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リチウムイオン蓄電池を置く場所はなぜ防爆構造が不要になるのか|PSEマークと落下試験の条件を解説

リチウムイオン蓄電池のラックを確認する作業員

電力需要の平準化や非常用電源として、リチウムイオン蓄電池を導入する施設が増えています。
蓄電池の電解液は消防法上の第4類危険物にあたるため、本来は防爆構造の電気設備や耐薬品床などの厳しい基準が課されます。
平成23年、消防庁は火災事例の分析や実証実験を踏まえ、一定の条件を満たす蓄電池についてはこれらの措置を省略できる運用を通知しました。
この記事ではどんな蓄電池が対象になり、今日から何を確認すればよいのかを解説します。

うちも非常用のバッテリーを置く予定なんですが、危険物用の防爆設備を全部そろえないと駄目なんでしょうか。

実は条件を満たす蓄電池なら、その措置を省略できる特例があります。
まずは通知が出た経緯から見ていきましょう。

蓄電池も乾電池と同じような扱いだと思っていました。

実は電解液を使うため危険物として扱われます。
順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • リチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取扱いに係る運用については平成23年12月27日 消防危第303号で消防庁危険物保安室長から発出された
  • 特例を受けられるのはPSEマークまたは国際海事機関の規程に適合した蓄電池に限られる
  • 蓄電池を地上高さ3メートルから落下させる試験で漏液等が確認されなければ、防爆構造などの措置を講じる必要がない
  • 指定数量未満でも自家発電設備の近くに置く場合や箱に収納する場合には別のルールがある
  • 電解量の総量が指定数量以上となる場合の取扱いについては、この通知の時点ではまだ示されていない

リチウムイオン蓄電池の通知番号・PSEマーク・落下試験・防爆構造の省略・箱への収納の5点を示した図解

なぜリチウムイオン蓄電池だけ特別な通知が出たのか

積み上がるリチウムイオン蓄電池のパックと伸びる棒グラフのイラスト
電力需要の平準化や停電時の備えとして、リチウムイオン蓄電池を使う設備は年々増えています。
一方でその貯蔵や取扱いに関する安全対策の検討は、当時十分に追いついていませんでした。
第4類の危険物を電解液として収納するリチウムイオン蓄電池(一般に「リチウムイオン電池」と呼ばれるものは、法令上「リチウムイオン蓄電池」と規定されています。)については、電力需要の平準化や非常用電源として今後ますます使用が見込まれ、その貯蔵又は取扱いに係る安全対策の検討が急務となっていました。(略)今般、検討会の検討結果を踏まえ、リチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取扱いの運用について下記のとおり取りまとめました。(リチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取扱いに係る運用について 平成23年12月27日 消防危第303号 消防庁危険物保安室長)
検討会での事故分析と実証実験の結果が、この通知の土台になっています
消防庁は「リチウムイオン電池に係る危険物施設の安全対策のあり方に関する検討会」を開催し、過去の火災事例や実証実験を踏まえて安全対策のあり方を検討しました。
この通知はその結果を取りまとめたもので、消防組織法第37条の規定に基づく助言として発出されています。
つまり法律そのものではなく、都道府県や市町村の消防機関に向けた運用の目安という位置づけです。
ここを押さえたうえで、次にどんな蓄電池が対象になるのかを見ていきます。

