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直通階段が一つの建物は避難行動をどう変えればよいか|退避区画と防火対象物点検の基準も解説

直通階段が一つの建物は避難行動をどう変えればよいかを示すアイキャッチ画像

消防庁は令和4年12月、直通階段が一つの建物に向けた新しい避難行動ガイドラインを出しました。
きっかけは大阪市北区で起きた、階段付近からの出火で多数の死傷者が出たビル火災です。
この建物は階段が一つしかなく、火元に近いと避難経路そのものが失われる弱点を抱えていました。
この記事では令和4年消防予第639号のガイドラインをもとに、退避区画の使い方と点検義務の基準を解説します

うちのビルは階段が2つあるので、このガイドラインは関係ないですよね。

間仕切り等で実質1つしか使えないなら対象になります。
まずは両方の階段が本当に使えるか確認しましょう。

もし階段に近づけなくなったら、うちの建物はどうすればいいんでしょうか。

退避区画という一時的に留まれる場所を使う方法があります
次の章で順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 対象は直通階段が一つの建築物で、階段が2つあっても実質1つしか使えない建物も含まれます
  • 令和4年12月16日 消防予第639号で避難行動ガイドラインが策定されました
  • 避難経路は直通階段→避難上有効なバルコニー→退避区画の順で選びます
  • 退避区画は戸を閉鎖できることが前提で、くさびなどによる閉鎖障害は放置できません
  • 収容人員30人以上から防火対象物点検報告の対象になります

直通階段が使えないときの避難順序と退避区画の使い方を示す概要図解

直通階段が一つの建物向けガイドラインはなぜ出されたのか

大阪市北区のビル火災で唯一の直通階段付近から出火し避難経路が失われた様子を示すイメージ
令和3年12月17日、大阪市北区の雑居ビルで多数の死傷者を出す火災が起きました。
唯一の避難経路だった階段付近から出火し、逃げ道が失われたことが被害を広げました。
令和3年12月17日に大阪市北区において多数の死傷者を伴うビル火災が発生した。本火災を受け、消防庁は国土交通省と合同で設置した「大阪市北区ビル火災を踏まえた今後の防火・避難対策等に関する検討会」において、直通階段が一つの建築物における防火・避難対策の検討を行い、令和4年6月28日に報告書がとりまとめられた。(略)これを受けて、今般、「直通階段が一つの建築物向けの避難行動に関するガイドライン」を策定した。(直通階段が一つの建築物向けの避難行動に関するガイドラインの策定について(通知) 令和4年12月16日 消防予第639号)
多数の死傷者を出した大阪の火災が策定の起点です
唯一の直通階段が使えなくなったことで避難路が失われたことが、被害拡大の要因とされました。
国土交通省と合同の検討会が令和4年6月28日に報告書をまとめ、直通階段が一つの建物特有のリスクを下げる対策を求めました。
これを受けて消防庁予防課が令和4年12月16日、消防予第639号としてガイドラインを発出しました。
まずは自分の建物が対象になるかどうかを、次の章で確認してください。

階段が一つしかない建物というのは、それほど珍しいんですか。

雑居ビルなどでは珍しくありません。
まずは自分の建物の階段の数を確認しましょう。

直通階段が一つの建物とはどこまでを指すのか

階段が二つあっても間仕切りで一つしか使えない建物と一階段しかない建物を比べるイメージ
対象になるのは、階段が物理的に一つしかない建物だけではありません。
形の上で二つあっても、実際に使えるのが一つしかない建物も同じ扱いです。
直通階段:建基令第120条第1項に規定する避難階又は地上に通ずる直通階段(傾斜路を含む。)をいう。(略)階段が2つある場合でも間仕切り等により1つの階段しか使用できない建築物は防火対象物点検報告が必要となる。(直通階段が一つの建築物向けの避難行動に関するガイドラインの策定について(通知) 図12及び図13の注)
使える階段の数で判定します
直通階段は、建築基準法施行令第120条第1項に規定する避難階又は地上に通ずる階段(傾斜路を含む)を指します。
階段が2系統あっても、間仕切りなどで実際に使えるのが1つだけなら、直通階段が一つの建築物として扱われます。
この判定は防火対象物点検報告の対象基準にも直結するため、自分の建物がどちらに当たるかを最初に確かめておく必要があります。
図面だけでなく、実際に両方の階段が使用できる状態かどうかを現地で確認してください。

うちのビルは階段が2つあるので対象外だと思っていました。

間仕切りで一方しか使えないなら対象になります。
両方の階段が実際に使えるか、現地で確認しましょう。

避難行動ガイドラインは何を求めているのか

直通階段が使える場合と使えない場合で避難上有効なバルコニーや退避区画へ向かう様子を示すイメージ
求めているのは、避難経路を選ぶときの優先順位です。
直通階段が使えないときに、次にどこへ向かうかが決められています。
避難経路の選択については、「直通階段を使用しての避難」、「避難上有効なバルコニーを使用しての避難」、「直通階段から離れた居室等(避難器具が設置されている室、防火区画されている居室、又は退避区画が設けられている場合は退避区画)への退避等」の順に考えること。
避難経路には優先順位があります
第一選択肢は直通階段で、火災の発生した室や階段室の戸等は必ず閉鎖してから避難します。
直通階段が使えない場合は、外気に開放された避難上有効なバルコニーを次に使います。
どちらも使えないときは、防火区画された退避区画に留まり、消防隊の到着を待つことになります。
退避区画に入ったら戸を確実に閉鎖し、必要ならガムテープ等で隙間を塞ぐところまでが手順です。

