事業所で扱っている薬剤や油が消防法の危険物にあたるのかは、実務でよく問題になります。
商品名だけでは判断できず、同じように見える物質でも扱う法律が変わることがあります。
消防庁には古くから個別の物質について照会が寄せられ、そのつど判断が示されてきました。
この記事では危険物にあたるかどうかの判定の考え方を消防庁の質疑応答に沿って整理します。
うちで使っている薬剤が危険物かどうかは、どうやって調べればよいのでしょうか。
入口は一つです。
回答では当該物品が引火点を有するか否かにより定まるとされ、引火点を測定して判断されたいと示されています。
ボンベのガスはどうでしょうか。
あれも燃えるものですが。
そちらは別の法律です。
プロパンは大気圧ではガス状であるので消防法の危険物とはならないとされています。
この記事でまとめて解説します!
- 危険物に該当するか否かは当該物品が引火点を有するか否かにより定まり引火点を測定することによつて判断する
- プロパンは大気圧ではガス状であるので消防法の危険物とはならず高圧ガス取締法等の対象である
- ミネラルターペンは製品の引火点はほぼ30度であつて第四類第二石油類に該当する
- 機械油乳剤やポリプロピレングリコールやオレイン酸はいずれも第四類第三石油類に該当する
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目次
危険物にあたるかは引火点を有するかどうかで決まる

昭和44年4月1日付け消防予第91号は、耐火性作動油等についての照会です。
千葉県総務部長から下記品名のものは消防法別表の危険物に該当するか。危険物であれば類別、品名をご教示くださいと問われました。
設問の物品が消防法の危険物に該当するか否かは、当該物品が引火点を有するか否かにより定まるものであり、引火点を有する場合は、消防法別表備考1に規定する引火点に応じた石油類に該当するとされています。
そのうえでしたがつて、設問の物品については、引火点を測定することによつて判断されたいと結ばれました。
商品名や用途ではなく、実測した引火点が判定の基準になるということです。
まず引火点を測ることです。
引火点を測って判断するのですね。
そこが入口になります。
安全データシートで引火点を確認してください。
高圧ガスは消防法ではなく別の法律の対象になる

燃えるものがすべて消防法の危険物になるわけではありません。
プロパンについて最近普及の著しいプロパンは危険物の第何類に該当するか。また、指定数量は如何程とすべきかと問われた照会があります。
そのうえでプロパンは高圧ガス取締法及び液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律の対象であるとされました。
液体塩素についても同じ整理が示されています。
昭和28年5月21日付け消研査発第20号では液体塩素は、高圧ガス取締法の対象であつて、消防法でいう危険物ではないとされました。
容器内で液体であっても、大気圧のもとでガスになるものは消防法の危険物ではないという線引きです。
燃えるものが、すべて危険物になるわけではないのですね。
別の法律の対象になるものもあります。
扱う物ごとに、根拠の法律を整理しておきましょう。
ミネラルターペンは第4類第2石油類にあたる

昭和27年7月12日付け消研査発第17号は、ドライクリーニングの溶剤についての照会です。
甲府市消防長から管内某ドライクリーニング工場において、ドライクリーニング作業のため、商品名ミネラルターペンと称する石油製品約400リットルを使用しているが、該品は消防法別表の危険物第四類中何に該当するかと問われました。
ここでも判断の根拠は規格に定められた引火点でした。
商品名からは分かりませんが、規格を確認すれば類別まで特定できるということです。
なお引火点が極端に低い物質もあります。
昭和28年5月21日付け消研査発第20号では二硫化炭素の引火点 零下30度、さく酸アミルエステルの引火点 21度と示されています。
商品名では判断できないのですね。
性状で決まります。
納入時の書類を、品目ごとに保管してください。
機械油やグリコールやオレイン酸は第4類第3石油類にあたる

第三石油類にあたるとされた物質は複数あります。
昭和37年10月1日付け自消丙予発第98号では、農場で貯蔵されている薬剤について問われました。
性状として組成はマシン油80パーセントと乳化剤20パーセントであり、乳化剤は非危険物、外観は褐色透明油状物と記されています。
乳化剤という非危険物が混ざっていても、主成分であるマシン油の性状で判断されるという例です。
昭和39年8月17日付け自消丙予発第86号ではポリプロピレングリコールが問われ、市販されているものは分子量1,000から6,000程度であつて、いずれも危険物第四類第三石油類に該当するとされました。分子量3,000程度のものが軟質ウレタンフォームの原料として最もよく使用されているとも説明されています。
身近な油脂も対象になります。
混ざり物があっても、主成分で見る場合があるのですね。
性状から判断されます。
組成が変わったら、判定をやり直してください。
基準の特例が使えるかは施設の具体的な事案で決まる

危険物に該当するとしても、火災の危険度が低いのだから基準を緩められないかという相談もあります。
先ほどの昭和44年4月1日付け消防予第91号では危険物に該当する場合においても引火点等の関係上、火災発生の危険度は非常に低いと考えられるので、この危険物の貯蔵所または取扱所を設置するときの位置、構造および設備の基準については政令第23条を適用してさしつかえないかとあわせて問われていました。
物質の性状だけを見て特例の可否を先に決めることはできない、という整理です。
施設ごとの判断になります。
実務としては、まず引火点を測定して類別と品名を確定させ、そのうえで施設の計画を持って所轄消防署と協議するという順序になります。
危険度が低ければ、基準が緩むわけではないのですね。
具体的な事案で判断されます。
まず数量と施設の区分を確かめてください。
よくある質問
まとめ
- 危険物に該当するか否かは当該物品が引火点を有するか否かにより定まる
- 引火点を有する場合は消防法別表備考1に規定する引火点に応じた石油類に該当する
- プロパンは大気圧ではガス状であるので消防法の危険物とはならない
- 液体塩素は高圧ガス取締法の対象であつて消防法でいう危険物ではない
- ミネラルターペンは規格が引火点30度以上であり第四類第二石油類に該当する
- 機械油乳剤80は非危険物の乳化剤を含んでいても第四類第三石油類と解する
- ポリプロピレングリコールとオレイン酸とオレイルアルコールはいずれも第四類第三石油類に該当する
- 政令第23条の適用の是非は施設の位置構造設備の具体的事案について決めるべきものである
名前ではなく、引火点で決まるのですね。
すっきりしました。
そのとおりです。
安全データシートで引火点を確認したうえで、指定数量や施設の基準についてご相談ください。
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)別表第一 e-Gov法令検索
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第23条 e-Gov法令検索
- 高圧ガス保安法(昭和26年法律第204号) e-Gov法令検索
- 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律(昭和42年法律第149号) e-Gov法令検索
- ミネラルターペン(昭和27年7月12日付け消研査発第17号 査察課長から甲府市消防長あて回答)
- 液体塩素/二硫化炭素およびさく酸アミルの引火点(昭和28年5月21日付け消研査発第20号 査察課長から苫小牧消防長あて回答)
- 機械油乳剤80は危険物か(昭和37年10月1日付け自消丙予発第98号 予防課長から山形県民生部長あて回答)
- ポリプロピレングリコールの性状(昭和39年8月17日付け自消丙予発第86号 予防課長から厚木市消防長あて回答)
- 耐火性作動油等に対する疑義について(昭和44年4月1日付け消防予第91号 予防課長から千葉県総務部長あて回答)
- オレイン酸とオレイルアルコールの取り扱いについて(昭和44年4月24日付け消防予第134号 予防課長から大阪府民生部長あて回答)
- 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の別表による危険物に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成
※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




