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工場や映画スタジオはなぜ非特定防火対象物になるのか|(12)項の防火管理義務と避難器具の基準を解説

シャッター付きの中規模な工場建物の外観

工場や映画スタジオは、消防法上どんな防火対象物になるかご存知でしょうか。
同じ(12)項にまとめられていても、工場映画スタジオで扱いが違う場面があります。
収容人員の数え方や避難器具の基準など、他の用途と共通する部分も多くあります。
工場や映画スタジオは消防法施行令別表第一(12)項として、非特定防火対象物ならではの基準で防火管理者や避難器具の要否が決まる仕組みを持っています。

うちは工場ですが、映画の撮影に使うスタジオスペースも一部にあります。
防火の扱いは同じですよね。

実は同じ(12)項でも中身が違います
工場と映画スタジオでは、防炎規制の対象が分かれています

え、そうなんですか。
うちのどこが対象になるのか分かっていません。

多くの方がそうです。
順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 工場や映画スタジオは消防法施行令別表第一(12)項に区分される非特定防火対象物です
  • 収容人員は従業者の数のみで算定します
  • 収容人員が50人以上になると防火管理者の選任が必要になります
  • 防炎物品の使用義務は映画スタジオ・テレビスタジオ(ロ)だけが対象で、工場・作業場(イ)は対象外です
  • 避難器具は3階以上の階または地階で、収容人員が無窓階・地階なら100人以上、その他の階なら150人以上の場合に必要になります

工場(12)項イと映画テレビスタジオ(12)項ロで防炎規制・防火管理者・避難器具の扱いがどう分かれるかを示した図解

工場や映画スタジオは消防法上どんな防火対象物になるのか

シャッター付きの工場建物と照明器具を備えた映画スタジオ建物を示したイメージ
工場や映画スタジオは、消防法の世界ではひとまとめの用途として扱われています。
まずはその位置づけと、収容人員の数え方を確認します。
消防法施行令別表第一(十二) イ 工場又は作業場 ロ 映画スタジオ又はテレビスタジオ
消防法施行規則第1条の3 令別表第一(十)項及び(十二)項から(十四)項までに掲げる防火対象物 従業者の数により算定する。
工場と映画スタジオは、同じ(12)項という一つの区分にまとめられています。
別表第一(12)項はイ 工場又は作業場ロ 映画スタジオ又はテレビスタジオの2つに分かれ、収容人員は消防法施行規則第1条の3により(十)項・(十三)項の車庫等と同じ従業者の数のみで算定します。
来客の床面積まで加算する神社仏閣等の(11)項とは、この点が異なります。
イとロは同じ項の中の枝分かれにすぎず、防火管理者の要否や収容人員の数え方は共通のルールで判定します。
ただしこの後の見出しで見るとおり、防炎規制など一部の基準はイとロで扱いが分かれます。

うちの工場、映画のスタジオも兼ねているんですが、イとロで防火管理者の要否は変わりますか。

いいえ。
防火管理者の要否や収容人員の数え方は共通です
変わるのは防炎規制など一部の基準だけです。

防火管理者の選任義務はいつ生じるのか

工場の建物脇に集まる作業員の人物群と管理用の掲示板を示したイメージ
防火管理者が必要になるかどうかは、人数で決まります。
工場や映画スタジオの場合の線引きと、面積による資格の違いを確認します。
消防法施行令第1条の2第3項第1号ハ 別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで、(十六)項ロ及び(十七)項に掲げる防火対象物で、収容人員が五十人以上のもの
消防法施行令第3条第1項第2号 第一条の二第三項第一号ロ及びハに掲げる防火対象物で、延べ面積が(略)その他の防火対象物にあつては五百平方メートル未満のもの(以下この号において「乙種防火対象物」という。)
従業者の数が50人以上になると、防火管理者の選任が義務になります。
パート・アルバイトを含めた実際の勤務人数を数え直す必要があり、工場の一部にスタジオがあっても合算して数えます
さらに消防法施行令第3条第1項により、延べ面積が500平方メートル未満は乙種防火対象物、500平方メートル以上は甲種防火対象物に分かれます。
甲種と乙種では防火管理者が受ける講習の種類が異なるため、面積を確認してから講習先を選ぶことになります。
繁忙期だけ人数が増える場合も、実態に近い人数で判定してください。

うちは常時40人くらいなので、防火管理者は要らないと思っていました。

パートの方も含めてもう一度数えてみてください
50人を超えていれば選任が必要です。

消防用設備等の基準は工場を建て替えないと変わらないのか

小規模な平屋の工場建物と、警報ベルを備えた大規模な工場建物を示したイメージ
工場は特定防火対象物ではありません。
この位置づけが、設備基準の適用にどう関わるのかを確認します。
消防法施行令第34条の4第2項 法第十七条の二の五第二項第四号の多数の者が出入するものとして政令で定める防火対象物は、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ及び(十六の三)項に掲げる防火対象物のうち、百貨店、旅館及び病院以外のものとする。
消防法施行令第17条の2の5第1項 (略)現に存する(略)防火対象物における消防用設備等(略)がこれらの規定に適合しないときは、当該消防用設備等については、当該規定は、適用しない。この場合においては、当該消防用設備等の技術上の基準に関する従前の規定を適用する。
工場や映画スタジオは、特定防火対象物を数え上げた一覧に入っていません。
つまり非特定防火対象物として扱われ、消防法施行令第17条の2の5が定める既存不遡及の原則がそのまま働きます。
基準が新しくなっても、既存の工場の設備をそのたびに最新基準へ合わせる義務は原則としてありません。
ただし増築・改築・大規模な修繕や模様替えの工事をする場合、その工事に着手した時点の基準が適用されるため、既存部分がそのまま許されるわけではありません。
増改築を計画する際は、その時点の基準がどこまで及ぶのかを事前に確認してください。