階段に近づけない場合は、どうすればいいんですか。

避難上有効なバルコニー、次に退避区画の順で考えます。
戸を閉めて煙の流入を防ぐことが大事です。

実務で見落としやすいのはどこか

退避区画の戸にくさびが挟まり閉鎖できなくなっている様子と正常に閉鎖された戸を比べるイメージ
退避区画は、戸が閉まらなければ意味を持ちません。
現場でいちばん多いのが、この戸の維持管理の甘さです。
退避区画を構成する戸が正常に作動せず退避区画が形成できない場合、当該区画内に煙が流入し人命危険が高まる。このため、日常的に次の項目について確認し適正に維持管理すること。ア 退避区画を構成する戸が設置されているか。イ 退避区画を構成する戸が常時閉鎖式の場合、自動閉鎖装置が破損していないか。エ 退避区画を構成する戸の閉鎖障害となるくさびや物品等がないか。
戸を閉められない状態が最大のリスクです
くさびや物品で戸に閉鎖障害が起きていると、退避区画そのものが機能しません。
常時閉鎖式の自動閉鎖装置が破損していないかも、日常点検で見落とされやすい点です。
さらに、直通階段が一つの建物は防火対象物点検報告の対象になる収容人員の基準が下がり、通常の300人以上ではなく30人以上から義務化されることも見落とされがちです。
戸の点検と点検報告義務の両方を、日常のチェックリストに組み込んでください。

退避区画があれば、それだけで安心していいんですか。

戸が閉まらなければ意味がありません。
くさびや物品による閉鎖障害を定期的に確認してください。

防火管理者は明日から何を確認すればよいのか

退避区画の戸の点検と消防計画の作成と避難訓練を順に行う様子を示すイメージ
やることは、確認と計画への反映、訓練の3つです。
順番に押さえれば、今日から対応できます。
防火管理者の選任が必要な建築物で退避区画を設けたものについては、消法第8条に基づく消防計画に、退避区画に関すること(設置位置や留意事項など)を明記すること。また、建物関係者(従業員等)が避難方法や退避区画への退避方法等を理解し火災時に適切に判断できるように教育及び訓練を実施すること。
確認・計画・訓練の3点セットで備えます
まず退避区画を構成する戸とその閉鎖装置が正常に作動するか、日常的に確認します。
退避区画を設けた建物では、設置位置や留意事項を消防計画に明記することが求められています。
建物関係者が避難行動ガイドラインの内容を理解し、火災時に適切に判断できるよう教育及び訓練を実施することも欠かせません。
点検・計画・訓練の3点を今日から動かせば、直通階段が一つの建物特有のリスクに備えられます。

今日からまず何をすればいいですか。

退避区画の戸が閉まるかどうかの確認からです。
そのうえで消防計画への記載と訓練を進めましょう。

よくある質問

Q直通階段が一つの建物とはどんな建物を指しますか?
A建築基準法施行令第120条第1項に規定する直通階段が1つしかない建築物のことで、階段が2つあっても間仕切り等で実質1つしか使えない建物も同じ扱いになります。
Q避難経路はどの順番で考えればいいですか?
A第一選択肢は直通階段で、使えない場合は避難上有効なバルコニー、さらに使えない場合は退避区画への退避という順に考えます。
Q退避区画に入ったら何をすればいいですか?
A戸を確実に閉鎖し、必要な場合はガムテープ等で隙間を塞いだうえで、退避した人数を把握して消防機関へ再通報します。
Q直通階段が一つの建物は防火対象物点検報告の基準が変わりますか?
A通常は収容人員300人以上が基準ですが、直通階段が一つの建物では30人以上(令別表第一(6)項ロの用途がある場合は10人以上)から対象になります。

まとめ

対象は直通階段が一つの建築物で、実質1つしか使えない建物も含みます
令和4年12月16日 消防予第639号で避難行動ガイドラインが策定されました
避難経路は直通階段→避難上有効なバルコニー→退避区画の順で選びます
退避区画は戸を閉鎖できることが前提です
くさびや物品による閉鎖障害を日常的に確認する必要があります
退避区画に関することを消防計画に明記し訓練を実施します
収容人員30人以上から防火対象物点検報告の対象になります

階段に頼れないときの避難の順番がよく分かりました。
すっきりしました。

退避区画の戸の維持管理と、点検報告の基準の変化。
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参考・出典

  • 直通階段が一つの建築物向けの避難行動に関するガイドラインの策定について(通知)(令和4年12月16日 消防予第639号)
  • 建築基準法施行令第120条第1項(直通階段)・第121条第1項第3号(避難上有効なバルコニー)
  • 建築基準法施行令第112条第11項(竪穴部分の防火区画)・第19項第1号ロ(防火設備の構造)
  • 消防法第8条(防火管理者の選任・消防計画)・第8条の2の2(防火対象物点検報告)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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