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車載用リチウムイオン蓄電池はなぜ布で覆うだけで貯蔵できるのか|開口部の大きさと指定数量の考え方を解説

耐火性の布で覆われた車載用リチウムイオン蓄電池が倉庫のパレットに置かれたアイキャッチ画像

カーボンニュートラルの動きを背景に、電気自動車(EV)が急速に普及しています。
事故や修理で車両から取り外した車載用リチウムイオン蓄電池を、専用のキュービクル式設備がない現場でどう保管すればよいか悩む声が増えています。
令和4年、消防庁は鋼板製の筐体を耐火性のある布で覆うという新しい貯蔵方法を通知で示しました。
この記事ではどんな蓄電池が対象になり、布でどう覆えばよいのかを解説します。

うちの整備工場でも、事故で外した車のバッテリーを保管することがあるんですが、専用の設備がないと違反になるんでしょうか。

実は耐火性のある布で覆うだけで貯蔵できる方法が示されています。
まずは通知が出た経緯から見ていきましょう。

そもそも、なんで車の蓄電池だけ特別扱いされるんですか。

背景には電気自動車の急増があります。
順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • この措置は令和4年12月26日 消防危第295号で消防庁危険物保安室長から発出された
  • 対象は鋼板製の筐体で開口部の合計面積が75,000平方ミリメートル以下の車載用リチウムイオン蓄電池に限られる
  • 筐体全体を耐火性のある布で覆えば、キュービクル式の設備がなくても貯蔵できる
  • 正しく覆った蓄電池ごとに指定数量未満として扱え、離隔距離も不要になる
  • 布や固定具は耐火性を有する糸・金具・ボルトで確実に固定しなければならない

車載用リチウムイオン蓄電池の対象条件・覆い方・固定・積み重ねの4点を示した図解

車載用リチウムイオン蓄電池の貯蔵ルールはなぜ通知で示されたのか

充電中の電気自動車と保管倉庫のイラスト
カーボンニュートラルの動きを背景に、電気自動車は年々増えています。
一方で、その動力源である蓄電池をどう安全に保管するかという検討は、この通知が出るまで十分に整理されていませんでした。
近年、カーボンニュートラルの動向を踏まえ、多数の電気自動車が市場に投入されており、それに伴い、電気自動車の動力源となるリチウムイオン蓄電池(以下「車載用リチウムイオン蓄電池」という。)を貯蔵する際の安全対策の検討が求められていたところです。このため、消防庁では「リチウムイオン蓄電池に係る火災予防上の安全対策に関する検討会」を開催し、車載用リチウムイオン蓄電池の安全対策を検討してきました。(車載用リチウムイオン蓄電池の貯蔵に係る運用について 令和4年12月26日 消防危第295号 消防庁危険物保安室長)
EVの急増が、新しい貯蔵リスクを生みました
事故や修理、リコールなどで車両から取り外された蓄電池は、従来のキュービクル式リチウムイオン蓄電池設備のような専用の囲いを用意できない現場で一時的に保管されることがあります。
消防庁は検討会を開き、こうした車載用という新しい区分に絞って、貯蔵の運用を取りまとめました。
この通知も消防組織法第37条の規定に基づく助言として発出されたもので、法律そのものではなく運用の目安という位置づけです。
次は、どんな蓄電池がこの通知の対象になるのかを見ていきます。

