「防炎カーテン」は旅館やホテルの話だと思われがちです。
ところが消防法は、高さ31mを超える高層マンションについても、居室のカーテンやじゅうたんに防炎性能を求めています。
(5)項ロの共同住宅そのものは、実は防炎規制の対象用途には入っていません。
条文をたどると、用途では届かない規制が、高さという別の入口から届く仕組みが見えてきます。
うちのマンションは(5)項ロの共同住宅なので、防炎とは関係ないと思っていました。
そこが誤解しやすいところです。
高さ31mを超えていれば、共同住宅でも防炎の対象になります。
うちは15階建てなので、間違いなく超えています。
その場合は全戸のカーテンやじゅうたんが対象です。
条文を順番に確認していきましょう。
- 消防法第8条の3第1項は、高層建築物における防炎対象物品の使用を、政令で定める防火対象物とは別枠で義務付けています
- 高層建築物とは高さ31mを超える建築物を指し、統括防火管理者を定める第8条の2第1項と同じ定義が使われます
- (5)項ロの共同住宅は施行令第4条の3第1項の対象用途に入っていませんが、高層建築物に該当すれば居住階を問わず全戸が対象になります
- 対象物品はカーテン・布製のブラインド・じゅうたん等など施行令第4条の3第3項が定める範囲に限られます
- 義務そのものに直接の罰則はなく、紛らわしい防炎表示を付ける行為だけが第44条で罰せられます
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目次
高層建築物のカーテンはなぜ防炎性能を求められるのか

消防法第8条の3第1項は、もう一つの入口を用意しています。
条文の構造をよく見ると、「高層建築物」「地下街」「政令で定める防火対象物」の三つが「又は」で並んでいます。政令で定める防火対象物のほうは、劇場・旅館・病院など具体的な用途で範囲が決まる仕組みですが、高層建築物と地下街は用途に関係なく、それ自体が入口になります。
つまり、用途の一覧に載っていない建物であっても、高さという別の基準に当たれば防炎の義務が生じるということです。
共同住宅がまさにこのパターンに当たります。次の章で「高層建築物」の定義そのものを確認します。
用途のリストに載っていなくても、高さで引っかかることがあるんですね。
そのとおりです。
まずは自分の建物の高さを確かめるところから始めてください。
どの高さの建物のどの物品にまで義務が及ぶのか

統括防火管理者の規定と同じ言葉が使われている点に注目してください。
高さの測り方は建築基準法上の建築物の高さの算定によるため、目安としては概ね11階建て前後から対象になりますが、正確な数値は設計図書や建築確認の記録で確認する必要があります。
対象になる建物では、居住している階数に関係なく、建物内で使用するカーテン・布製のブラインド・じゅうたん等が対象です。低層階だから対象外になるという扱いはありません。
一方で対象物品は条文が列挙するものに限られます。カーテンやじゅうたんは対象ですが、家具や家電までは含まれません。
低層階に住んでいれば免除される、ということはないんですね。
ありません。
建物全体が対象になるので、全戸で同じ扱いになります。
防炎性能の基準や防炎表示はどう確認すればよいか

条文が定める基準に沿って処理された製品には、その旨の表示が付いています。
残炎時間・残じん時間・炭化面積・炭化長といった数値は、いずれも総務省令が定める範囲内であることが条件です。実際に手元の製品で測定する必要はなく、防炎表示(防炎ラベル)が付いているかどうかで判断できます。
新しくカーテンやじゅうたんを購入するときは、防炎表示のある製品を選ぶのが最も確実な方法です。
すでに使っているものについては、タグやラベルを一度確認してみてください。
燃焼試験を自分でする必要はなく、表示を見るだけでよいんですね。
そのとおりです。
今お使いのカーテンのタグを一度見てみてください。
複合用途や既存のカーテンで見落としやすいのはどこか

まず複合用途の建物での扱いを確認します。
第2項が定めているのは、複合用途の建物のうち政令が指定する用途の部分だけを切り出して防炎対象にする仕組みです。飲食店や物品販売店の部分は対象でも、同じ建物の住居部分は本来この規定だけでは対象になりません。
ところが建物全体が高層建築物(高さ31m超)に当たる場合は、この用途による切り出しとは別に、第8条の3第1項の「高層建築物」という入口がそのまま効いてきます。住居部分だけが低層で用途上は対象外に見えても、建物全体の高さで対象になる場合があるということです。
もう一つ見落としやすいのが罰則の扱いです。防炎性能を持たない物品を使っていること自体には、第8条の3第1項に直接の罰則はありません。罰則があるのは、紛らわしい防炎表示を付ける行為(同条第3項、第44条第三号=30万円以下の罰金又は拘留)であり、規制の中身が異なります。
既存のカーテンやじゅうたんを買い替えていない部屋があれば、まずそこから確認してください。
用途では対象外でも、高さで対象になることがあるんですね。
そうです。
用途だけで判断せず、建物全体の高さも併せて確認してください。
高層マンションの管理者や住民は明日から何を確認すればよいか

確認の順番を整理しておきます。
- 設計図書や建築確認の記録で、建物の高さが31mを超えるかを確認する
- 超えていれば、居住階を問わず全戸のカーテン・じゅうたん等が対象になると理解する
- 既存のカーテンやじゅうたんに防炎表示(防炎ラベル)があるかを確認する
- 表示がない場合は、買い替え時に防炎表示のある製品を選ぶ
- 管理組合や管理会社として、住民への周知の方法を決めておく
賃貸物件であれば、防炎品を用意する側は管理規約や賃貸借契約の取り決めによって変わります。まずは管理組合や管理会社に確認するのが実務的です。
新築や大規模改修のタイミングでカーテン等を一括で更新する場合は、防炎表示のある製品を指定して発注すると、あとから個別に確認する手間が減ります。
所轄の消防署でも、防炎規制の対象になるかどうかの相談を受け付けています。判断に迷う場合は一度問い合わせてみてください。
まずは建物の高さの確認から始めればよいのですね。
はい。
そこが分かれば、あとはタグの確認だけで判断できます。
よくある質問
まとめ
用途ではなく高さで決まる規制があると分かりました。
まずは自分のマンションの高さを確認します。
高さの確認、防炎表示の確認、住民への周知。
この3つを押さえれば実務は形になります。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第8条の2第1項
- 消防法第8条の3第1項・第2項・第3項
- 消防法施行令第4条の3第1項・第2項・第3項・第4項
- 消防法第44条第三号
- 東京消防庁「防炎防火対象物」
- 富士山南東消防本部「高層マンションにお住いの皆様へ」
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