じゃあ、うちの古い工場の設備は一生このままでいいんですか。

増築や大規模な修繕をしなければ原則として今のままで大丈夫です
ただし工事をするときは、その時点の基準が適用されます。

防炎物品の使用義務は工場とスタジオで同じなのか

照明器具のそばに掛かるカーテンと、機械設備のそばに掛かるカーテンを対比したイメージ
防炎規制は、すべての(12)項に一律にかかるわけではありません。
イとロで対象が分かれる、意外と見落としやすい基準です。
消防法施行令第4条の3第1項 法第八条の三第一項の政令で定める防火対象物は、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十二)項ロ及び(十六の三)項に掲げる防火対象物(次項において「防炎防火対象物」という。)並びに工事中の建築物その他の工作物(総務省令で定めるものを除く。)とする。
防炎防火対象物に指定されているのは、映画スタジオ・テレビスタジオ(ロ)だけです。
同じ(12)項でも工場・作業場(イ)は防炎防火対象物の一覧に含まれていません
スタジオでは撮影用のカーテン・どん帳・大道具用の合板などに防炎性能のある物品を使う義務がありますが、隣接する工場スペースの資材や仕切りカーテンには同じ義務がかかりません。
工場の一部を撮影スタジオとして使っている建物では、この境目を取り違えやすいので注意してください。
どちらの用途に当たるかは部屋の使い方で判断されるため、迷ったら所轄消防署に確認するのが確実です。

工場の中に小さな撮影ブースがあるんですが、そこもカーテンを防炎品にしないといけませんか。

撮影に使う部分は対象になります
境目があいまいなら消防署に確認してください。

避難器具はどの階から必要になるのか

避難はしごを備えた3階建ての工場建物と、備えていない2階建ての工場建物を対比したイメージ
避難器具は、階数と人数の組み合わせで必要かどうかが決まります。
工場・映画スタジオならではの基準を確認し、最後に確認の手順をまとめます。
消防法施行令第25条第1項第3号 別表第一(一)項から(四)項まで及び(七)項から(十一)項までに掲げる防火対象物の二階以上の階(略)又は地階で、収容人員が五十人以上のもの
消防法施行令第25条第1項第4号 別表第一(十二)項及び(十五)項に掲げる防火対象物の三階以上の階又は地階で、収容人員が、三階以上の無窓階又は地階にあつては百人以上、その他の階にあつては百五十人以上のもの
工場や映画スタジオの避難器具は、一般の用途より緩やかな基準になっています。
事務所や店舗が並ぶ(一)項から(四)項・(七)項から(十一)項までは2階以上または地階で収容人員50人以上なら対象になりますが、工場・映画スタジオはこのグループに入りません。
(12)項は(15)項の事務所等と同じグループで、3階以上の階または地階に限られ、人数も無窓階・地階なら100人以上、その他の階なら150人以上とより緩やかです。
つまり2階建ての工場であれば、この基準だけを見る限り避難器具の設置義務は生じません。
最後に確認の手順をまとめます。従業者数を数えて防火管理者の要否と甲種・乙種を判定し、増改築の予定があれば適用される基準の時点を確認し、撮影スタジオ部分があれば防炎物品を、3階以上の階や地階があれば避難器具の要否を確認してください。

うちは2階建てなので、避難器具は要らないということですね。

今の基準ではそのとおりです
ただし増築で3階建てになる場合は、あらためて確認してください。

よくある質問

Q工場と映画スタジオは同じ防火対象物として扱われますか?
Aどちらも消防法施行令別表第一(12)項に区分され、収容人員の数え方や防火管理者の要否は共通です。ただし防炎規制など一部の基準はイ(工場)とロ(スタジオ)で異なります。
Q工場の防火管理者は従業員何人から必要になりますか?
A収容人員が50人以上になると選任が義務になります。収容人員は従業者の数のみで算定します。
Q古い基準で建てた工場の設備は、そのままでよいのですか?
A工場は非特定防火対象物のため既存不遡及の原則が働き、増改築等をしない限り従前の基準のままで問題ありません。
Q工場の避難器具はどの階から必要になりますか?
A3階以上の階または地階で、収容人員が無窓階・地階なら100人以上、その他の階なら150人以上の場合に必要です。

まとめ

工場や映画スタジオは消防法施行令別表第一(12)項に区分される非特定防火対象物です
収容人員は従業者の数のみで算定します
収容人員が50人以上になると防火管理者の選任が必要になります
延べ面積500平方メートルを境に甲種・乙種防火対象物が分かれます
増改築をしない限り既存の設備は従前の基準のままでよい既存不遡及の原則が働きます
防炎物品の使用義務は映画・テレビスタジオ(ロ)だけが対象で、工場・作業場(イ)は対象外です
避難器具は3階以上の階または地階で、収容人員が100人以上または150人以上の場合に必要になります

工場とスタジオで扱いが分かれる基準があるとは知りませんでした。

用途と階数、収容人員の3つを順に確かめれば大きく外しません。
㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • 消防法施行令別表第一(十二)項(工場又は作業場、映画スタジオ又はテレビスタジオ)
  • 消防法施行規則第1条の3(収容人員の算定方法)
  • 消防法施行令第1条の2第3項第1号ハ(防火管理者を定めなければならない防火対象物)
  • 消防法施行令第3条第1項第2号(防火管理者の資格)
  • 消防法施行令第34条の4第2項(特定防火対象物の範囲)
  • 消防法施行令第17条の2の5第1項(消防用設備等の既存不遡及)
  • 消防法施行令第4条の3第1項(防炎防火対象物の指定)
  • 消防法施行令第25条第1項第3号・第4号(避難器具に関する基準)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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