うちの整備工場でも、事故で外した車のバッテリーを保管することがあるんですが、専用の設備がないと違反になるんでしょうか。

実は耐火性のある布で覆うだけで貯蔵できる方法が示されています。
まずは対象になる蓄電池の条件から見ていきましょう。

どんな車載用リチウムイオン蓄電池が対象になるのか

開口部が小さい車載用蓄電池と大きい蓄電池を並べ後者に禁止マークを付けたイラスト
対象になるのは、どんな蓄電池でもよいわけではありません。
筐体の作りと開口部の大きさで線引きされています。
適用対象となる車載用リチウムイオン蓄電池について 鋼板製の筐体で覆われているもの(当該筐体の一部に25,000平方ミリメートル程度の大きさで1〜3箇所の樹脂製の部品又は冷却用等の開口部(以下「開口部等」という。)があり、その面積の合計が75,000平方ミリメートル以下であるものを含む。)に限ること。(車載用リチウムイオン蓄電池の貯蔵に係る運用について 記1)
対象は鋼板製の筐体で覆われている蓄電池だけです。
筐体の一部に樹脂部品や冷却用の開口部があっても、1〜3箇所・合計75,000平方ミリメートル以下という条件を満たせば対象に含まれます。
逆に開口部が多すぎたり大きすぎたりする筐体は、鋼板製であってもこの通知の対象にはなりません。
まず自社の蓄電池の筐体と開口部を実測することが最初の一歩です
条件を満たすことが確認できたら、次は具体的な覆い方を見ていきます。

見た目はどれも似た金属の箱なんですが、開口部の大きさまで測る必要があるんですね。

はい。開口部の数と面積の合計が線引きになります。
次は布で覆う方法の中身を見ていきましょう。

布で覆う貯蔵方法は何を求めているのか

耐火性の布で全体を覆う車載用蓄電池と接合部だけをワイヤーで絞る蓄電池のイラスト
覆い方には、大きく分けて2つの方法があります。
どちらも「キュービクル式」の設備がなくても貯蔵できる点が共通しています。
車載用リチウムイオン蓄電池を直接床に置く貯蔵方法(パレット等に載せて置く場合を含む。)により、「キュービクル式リチウムイオン蓄電池設備の貯蔵に係る運用について」(令和4年4月27日付け消防危第96号)に掲げる必要な耐火性を有する布(以下「布」という。)で、次のとおり指定数量未満の車載用リチウムイオン蓄電池を覆う措置を講じたものを複数置く場合にあっては、当該措置を講じた車載用リチウムイオン蓄電池ごとの指定数量の倍数を合算せず、それぞれ指定数量未満の危険物を貯蔵する場所とする。なお、当該措置を講じた車載用リチウムイオン蓄電池ごとの離隔距離は不要であること。(車載用リチウムイオン蓄電池の貯蔵に係る運用について 記2)
覆い方は主に2通りです。
筐体の全体を布で覆う方法(覆い被せる・1枚で包む・2枚で挟む、のいずれか)と、開口部等がない筐体に限って接合部だけを布で覆いワイヤーで絞り込む方法です。
正しく覆った蓄電池は、台数を並べても指定数量を合算せず、隣との離隔距離も不要になります
さらに、個別に全体を布で覆った蓄電池は、不燃材料の架台を使えば高さ3メートル以下まで積み重ねることもできます。
次は、この覆い方で見落としやすいポイントを見ていきます。

布を被せるだけでよくて、離隔距離まで不要になるのは意外でした。

そのとおりです。ただし正しく覆えていることが前提になります。
次は見落としやすい落とし穴を確認しましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

ボルトで確実に固定した蓄電池と布に隙間ができた蓄電池を並べ後者に禁止マークを付けたイラスト
布で覆うだけと聞くと簡単そうに見えますが、条件はそれなりに細かく決まっています。
特に固定の仕方でつまずきやすいところがあります。
(3)布を加工する場合は、耐火性を有する糸及び金具により行うとともに、火災時に当該箇所から布の内部及び外部への延焼を防止するための措置を講じること。(4)通常の保管時に想定される重力や外力により車載用リチウムイオン蓄電池が露出しないよう耐火性を有するボルト、押さえ枠(金属)又はワイヤー等を使用し、布を固定すること。(車載用リチウムイオン蓄電池の貯蔵に係る運用について 記2(3)(4))
布と固定具の耐火性が、この措置全体の前提になっています
布を裁断・加工するときに使う糸や金具が耐火性のないものだと、火災時に接合部から火炎が抜けてしまい、通知が求める措置を満たしません。
固定も同様で、耐火性のあるボルト・押さえ枠・ワイヤー以外で仮止めしただけの状態は、重力や外力で布がめくれる危険があり認められません。
布の内部にはパレットの枕木など必要最小限の可燃物を使う分には差し支えありませんが、それ以上の可燃物を詰め込むのは避けるべきです。
固定が甘いまま「布を被せただけ」で済ませると、指定数量の合算や離隔距離の特例そのものが崩れる点に注意してください。