検討会まで開いて出された通知なんですね。てっきりただの通達だと思っていました。

はい。火災事例と実証実験の裏付けがあります。
次は対象になる蓄電池の条件を見ていきましょう。

どんな蓄電池なら基準の特例を受けられるのか

認証マーク付きの蓄電池と認証のない蓄電池を並べ後者に禁止マークを付けたイラスト
特例が使えるのは、どんな蓄電池でもよいわけではありません。
通知は対象となる蓄電池を2つの区分に絞り込んでいます。
第2に掲げる技術基準の運用は、一定の安全対策が講じられ発火危険性が低減されているリチウムイオン蓄電池(以下「蓄電池」という。)である次の(1)又は(2)に掲げるものに限り適用できるものであること。(一)電気用品安全法(昭和36年法律第234号)第8条第1項に基づく電気用品の技術上の基準を定める省令別表第9に規定する技術基準に適合している蓄電池。(二)国際海事機関が採択した危険物の運送に関する規程に定める技術基準に適合している蓄電池(電気用品安全法の適用を受けない蓄電池に限る。)。(リチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取扱いに係る運用について 第1 1)
対象は電気用品安全法かIMOの規程、いずれかの技術基準に適合した蓄電池だけです。
一方は電気用品安全法第10条に基づく表示(PSEマーク)で確認できる国内向けの蓄電池、もう一方は国際海事機関の危険物運送規程に適合した蓄電池で、事業者が実施した試験結果により確認します。
どちらにも当てはまらない蓄電池は、この特例の対象になりません。
つまり「リチウムイオン電池だから安全」ではなく、技術基準への適合が確認できるかどうかが線引きになります。
次は、対象になった蓄電池に具体的にどんな措置が省略できるのかを見ていきます。

見た目が同じ蓄電池でも、対象になるかならないかで扱いが変わるということですか。

そのとおりです。PSEマークの有無がまず確認のポイントです。
次は省略できる措置の中身を見ていきます。

具体的にどんな措置を省略できるのか

落下試験の枠と勾配のある床のイラスト
対象の蓄電池だからといって、無条件に措置が免除されるわけではありません。
通知は落下試験という具体的な条件をひとつ設けています。
蓄電池を地上高さ3メートルからコンクリートの床面に落下させる試験(以下「落下試験」という。)を実施し、蓄電池内部から漏液や可燃性蒸気の漏れが確認されない場合にあっては、危険物の規制に関する政令第23条又は火災予防条例(例)第34条の3を適用し、当該蓄電池を貯蔵し、又は取り扱う場所について、次に掲げる措置を講ずる必要はないこと。(一)電気設備を防爆構造とすること。(二)床を危険物が浸透しない構造とするとともに、適当な傾斜をつけ、かつ貯留設備(ためます)を設けること。(三)可燃性の蒸気を屋外の高所に排出する設備を設けること。(リチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取扱いに係る運用について 第2 1)
この章の規定は、製造所等について、市町村長等が、(略)この章の規定による製造所等の位置、構造及び設備の基準によらなくとも、火災の発生及び延焼のおそれが著しく少なく、かつ、火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるとき(略)においては、適用しない。(危険物の規制に関する政令第23条)
落下試験をクリアした蓄電池は、防爆構造など3つの措置が不要になります。
根拠は危険物の規制に関する政令第23条(基準の特例)で、通常の位置・構造・設備の基準によらなくても安全性が確保できると市町村長等が認めるときに適用されます。
省略できるのは、防爆構造の電気設備・浸透しない床と傾斜及び貯留設備・屋外高所への排出設備の3点です。
落下試験そのものは事業者が実施した結果を確認すればよく、施設ごとに毎回試験をやり直す必要はありません。
次は、この特例を使ううえで見落としやすい落とし穴を確認します。

防爆設備がいらなくなるのは助かりますが、それだけ聞くと少し不安にもなります。

落下試験という具体的な裏付けがあっての特例です。
ただし見落としやすい点もあるので次に確認しましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

自家発電設備のそばに置かれた蓄電池の箱と標識が立つ箱の列のイラスト
落下試験さえクリアすれば何も気にしなくてよい、というわけではありません。
通知は指定数量未満の範囲でも、置き方によって別のルールを設けています。
指定数量未満の危険物を取り扱う自家発電設備の付近に電解液量の総量が指定数量未満の蓄電池設備を設置する場合の取扱いについて(一)自家発電設備の付近に蓄電池設備を設置する場合、当該蓄電池設備の電解液量が指定数量未満であって、かつ、当該蓄電池設備が、出入口(厚さ1.6ミリメートル以上の鋼板又はこれと同等以上の性能を有する材料で造られたものに限る。)以外の開口部を有しない厚さ1.6ミリメートル以上の鋼板又はこれと同等以上の性能を有する材料で造られた箱(以下、単に「箱」という。)に収納する場合にあっては、当該自家発電設備と当該蓄電池設備の指定数量の倍数を合算せず、それぞれを指定数量未満の危険物を取り扱う場所として扱うものとすること。(リチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取扱いに係る運用について 第2 2(1))
自家発電設備のそばに蓄電池を置くと、指定数量が合算されて基準を超えることがあります。
通知は厚さ1.6ミリメートル以上の鋼板でできた箱に収納すれば合算しなくてよいという条件を示しています。
さらに箱を複数置く場合も箱ごとの指定数量の倍数は合算せず、箱には標識及び掲示板の設置に加えて蓄電池を収納している旨の表示が必要です。
「指定数量未満だから何もしなくてよい」と思い込むと、箱の仕様や表示を見落としがちです。
最後に、明日から確認すべきことをまとめます。

