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二酸化炭素消火設備の工事は閉止弁を誰が閉めるのか|委託しても管理権原は建物側に残ることを解説

二酸化炭素消火設備の貯蔵容器が並ぶ設備室の写真

二酸化炭素消火設備が設置された建物では、機械式駐車場やボイラー室の点検・改修工事のたびに、思わぬ事故のリスクが潜んでいます。
令和2年12月から令和3年4月にかけて、工事や点検の最中に死亡事故が3件相次いだことを受け、消防庁は令和4年12月に事故防止対策実施マニュアルを策定しました。
令和5年3月31日にはリーフレットや操作手順、図書の見本といった具体的な資料が附属資料として追加されています。
この記事では、誰が閉止弁を閉めるべきか、そして委託しても消えない建物側の責任について解説します。

うちのビルにも駐車場の下に二酸化炭素消火設備があるはずですが、工事のときに何か注意することがあるんですか。

実は工事や点検の最中に死亡事故が繰り返し起きていて、それを受けて消防庁がマニュアルを作りました。
今日は工事の前に何を確認すればよいか、一緒に見ていきましょう。

工事は管理会社に任せているんですが、それでも建物側がやることがあるんですか。

はい。
委託しても消えない責任があります。順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 令和2年12月から令和3年4月にかけて工事や点検中の死亡事故が3件相次ぎ、消防庁は令和4年12月に事故防止対策実施マニュアルを策定しました。
  • 対象になるのは防護区画の中またはその付近で行う工事・整備・点検のすべてです。
  • 委託契約を結んでも二酸化炭素消火設備の管理権原は建物関係者に残ります。
  • 操作管を取り外すときは集合管側へのキャップ取り付けを忘れると他の容器が連鎖的に開放する危険があります。
  • 工事の前には関係図書の提示と閉止弁の確認を、業者任せにせず建物側でも行う必要があります。

二酸化炭素消火設備の工事前に確認すべき4つの手順をまとめた図解

二酸化炭素消火設備の近くで工事をするとなぜマニュアルが必要になったのか

機械式駐車場の建物と配管でつながれた二酸化炭素消火設備の貯蔵容器
二酸化炭素消火設備そのものに触れない工事でも、そばで作業するだけで命に関わる事故につながることがあります。
消防庁がマニュアルまで作った理由を確認しましょう。
令和2年12月から令和3年4月にかけて全域放出方式の二酸化炭素を消火剤とする不活性ガス消火設備(以下「二酸化炭素消火設備」という。)に係る死亡事故が相次いで発生したことを受けた「特殊消火設備の設置基準等に係る検討部会」における報告書において、二酸化炭素の有毒性や再発防止策を建物関係者及び工事等を行う業者へ広く周知するため、工事等を実施する際のマニュアルを作成すべきであるとされました。(「二酸化炭素消火設備が設置された部分又はその付近で工事等作業を行う際の事故防止対策実施マニュアル」について 令和4年12月21日 消防予第646号)
相次いだ3件の事故は、いずれも工事や点検の最中に起きています。
令和2年12月には愛知県名古屋市のホテルで機械式駐車場のメンテナンス工事中に二酸化炭素が放出し死者1人・負傷者10人
令和3年1月には東京都港区の事務所ビルで設備の点検中に死者2人・負傷者1人、
令和3年4月には東京都新宿区の共同住宅で天井ボードの張替え工事中に死者4人・負傷者2人が発生しました。
これを受けて令和4年12月にマニュアルが策定され、令和5年3月31日の消防予第210号でリーフレットや操作手順、図書の見本といった具体的な資料が追加されています。

