を備えたものだけを指し、通常の清掃用コンセントとは区別されています。
Q地下街の非常コンセント設備は延べ面積で判断するのですか?
Aはい。別表第一(16の2)項の地下街は延べ面積1,000平方メートル以上で設置対象になり、階数の基準は関係しません。
Q9階建てのビルに連結送水管があれば非常コンセント設備も必要ですか?
Aいいえ。非常コンセント設備は地階を除く階数が11以上から義務になるため、9階建ての時点ではまだ設置義務はありません。

まとめ

非常コンセント設備は消防隊専用の電源で、住民や利用者が使う設備ではありません
設置対象は地階を除く階数が11以上の建築物です
地下街(16の2)項は延べ面積1,000平方メートル以上で別ルートとして対象になります
各階での水平距離は50メートル以下で、消防隊が活動しやすい位置に設けます
コンセントは日本産業規格C8303の専用規格で、設置高さや保護箱の仕様も定められています
連結送水管(7階建て以上)より基準が厳しく、階数の数え違いに注意が必要です
保護箱の表示と赤色灯の点検を日常点検に組み込みましょう

非常コンセント設備の位置づけがよく分かりました。
まずは自分のビルの階数を数え直してみます。

ぜひそうしてください。
階数と地下街の面積の両方から対象かどうかを確認するのが基本です
㈱防災屋でもご相談を承っています。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

参考・出典

  • 消防法第17条第1項/第17条の3の3
  • 消防法施行令第7条第6項/第29条/第29条の2
  • 消防法施行規則第31条の2
  • 消防実務六法

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
高層ビルの階段室で非常コンセントの保護箱を確認する担当者の写真
高層ビルの階段室や非常用エレベーターの近くに、赤い表示のある小さな保護箱を見たことはありませんか。 中に入っているのはコンセントですが、掃除機や工具を差すためのものではありません。 消防隊が消火活動のために使う専用の電源...