指定数量未満だから安心、と思っていましたが、箱の仕様まで決まっているんですね。

はい。箱の厚みと表示まで含めて確認が必要です。
最後に手順をまとめます。

明日から何を確認すればよいのか

担当者が蓄電池の箱と標識を確認するイラスト
ここまでの内容を踏まえ、実際に確認する手順を整理します。
特例は「対象の蓄電池かどうか」から順番に確認していくとわかりやすくなります。
電解量の総量が指定数量以上となる場合の蓄電池設備の取扱いについては追って示す予定であること。(リチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取扱いに係る運用について 第2 4)
まず確認すべきは、設置している蓄電池がPSEマークまたはIMO規程に適合しているかどうかです。
適合が確認できたら、落下試験の結果(漏液や可燃性蒸気の漏れがないこと)をメーカーや販売店に確認します。
自家発電設備の近くに置く場合や複数の箱を並べる場合は、箱の厚さと標識の掲示が条件を満たしているかを確認してください。
なお通知が示すのは指定数量未満の場合の運用で、指定数量以上となる場合の扱いは通知の時点でまだ示されていない点にも注意が必要です。
迷ったときは、所轄の消防署や設置業者に相談することをおすすめします。

まずはPSEマークがあるかどうかを確認するところから始めればいいんですね。

そのとおりです。確認の順番を守れば迷いません。

よくある質問

Qリチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取扱いに係る運用についてはどんな通知ですか?
A平成23年12月27日付け消防危第303号として、消防庁危険物保安室長から各都道府県消防防災主管部長等へ発出された通知です。一定の技術基準に適合した蓄電池について、防爆構造など通常求められる措置を省略できる運用を示しています。
Qどんな蓄電池でもこの特例を使えますか?
Aいいえ。対象は電気用品安全法のPSEマークまたは国際海事機関の危険物運送規程に適合した蓄電池に限られ、どちらにも当てはまらない蓄電池はこの特例の対象になりません。
Q落下試験は自分で実施する必要がありますか?
Aいいえ。通知では事業者が実施した落下試験の結果を確認すればよいとされており、施設ごとに毎回試験をやり直す必要はありません。
Q指定数量以上になる場合はどう扱えばよいですか?
Aこの通知の時点では指定数量以上となる場合の取扱いは示されておらず、追って示す予定とされています。該当する場合は所轄の消防署に確認することをおすすめします。

まとめ

リチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取扱いに係る運用については平成23年12月27日 消防危第303号で消防庁危険物保安室長から発出された
特例の対象はPSEマークまたは国際海事機関の規程に適合した蓄電池に限られる
対象の蓄電池を地上高さ3メートルから落下させる試験で漏液等が確認されなければ特例が使える
危険物の規制に関する政令第23条(基準の特例)を適用し、防爆構造・床の構造・排出設備の3つの措置を省略できる
自家発電設備の近くに置く場合は厚さ1.6ミリメートル以上の鋼板の箱に収納すれば指定数量を合算しなくてよい
箱には標識及び掲示板の設置に加えて蓄電池を収納している旨の表示が必要
電解量の総量が指定数量以上となる場合の取扱いは、この通知の時点ではまだ示されていない

防爆設備が不要になる条件がこんなに具体的だとは知りませんでした。
まずはPSEマークを確認してみます。

そうなんです。マークと箱の仕様の確認から始めるのがおすすめです。
㈱防災屋でもご相談を承っています。

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参考・出典

  • リチウムイオン蓄電池の貯蔵及び取扱いに係る運用について(平成23年12月27日 消防危第303号 消防庁危険物保安室長)
  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第23条
  • 電気用品安全法(昭和36年法律第234号)第8条
  • 電気用品安全法施行令(昭和37年政令第324号)別表第2

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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