工事の最中に事故が起きるなんて、設備そのものが壊れるよりも身近で怖いですね。

そうなんです。
次は、どんな工事のどんな設備が対象になるのかを見ていきましょう。

どんな工事のどんな設備が対象になるのか

二酸化炭素の貯蔵容器室とガラス仕切りの奥にある電気室
対象になるのは二酸化炭素消火設備そのものの工事だけではありません。
まずは建物のどの部分が対象で、誰が何を管理しているのかを整理しましょう。
【建物関係者とは】 二酸化炭素消火設備を設置している建物の所有者、管理者又は占有者をいう。建物関係者が当該建物の管理を契約により委託した二酸化炭素消火設備の管理権原を有する管理会社等を含む。(略)【施設部分管理者とは】 管理会社等のうち、建物関係者との契約に基づき、機械式駐車装置、ボイラー設備、電気設備、通信・情報処理設備等(以下「工事等対象設備」という。)が設けられた施設部分についてのみ管理を受託し、二酸化炭素消火設備の管理については、権原を有さない者をいう。(「二酸化炭素消火設備に係る事故を発生させないために」概略版リーフレット)
全域放出方式の不活性ガス消火設備(二酸化炭素を放射するものに限る。)の維持に関する技術上の基準は、(略)四 貯蔵容器の付近に設備の構造並びに工事、整備及び点検時においてとるべき措置の具体的内容及び手順を定めた図書を備えておくこと。(消防法施行規則第19条の2第1項第4号)
対象になるのは、防護区画の中またはその付近で行う工事・整備・点検のすべてです。
実際に起きた3件の事故も、駐車場のメンテナンスや天井の内装工事など、二酸化炭素消火設備そのものとは直接関係ない作業でした。
建物の所有者や管理者を指す「建物関係者」と、駐車場や電気設備だけを管理する「施設部分管理者」は別の存在で、施設部分管理者は二酸化炭素消火設備の管理権原を持ちません
工事を頼む相手が誰であっても、まずこの区別を確認しておく必要があります。

駐車場の管理会社と、消防設備を管理している会社は別だということですね。

そのとおりです。
次は、マニュアルが誰にどんな対応を求めているのかを見ていきましょう。

マニュアルは誰にどんな安全対応を求めているのか

閉じた状態の閉止弁バルブと手動に切り替えられた操作スイッチ
対象と関係者が整理できたら、次は具体的に何をすればよいかです。
マニュアルが求める安全対応を確認しましょう。
建物関係者は、事故防止のための安全対応として次の(1)及び(2)を行うこと。(1)工事等作業時の安全対応 次の①及び②の対応又は③の対応 ①二酸化炭素消火設備の閉止弁を閉止すること。②二酸化炭素消火設備の自動手動切替え装置を手動起動に切り替えること。(略)(2)二酸化炭素放出時の安全対応 二酸化炭素消火設備から消火剤である二酸化炭素が放出された場合に、防護区画内の二酸化炭素が排出されるまでの間、当該防護区画内に人が立ち入らないように維持する対応(「二酸化炭素消火設備に係る事故を発生させないために」概略版リーフレット)
求められているのは大きく2つだけです。
工事の前に閉止弁を閉めるか自動起動を手動に切り替えるかのどちらかを行うこと、そしてもし誤って放出されてしまった場合は排出が終わるまで区画内に立ち入らないことです。
自動手動切替え装置がない場合は、消火設備事業者を手配して電源を停止するなどの措置で代えることも認められています。
どの対応を選ぶにせよ、工事の直前に現場で閉止弁の位置と状態を確認することが土台になります。

閉止弁を閉めるだけでいいのか、切り替えるだけでいいのか、現場で迷いそうです。

手順は決まっています。
次は、委託すれば建物側の責任がなくなるのかを見ていきましょう。

委託すれば建物関係者の責任はなくなるのか

集合管でつながった貯蔵容器の1本だけキャップのない操作管が外れている様子
施設部分管理者や工事業者に安全対応を任せているから大丈夫、というわけではありません。
マニュアルが示す落とし穴を確認しましょう。
建物関係者は、施設部分管理者又は工事等事業者に事故防止のための安全対応の実施を委託する場合は、必要な委託契約を締結する必要がある。 注意 委託契約を締結し、施設部分管理者又は工事等事業者が工事等作業において事故防止のための安全対応を行う場合であっても、二酸化炭素消火設備の管理に係る権原は依然として建物関係者にあることに留意すること。(「二酸化炭素消火設備に係る事故を発生させないために」概略版リーフレット)
起動用ガス容器が設けられていないため、電気式容器弁開放器が接続された容器が最初に開放すると、集合管内の圧力でその他の容器も開放する。(略)操作管を取り外す。その際、集合管側に必ずキャップを装着すること。(「工事、整備及び点検時において取るべき措置の具体的内容及び手順を定めた図書」の例)
答えは「いいえ」です。
委託契約を結んで施設部分管理者や工事業者に安全対応をやってもらっても、設備の管理権原は建物関係者に残ったままです。
さらに図書の見本が示す取り外し手順を見ると、落とし穴はもう1つあります。
起動用ガス容器を持たない設備で貯蔵容器が集合管でつながっている場合、電気式の弁を1本外しただけで集合管の圧力が他の容器にも伝わり連鎖的に開放してしまうことがあります。
操作管を外したら集合管側に必ずキャップを付けてから次の作業に進む、という順序を守らないと、閉止弁を閉めていたつもりでも別の容器が開いてしまいます。

