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エアゾール製品の保管はなぜ二重の規制を受けるのか|薬剤の危険物該当性と噴射剤の届出を解説

エアゾール製品の保管はなぜ許可と届出の両方が必要なのかのアイキャッチ

倉庫にスプレー缶やエアゾール製品をまとめて保管している事業者は少なくありません。
平成11年、埼玉県の倉庫で大量のエアゾール製品が保管され、火災により連鎖的に爆発炎上する事故が起きました。
調査の結果、缶の薬剤が危険物にあたるのに許可を受けておらず、噴射剤のガスも届出をしていなかったことが判明しました。
この記事ではエアゾール製品の保管がなぜ許可と届出という二つの手続きにかかわるのか、今日から何を確認すればよいのかを解説します。

うちの倉庫、スプレー缶をかなりの量まとめて置いてるんですが、大丈夫でしょうか。

スプレー缶の中身の薬剤が危険物にあたる場合があります。
まずは通知が出た経緯から見ていきましょう。

缶の中身まで危険物になるとは知りませんでした。

平成11年の倉庫火災を受けた通知が、その見分け方を示しています。
順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 「エアゾール製品等の適正な保管について」は平成11年6月28日 消防危第61号で消防庁危険物規制課長から発出された
  • エアゾール製品の薬剤は、成分によって危険物に該当することがある
  • 指定数量以上の危険物を貯蔵・取扱いする場合は消防法第11条による市町村長等の許可が必要になる
  • 噴射剤の液化石油ガスが合計300キログラム以上になると、別途消防機関への届出が必要になる(現行は消防法第9条の3)
  • 薬剤の許可と噴射剤の届出は別々の手続きなので、両方を確認する必要がある

エアゾール製品の保管に関わる薬剤の危険物該当性の確認・指定数量の計算・許可と届出の確認・基準どおりの保管という4つの手順を示した図解

エアゾール製品の倉庫保管はなぜ通知の対象になったのか

倉庫と大量のエアゾール製品の箱が積まれたイラスト
「エアゾール製品等の適正な保管について」は、実際に起きた倉庫火災を受けて発出された通知です。
発生した被害の大きさが、通知の直接のきっかけになりました。
先般、別紙のとおり埼玉県においてエアゾール製品を大量に保管していた倉庫で火災が発生しました。この倉庫には、約236万本のエアゾール製品と合成樹脂等大量の可燃物が保管されていたため、火災によりエアゾール製品が連鎖的に爆発炎上し、当該倉庫及び同一敷地内の事務所が全焼し、倉庫周辺100メートル以上の範囲に大量のエアゾール製品が火を噴きながら飛散するなどの事態となり、鎮火まで約35時間を要しました。(エアゾール製品等の適正な保管について 平成11年6月28日 消防危第61号 消防庁危険物規制課長)
被害を大きくしたのは、2つの見落としでした。
調査の結果、缶の中身に含まれる薬剤は危険物にあたるのに許可を受けておらず、噴射剤の液化石油ガスも基準量以上であったのに届出をしていなかったことが分かりました。
消防機関も、この倉庫に何がどれだけ保管されているかを詳細に把握していませんでした。
この2つの見落としを踏まえて、消防庁が全国の消防機関に注意を促したのがこの通知です。
倉庫でエアゾール製品をまとめて保管している事業者には、直接関わる内容です。

うちも大量にストックしてる商品があるので、他人事じゃないです。

在庫の量と中身を一度洗い出してみましょう。
次は対象になる物品を確認します。

どんな製品のどんな保管が対象になるのか

スプレー缶を拡大鏡で確認するイラスト
通知が対象にしているのは、家庭で使う一本一本のエアゾール製品ではなく、倉庫等に大量にまとまって保管されている状態です。
確認すべきものは、実は1つではありません。
調査の結果、この倉庫に保管されていたエアゾール製品の内容物に含まれる薬剤は危険物にあたるものが多かったにもかかわらず、指定数量を大幅に超えて貯蔵していたにもかかわらず消防法第11条に基づく許可を受けていなかったこと、及び、当該エアゾール製品の噴射剤として使用されている液化石油ガスの総量が消防法第9条の2に規定する数量以上であったにもかかわらず消防機関に届出がなされていなかったことが判明しました。(エアゾール製品等の適正な保管について)
見るべきものは2つあります。
1つはエアゾール製品の薬剤そのもの、もう1つは噴射剤に使われる液化石油ガスです。
薬剤は製品ごとに成分が異なり、引火点などの性質次第で危険物に該当することがあります。
噴射剤は多くの製品で液化石油ガスが使われており、こちらは別の基準で数量を管理します。
同じ倉庫にあるからといって、まとめて1つの基準で判断してはいけません。

