立入検査はいつも同じように来るとは限りません。
ある建物には数日前に連絡が入り、別の建物には何も告げずに担当者が現れることがあります。
この違いは気分や運で決まっているわけではなく、消防法と消防庁のマニュアルが示す判断の基準に沿ったものです。
事前に連絡があるかどうかの分かれ目を知っておくと、当日の対応も変わってきます。
先週、取引先には立入検査の事前連絡が来たと聞きました。
うちにも同じように連絡が来るものだと思っていて大丈夫でしょうか。
必ず来るとは限りません。
事前に連絡するかどうかは、消防機関が状況に応じて判断しています。
連絡が来ないまま、いきなり訪問されることもあるということですか。
あり得ます。
どんな場合に連絡が来て、どんな場合に来ないのか、順番に見ていきましょう。
- 消防法第4条は立入検査の権限を定めた規定で、事前に連絡することを義務づけていません
- 面談や立会いが必要な場合は、事前の通知を行うのが原則です
- 実態把握を妨げるおそれがある場合は、事前の連絡なしに来ることがあります
- 実施時間は日中又は営業時間内等が原則ですが、業態によって例外があります
- 訪問時は市町村長が定める証票の提示を求めることができます
▼

目次
立入検査に事前の連絡は来ると決まっているのか

その条文のどこにも、事前に連絡することを義務づける言葉はありません。
消防法第4条には、立入検査を行う前に日時を知らせなければならないという規定がありません。
それでも総務省消防庁の立入検査標準マニュアルは、相手方へ事前に通知する義務はないとしたうえで、状況に支障がないと判断できる場合は、できる限り事前に通知し日程調整することが望ましいという考え方を示しています。
つまり「連絡が来るのが当たり前」ではなく、「連絡をするかどうかは消防機関が個別に判断している」というのが実際の位置づけです。
この判断の基準を知っておくことが、当日の対応を考える出発点になります。
連絡が来るかどうかは、消防機関の判断次第ということなんですね。
そのとおりです。
どんな場合に連絡が来やすいのか、次で見ていきましょう。
どんな場合に事前の連絡が行われるのか

総務省消防庁のマニュアルは、通知が必要と考えられる場合の具体例を挙げています。
- 既に把握している消防法令違反の改修指導で、立入検査の相手方と面談する必要があるとき
- 消防対象物の位置や構造について正確な情報を得るため、または検査の安全確保のために相手方の立会いを求める必要があるとき
違反の改修指導のように担当者と直接話す必要がある場面や、建物の構造を正確に把握するために立会いが欠かせない場面では、連絡なしに訪問しても目的を果たせません。
このため消防機関は、こうした場合はできる限り事前に通知し、相手方と日程調整することが望ましいという考え方で運用しています。
逆に言えば、面談や立会いが不要な検査では、この理由による事前連絡は行われないことになります。
連絡が来た場合は、日程調整の連絡そのものが検査の目的を示すヒントにもなります。
面談や立会いが必要そうな内容なら、事前に連絡が来る可能性が高いんですね。
そう考えておおむね問題ありません。
次は逆に、連絡なしで来る場合を見てみましょう。
事前の連絡なしに来る抜き打ち検査はどこまで許されるのか

マニュアルは、事前に通知しないほうが望ましい場合も具体的に挙げています。
- 階段等の避難経路への物件存置や、自動火災報知設備の音響装置の停止など、通知すると一時的に是正されて実態がつかめなくなるおそれがあるとき
- 消防法令違反があるという通報を受けて立入検査を行うとき
- 事前に通知する相手方の特定が困難なとき
連絡をすれば一時的に整えられてしまい、普段の実態が分からなくなる不備については、通知しないほうが検査の目的にかないます。
ただしマニュアルは、事前の通知を行わない抜き打ち検査を繰り返して関係者の営業活動を妨げないよう配慮することも同時に求めています。
つまり抜き打ちは「連絡すると意味がなくなる場合」に限られた運用で、理由のない繰り返しは想定されていません。
普段から避難経路や設備を整えておけば、連絡の有無にかかわらず対応に困ることはなくなります。
普段からきちんとしていれば、抜き打ちで来られても困らないということですね。
まさにそこが要点です。
次は訪問される時間帯の原則を見ておきましょう。
実施される時間帯にも原則はあるのか

ここにもマニュアルが示す原則と例外があります。
- 消防法令上、実施時間そのものを制限する規定はありません
- 相手方への関与を必要最小限にするため、日中又は営業時間内等に実施することが望ましいとされています
- 夜間営業のみの店舗など、営業時間内の訪問が支障になる業態では、営業時間外に実施することもあります
夜間にしか営業しない飲食店などでは、営業時間中に検査を受けると来店客への対応に支障が出るため、営業開始前の時間帯に実施することが検討されます。
逆に、日中は無人で夜間だけ改装工事が行われているような場合は、その時間帯を捉えて検査することもあります。
「昼間しか来ない」と決めつけず、自分の建物の営業実態に合わせて訪問時間が調整され得ることを知っておいてください。
どの時間帯であっても、対応できる担当者を決めておくことが実務上の備えになります。
うちは夜しか営業していないので、時間帯にも配慮があるのは助かります。
そのとおりです。
最後に、実際に訪問を受けたときの確認手順を押さえておきましょう。
事前の連絡がなかったら何を確認すればよいのか

まず確認するのは、相手が本当に消防職員かどうかです。
市町村長が定める証票を携帯しているはずなので、事前の連絡がなく不安を感じたときは、遠慮せず提示を求めてください。
そのうえで、立入りの目的を確認し、担当者が不在の場合に誰が対応するかを日頃から決めておき、検査の内容と指摘事項をその場でメモに残すという順番で動くと、連絡の有無にかかわらず落ち着いて対応できます。
連絡が来ていた場合との違いは、事前に準備する時間があるかどうかだけで、確認すべき手順そのものは変わりません。
「今日は聞いていない」という驚きを、証票の確認から始める落ち着いた対応に変えることが、実務上の要点です。
まずは証票を見せてもらうところから始めればいいんですね。
それだけで十分な備えになります。
よくある質問
まとめ
連絡があるかないかで身構え方が変わっていましたが、確認すべきことは同じだと分かって安心しました。
証票の確認と目的の確認、この2つを抜けなく行えば十分です。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
参考・出典
- 消防法第4条第1項・第2項
- 総務省消防庁「立入検査標準マニュアル」(予防課)
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