弁を1つ閉めておけば安全だと思っていました。他の容器までつながっているとは知りませんでした。

そこが見落としやすいところです。
次は、工事の前に何を確認しておけばよいかをまとめます。

工事の前に何を確認しておけばよいのか

書類を差し出す手と鍵束を受け取る手
最後に、防火管理者として工事の前に確認しておきたい点を整理します。
マニュアルが示す手順を見ていきましょう。
建物関係者は、工事等作業に際して、二酸化炭素消火設備の設計図書、設置届出書、試験結果報告書、点検結果報告書、修理整備経過表、取扱いに関する図書等(以下「関係図書」という。)を工事等事業者及び施設部分管理者に提示すること。(略)工事等事業者及び施設部分管理者は、関係図書を確認し、二酸化炭素消火設備のシステム構成等を理解し、安全対策の検討に活用すること。(「二酸化炭素消火設備に係る事故を発生させないために」概略版リーフレット)
明日からできることは3つです。
①施設部分管理者や工事業者に、設計図書や点検結果報告書などの関係図書を見せて設備の構成を理解してもらうこと。
②閉止弁までの経路の確保と鍵の管理方法を、委託契約の中で具体的に決めておくこと。
③工事が終わったら閉止弁の開放と自動起動への復帰を、建物関係者自身の目で確認すること。
この3つを押さえておけば、業者任せにしたまま設備が閉止状態のまま放置される、という事態を防げます。

業者に任せきりにせず、最後は自分の目で確認するということですね。

はい。
次はよくある質問を確認していきましょう。

よくある質問

Q二酸化炭素消火設備そのものに触れない内装工事でも対象になりますか?
Aなります。防護区画の中またはその付近であれば対象で、実際に令和3年4月の死亡事故も天井ボードの張替え工事中に起きています。
Q工事を施設部分管理者に委託していれば建物関係者は何もしなくてよいですか?
Aいいえ。委託契約を結んでも二酸化炭素消火設備の管理権原は建物関係者に残ります。閉止弁までの経路や鍵の管理方法をあらかじめ取り決めておく必要があります。
Q閉止弁を閉めれば工事中は安全ですか?
Aそれだけでは不十分な場合があります。操作管を外す際に集合管側へのキャップ取り付けを忘れると、他の貯蔵容器の圧力が伝わって意図せず開放することがあります。
Q令和5年の消防予第210号では何が追加されましたか?
A令和4年12月のマニュアル本体に加えて、概略版リーフレットと操作手順、図書の見本という附属資料が追加されました。

まとめ

令和2年12月から令和3年4月にかけて工事や点検中の死亡事故が3件相次ぎ、マニュアルが策定されました
対象になるのは防護区画の中またはその付近で行う工事・整備・点検のすべてです。
建物の所有者等を指す「建物関係者」と設備だけを管理する「施設部分管理者」は別の存在です。
工事前には閉止弁の閉止か自動手動切替え装置の手動化のいずれかが必要です
委託しても設備の管理権原は建物関係者に残ります
操作管を外すときは集合管側のキャップ取り付けを忘れないことが事故防止の鍵です。
誤って放出された場合は排出が完了するまで区画内に立ち入らないことを徹底します。

委託していても最後は自分たちで確認するべきところがあるとわかり、安心して業者に工事を頼めそうです。

はい。㈱防災屋でもご相談を承っています。閉止弁の運用手順や委託契約の内容が気になる方は、お気軽にお声がけください。

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お問い合わせ

参考・出典

  • 「二酸化炭素消火設備が設置された部分又はその付近で工事等作業を行う際の事故防止対策実施マニュアル」について(通知)(令和4年12月21日 消防予第646号)
  • 「二酸化炭素消火設備が設置された部分又はその付近で工事等作業を行う際の事故防止対策実施マニュアル」の附属資料の追加について(通知)(令和5年3月31日 消防予第210号)
  • 消防法第17条第1項(消防用設備等の設置・維持義務)
  • 消防法施行規則第19条・第19条の2(不活性ガス消火設備の設置及び維持に関する基準)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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