スプレー缶だけでなく、中身の薬剤まで見るんですね。

はい。缶とガスを別々に確認する必要があります。
次は求められる手続きを見ていきます。

通知は何を求めているのか

倉庫と許可証の書類とチェックリストのイラスト
通知は、薬剤と噴射剤のそれぞれについて求める対応を記しています。
ここでは許可と届出、それぞれの根拠になる部分を見ていきます。
エアゾール製品の薬剤が危険物に該当する場合、消防法等の関係規定を遵守すべきこと。例えば、同一場所において、指定数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う場合は、消防法第11条により市町村長等の許可を受ける必要があり、当該施設における危険物の貯蔵又は取扱いは同法第10条第3項の基準に従う必要があること。また、同一場所において指定数量未満の危険物を貯蔵し、又は取り扱う場合は、市町村の火災予防条例の規定を遵守すべきこと。(エアゾール製品等の適正な保管について)
圧縮アセチレンガス、液化石油ガスその他の火災予防又は消火活動に重大な支障を生ずるおそれのある物質で政令で定めるものを貯蔵し、又は取り扱う者は、あらかじめ、その旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。(消防法第9条の3第1項。通知が引用する当時の第9条の2は、その後の改正で住宅用防災機器の規定に変わったため、現行はこの第9条の3にあたります。)
許可と届出は、それぞれ独立した手続きです。
薬剤が指定数量以上の危険物にあたる場合は、消防法第11条による市町村長等の許可を受ける必要があります。
指定数量未満でも、市町村の火災予防条例が定める基準を守らなければなりません。
噴射剤の液化石油ガスが合計300キログラム以上になる場合は、現行の消防法第9条の3に基づく届出が必要です。
許可と届出はどちらか一方で済むわけではなく、条件を満たせば両方が求められます。

許可と届出、両方必要になることもあるんでしょうか。

条件を満たせば両方が必要です。
次はよくある見落としを確認しましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

小さいエアゾール製品の箱の山と禁止マークが付いた大きな箱の山のイラスト
「噴射剤の量が基準未満だから大丈夫」という思い込みが、見落としの一番の原因になります。
実務では、次の2点を特に見落としやすいので注意してください。 見落としやすいのは、危険物の合算のルールです。
指定数量は、危険物の種類ごとの数量を指定数量で割った商を足し合わせて判定します。
倉庫内の合成樹脂など他の可燃物とあわせて保管していると、この合算を忘れやすくなります。
また、噴射剤のガスが基準未満だからといって、薬剤側の許可が不要になるわけではありません。
許可と届出は独立した手続きなので、片方が済んでいても安心はできません。

他の可燃物と合わせて数えるのを忘れそうです。

同じ場所にある危険物は合算します。
最後に確認の手順をまとめます。

明日から何を確認すればよいのか

担当者がスプレー缶の保管量を拡大鏡で確認するイラスト
通知から20年以上経っていますが、確認すべき手順そのものは今も変わっていません。
まずは自分の倉庫に何がどれだけ保管されているかを把握することから始めます。 まず確認すべきは薬剤の成分と保管量の洗い出しです。
エアゾール製品の成分表示を確認し、薬剤が危険物にあたるかどうかを調べてください。
危険物にあたる場合は、他の可燃物とあわせた指定数量を計算し、超えていれば許可を、超えていなくても火災予防条例の基準を確認します。
噴射剤の液化石油ガスも合計300キログラムに近づいていないかを確認し、必要なら所轄消防署への届出・相談を早めに行うことが再発防止の第一歩です。

まずは薬剤の成分表示を確認してみます。

それが一番確実な第一歩です。
量の計算も一緒に進めましょう。

よくある質問

Qエアゾール製品はすべて危険物になるのですか?
Aいいえ。中身の薬剤の性状によって危険物に該当するかどうかが決まります。該当する場合は指定数量に基づく管理が必要です。
Q指定数量未満なら何もしなくてよいのですか?
Aいいえ。指定数量未満でも市町村の火災予防条例が定める基準を守る必要があります。
Q噴射剤の届出と薬剤の許可は同時に必要になるのですか?
A条件を満たせば両方が必要になります。噴射剤のガスが基準量以上なら届出、薬剤が指定数量以上なら許可が必要です。
Q通知が引く消防法第9条の2は、今も同じ条文ですか?
Aいいえ。その後の改正で住宅用防災機器の規定が第9条の2として加わったため、届出の規定は現在の消防法第9条の3に条ずれしています。内容は変わっていません。

まとめ

「エアゾール製品等の適正な保管について」は平成11年6月28日 消防危第61号で消防庁危険物規制課長から発出された
236万本超のエアゾール製品を保管する倉庫の火災を受けて出された
缶の中身の薬剤は、成分によって危険物に該当することがある
指定数量以上なら消防法第11条による市町村長等の許可が必要になる
指定数量未満でも市町村の火災予防条例の基準を守る必要がある
噴射剤の液化石油ガスが合計300キログラム以上になると、現行の消防法第9条の3に基づく届出が必要になる
薬剤の許可と噴射剤の届出は別々の手続きなので、両方を確認することが再発防止の第一歩になる

エアゾール製品の保管、思っていたより奥が深いんですね。
倉庫の在庫を洗い出してみます。

そうなんです。薬剤と噴射剤の両方を確認すれば安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • エアゾール製品等の適正な保管について(平成11年6月28日 消防危第61号 消防庁危険物規制課長)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第10条第3項・第11条・第9条の3
  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第1条の10

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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