布さえ耐火性があれば、留め方はガムテープでもいいのかと思っていました。

いいえ、固定具にも耐火性が必要です。
次は明日から確認する手順を整理します。

明日からなにを確認すればよいのか

クリップボードを持ち車載用蓄電池を点検する人物のイラスト
最後に、現場で確認すべき点を整理します。
別紙に付いている補足も、実務では見落とせないポイントです。
(補足)通常の保管時に想定される重力や外力により布がめくれたり隙間ができたりといった状況とならないよう、固定具(上の例であればボルト)の位置を設定すること。(ピッチの指定はしていない。)布の内部に必要最小限の枕木等の可燃物を使用することは差し支えない。(車載用リチウムイオン蓄電池の貯蔵に係る運用について 別紙)
点検すべきは、筐体・布・固定具の3点だけです。
①筐体が鋼板製で、開口部の数と面積が条件内かを実測する。
②筐体の状態に応じて、全体を覆うか接合部だけを覆うかを選ぶ。
耐火性のある糸・金具・ボルトで布を固定し、隙間ができないよう位置を決める。
④複数台を並べるなら、1台ごとに正しく覆えているかを確認してから離隔距離なしで配置する。
⑤積み重ねるときは不燃材料の架台を使い、高さ3メートル以下に収める。

布と固定具さえ間違えなければ、思っていたより取り入れやすい方法ですね。

はい。筐体・布・固定具の3点から確認してみてください。
次はよくある質問もあわせてご覧ください。

よくある質問

Q車載用リチウムイオン蓄電池はどんな通知で貯蔵方法が示されましたか?
A令和4年12月26日付け消防危第295号として、消防庁危険物保安室長から各都道府県消防防災主管部長等へ発出された車載用リチウムイオン蓄電池の貯蔵に係る運用について(通知)で示されました。
Qどんな蓄電池でもこの布で覆う方法を使えますか?
Aいいえ。対象は鋼板製の筐体で覆われ、開口部が1〜3箇所・合計75,000平方ミリメートル以下のものに限られます。この条件を満たさない蓄電池は対象になりません。
Q布で覆った蓄電池を並べて置くとき、離隔距離は必要ですか?
Aいいえ。正しく布で覆う措置を講じた蓄電池ごとであれば、指定数量の倍数を合算せず、離隔距離も不要とされています。
Q布で覆った蓄電池を積み重ねてもよいですか?
A個別に筐体全体を布で覆った蓄電池に限り、不燃材料の架台を使って高さ3メートル以下まで積み重ねることができます。それ以外の積み重ねは認められません。

まとめ

この措置は令和4年12月26日 消防危第295号で消防庁危険物保安室長から発出された
対象は鋼板製の筐体で開口部が合計75,000平方ミリメートル以下の車載用リチウムイオン蓄電池に限られる
筐体全体を耐火性のある布で覆えばキュービクル式の設備がなくても貯蔵できる
正しく覆った蓄電池ごとに指定数量未満として扱え、離隔距離も不要になる
布の加工には耐火性を有する糸及び金具を使う必要がある
固定には耐火性のあるボルト・押さえ枠・ワイヤーを使い隙間ができないようにする
個別に全体を覆った蓄電池は不燃材料の架台で高さ3メートル以下まで積み重ねられる

記事全体を通して、車載用蓄電池の扱いがだいぶ整理できました。
さっそく倉庫の蓄電池を確認してみます。

お役に立てて何よりです。筐体・布・固定具の3点を確認してみてください。
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参考・出典

  • 車載用リチウムイオン蓄電池の貯蔵に係る運用について(通知)(令和4年12月26日 消防危第295号 消防庁危険物保安室長)
  • キュービクル式リチウムイオン蓄電池設備の貯蔵に係る運用について(令和4年4月27日付け消防危第96号)
  • 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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