不活性ガス消火設備の容器弁は、経年劣化による誤放出や部品の飛散といったリスクを抱えています。
点検のたびに容器弁を取り外し、消火剤を再充てんする作業は、どう扱われるのでしょうか。
設置後20年を超えた容器弁を、一斉に点検することが難しい現場もあります。
質疑応答が示したのは安全確保の原則を保ちながら現場の実情に応じた段階的な対応も認められるという考え方です。
容器弁の点検って消火剤の詰め替えも必要なんですか。
はい。
それが「整備」に当たります。
古い容器弁がたくさんある場合はどうするんですか。
それも含めて5つの実務Q&Aを見ていきます。
- 容器弁の消火剤詰め替え等は令第36条の2第2項の「整備」に該当します
- 設置後20年を超えた容器弁は段階的な計画による点検もやむを得ないとされます
- 点検従事者が複数いる場合は点検者一覧表に記載し報告書に添付してよいとされます
- 二酸化炭素を消火剤とする容器弁は設置後15年程度から順次点検を始めてよいとされます
- 起動用・加圧用ガスに二酸化炭素を用いる容器弁は設置後30年を経過するまでに安全性点検を行います
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目次
容器弁点検に伴う消火剤の詰め替えは整備に該当するか

この一連の作業は、消防法上どのように位置づけられるのでしょうか。
点検の一環に見える作業でも、消火剤の再充てんや容器弁の取り付けといった手を加える部分は、「整備」という別の区分に当たります。単なる点検資格者ではなく、整備に対応した資格を持つ人が担う作業だということです。
点検と整備が地続きの作業に見えても、法令上の位置づけは別だという点を押さえておく必要があります。
容器弁の点検を計画するなら、点検だけで完結するのか、消火剤の詰め替えを伴う整備まで発生するのかを事前に確認してください。
点検のつもりが整備になっているんですね。
点検か整備かを事前に確認してください。
設置後20年を超えた容器弁は一斉に点検すべきか

すでに20年を超えている容器弁が多数ある場合、それらをすべて直ちに点検することは、現実には難しいこともあります。
本来は速やかな点検が求められますが、実情として一斉点検が難しい場合には、優先度の高い設備から段階的に移行する計画を立てて着実に実行する方法も、やむを得ないとされています。ただし、これは無条件の猶予ではありません。
段階的な計画が認められる前提として、日常点検・入室管理・在館者への周知が適切に行われていることが求められます。計画だけ立てて安心するのではなく、日々の安全管理が伴っていることが条件です。
容器弁の点検が追いついていない状態なら、段階的な計画を立てると同時に、日常点検や入室管理の体制が整っているかを確認してください。
計画を立てればそれで済むわけじゃないんですね。
日常点検や入室管理の
体制が整っているか確認してください。
点検従事者が複数いる場合の報告書はどう作成するか

その全員の情報を、点検結果報告書の様式そのものに書き込む必要があるのでしょうか。
点検結果報告書の本体に全員分を書き込む必要はなく、点検者一覧表という別紙に住所・氏名・資格等をまとめて記載し、報告書に添付するという方法が認められています。人数が増えるほど、この方式のメリットは大きくなります。
複数人での点検が当たり前になっている現場ほど、報告様式の工夫が実務の負担を左右します。
チームで点検を行う体制を取っているなら、点検者一覧表を活用して報告書を作成する方法を検討してください。
報告書に全員分書き込まなくていいんですね。
点検者一覧表を活用してください。
二酸化炭素を消火剤とする容器弁はいつまでに点検すべきか

その期限ぎりぎりまで待つのではなく、早めに順次点検を始めることは認められるのでしょうか。
25年という数字は点検の終期を示しているだけで、それより前に点検を始めてはいけないという意味ではありません。むしろメーカーの推奨交換期限なども踏まえ、設置後15年程度を目安に順次点検を始めることが望ましいとされています。
また、外形点検で異常が見つかった場合は、年限にかかわらず速やかに安全性点検を行う必要があります。年数だけを基準にしていると、この例外を見落としがちです。
容器弁の点検スケジュールを立てるなら、期限ぎりぎりに集中させるのではなく、15年程度から計画的に前倒しして進めてください。
25年は期限であって目標ではないんですね。
15年程度から
前倒しして進めてください。
起動用・加圧用の容器弁は何年で安全性点検が必要か

こちらの容器弁は、どのくらいの期間で安全性点検を行う必要があるのでしょうか。
消火剤本体の容器弁とは別に、起動用・加圧用のガス容器については30年という期限が定められています。ガスの種類にかかわらず一律の年数が適用される点は、消火剤本体側の規定とは異なる特徴です。
ただし、こちらも外形点検で異常が見つかれば、年限を待たずに安全性点検を行う必要がある点は共通しています。
不活性ガス消火設備を保有しているなら、消火剤本体の容器弁と起動用・加圧用の容器弁とで、それぞれ異なる年限が設定されていることを踏まえて管理してください。
本体と起動用で年限が違うんですね。
それぞれ踏まえて管理してください。
よくある質問
まとめ
うちにも古い容器弁があるので、順次点検を検討します。
段階的な計画でも大丈夫だと分かって安心しました。
安全確保を保ちながら
実情に応じて計画的に進めてください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 不活性ガス消火設備等の容器弁の安全性確保に係る点検について(平成22年3月31日 事務連絡 予防課から各都道府県消防防災主管課・東京消防庁・各指定都市消防本部あて)
- 消防用設備等又は特殊消防用設備等の点検結果報告について(平成23年12月28日 事務連絡 別添)
- 点検基準の改正に伴う不活性ガス消火設備等の容器弁の点検時期について(平成25年11月26日 事務連絡 別添)
- 不活性ガス消火設備等の容器弁安全性点検について(平成26年3月31日 消防予第137号)
- 消防法施行令第36条の2
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答はそれぞれの発出当時のもので、通知番号や機関の名称等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





